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10.本当の姿のお前を見つけ出してやる。
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世間がゴールデンウィーク初日の今日は、久しぶりに桜木店に応援に来ていた。
「高倉さん! 今から休憩!? 例の司の今カノについてなんだけど」
前半の業務を終えて事務室へと入ると、すでにそこで休憩を取っていた紗枝子さんにそう言われて、内心ビクリとする。
「は、はいぃっ」
「あ、驚かすつもりはなかったのよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
本郷店長と同じく、紗枝子さんも私の正体に気づいてないとはいえ、今のはさすがに心臓に悪い。
なんだか紗枝子さんが知らないだけで、本物の梨緒とのいざこざを目の前で見てしまっているだけに、なんだか顔もあわせづらいよ……。
「私、この前、取っ捕まえたのよ。最近できたばかりのショッピングセンターで、本郷店長以外の男と歩く今カノを」
「そ、そうでしたか……」
「だけど、そいつ、しらばっくれたのよ。人違いだって一点張り。そしたらね、なんと、同じ顔の女が今度は現れたのよ、司と一緒に!」
最大のビッグニュースと言いたげにそう言う紗枝子さんに、精一杯驚いた表情をして見せた。
いくらその事の結末まで知っているとはいえ、紗枝子さんは、私は全く知らないと思って話しているのだから。
「でね、ここからは司に問い詰めて聞いた話。どうやら司と会ってた方は、完全なる偽者だったのよ。名前も見た目も偽って司に取り入ってたみたい」
「それは……」
「騙されてたのよ、司はその女に」
自分の仕出かしたこととはいえ、他の人に客観的にそう言われてしまうと、胸が痛むものがある。
確かに私は本郷店長を騙してしまったことになる。それは変えられない事実だ。
「だけど、司はもうダメよ」
紗枝子さんがため息混じりに言った言葉に、うつむきかけていた顔を上げる。
「え? もうダメって……」
「今度は本当の姿の彼女を見つけ出してやるんだって、そう言ってたわ」
ドクンと胸が張り裂けるような痛みとともに強く脈打った。
本当の姿の私を、見つけ出す……。
本郷店長が、そう言ったの……!?
「騙されておきながら、バカみたいよね。私が浮気疑惑をかけられたときは、ここぞとばかりにあっさり離れていったくせに」
浮気疑惑、って……。
なんとなくその言い方に引っ掛かりを覚えて、少し失礼かなと思いながらも尋ねる。
「……その浮気疑惑は、紗枝子さんは無実だったのですか?」
「当たり前じゃない。酔って倒れた私を、同期の人が介抱してくれただけよ。相手が男だったから、変な疑惑かけられちゃったけどね」
「……そうだったんですか」
「でも、この前会ったときには、それが別れた原因だったわけじゃないって言われたわ。むしろ、別れ話をしたのが浮気疑惑が上がった時期に被っただけで、私は浮気をするような女じゃないことくらいわかってたって。実際に付き合ってみて、価値観やフィーリングが合わないから別れたんだって」
紗枝子さんは、寂しそうな瞳で昔を思い出すように話してくれる。
「今更そんなこと言うなんて、酷い男よね。当時は、浮気疑惑が上がった時期に別れようの一言のみだったくせに」
そんな彼女を見ていると、私の方が泣いてしまいそうだった。
「紗枝子さん……」
「あ、ごめんね、ちょっと愚痴りすぎたね。でも、もういいのよ、司のことは。あんな未練タラタラな奴よりももっといい男を見つけて、ギャフンと言わせてやるんだから!」
心配したけれど、紗枝子さんらしい強気な言葉を発して、いつもの調子に戻った彼女の姿に少しホッとした。
「それにしても司と会ってた女、メイクで化けてたらしいって話だけど、実際はどんな人だったんだろうね」
「……そう、ですね」
「高倉さんをメイクしても、司の女とよく似た感じになったし、意外と高倉さんみたいな人だったりして」
「あ、はは……」
冗談っぽく面白かしく笑う紗枝子さんだけど、本当すぎて笑えない。
でも、本郷店長が“本当の姿の彼女を見つけ出してやる”だなんて……。
そんな風に言ってること自体、驚きだった。
本郷店長のことを騙して、さんざん振り回した梨緒の姿の私のことなんて、忘れてくれたらいいのに……。
むしろ、嫌いになってくれたらいいのに……。
チクチク痛む胸を悟られないように、私は紗枝子さんに無理やり笑みを作って見せた。
「高倉さん! 今から休憩!? 例の司の今カノについてなんだけど」
前半の業務を終えて事務室へと入ると、すでにそこで休憩を取っていた紗枝子さんにそう言われて、内心ビクリとする。
「は、はいぃっ」
「あ、驚かすつもりはなかったのよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
本郷店長と同じく、紗枝子さんも私の正体に気づいてないとはいえ、今のはさすがに心臓に悪い。
なんだか紗枝子さんが知らないだけで、本物の梨緒とのいざこざを目の前で見てしまっているだけに、なんだか顔もあわせづらいよ……。
「私、この前、取っ捕まえたのよ。最近できたばかりのショッピングセンターで、本郷店長以外の男と歩く今カノを」
「そ、そうでしたか……」
「だけど、そいつ、しらばっくれたのよ。人違いだって一点張り。そしたらね、なんと、同じ顔の女が今度は現れたのよ、司と一緒に!」
最大のビッグニュースと言いたげにそう言う紗枝子さんに、精一杯驚いた表情をして見せた。
いくらその事の結末まで知っているとはいえ、紗枝子さんは、私は全く知らないと思って話しているのだから。
「でね、ここからは司に問い詰めて聞いた話。どうやら司と会ってた方は、完全なる偽者だったのよ。名前も見た目も偽って司に取り入ってたみたい」
「それは……」
「騙されてたのよ、司はその女に」
自分の仕出かしたこととはいえ、他の人に客観的にそう言われてしまうと、胸が痛むものがある。
確かに私は本郷店長を騙してしまったことになる。それは変えられない事実だ。
「だけど、司はもうダメよ」
紗枝子さんがため息混じりに言った言葉に、うつむきかけていた顔を上げる。
「え? もうダメって……」
「今度は本当の姿の彼女を見つけ出してやるんだって、そう言ってたわ」
ドクンと胸が張り裂けるような痛みとともに強く脈打った。
本当の姿の私を、見つけ出す……。
本郷店長が、そう言ったの……!?
「騙されておきながら、バカみたいよね。私が浮気疑惑をかけられたときは、ここぞとばかりにあっさり離れていったくせに」
浮気疑惑、って……。
なんとなくその言い方に引っ掛かりを覚えて、少し失礼かなと思いながらも尋ねる。
「……その浮気疑惑は、紗枝子さんは無実だったのですか?」
「当たり前じゃない。酔って倒れた私を、同期の人が介抱してくれただけよ。相手が男だったから、変な疑惑かけられちゃったけどね」
「……そうだったんですか」
「でも、この前会ったときには、それが別れた原因だったわけじゃないって言われたわ。むしろ、別れ話をしたのが浮気疑惑が上がった時期に被っただけで、私は浮気をするような女じゃないことくらいわかってたって。実際に付き合ってみて、価値観やフィーリングが合わないから別れたんだって」
紗枝子さんは、寂しそうな瞳で昔を思い出すように話してくれる。
「今更そんなこと言うなんて、酷い男よね。当時は、浮気疑惑が上がった時期に別れようの一言のみだったくせに」
そんな彼女を見ていると、私の方が泣いてしまいそうだった。
「紗枝子さん……」
「あ、ごめんね、ちょっと愚痴りすぎたね。でも、もういいのよ、司のことは。あんな未練タラタラな奴よりももっといい男を見つけて、ギャフンと言わせてやるんだから!」
心配したけれど、紗枝子さんらしい強気な言葉を発して、いつもの調子に戻った彼女の姿に少しホッとした。
「それにしても司と会ってた女、メイクで化けてたらしいって話だけど、実際はどんな人だったんだろうね」
「……そう、ですね」
「高倉さんをメイクしても、司の女とよく似た感じになったし、意外と高倉さんみたいな人だったりして」
「あ、はは……」
冗談っぽく面白かしく笑う紗枝子さんだけど、本当すぎて笑えない。
でも、本郷店長が“本当の姿の彼女を見つけ出してやる”だなんて……。
そんな風に言ってること自体、驚きだった。
本郷店長のことを騙して、さんざん振り回した梨緒の姿の私のことなんて、忘れてくれたらいいのに……。
むしろ、嫌いになってくれたらいいのに……。
チクチク痛む胸を悟られないように、私は紗枝子さんに無理やり笑みを作って見せた。
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