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11.もう俺の前から逃がさない。
(1)
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それから一週間が過ぎた頃のことだ。
その日の仕事を終えた私は、事務室でスマホを見たとき、思わず目を疑った。
差出人は本郷店長からだった。
送信先に表示されている私の携帯のメアドは、梨緒の姿で会っていたときに本郷店長に教えていたものだ。
『もう一度、俺と会ってくれないか?』
一番最初に目に飛び込んだ文章に、ドクンと心臓が脈打つのを感じた。
本郷店長は、今日はお休みだ。
代わりに、今日は次長の田中さんが一日通しで入っている。
何で、もう一度会おうだなんて……。
会って、どうするって言うのだろう?
私には、もう梨緒の姿で本郷店長と過ごすなんて考えられない。
本郷店長からのメールの受信時間は、ついさっき。
私の終業時間の十分後に届いたメールだった。
思いきってお断りのメールを返そうと、返信画面を開こうとしたとき、私の手の中でスマホが震えた。
『追伸 本当の姿のお前を見つけた。こう言えば、会ってくれるか?』
「……え」
ドクンと今度は全身が脈打った。
もしかして、私の正体がバレたってこと……?
何だか信じられないような気持ちで、誰も座っていない店長机の方を見やる。
でも、いつから……?
昨日の本郷店長も、そもそも梨緒としての私が本郷店長との関係に終止符を打ったあとも、本郷店長の高倉奈緒に対する態度は、それまでと何ら変わりなかった。
それに、私が“本郷店長に会ってた梨緒”だって気づいてるなら、わざわざこんな風にメールを送るんじゃなくて、普通に聞いてきそうなのに……。
もしかして、私がこう言えば会ってくれると思ってそう言ってるだけ……?
考えている間に、時間切れと言わんばかりにスマホの液晶は暗くなってしまう。
とりあえず一旦、返信を考えることを諦めて、私は荷物を纏めて事務室をあとにした。
*
家に着いた私を出迎えてくれたのは、リビングのソファーで寝そべってくつろいでいた梨緒だった。
梨緒は、今日は仕事がお休みだったようだ。
「会ってきたら?」
先程のメールの内容を話すなり、あっさりとそう言われた。
「……え、でも」
「だって、奈緒は会いたいって思ってるから悩むんでしょ? もう切ることにするなら、無視でいいじゃん」
どうなんだろう?
梨緒の言う通り、全く会いたくないなら、否応なしに断ればいいだけの話だ。
それかメール自体、無視してしまう。
それが一番手っ取り早いだろう。
だけど、やっぱり無視は心が痛いし、もし本当に私の正体に気づいてるのならば、断ったところで、結局は会いに来られてしまうのかもしれない。
それなら、会いたい会いたくないの問題じゃなく、会って確認した方がいいのかな、と思っているところはある。
きっとあのメールの書き方じゃ、メールでは私の正体を誰だと思ってるのかまでは、教えてくれないと思うから……。
「もう! そう思うなら、尚更会ってきたらいいじゃない! 奈緒はこのまま終わらせていいって思ってないってことでしょ?」
無意識のうちに、私の考えていたことが口に出ていたみたい。
それをちゃんと聞き逃さなかった梨緒が、捲し立てるようにそう言った。
「そうなんだけど……」
確かに、このまま終わりにしたくないって、本当の姿の私を見つけ出してそれでも好きだって言ってもらえたら嬉しいって、そんな自分勝手なことを考えている自分が全くいないって言ったら、嘘になる。
本当に自分にとって都合の良い考え方過ぎて、他人には笑われてしまいそうだ。
だけど、本郷店長が好きになったのは、所詮“梨緒の姿の私”なわけで、見た目が違えば、本郷店長の気持ちも違うのかもしれない。
現に、梨緒の姿で会ってるときと仕事で顔を会わせているときでは、明らかに私に対する瞳や態度は異なっているのだから。
そのことを簡単に話すと、梨緒は少し首を傾げて考えて、パッとひらめいたようにこう言った。
その日の仕事を終えた私は、事務室でスマホを見たとき、思わず目を疑った。
差出人は本郷店長からだった。
送信先に表示されている私の携帯のメアドは、梨緒の姿で会っていたときに本郷店長に教えていたものだ。
『もう一度、俺と会ってくれないか?』
一番最初に目に飛び込んだ文章に、ドクンと心臓が脈打つのを感じた。
本郷店長は、今日はお休みだ。
代わりに、今日は次長の田中さんが一日通しで入っている。
何で、もう一度会おうだなんて……。
会って、どうするって言うのだろう?
私には、もう梨緒の姿で本郷店長と過ごすなんて考えられない。
本郷店長からのメールの受信時間は、ついさっき。
私の終業時間の十分後に届いたメールだった。
思いきってお断りのメールを返そうと、返信画面を開こうとしたとき、私の手の中でスマホが震えた。
『追伸 本当の姿のお前を見つけた。こう言えば、会ってくれるか?』
「……え」
ドクンと今度は全身が脈打った。
もしかして、私の正体がバレたってこと……?
何だか信じられないような気持ちで、誰も座っていない店長机の方を見やる。
でも、いつから……?
昨日の本郷店長も、そもそも梨緒としての私が本郷店長との関係に終止符を打ったあとも、本郷店長の高倉奈緒に対する態度は、それまでと何ら変わりなかった。
それに、私が“本郷店長に会ってた梨緒”だって気づいてるなら、わざわざこんな風にメールを送るんじゃなくて、普通に聞いてきそうなのに……。
もしかして、私がこう言えば会ってくれると思ってそう言ってるだけ……?
考えている間に、時間切れと言わんばかりにスマホの液晶は暗くなってしまう。
とりあえず一旦、返信を考えることを諦めて、私は荷物を纏めて事務室をあとにした。
*
家に着いた私を出迎えてくれたのは、リビングのソファーで寝そべってくつろいでいた梨緒だった。
梨緒は、今日は仕事がお休みだったようだ。
「会ってきたら?」
先程のメールの内容を話すなり、あっさりとそう言われた。
「……え、でも」
「だって、奈緒は会いたいって思ってるから悩むんでしょ? もう切ることにするなら、無視でいいじゃん」
どうなんだろう?
梨緒の言う通り、全く会いたくないなら、否応なしに断ればいいだけの話だ。
それかメール自体、無視してしまう。
それが一番手っ取り早いだろう。
だけど、やっぱり無視は心が痛いし、もし本当に私の正体に気づいてるのならば、断ったところで、結局は会いに来られてしまうのかもしれない。
それなら、会いたい会いたくないの問題じゃなく、会って確認した方がいいのかな、と思っているところはある。
きっとあのメールの書き方じゃ、メールでは私の正体を誰だと思ってるのかまでは、教えてくれないと思うから……。
「もう! そう思うなら、尚更会ってきたらいいじゃない! 奈緒はこのまま終わらせていいって思ってないってことでしょ?」
無意識のうちに、私の考えていたことが口に出ていたみたい。
それをちゃんと聞き逃さなかった梨緒が、捲し立てるようにそう言った。
「そうなんだけど……」
確かに、このまま終わりにしたくないって、本当の姿の私を見つけ出してそれでも好きだって言ってもらえたら嬉しいって、そんな自分勝手なことを考えている自分が全くいないって言ったら、嘘になる。
本当に自分にとって都合の良い考え方過ぎて、他人には笑われてしまいそうだ。
だけど、本郷店長が好きになったのは、所詮“梨緒の姿の私”なわけで、見た目が違えば、本郷店長の気持ちも違うのかもしれない。
現に、梨緒の姿で会ってるときと仕事で顔を会わせているときでは、明らかに私に対する瞳や態度は異なっているのだから。
そのことを簡単に話すと、梨緒は少し首を傾げて考えて、パッとひらめいたようにこう言った。
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