【完結】誰に抱かれてもあなたへの愛は揺らがない

かじや みの

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月の舞

あやまち ※

 いきなり戸が開いた。

「お楽しみのところ、悪いが、その女は返してもらおうか」
「誰だ、貴様は!」

 後ろ手に戸を閉めたのは、騒ぎを大きくしないためだ。

 左京大夫は男たちを見ず、雪也を見下ろした。
「こいつはおれの女だ」
「なんだと?!」

 男たちが色めき立つが、左京大夫は平然としている。

「誰に断って、抱いている?」

「この女は、昔からの馴染みだ。貴様にとやかく言われる筋合いではない」
 成田は雪也を離さず、腰に手を回して外さないように密着させた。
「ほう」
「おれが女にしてやったのだからな」
 成田はそう言って、見せつけるように腰を動かし、雪也の乳房を揉んだ。

「まぶか」
「違います!」
 突き上げられながら、首を振った。
 思わず目ですがってしまっている。

「そうか。助けてほしいか。身も心もおれのものになるなら助けてやる」
「な・・・」
 この人は、こんな時に何を言っているのか。

「いやっ・・・」
 怒りと恥ずかしさで、体中が赤くなった。

「なんだ、嘘つきやがって。まだ貴様のものではないのか。さっさと失せろ。それともおれたちの後でこの女を抱きたいのか」
 ニヤニヤしている左京大夫に、男たちが嘲笑を浴びせた。

「ふん。おめでたい野郎どもだ。この界隈でおれを知らんとは、どこの田舎侍だ」

「田舎じゃない。尾張だ」
「ほう、なるほど。尾張公の家臣か。それならなおのこと、知らぬでは済まされんぞ。ここで遊びたいと思えばな」
「なんだと? さっさと名乗れ」
「名乗っていいんだな」
「もったいぶるな!」
 苛立った男たちが凄んだ。

「松平左京大夫だ」
「なに?」
「ま、松平・・・」

 男たちが固まった。
 殿さまと同じ、徳川家の血筋だ。

 成田は慌てて、雪也から離れた。

「縮み上がったかな」

 左京大夫は、笑いながらも、雪也の着物を拾い、包み込むように裸の体に被せると、抱き上げる。

「もらっていくぞ。異存はあるまいな」

 先ほどとは打って変わって、頭を下げて小さくなっている男たちに、鋭い視線を送った。

「今後、手を出したら、次は命がないと思え」

 静かだが、凄みのある声で言い放ち、男たちは震え上がった。



 雪也を抱き上げたまま、部屋を出、廊下を歩き、どこへ行こうとしているのか、止まる気配がなかった。

「下ろしてください」
「礼を言うのが先だろう」
「助けていただき、ありがとうございます」
 雪也は素直に言った。
「惚れ直したか」
「それは・・・」
 助けてくれたのは嬉しいが、あの状況を楽しんでいるふうにしか見えなかった。
 それでも、左京大夫が来てくれなかったら、あの状況が続いたと思うとゾッとする。

 どこにいくつもりなのか、料理屋の店の裏手に出て、そのまま船着場まで来てしまっていた。

「左京さま、どこへ・・・」
「礼をしてもらわねばな」
 とニヤリとした。

 着物を着ていないため、無理に逃げ出すこともできない。

「出せるか」
 客を待っている屋形船の船頭に声をかける。

「へえ、殿さま・・・」
 顔見知りなのか、船頭は驚いた顔になったが、すぐにニヤニヤした。
 よくあることなのだろうか。

 乗り込むと、すぐに船を出した。

「あんなものを見せられて、じっとしていられるか」

 畳敷の床に置くが早いか、覆い被さってくる。
 船が小刻みに揺れた。

「いけません」
「なぜだ」
「蔦吉姐さんのいい人と、こんな・・・」
「淫らなことはできんか」
「できません!」
「黙っていれば良いではないか」
「駄目です」
 人の口に戸は立てられない。
 すぐにでも蔦吉の耳に入るに違いない。

「蔦吉にはまぶがおるのだぞ。そのまぶに貢ぐために芸者になった女だ」
 左京大夫が一番ではないと言いたいのだろう。
「それでも、掟を破るわけには・・・」

 左京大夫は、雪也の手をとって、すでに滾りたって大きく盛り上がる股間を触らせた。
「どうしてくれる。こいつは容易には鎮まらないぞ」

 左京大夫の手が、顎を掴み、口づけようとする。
「いやでございます」
「あの男ならいいのか。さっきまでまぐわっていたではないか」
「油断しただけです。私は、若さまから逃げたくて江戸に出てきました。もう二度と、誰かのおもちゃにはなりたくありません。・・・遊びならば、嫌でございます」

 間近で見つめ合う。
 左京大夫の目が、熱を帯びている。

「そんなに嫌ならば、舌を噛みきれ。・・・おれの舌を」

 食いつくように唇を重ねると、熱い舌が口の中に差し入れられた。

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