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6.うたかたの希望《梶原花穂》
6ー3
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元々私は物を溜め込まないタイプだったのか、私の部屋はあまり物であふれていない。
部屋にあるものは、ベッドと学校の教科書が置いてある勉強机と、自分が読んでいたのであろう本が立った本棚だけだ。
昔のことを思い出すのにアルバムでもあればと本棚を物色したこともあったけど、どういうわけか私は昔の写真はほとんど持っていないようだった。
持っていると言えば、高校のクラス写真だとお母さんに教えてもらった集合写真くらいだ。
私は机の上に置いてあった今年のクラス写真を手に取って、リョウちゃんに差し出した。
「もうあと一週間もしないうちに学校が始まるからさ。それまでにクラスメイトの顔と名前を一致させたいから、リョウちゃんの知ってる人がいれば名前と、もし私が仲良くしてた友達がわかれば教えてほしいの」
「……え?」
リョウちゃんは私の写真を受け取ると、困ったようにまゆを寄せて写真に視線を落とす。
私とリョウちゃんはクラスが違ったらしいから、もしかしたらリョウちゃんもわからないのかもしれない。
「もしかして、リョウちゃんも知らない子ばかりかな」
「いや……、そんなはずはないと思うんだけど……」
だけど、う~んと唸るわりには誰一人として名前を出さないリョウちゃん。
これ、やっぱり本当にわからないんだよね?
「ごめんね、無理言っちゃって。新学期始まるまでに記憶が戻らなかったら、クラスメイトには正直に本当のこと話すからいいよ」
「……え。ごめんな、役に立てなくて。ちょっとまた調べてみるから」
写真のクラスメイトの名前を調べる方法なんて、あるのだろうか。
「見せたいものって、これだけかな?」
「……うん」
とうとう、リョウちゃんが帰ってしまう。
「明日はまた高校に行くので良かったよね」
「うん」
やだ、帰らないで。
「あ、それなら明日、職員室に寄ってこの写真の花穂のクラスメイトの名前を聞くってのもありか」
私を、一人にしないで……。
「……花穂?」
気づけば私はリョウちゃんに近づいて、ぎゅうっとリョウちゃんに抱きついていた。
「あ、ごめんなさ……っ」
慌ててリョウちゃんから離れようとしたところで、リョウちゃんに後頭部に手を添えられて、私はリョウちゃんに抱きしめられていた。
「ごめん。ごめんな、花穂……っ」
「え? ううん、私こそごめんね」
リョウちゃんの腕は、微かに震えていた。
それに気づいていたけれど、その理由は聞いてはいけないような気がして聞けなかった。
「……じゃあまた、明日な」
「うん……」
リョウちゃんが何か言いたそうにしているように感じたけれど、結局何も言わずに部屋を出ていった。
抱きしめ返してくれたってことは、私のことが嫌になったっていうわけではないのかな?
私は机の上に置いた、リョウちゃんにさっきまで見せていたクラスメイトの写真を再び手に取る。
何となく懐かしいような気はするのに、誰一人として面白いくらいに名前が出てこない。
もう私は、夏祭りで巻き込まれたという事故以前の記憶を取り戻すことはできないのだろうか。
医者には、私が何かを思い出そうとすると頭痛がすることや、それと関係があるのかわからないけど時々意識が飛んでしまうこととその直前の記憶がなくなってしまうことがあることを話している。
身体には何の異常もないことから、心因性のものが原因だろうとのことだ。
そして、消えてしまった記憶については、無理に思い出さないくていいと言われている。
リョウちゃんに言うと、記憶探しの旅を中止されてしまいそうで言っていない。
だって、私は思い出したいんだ。
早くリョウちゃんとの思い出を取り戻して、本当の意味での恋人に戻りたいのだから。
「痛……っ」
それなのに、モヤの濃い何かを思い出そうとすると、やっぱりズキンと頭が痛む。
私はとりあえずクラスメイトの写真については、これ以上考えるのはやめて、リョウちゃんに言われた通り明日学校で聞くことにした。
部屋にあるものは、ベッドと学校の教科書が置いてある勉強机と、自分が読んでいたのであろう本が立った本棚だけだ。
昔のことを思い出すのにアルバムでもあればと本棚を物色したこともあったけど、どういうわけか私は昔の写真はほとんど持っていないようだった。
持っていると言えば、高校のクラス写真だとお母さんに教えてもらった集合写真くらいだ。
私は机の上に置いてあった今年のクラス写真を手に取って、リョウちゃんに差し出した。
「もうあと一週間もしないうちに学校が始まるからさ。それまでにクラスメイトの顔と名前を一致させたいから、リョウちゃんの知ってる人がいれば名前と、もし私が仲良くしてた友達がわかれば教えてほしいの」
「……え?」
リョウちゃんは私の写真を受け取ると、困ったようにまゆを寄せて写真に視線を落とす。
私とリョウちゃんはクラスが違ったらしいから、もしかしたらリョウちゃんもわからないのかもしれない。
「もしかして、リョウちゃんも知らない子ばかりかな」
「いや……、そんなはずはないと思うんだけど……」
だけど、う~んと唸るわりには誰一人として名前を出さないリョウちゃん。
これ、やっぱり本当にわからないんだよね?
「ごめんね、無理言っちゃって。新学期始まるまでに記憶が戻らなかったら、クラスメイトには正直に本当のこと話すからいいよ」
「……え。ごめんな、役に立てなくて。ちょっとまた調べてみるから」
写真のクラスメイトの名前を調べる方法なんて、あるのだろうか。
「見せたいものって、これだけかな?」
「……うん」
とうとう、リョウちゃんが帰ってしまう。
「明日はまた高校に行くので良かったよね」
「うん」
やだ、帰らないで。
「あ、それなら明日、職員室に寄ってこの写真の花穂のクラスメイトの名前を聞くってのもありか」
私を、一人にしないで……。
「……花穂?」
気づけば私はリョウちゃんに近づいて、ぎゅうっとリョウちゃんに抱きついていた。
「あ、ごめんなさ……っ」
慌ててリョウちゃんから離れようとしたところで、リョウちゃんに後頭部に手を添えられて、私はリョウちゃんに抱きしめられていた。
「ごめん。ごめんな、花穂……っ」
「え? ううん、私こそごめんね」
リョウちゃんの腕は、微かに震えていた。
それに気づいていたけれど、その理由は聞いてはいけないような気がして聞けなかった。
「……じゃあまた、明日な」
「うん……」
リョウちゃんが何か言いたそうにしているように感じたけれど、結局何も言わずに部屋を出ていった。
抱きしめ返してくれたってことは、私のことが嫌になったっていうわけではないのかな?
私は机の上に置いた、リョウちゃんにさっきまで見せていたクラスメイトの写真を再び手に取る。
何となく懐かしいような気はするのに、誰一人として面白いくらいに名前が出てこない。
もう私は、夏祭りで巻き込まれたという事故以前の記憶を取り戻すことはできないのだろうか。
医者には、私が何かを思い出そうとすると頭痛がすることや、それと関係があるのかわからないけど時々意識が飛んでしまうこととその直前の記憶がなくなってしまうことがあることを話している。
身体には何の異常もないことから、心因性のものが原因だろうとのことだ。
そして、消えてしまった記憶については、無理に思い出さないくていいと言われている。
リョウちゃんに言うと、記憶探しの旅を中止されてしまいそうで言っていない。
だって、私は思い出したいんだ。
早くリョウちゃんとの思い出を取り戻して、本当の意味での恋人に戻りたいのだから。
「痛……っ」
それなのに、モヤの濃い何かを思い出そうとすると、やっぱりズキンと頭が痛む。
私はとりあえずクラスメイトの写真については、これ以上考えるのはやめて、リョウちゃんに言われた通り明日学校で聞くことにした。
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