【旧版】桃色恋華

美和優希

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第3章

クリスマス

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 外で鳴り響くクリスマスソング。


 窓から見えるイルミネーション。


 今年もクリスマスがやって来た。



 桃華にとって家でクリスマスの日を過ごすのは久しぶりだった。


 テレビではNEVERのクリスマスライブが生中継されている。


 テレビの向こうでTAKUがこっちに笑いかけている。


 桃華はこたつで身体を暖めながらテレビに見入っていた。


 テレビの中のTAKUがこっちを向く度に心臓がドキドキする。


 発作が起こってるんじゃないかって思うくらい。


 いや、それ以上かもしれない──。


 桃華は拓人の腕の中で泣いた日のことを思い出し、身体が熱くなるのを感じた。


 拓人の大きな身体、拓人の温もり、拓人の優しさ。そのどれもが桃華の頭から離れられなくなっていた。


 ──もっと拓人の傍に居たい。


 そんな気持ちさえ芽生えていた。


 しかし、そんなことまで言うと拓人を困らせてしまうことは分かっていたので、これは桃華だけの秘密。


 テレビの向こうではインタビューを受けているTAKUの姿があった。


 外は雪がちらついていた──。




 夜は久しぶりに家族3人でクリスマスを過ごした。


 夕食は桃華用の味付けなので、特別美味しい訳ではないが、やはり母親のつくるあたたかいごはんは美味しく感じた。


 夜はクリスマスだし、サンタさんを待っている訳ではないけど早く寝た。



 そして、桃華は夢を見た──。



 辺り一面真っ白な雪の中、桃華はただ行く当てもなく歩いていた。

 雪がはらはらと舞い、息は白い。


 夢の中の桃華が自分の手を温めようと息を吹き掛けた時だった。

 背後から鈴の音が聞こえて振り向くと、そこにはサンタの格好をした拓人の姿があった。


「拓人さん!? その格好、どうしたの!?」


 拓人は桃華の質問には答えず優しく微笑むと、桃華に赤い小さな箱を手渡した。


「これ……私に……?」


 拓人はまた優しく微笑んで頷いた。


「わぁ! ありがとう! すっごく嬉しいっ!! 開けてみてもいい?」


 そのまま桃華は拓人の大きな腕に抱きしめられる。


「えっ!? ……拓、人さん!?」


 拓人の腕に力がこもる。


「拓人さん、私ね……拓人さんのこと──」



 ──そこで桃華はハッとして目を覚ました。


 時計はまだ朝の6時をまわったところだった。


 下の階からは母親の足音が響いている。


「……夢、か……」


 桃華は薄暗い自分の部屋を見渡し、ため息混じりに呟いた。


(夢の中の私は、あの後、拓人さんに何を言おうとしていたの!?)


 桃華はそう考えると頬が熱くなるのを感じた。


 気づかないフリをしている自分の気持ちや願望を夢で見せられたような気がして、再び眠りにつくことができなかった桃華は母親の居る1階へと降りた。


「……おはよう」


「あら、おはよう。もう起きたの? 体調はどう?」


「平気……」


「ごはんできるまでもうちょっと待ってね!」


 母親はそう言うと何かを思い出したかのように

「そうそう……」

 と呟き、桃華が夢で見た赤い小さな箱を持って来る。


「そういえば、桃華宛でポストにこんなものが入っていたわ。杉本拓人ってこの前来てくれた男の子よね?」


「えっ!? あ、うん」


 桃華は驚きを隠せない表情で、母親が手渡す赤い箱を見つめる。


「うふふ。良かったじゃない!」


 母親は嬉しそうに桃華に笑いかけた。


「うん、ありがとう!」


 桃華が部屋に戻り、赤い箱を開けてみると、可愛らしいハートに形どられたネックレスが入っていた。


 その縁にはダイヤのようなものが埋め込まれている。


 そして、ネックレスを取り出した赤い箱の底からは、小さく折りたたまれた一通の手紙も出てきた。



『桃華ちゃんへ


 Merry Christmas!!

 体調はいかがですか?

 プレゼント渡すの忘れててごめん。

 本当は直接渡すべきなんだろうけど、なかなか時間取れなくてこんな形で渡すことをお許し下さい。

 桃華ちゃんに似合いそうなネックレスがあったので気に入ってもらえれば幸いです。

 また年明けに会いましょう。


 拓人』



 桃華はしばらく手紙とネックレスとを交互に見た。


 桃華が今までつけたことのないようなキラキラ輝くネックレス。


 桃華は早速鏡の前でネックレスをつけてみた。


「可愛い……!」


 胸元がキラキラ輝いて見える。


 そんな自分を見ていると、すごく明るい気持ちになれるような気がした。


 拓人が桃華のために選んでくれたネックレス。


 そう思うだけで、桃華の胸は高鳴った。


 いつプレゼントを届けてくれたのかは分からない。


 桃華はそんな拓人を本物のサンタさんみたいだなと感じ、鏡の中の自分と一緒に微笑んだ。


 早く拓人に会ってお礼を言いたい。


 桃華は年明けに拓人に会えるのを待ち遠しく感じた。
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