73 / 75
12.その言葉にウソはないな?
(2)
しおりを挟む
この日の仕事を終えて、帰る準備をする。
閉店を待たずに18時で終わりの私が荷物をまとめて事務室を出ようとしたところで、本日はラストまで勤務の司さんがちょうど事務室へと入ってきた。
「もう上がりか。今日もお疲れさん」
「お疲れさま、です……?」
いつもなら、司さんは何事もなく私の横を通り抜ける。
店舗では、上司と部下だから。
だけど、この日はどういうわけか、司さんは私のすぐ傍で立ち止まった。
「来週頭のお前の休みの日の夜、空いてるか?」
「あ、空いてますけど……」
「そうか。なら、空けておけ。また詳しい時間は連絡する」
それだけ言って、司さんは私の頭をくしゃりと撫でると店長机の方へと歩いていく。
「……は、はいっ! お先に失礼します」
それがデートの約束を取り付けられたことに気づいた途端に、仕事の疲れなんて一気に吹き飛ぶようだった。
*
そうしてやって来た、デートの日。
司さんが言うには、私が登録販売者の試験に通ったお祝いにディナーに連れていってくれるらしい。
「わぁぁ……っ!」
連れてこられたのは、シティーホテルの最上階に位置するイタリアンのお店だった。
壁一面が窓ガラスの開放感溢れる店内。
その向こう側には、宝石のように煌めく街並みを一望できる。
私たちは、窓際のテーブル席へと案内された。
「すごいですね……!」
何だか独特の雰囲気もあるからかな、いつも以上にドキドキする。
それに、試験に通ったお祝いとは言われたけれど、まさかこんな立派なお店に連れてきてもらえるなんて、思ってなかったし……!
「気に入ってもらえたか?」
「も、もちろんです……っ!」
お店の雰囲気に、思わず背筋を伸ばして座り直していると、イタリアンのコース料理が運ばれてきた。
「合格おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
その言葉とともに乾杯して、グラスに注がれたワインを一口、口に含む。
わぁ、さすが司さん。
夜景のネオンを背に、グラスからワインを流し込む司さんの姿は、まさに絵になりそうな光景だった。
ぎこちない動作でグラスをテーブルに置いて、目の前の色とりどりの前菜にフォークをつける。
「奈緒。まさかとは思うが、緊張してる?」
「え、なななな何でしょう!?」
ビクッと背筋を伸ばして、異様に言葉を詰まらた私に、司さんは眉を下げて笑う。
「何でしょうって、答えになってねぇし。何でお前が緊張してんだよ」
「い、いや……」
あわわ。
確かに緊張もしてるけど……。
さすがに司さんに見とれてましただなんて、恥ずかしくて言えないよ……。
「まぁいい。せっかくの料理なんだ、どんどん食えよ。緊張してちょっとしか食えなかった、なんてことのないようにな」
「は、はい……っ!」
前菜、メインのパスタやお肉、あっさりしたサラダを堪能する。
どのお料理も見た目はもちろん、味も絶品だった。
それらを存分に楽しんだあとには、デザートのケーキが運ばれてくる。
ハートの形の可愛らしいケーキだ。
ケーキの上には苺やフランボワーズがふんだんに乗っていて、全体はベリー系の優しいピンクのクリームでデコレーションされている。
真ん中には、白いクマのマジパンが、ホワイトチョコレートのプレートを持っていた。
閉店を待たずに18時で終わりの私が荷物をまとめて事務室を出ようとしたところで、本日はラストまで勤務の司さんがちょうど事務室へと入ってきた。
「もう上がりか。今日もお疲れさん」
「お疲れさま、です……?」
いつもなら、司さんは何事もなく私の横を通り抜ける。
店舗では、上司と部下だから。
だけど、この日はどういうわけか、司さんは私のすぐ傍で立ち止まった。
「来週頭のお前の休みの日の夜、空いてるか?」
「あ、空いてますけど……」
「そうか。なら、空けておけ。また詳しい時間は連絡する」
それだけ言って、司さんは私の頭をくしゃりと撫でると店長机の方へと歩いていく。
「……は、はいっ! お先に失礼します」
それがデートの約束を取り付けられたことに気づいた途端に、仕事の疲れなんて一気に吹き飛ぶようだった。
*
そうしてやって来た、デートの日。
司さんが言うには、私が登録販売者の試験に通ったお祝いにディナーに連れていってくれるらしい。
「わぁぁ……っ!」
連れてこられたのは、シティーホテルの最上階に位置するイタリアンのお店だった。
壁一面が窓ガラスの開放感溢れる店内。
その向こう側には、宝石のように煌めく街並みを一望できる。
私たちは、窓際のテーブル席へと案内された。
「すごいですね……!」
何だか独特の雰囲気もあるからかな、いつも以上にドキドキする。
それに、試験に通ったお祝いとは言われたけれど、まさかこんな立派なお店に連れてきてもらえるなんて、思ってなかったし……!
「気に入ってもらえたか?」
「も、もちろんです……っ!」
お店の雰囲気に、思わず背筋を伸ばして座り直していると、イタリアンのコース料理が運ばれてきた。
「合格おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
その言葉とともに乾杯して、グラスに注がれたワインを一口、口に含む。
わぁ、さすが司さん。
夜景のネオンを背に、グラスからワインを流し込む司さんの姿は、まさに絵になりそうな光景だった。
ぎこちない動作でグラスをテーブルに置いて、目の前の色とりどりの前菜にフォークをつける。
「奈緒。まさかとは思うが、緊張してる?」
「え、なななな何でしょう!?」
ビクッと背筋を伸ばして、異様に言葉を詰まらた私に、司さんは眉を下げて笑う。
「何でしょうって、答えになってねぇし。何でお前が緊張してんだよ」
「い、いや……」
あわわ。
確かに緊張もしてるけど……。
さすがに司さんに見とれてましただなんて、恥ずかしくて言えないよ……。
「まぁいい。せっかくの料理なんだ、どんどん食えよ。緊張してちょっとしか食えなかった、なんてことのないようにな」
「は、はい……っ!」
前菜、メインのパスタやお肉、あっさりしたサラダを堪能する。
どのお料理も見た目はもちろん、味も絶品だった。
それらを存分に楽しんだあとには、デザートのケーキが運ばれてくる。
ハートの形の可愛らしいケーキだ。
ケーキの上には苺やフランボワーズがふんだんに乗っていて、全体はベリー系の優しいピンクのクリームでデコレーションされている。
真ん中には、白いクマのマジパンが、ホワイトチョコレートのプレートを持っていた。
1
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる