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第2章
柔らかい頬(1)
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NEVERのライブツアーもとうとう終盤。
最終日の東京でのライブを残すのみとなった。
「みんな知っとると思うけど、今日のライブは前半、夜の歌番組の企画で生中継されるねん! ライブ会場だけでなく、全国に俺らの音楽聞かせてやろうや!」
カイトの掛け声にNEVERのメンバーは手を取り合い、団結を固めた。
会場の準備も整い、開演まで後数時間──。
NEVERのメンバーは各々派手な衣装を身に付け、髪をセットしたりメイクをしたりし始めた。
(生中継は桃華ちゃんも見てくれるのかな……?)
拓人はふとそんなことを考えた。
(いずれにせよ、見てくれるみんなに元気やパワーを与えられるライブにしないとな)
開演時刻の18:00になると、派手な演出とともにツアー最終日のライブは開幕した。
「みんなありがとうー!! 今日はみんな楽しんでくれよ!!」
TAKUがステージの上で叫ぶと観客席のたくさんのファンから盛大な歓声が送られた。
拓人はライブステージで歌うのが大好きだった。
歌番組に出演するのも嫌いな訳じゃない。
でも、ライブ会場で大量の歓声の中で自分達の手でライブを作り上げていく瞬間が大好きだった。
TAKUの人々を惹き付ける歌声、HARUとHIROの奏でるギターのハーモニー、KAITOの激しくリズムを刻むドラム、SHINJIの力強いベース音。
そして、会場のファンの歓声。
それ以上のたくさんのものがひとつとなってライブは成功へと導かれた。
*
ライブも終わり、夜の静けさを取り戻した。
「お疲れ~」
ライブ関係者が各々声をかける。
「おぅ、拓人お疲れ~!」
ヒロが汗だくで拓人の前に現れた。
「ヒロ、お疲れ!」
「今年は去年以上だったな! NEVERの人気もうなぎ登りってか!?」
ヒロはまだライブの興奮が冷めきらず、上機嫌だ。
「だな! 歌ってて気持ち良かったよ!」
「拓人~、ヒロ~片付いたんなら打ち上げ行くぞ~」
「はよせんと置いてくで~」
向こうの方でメンバーのみんなが呼んでいる。
「おっしゃ飲むぞ~」
ヒロが叫びながら走っていくのを拓人は後ろから追った。
ライブでの興奮も少しずつ落ち着き、少しずつ秋の夜の涼しさを肌で感じ取れるようになっていた。
派手に打ち上げをして、拓人が家に着いたのは明け方近かった。
拓人は鞄から桃華へのお土産を取り出し、忘れないようにテーブルの上に置いた。
このまま朝まで起きて午前中の面会時間に桃華に会いに行くには身体がしんどかったので、今日は休みだしとりあえず一旦寝ることにした。
拓人は夢を見ることもなく、爆睡した。
──拓人が目を覚ますと、すでに太陽は陰り始めていた。
「ヤバッ……面会の時間終わっちゃう……」
拓人は急いでシャワーを浴びて家を出た。
──コンコン。
その日、桃華の病室の扉をノックしても、いつもの高い声は聞こえなかった。
(──あれ……? 居ないのかな?)
──コンコン。
「桃華ちゃん……?」
やはり返事がない。
拓人は気になって恐る恐る扉を開けてみた。
部屋は静まり返っていた。
拓人が病室へ一歩踏み込み、ベッドを見ると
(あ……)
そこには布団に包まり、静かに寝息を立てている桃華の姿があった。
(寝てたんだ……)
拓人はなんだか悪いことをしたような気持ちになった。
物音を立てないように桃華の傍に近づくと、拓人は布団から覗かせる桃華の寝顔に思わず見とれていた。
柔らかそうな桃華の頬は、ほんのりとピンク色に染まっている。
無意識に拓人の手は桃華の頬に触れていた。
桃華は気持ち良さそうに顔を歪ませて
「……んっ……」
と反応した。
それに驚いた拓人はビクっとして、桃華に触れていた手を瞬時に引っ込めた。
拓人はそっと桃華の枕元にお土産の入った紙袋を置き、一言メモを添えておいた。
拓人が病室を出ようとした時だった。
「……た、くと……さん……?」
と微かに桃華の声が聞こえたのでとっさに振り返って見たが、相変わらず桃華は可愛いらしい寝顔でスヤスヤ眠っていた。
(夢でも見ているのかな?)
そう思い、拓人は病室を出た。
病室を出た時に偶然出くわした看護師に聞いた話によると、桃華は今朝いろいろ検査を受けて疲れたのだろう、ということだった。
帰り際、桃華の頬に触れた自分の右手がいつまでも熱を帯びているように感じた。
最終日の東京でのライブを残すのみとなった。
「みんな知っとると思うけど、今日のライブは前半、夜の歌番組の企画で生中継されるねん! ライブ会場だけでなく、全国に俺らの音楽聞かせてやろうや!」
カイトの掛け声にNEVERのメンバーは手を取り合い、団結を固めた。
会場の準備も整い、開演まで後数時間──。
NEVERのメンバーは各々派手な衣装を身に付け、髪をセットしたりメイクをしたりし始めた。
(生中継は桃華ちゃんも見てくれるのかな……?)
拓人はふとそんなことを考えた。
(いずれにせよ、見てくれるみんなに元気やパワーを与えられるライブにしないとな)
開演時刻の18:00になると、派手な演出とともにツアー最終日のライブは開幕した。
「みんなありがとうー!! 今日はみんな楽しんでくれよ!!」
TAKUがステージの上で叫ぶと観客席のたくさんのファンから盛大な歓声が送られた。
拓人はライブステージで歌うのが大好きだった。
歌番組に出演するのも嫌いな訳じゃない。
でも、ライブ会場で大量の歓声の中で自分達の手でライブを作り上げていく瞬間が大好きだった。
TAKUの人々を惹き付ける歌声、HARUとHIROの奏でるギターのハーモニー、KAITOの激しくリズムを刻むドラム、SHINJIの力強いベース音。
そして、会場のファンの歓声。
それ以上のたくさんのものがひとつとなってライブは成功へと導かれた。
*
ライブも終わり、夜の静けさを取り戻した。
「お疲れ~」
ライブ関係者が各々声をかける。
「おぅ、拓人お疲れ~!」
ヒロが汗だくで拓人の前に現れた。
「ヒロ、お疲れ!」
「今年は去年以上だったな! NEVERの人気もうなぎ登りってか!?」
ヒロはまだライブの興奮が冷めきらず、上機嫌だ。
「だな! 歌ってて気持ち良かったよ!」
「拓人~、ヒロ~片付いたんなら打ち上げ行くぞ~」
「はよせんと置いてくで~」
向こうの方でメンバーのみんなが呼んでいる。
「おっしゃ飲むぞ~」
ヒロが叫びながら走っていくのを拓人は後ろから追った。
ライブでの興奮も少しずつ落ち着き、少しずつ秋の夜の涼しさを肌で感じ取れるようになっていた。
派手に打ち上げをして、拓人が家に着いたのは明け方近かった。
拓人は鞄から桃華へのお土産を取り出し、忘れないようにテーブルの上に置いた。
このまま朝まで起きて午前中の面会時間に桃華に会いに行くには身体がしんどかったので、今日は休みだしとりあえず一旦寝ることにした。
拓人は夢を見ることもなく、爆睡した。
──拓人が目を覚ますと、すでに太陽は陰り始めていた。
「ヤバッ……面会の時間終わっちゃう……」
拓人は急いでシャワーを浴びて家を出た。
──コンコン。
その日、桃華の病室の扉をノックしても、いつもの高い声は聞こえなかった。
(──あれ……? 居ないのかな?)
──コンコン。
「桃華ちゃん……?」
やはり返事がない。
拓人は気になって恐る恐る扉を開けてみた。
部屋は静まり返っていた。
拓人が病室へ一歩踏み込み、ベッドを見ると
(あ……)
そこには布団に包まり、静かに寝息を立てている桃華の姿があった。
(寝てたんだ……)
拓人はなんだか悪いことをしたような気持ちになった。
物音を立てないように桃華の傍に近づくと、拓人は布団から覗かせる桃華の寝顔に思わず見とれていた。
柔らかそうな桃華の頬は、ほんのりとピンク色に染まっている。
無意識に拓人の手は桃華の頬に触れていた。
桃華は気持ち良さそうに顔を歪ませて
「……んっ……」
と反応した。
それに驚いた拓人はビクっとして、桃華に触れていた手を瞬時に引っ込めた。
拓人はそっと桃華の枕元にお土産の入った紙袋を置き、一言メモを添えておいた。
拓人が病室を出ようとした時だった。
「……た、くと……さん……?」
と微かに桃華の声が聞こえたのでとっさに振り返って見たが、相変わらず桃華は可愛いらしい寝顔でスヤスヤ眠っていた。
(夢でも見ているのかな?)
そう思い、拓人は病室を出た。
病室を出た時に偶然出くわした看護師に聞いた話によると、桃華は今朝いろいろ検査を受けて疲れたのだろう、ということだった。
帰り際、桃華の頬に触れた自分の右手がいつまでも熱を帯びているように感じた。
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