【旧版】桃色恋華

美和優希

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第5章

色とりどりの花(3)

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「何をみんなそんなに騒いでるんだよ! ここは病院だよ」


 遅れてハルキが車の鍵を指でくるくる回しながら入って来た。


「ハルキっ! おまえ登場遅ぇよ! もう一歩早けりゃ拓人と桃華ちゃんの熱~いチューが見れたのに~」


「何だ、そういうこと」

 ヒロの説明に、ハルキまでニヤっと笑い拓人を見る。


「だからもとはといえば、おまえらがいきなり入ってくるからだろ!!」

 拓人は真っ赤な顔で怒鳴り、上体を起こしベッドの上にあぐらをかいた。


 桃華は拓人から解放され、恥ずかしそうにみんなに背を向けて座り直す。


「まあまあ。拓人もそう怒らないでよ」


 そう言って拓人の傍まで歩み寄ってきたハルキは、拓人に色とりどりの花を差し出した。


「花束? 俺、そんな柄じゃねぇぞ?」

 拓人がハルキの手元の花束を見て苦笑する。


「花くらいあったほうが色があっていいでしょ?」


 確かにこの病室は白一色で、見ているこっちがおかしくなりそうだった。


 ハルキは持って来た花瓶に花を生けて、窓辺に飾ってくれた。


「俺も見たかったな、拓人と桃華ちゃんのキスシーン」


 なんてハルキがちょっと拓人に意地悪を言うと、


「うるせぇ! 見せもんじゃねぇよ!!」


 と拓人は顔を真っ赤にして怒鳴り、それを見て、NEVERのみんなはお腹を抱えて笑った。


「この黄色い花はカイト、赤い花はヒロ、この黒い花はシンジ、この灰色を基調とした黄色のメッシュの入った花は俺、このオレンジの花は拓人だよ」


「なんだよハルキ、みんなの頭の色じゃあるまいし」


 ひとりひとりの髪の色と花の色があまりに一致しているので、拓人は笑いながら花に触れる。


「灰色を基調にした黄色のメッシュのある花とか存在したんだ。どこで手に入れたんだよ!」


「秘密」

 ハルキはまた意地悪な笑みを浮かべる。


「……この桃色の花は? この花だけ落ち着いてて可愛いな」


「やっと気づいたな! 俺らが桃華ちゃんをイメージして選んだ花や!」

 カイトが得意げに言うと、桃華が声を上げる。


「え!? 私!?」


「せや! 俺らより、桃華ちゃんな拓人のために選んでやったんや! 喜べ、拓人!」


 みんなの笑い声が病室に響く。


 拓人は心からの「ありがとう」をみんなに伝えた。



「ほな、俺らはそろそろ帰るで?」


 カイトがみんなに声をかけて、面会用の椅子から立ち上がる。


「なんだよ、もう帰っちまうのかよ!」


「当たり前や! はよ治してはよ退院せぇ! 復活したら仕事の穴埋めしっかりしてもらうで?」


「じゃあ、拓人! また来るね!」

 桃華も拓人に声をかけると、みんなに続いて病室から出て行こうとした。


「待てよ!」


 拓人は桃華の腕を引き、みんなが背を向いてるのを確認して唇を重ねた。


「遠いのに、わざわざありがとう」


 桃華は笑顔で手を左右に振って病室を出て行った。


 病室にはもとあった静寂な空気が戻った。




 ──その夜。


 マネージャーの松本がお見舞いに来てくれた。


 松本の話によると、以前桃華との写真をネットの掲示板でばらまいたのも、昨日の女の仕業だったそうだ。


 拓人自身気づいていなかったが、最近その女にずっと後を付けられていたそうだ。


(本物のストーカーかよ……。それで桃華や桃華の家を知っていたのか……)



「今回の犯人は捕まりましたが、また同じことが起こらないとは言えません。TAKUさんは周囲に対する注意力に欠けています。もっと有名人であるという自覚を持って、今後外に出る時はくれぐれも気をつけて下さい」


 松本は再度拓人にきつく注意を促すと、


「仕事は私がなんとか調整しますので、しっかり治療に専念して早く退院して下さい」


 と言い残し病室を去った。



 病室に1人になると、傷口の痛みが増すような気がする。


 拓人は痛みに顔を歪めながら、その日は眠りについた。


 窓辺では、色とりどりの花が拓人のその姿を応援するかのように、月明かりに照らされて輝いていた。

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