75 / 95
第5章
色とりどりの花(3)
しおりを挟む
「何をみんなそんなに騒いでるんだよ! ここは病院だよ」
遅れてハルキが車の鍵を指でくるくる回しながら入って来た。
「ハルキっ! おまえ登場遅ぇよ! もう一歩早けりゃ拓人と桃華ちゃんの熱~いチューが見れたのに~」
「何だ、そういうこと」
ヒロの説明に、ハルキまでニヤっと笑い拓人を見る。
「だからもとはといえば、おまえらがいきなり入ってくるからだろ!!」
拓人は真っ赤な顔で怒鳴り、上体を起こしベッドの上にあぐらをかいた。
桃華は拓人から解放され、恥ずかしそうにみんなに背を向けて座り直す。
「まあまあ。拓人もそう怒らないでよ」
そう言って拓人の傍まで歩み寄ってきたハルキは、拓人に色とりどりの花を差し出した。
「花束? 俺、そんな柄じゃねぇぞ?」
拓人がハルキの手元の花束を見て苦笑する。
「花くらいあったほうが色があっていいでしょ?」
確かにこの病室は白一色で、見ているこっちがおかしくなりそうだった。
ハルキは持って来た花瓶に花を生けて、窓辺に飾ってくれた。
「俺も見たかったな、拓人と桃華ちゃんのキスシーン」
なんてハルキがちょっと拓人に意地悪を言うと、
「うるせぇ! 見せもんじゃねぇよ!!」
と拓人は顔を真っ赤にして怒鳴り、それを見て、NEVERのみんなはお腹を抱えて笑った。
「この黄色い花はカイト、赤い花はヒロ、この黒い花はシンジ、この灰色を基調とした黄色のメッシュの入った花は俺、このオレンジの花は拓人だよ」
「なんだよハルキ、みんなの頭の色じゃあるまいし」
ひとりひとりの髪の色と花の色があまりに一致しているので、拓人は笑いながら花に触れる。
「灰色を基調にした黄色のメッシュのある花とか存在したんだ。どこで手に入れたんだよ!」
「秘密」
ハルキはまた意地悪な笑みを浮かべる。
「……この桃色の花は? この花だけ落ち着いてて可愛いな」
「やっと気づいたな! 俺らが桃華ちゃんをイメージして選んだ花や!」
カイトが得意げに言うと、桃華が声を上げる。
「え!? 私!?」
「せや! 俺らより、桃華ちゃんな拓人のために選んでやったんや! 喜べ、拓人!」
みんなの笑い声が病室に響く。
拓人は心からの「ありがとう」をみんなに伝えた。
「ほな、俺らはそろそろ帰るで?」
カイトがみんなに声をかけて、面会用の椅子から立ち上がる。
「なんだよ、もう帰っちまうのかよ!」
「当たり前や! はよ治してはよ退院せぇ! 復活したら仕事の穴埋めしっかりしてもらうで?」
「じゃあ、拓人! また来るね!」
桃華も拓人に声をかけると、みんなに続いて病室から出て行こうとした。
「待てよ!」
拓人は桃華の腕を引き、みんなが背を向いてるのを確認して唇を重ねた。
「遠いのに、わざわざありがとう」
桃華は笑顔で手を左右に振って病室を出て行った。
病室にはもとあった静寂な空気が戻った。
──その夜。
マネージャーの松本がお見舞いに来てくれた。
松本の話によると、以前桃華との写真をネットの掲示板でばらまいたのも、昨日の女の仕業だったそうだ。
拓人自身気づいていなかったが、最近その女にずっと後を付けられていたそうだ。
(本物のストーカーかよ……。それで桃華や桃華の家を知っていたのか……)
「今回の犯人は捕まりましたが、また同じことが起こらないとは言えません。TAKUさんは周囲に対する注意力に欠けています。もっと有名人であるという自覚を持って、今後外に出る時はくれぐれも気をつけて下さい」
松本は再度拓人にきつく注意を促すと、
「仕事は私がなんとか調整しますので、しっかり治療に専念して早く退院して下さい」
と言い残し病室を去った。
病室に1人になると、傷口の痛みが増すような気がする。
拓人は痛みに顔を歪めながら、その日は眠りについた。
窓辺では、色とりどりの花が拓人のその姿を応援するかのように、月明かりに照らされて輝いていた。
遅れてハルキが車の鍵を指でくるくる回しながら入って来た。
「ハルキっ! おまえ登場遅ぇよ! もう一歩早けりゃ拓人と桃華ちゃんの熱~いチューが見れたのに~」
「何だ、そういうこと」
ヒロの説明に、ハルキまでニヤっと笑い拓人を見る。
「だからもとはといえば、おまえらがいきなり入ってくるからだろ!!」
拓人は真っ赤な顔で怒鳴り、上体を起こしベッドの上にあぐらをかいた。
桃華は拓人から解放され、恥ずかしそうにみんなに背を向けて座り直す。
「まあまあ。拓人もそう怒らないでよ」
そう言って拓人の傍まで歩み寄ってきたハルキは、拓人に色とりどりの花を差し出した。
「花束? 俺、そんな柄じゃねぇぞ?」
拓人がハルキの手元の花束を見て苦笑する。
「花くらいあったほうが色があっていいでしょ?」
確かにこの病室は白一色で、見ているこっちがおかしくなりそうだった。
ハルキは持って来た花瓶に花を生けて、窓辺に飾ってくれた。
「俺も見たかったな、拓人と桃華ちゃんのキスシーン」
なんてハルキがちょっと拓人に意地悪を言うと、
「うるせぇ! 見せもんじゃねぇよ!!」
と拓人は顔を真っ赤にして怒鳴り、それを見て、NEVERのみんなはお腹を抱えて笑った。
「この黄色い花はカイト、赤い花はヒロ、この黒い花はシンジ、この灰色を基調とした黄色のメッシュの入った花は俺、このオレンジの花は拓人だよ」
「なんだよハルキ、みんなの頭の色じゃあるまいし」
ひとりひとりの髪の色と花の色があまりに一致しているので、拓人は笑いながら花に触れる。
「灰色を基調にした黄色のメッシュのある花とか存在したんだ。どこで手に入れたんだよ!」
「秘密」
ハルキはまた意地悪な笑みを浮かべる。
「……この桃色の花は? この花だけ落ち着いてて可愛いな」
「やっと気づいたな! 俺らが桃華ちゃんをイメージして選んだ花や!」
カイトが得意げに言うと、桃華が声を上げる。
「え!? 私!?」
「せや! 俺らより、桃華ちゃんな拓人のために選んでやったんや! 喜べ、拓人!」
みんなの笑い声が病室に響く。
拓人は心からの「ありがとう」をみんなに伝えた。
「ほな、俺らはそろそろ帰るで?」
カイトがみんなに声をかけて、面会用の椅子から立ち上がる。
「なんだよ、もう帰っちまうのかよ!」
「当たり前や! はよ治してはよ退院せぇ! 復活したら仕事の穴埋めしっかりしてもらうで?」
「じゃあ、拓人! また来るね!」
桃華も拓人に声をかけると、みんなに続いて病室から出て行こうとした。
「待てよ!」
拓人は桃華の腕を引き、みんなが背を向いてるのを確認して唇を重ねた。
「遠いのに、わざわざありがとう」
桃華は笑顔で手を左右に振って病室を出て行った。
病室にはもとあった静寂な空気が戻った。
──その夜。
マネージャーの松本がお見舞いに来てくれた。
松本の話によると、以前桃華との写真をネットの掲示板でばらまいたのも、昨日の女の仕業だったそうだ。
拓人自身気づいていなかったが、最近その女にずっと後を付けられていたそうだ。
(本物のストーカーかよ……。それで桃華や桃華の家を知っていたのか……)
「今回の犯人は捕まりましたが、また同じことが起こらないとは言えません。TAKUさんは周囲に対する注意力に欠けています。もっと有名人であるという自覚を持って、今後外に出る時はくれぐれも気をつけて下さい」
松本は再度拓人にきつく注意を促すと、
「仕事は私がなんとか調整しますので、しっかり治療に専念して早く退院して下さい」
と言い残し病室を去った。
病室に1人になると、傷口の痛みが増すような気がする。
拓人は痛みに顔を歪めながら、その日は眠りについた。
窓辺では、色とりどりの花が拓人のその姿を応援するかのように、月明かりに照らされて輝いていた。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
どうかこの偽りがいつまでも続きますように…
矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。
それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。
もう誰も私を信じてはくれない。
昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。
まるで人が変わったかのように…。
*設定はゆるいです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる