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8.まさか気づいてないですよね?
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日々、疲れることの方が多い仕事。
毎日同じようなことの繰り返しだけど、そんな業務の中でも、私のことを覚えていてくれて、お礼を言いに来てくれる人がいるなんて思わなかった。
こんな風に誰かの役に立って、“ありがとう”と笑顔で言ってもらえると、それだけで報われるような気持ちになれる。
それと同時に、もっと頑張ってみようかなって気持ちも湧いてくる。
気持ちよく品出しを終えて、倉庫へ空になったオリコンを片付けに行った。
倉庫での作業が終わり、売り場の発注業務をしようと事務室に置いてある専用のPOTと呼ばれる機械を取りに行ったとき、不意に本郷店長に声をかけられた。
「高倉さん」
よく通る低い声に呼ばれて、思わず心臓の鼓動がバクバクと加速する。
「は、はい。何でしょう?」
「さっきのお客様だが」
さっきの……?
お礼をわざわざ言いに来てくれたお客様くらいしか思い当たらないんだけど……。
一体何を言われるんだろう? とドキドキ半分、内心ヒヤヒヤと待っていると、目の前の黒いフレームのメガネをかけた本郷店長はフッと柔らかい表情を浮かべた。
「俺も近くで接客してたから聞こえてた。よかったな。やっぱりああいうことがあると嬉しいだろ」
「は、はい。でも、それも店長のおかげです」
「俺? 何か高倉さんにしたか?」
「以前、店長が私に風邪薬について教えてくれたときに、言って下さったじゃないですか。誰にでも一番売りたい薬を売れば良いってもんじゃないって。お客様の視点で考えて、薬を売るより病院をすすめた方がいい場合もあるって。そう言っていただいてたから、あのお客様から相談を受けたとき、小梅ちゃんにも指示を仰いで病院を受診するようすすめることができたんです」
「そうか。嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」
「い、いえ……」
本郷店長は、まるで梨緒の姿の私といるときに見せるような笑みを浮かべる。
高倉奈緒の姿でもその笑みを向けてもらえたことが嬉しくて、頬が緩みそうになる。
本郷店長はゴソゴソと店長机の上をあさって、一枚の紙をこちらに渡してきた。
「で、高倉さんを呼び止めた本当の理由はこっちな。挑戦してみる気はないか?」
「登録販売者資格試験対策研修、ですか?」
「そうだ。今年度の試験に向けて、登販を目指す人を対象に、会社が業務時間内で研修を行うものだ」
つい先日発表があったらしいけど、登録販売者の資格試験は、今年はここの県では九月に行われる予定らしい。
「まぁ、無理にとは言わねぇよ。ただ、入社してお前ももう六年目に入っただろ? 受験するとなれば、うちの会社はある程度は会社から補助が出るし、試してみてはどうだ? 決してお前にとって、無駄にはならないと思うが」
確か本郷店長がこの店舗に異動してきたばかりの頃にも、登録販売者の資格を取らないのかって言われたっけ?
うちの会社としては、平社員から次長に上がるためには、登録販売者の資格が必須だもんな。
毎日同じようなことの繰り返しだけど、そんな業務の中でも、私のことを覚えていてくれて、お礼を言いに来てくれる人がいるなんて思わなかった。
こんな風に誰かの役に立って、“ありがとう”と笑顔で言ってもらえると、それだけで報われるような気持ちになれる。
それと同時に、もっと頑張ってみようかなって気持ちも湧いてくる。
気持ちよく品出しを終えて、倉庫へ空になったオリコンを片付けに行った。
倉庫での作業が終わり、売り場の発注業務をしようと事務室に置いてある専用のPOTと呼ばれる機械を取りに行ったとき、不意に本郷店長に声をかけられた。
「高倉さん」
よく通る低い声に呼ばれて、思わず心臓の鼓動がバクバクと加速する。
「は、はい。何でしょう?」
「さっきのお客様だが」
さっきの……?
お礼をわざわざ言いに来てくれたお客様くらいしか思い当たらないんだけど……。
一体何を言われるんだろう? とドキドキ半分、内心ヒヤヒヤと待っていると、目の前の黒いフレームのメガネをかけた本郷店長はフッと柔らかい表情を浮かべた。
「俺も近くで接客してたから聞こえてた。よかったな。やっぱりああいうことがあると嬉しいだろ」
「は、はい。でも、それも店長のおかげです」
「俺? 何か高倉さんにしたか?」
「以前、店長が私に風邪薬について教えてくれたときに、言って下さったじゃないですか。誰にでも一番売りたい薬を売れば良いってもんじゃないって。お客様の視点で考えて、薬を売るより病院をすすめた方がいい場合もあるって。そう言っていただいてたから、あのお客様から相談を受けたとき、小梅ちゃんにも指示を仰いで病院を受診するようすすめることができたんです」
「そうか。嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」
「い、いえ……」
本郷店長は、まるで梨緒の姿の私といるときに見せるような笑みを浮かべる。
高倉奈緒の姿でもその笑みを向けてもらえたことが嬉しくて、頬が緩みそうになる。
本郷店長はゴソゴソと店長机の上をあさって、一枚の紙をこちらに渡してきた。
「で、高倉さんを呼び止めた本当の理由はこっちな。挑戦してみる気はないか?」
「登録販売者資格試験対策研修、ですか?」
「そうだ。今年度の試験に向けて、登販を目指す人を対象に、会社が業務時間内で研修を行うものだ」
つい先日発表があったらしいけど、登録販売者の資格試験は、今年はここの県では九月に行われる予定らしい。
「まぁ、無理にとは言わねぇよ。ただ、入社してお前ももう六年目に入っただろ? 受験するとなれば、うちの会社はある程度は会社から補助が出るし、試してみてはどうだ? 決してお前にとって、無駄にはならないと思うが」
確か本郷店長がこの店舗に異動してきたばかりの頃にも、登録販売者の資格を取らないのかって言われたっけ?
うちの会社としては、平社員から次長に上がるためには、登録販売者の資格が必須だもんな。
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