20 / 47
氷の舞
芸の肥やし ※
「私には、好きな人がいます」
言ってもどうなるものでもないことだが、親よりも歳の離れた旦那には、嘘はつけないと思った。
「そうだろう。わかっているよ」
越後屋は、うなずいた。
穏やかな表情を崩さない。
包み込むような大人の余裕だ。
小娘の思いなど、たわいもないのだろう。
「それでも芸者になったのは、なぜか言ってごらん。添い遂げようとは思わなかったのかね。まさか、舞だけ舞っていればいいと思っていたわけじゃないね」
「わかっています。添い遂げることはできないのです。私は、自分で芸者になることを選びました。他に生きる道はありません」
「ほう。そうかい。その覚悟はあるのだね。ならば、男は、芸の肥やしだと思えばいい。好いた男も、この私も、これから出会う男どもも」
「肥やし・・・」
「男を肥やしにして、芸を磨くのだ。過去のことも、すべてを栄養にするのだよ。それができれば、名声は思いのままだ」
「・・・」
ゆきは呆然と越後屋を見つめた。
「覚悟はいいかい?」
「・・・」
「売れる覚悟だよ。私の言う通りにすればいい」
「・・・」
「芸者を育てるのも、私の楽しみでね」
船がゴトンと音を立てて止まった。
船着場に到着したようだ。
船頭が屋形船の戸を開けた。
「ついてくるかね? 嫌ならば、そのまま帰るがいい」
越後屋が腰を上げて船首に出た。
振り向いて、手を伸ばす。
「さあ、どうするね」
「・・・」
その手を取れば、どこか知らないところに連れて行かれるのだ。
恐ろしい。
それでも、ゆきはその手を取った。
船宿では、すでに部屋が用意されていた。
「芸歴の短さを恥じることはない。媚びることもない。臆することなく舞えばいい」
越後屋は、雪也の心構えを話す。
「どちらかといえば、悲恋ものが得意だが、お座敷では、男など興味がないとあしらう。冷たい目で突き放す。だが情がないわけではない。情は舞で見せれば良い」
酒を飲みながら、雪也以上に興奮している。
「錦絵に描かせよう。楽しみにしているがいい」
「はい」
売り込むための戦略を練るのが楽しいのだろう。
錦絵の構想などをあれこれと語り、上機嫌だった。
「さて、仕上げをしようか」
仕上げとは、床入りのことだろうと、身構えた。
「脱いでみなさい」
「・・・」
「私はもう歳だ。襲うようなことはもはやできん。体力は大事な時のために温存しておきたいのでね」
「嫌でございます」
雪也ならば、そう言うのでは、とすまして言ってみた。
越後屋は、声を立てて笑った。
「なるほど、雪也ならばそう言うだろうな。一般の客ならそれでいい。いいが、私のように、金を積んで旦那になろうとする者には通用しない。床でも雪也でいる必要がある。すぐには身に付かんだろうが・・・」
「・・・」
「そこまで作っておかねばな。素人のむつみ合いとは違うのだ。名うての遊び人が相手なのだから」
と口もとを歪めて笑った。
「水揚げが私でよかった。さすがに吉次には仕込めないからね」
雪也としての床入り?
想像がつかなかったが、立ち上がった。
言われるままにするしかなかった。
帯を解く。
慣れているはずなのに、手が震えた。
着物を脱いで、肌襦袢になり、敷かれた布団のそばまでいく。
「何をしている。全部だよ。そこに座って、足を広げなさい」
言われた通り、裸になり、布団の上に腰を下ろした。
「なかなかいい体じゃないか」
足を広げて秘所を晒した。
恥ずかしさに顔をそむける。
「欲しそうにしてはいけないよ」
越後屋が羽織を脱ぎ、ゆきに近づく。
和馬と抱き合って以来、数ヶ月男を受け入れていない体は、ゆきの思いとは裏腹に、愛液を滴らせる。
「あっ・・・」
思わず声がもれ、首がのけぞった。
越後屋の指は、絹に触れるような優しさでゆきの肌を撫でさすった。
ツボを心得ていて、揉みほぐされるように、肌が柔らかくとろけ、腰がもっと快楽を求めて跳ね上がる。
「ほしいのかい?」
「あっ・・・んん、いや・・・」
首を振った。
「好いた男に抱かれていると思うがいい」
「いや・・・」
違う。和馬の愛撫とはまったく別のものだ。
だが、あの時の快感を体が覚えている。
指が入れられた。
あくまでも優しくかき回され、二本、三本と指がふえ、出すまいと思った喘ぎ声が漏れる。
「あ、あ、ああっ・・・」
腰が、体の中が震え、指を締め付ける。いってしまった。
越後屋が楽しげに笑った。
「そんなに早く気をやってしまってはいけないよ」
言ってもどうなるものでもないことだが、親よりも歳の離れた旦那には、嘘はつけないと思った。
「そうだろう。わかっているよ」
越後屋は、うなずいた。
穏やかな表情を崩さない。
包み込むような大人の余裕だ。
小娘の思いなど、たわいもないのだろう。
「それでも芸者になったのは、なぜか言ってごらん。添い遂げようとは思わなかったのかね。まさか、舞だけ舞っていればいいと思っていたわけじゃないね」
「わかっています。添い遂げることはできないのです。私は、自分で芸者になることを選びました。他に生きる道はありません」
「ほう。そうかい。その覚悟はあるのだね。ならば、男は、芸の肥やしだと思えばいい。好いた男も、この私も、これから出会う男どもも」
「肥やし・・・」
「男を肥やしにして、芸を磨くのだ。過去のことも、すべてを栄養にするのだよ。それができれば、名声は思いのままだ」
「・・・」
ゆきは呆然と越後屋を見つめた。
「覚悟はいいかい?」
「・・・」
「売れる覚悟だよ。私の言う通りにすればいい」
「・・・」
「芸者を育てるのも、私の楽しみでね」
船がゴトンと音を立てて止まった。
船着場に到着したようだ。
船頭が屋形船の戸を開けた。
「ついてくるかね? 嫌ならば、そのまま帰るがいい」
越後屋が腰を上げて船首に出た。
振り向いて、手を伸ばす。
「さあ、どうするね」
「・・・」
その手を取れば、どこか知らないところに連れて行かれるのだ。
恐ろしい。
それでも、ゆきはその手を取った。
船宿では、すでに部屋が用意されていた。
「芸歴の短さを恥じることはない。媚びることもない。臆することなく舞えばいい」
越後屋は、雪也の心構えを話す。
「どちらかといえば、悲恋ものが得意だが、お座敷では、男など興味がないとあしらう。冷たい目で突き放す。だが情がないわけではない。情は舞で見せれば良い」
酒を飲みながら、雪也以上に興奮している。
「錦絵に描かせよう。楽しみにしているがいい」
「はい」
売り込むための戦略を練るのが楽しいのだろう。
錦絵の構想などをあれこれと語り、上機嫌だった。
「さて、仕上げをしようか」
仕上げとは、床入りのことだろうと、身構えた。
「脱いでみなさい」
「・・・」
「私はもう歳だ。襲うようなことはもはやできん。体力は大事な時のために温存しておきたいのでね」
「嫌でございます」
雪也ならば、そう言うのでは、とすまして言ってみた。
越後屋は、声を立てて笑った。
「なるほど、雪也ならばそう言うだろうな。一般の客ならそれでいい。いいが、私のように、金を積んで旦那になろうとする者には通用しない。床でも雪也でいる必要がある。すぐには身に付かんだろうが・・・」
「・・・」
「そこまで作っておかねばな。素人のむつみ合いとは違うのだ。名うての遊び人が相手なのだから」
と口もとを歪めて笑った。
「水揚げが私でよかった。さすがに吉次には仕込めないからね」
雪也としての床入り?
想像がつかなかったが、立ち上がった。
言われるままにするしかなかった。
帯を解く。
慣れているはずなのに、手が震えた。
着物を脱いで、肌襦袢になり、敷かれた布団のそばまでいく。
「何をしている。全部だよ。そこに座って、足を広げなさい」
言われた通り、裸になり、布団の上に腰を下ろした。
「なかなかいい体じゃないか」
足を広げて秘所を晒した。
恥ずかしさに顔をそむける。
「欲しそうにしてはいけないよ」
越後屋が羽織を脱ぎ、ゆきに近づく。
和馬と抱き合って以来、数ヶ月男を受け入れていない体は、ゆきの思いとは裏腹に、愛液を滴らせる。
「あっ・・・」
思わず声がもれ、首がのけぞった。
越後屋の指は、絹に触れるような優しさでゆきの肌を撫でさすった。
ツボを心得ていて、揉みほぐされるように、肌が柔らかくとろけ、腰がもっと快楽を求めて跳ね上がる。
「ほしいのかい?」
「あっ・・・んん、いや・・・」
首を振った。
「好いた男に抱かれていると思うがいい」
「いや・・・」
違う。和馬の愛撫とはまったく別のものだ。
だが、あの時の快感を体が覚えている。
指が入れられた。
あくまでも優しくかき回され、二本、三本と指がふえ、出すまいと思った喘ぎ声が漏れる。
「あ、あ、ああっ・・・」
腰が、体の中が震え、指を締め付ける。いってしまった。
越後屋が楽しげに笑った。
「そんなに早く気をやってしまってはいけないよ」
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。