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3.恋する特製カレーオムライス
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静さんの告白を断っているところを見られた上で「叱ってください」との発言から、清美さん絡みの話が聞けるかもしれない。そんな邪な気持ちで史也さんの話を聞くことにしたけれど、その予想は間違っていなかった。
「……どうしていいか、わからないんです」
今、目の前には、山の影の形に広がる暗闇が広がっている。
一方で、頭上には都会では見られない小さく光る無数の星が私たちを見下ろしている。
その両方を見つめて、史也さんは口を開いた。
「僕には過去、ものすごく大好きな女性がいました」
大好きな女性。それってもしかして、と続きの言葉を急ぐ気持ちが募る。
「清美という名前の笑顔の可愛い女の子で、高校のときに付き合っていました。仲は良く、順調にお付き合いできていると思っていました。でも、ある日を境になんだか僕に対する態度が何となくよそよそしくなったんです……」
やっぱり思った通り、清美さんのことだ!
「そのときは僕たちは受験生だったし、受験のことでストレスが溜まっているのかなという程度にしか感じていませんでした。だけど、彼女との間にできてしまったように感じていた隙間は埋められなくて、不安に思っている間にぱたりと彼女からの連絡が途絶えて音信不通になってしまったんです。大学進学と同時に僕が県外に出てしまったことも原因かもしれません。それでも高校を卒業してからは電話やメールで連絡はマメに取り合っていたんですけどね」
ただでさえうつむき気味だった史也さんの顔が、さらにかげる。
「それから少しして、高校の同窓会があったんです。清美は居ませんでした。その日同級生から聞かされたのは、清美がもう亡くなっている、ということでした。ちょうど僕と連絡が取れなくなった頃に亡くなっていたんです」
清美さんが亡くなっていることはわかっていたが、思わず息を呑んだ。
苦しそうに生きてきた史也さんの姿を前にして、何も言葉にできない。
唇を噛み締めて小さく息を吐き出した史也さんは、やり場のない想いを吐露するように続けた。
「頭の中が真っ白になるって、こういうことなんだって初めて知りました。信じられなくて、同窓会どころじゃなくなりました。事情を知っている人に片っ端から話を聞いて、何でこんなことになったんだって何度も考えたけれど、本当にわけがわからなくて」
史也さんはふっと、泣きそうな顔をしてこちらを見た。
「だって、そうでしょう? 連絡が取れなくなったと思ったら、突然人づてに病気で死んだって知らされて。ずっと一緒だって、将来を、永遠を誓い合った仲なのに、どうして……」
史也さんは両手を膝の上で握ってその上に頭を垂れた。
清美さんは自然消滅を考えていたと言っていた。
だけど自然消滅させるには、史也さんの清美さんに対する想いはとても強いもので、簡単に壊れるようなものではなかったのだ。
「何で清美は僕には何も言ってくれなかったんだろう。僕が頼りなかったからなのかな。確かに病気は僕にどうこうできる問題じゃないけど、それでも、最後まで一緒に過ごしたかった。何もできなくてもそばにいたかった。一人で死なせたくなんかなかったのに」
今までは清美さんの立場から話を聞いていたけれど、史也さんも苦しみ続けていたのだ。
でも、そうだよね。
大好きだった彼女がある日突然亡くなってたと人づてで聞いたんだ。受け入れるだけでも時間がかかるだろう。
「本当なら線香くらい上げさせてもらいたかったけど、清美の実家に行ってみたけど引っ越してて、連絡がつかなかったんだ」
史也さんは、気持ちを落ち着けるように一度大きく息を吐いた。
「さっき僕と話してた女性だけど、正直、僕は彼女、静に惹かれてるんだと思う。好き、なんだと思う。だけど、清美のことが忘れられなくて……。静は僕の過去も知った上で好きだと言ってくれてるんだけど、こんな気持ちのまま付き合うって、やっぱり相手に失礼かなって思うんだ」
史也さんは、まだ気持ちの整理がついてないんだ。
清美さんへの気持ちが大きすぎるのはもちろん、史也さんの納得いく形で清美さんとお別れできなかったことも、いつまでも気持ちを切り替えられない原因になっているのかもしれない。
静さんの告白を断っているところを見られた上で「叱ってください」との発言から、清美さん絡みの話が聞けるかもしれない。そんな邪な気持ちで史也さんの話を聞くことにしたけれど、その予想は間違っていなかった。
「……どうしていいか、わからないんです」
今、目の前には、山の影の形に広がる暗闇が広がっている。
一方で、頭上には都会では見られない小さく光る無数の星が私たちを見下ろしている。
その両方を見つめて、史也さんは口を開いた。
「僕には過去、ものすごく大好きな女性がいました」
大好きな女性。それってもしかして、と続きの言葉を急ぐ気持ちが募る。
「清美という名前の笑顔の可愛い女の子で、高校のときに付き合っていました。仲は良く、順調にお付き合いできていると思っていました。でも、ある日を境になんだか僕に対する態度が何となくよそよそしくなったんです……」
やっぱり思った通り、清美さんのことだ!
「そのときは僕たちは受験生だったし、受験のことでストレスが溜まっているのかなという程度にしか感じていませんでした。だけど、彼女との間にできてしまったように感じていた隙間は埋められなくて、不安に思っている間にぱたりと彼女からの連絡が途絶えて音信不通になってしまったんです。大学進学と同時に僕が県外に出てしまったことも原因かもしれません。それでも高校を卒業してからは電話やメールで連絡はマメに取り合っていたんですけどね」
ただでさえうつむき気味だった史也さんの顔が、さらにかげる。
「それから少しして、高校の同窓会があったんです。清美は居ませんでした。その日同級生から聞かされたのは、清美がもう亡くなっている、ということでした。ちょうど僕と連絡が取れなくなった頃に亡くなっていたんです」
清美さんが亡くなっていることはわかっていたが、思わず息を呑んだ。
苦しそうに生きてきた史也さんの姿を前にして、何も言葉にできない。
唇を噛み締めて小さく息を吐き出した史也さんは、やり場のない想いを吐露するように続けた。
「頭の中が真っ白になるって、こういうことなんだって初めて知りました。信じられなくて、同窓会どころじゃなくなりました。事情を知っている人に片っ端から話を聞いて、何でこんなことになったんだって何度も考えたけれど、本当にわけがわからなくて」
史也さんはふっと、泣きそうな顔をしてこちらを見た。
「だって、そうでしょう? 連絡が取れなくなったと思ったら、突然人づてに病気で死んだって知らされて。ずっと一緒だって、将来を、永遠を誓い合った仲なのに、どうして……」
史也さんは両手を膝の上で握ってその上に頭を垂れた。
清美さんは自然消滅を考えていたと言っていた。
だけど自然消滅させるには、史也さんの清美さんに対する想いはとても強いもので、簡単に壊れるようなものではなかったのだ。
「何で清美は僕には何も言ってくれなかったんだろう。僕が頼りなかったからなのかな。確かに病気は僕にどうこうできる問題じゃないけど、それでも、最後まで一緒に過ごしたかった。何もできなくてもそばにいたかった。一人で死なせたくなんかなかったのに」
今までは清美さんの立場から話を聞いていたけれど、史也さんも苦しみ続けていたのだ。
でも、そうだよね。
大好きだった彼女がある日突然亡くなってたと人づてで聞いたんだ。受け入れるだけでも時間がかかるだろう。
「本当なら線香くらい上げさせてもらいたかったけど、清美の実家に行ってみたけど引っ越してて、連絡がつかなかったんだ」
史也さんは、気持ちを落ち着けるように一度大きく息を吐いた。
「さっき僕と話してた女性だけど、正直、僕は彼女、静に惹かれてるんだと思う。好き、なんだと思う。だけど、清美のことが忘れられなくて……。静は僕の過去も知った上で好きだと言ってくれてるんだけど、こんな気持ちのまま付き合うって、やっぱり相手に失礼かなって思うんだ」
史也さんは、まだ気持ちの整理がついてないんだ。
清美さんへの気持ちが大きすぎるのはもちろん、史也さんの納得いく形で清美さんとお別れできなかったことも、いつまでも気持ちを切り替えられない原因になっているのかもしれない。
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