許嫁は刺客

かじや みの

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長い夜

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 気持ちよさそうな喘ぎ声をあげてやり、腰を打ちつけてくる通春に合わせて、のぼりつめていくふりをしながら、見上げる天井に意識を凝らす。

 気配はない。
 今夜は来ていないようだった。

 ついこの間まで、あそこから見る立場だったのに、見られる側になってしまった。
 だが、刺客が来れば、仕事がやりやすいように手助けぐらいはするつもりだ。
 直接手を下せなくても、いつその時が来てもいいように、心の準備だけはしておく。

 それまで、せいぜいいい夢を見させてあげよう。

 背中にしっかりと腕を回し、しがみつき、せつなげな声でなく。
「よがる声も可愛いのう」
「殿さま・・・」
 目の前の男が儚い命だと思うと愛おしく思える。
 己の中に咥え込んだ男を締めつけた。

 こらえきれなくなった通春がうなり、精を放つ。
「どうじゃ。久美を抱いた昔の男と、どちらがいい」
 満足そうに乱れた息を整えながら、久美の髪を撫でる。
「お殿さまの方がようございました」
 男の胸に甘えるように顔を寄せた。
「そうか。それはよかった」

 落ち着いたところで、体を起こすと、肌着を着せる前に、通春の体を綺麗に清めてやる。
 そのための手桶などは用意されている。
「そなたがしてくれるのか」
「いけませぬか」
 貴子はしないのかもしれない。
 そんな余裕がないのか、侍女に任せているのだろう。
「いや、そうではないが・・・」
 久美の手の中で、それはむくむくと大きくなり、力を取り戻す。
 まだ裸のまま局所を擦られて、欲望も膨れ上がってきたようだ。

「ふふっ」
 笑って、綺麗にしたばかりのそれに顔を近づけ、口に含んだ。
「なに・・・つっ・・・」
 舌を絡めると、通春がたまらずに腰を浮かす。

「お気に召しませぬか?」
 上目遣いで見た。
「こやつめ。ならばこうじゃ」
 と、悪戯っぽく笑うと、久美を引き上げ、うつ伏せに組み敷いた。
 お尻を高く上げさせ、後ろから貫く。
「ああっ、・・・そんな・・・は、あん・・・んんっ」
 大袈裟に声をあげて、喘いだ。
 男は獣のように、腰を振り、後ろから、揺れる乳房を時々掴んでもみしだいた。
 荒々しいのが好みなのだろうか。
 これは、貴子では受け止めきれないだろう。
 与えられる刺激に、痺れるような快感が体に広がって愛液があふれだす。
 物欲しそうに、中がキュンとしまり、いってしまいそうになる。
「久美・・・久美・・・」
 通春がうわごとのように名を呼んだ。

 肌がぶつかる音と、荒い息遣いが、いつまでも続く。

 初夜にしては、激しい営みになり、夜更け、ようやく寝静まった頃、久美はそっと起き出した。



 襖を開けると、端然と座っている侍の姿があった。

 後ろからそっと近づき、抱きついた。
 男は微動だにしなかった。
 襟元を強引に開けて、首に唇を這わせる。
 むせるような男の匂いが鼻腔をくすぐり、肺を満たす。

「おたわむれを」

 側室に手を出すことはできない。

 それをいいことに、久美が男をなぶる。

 着物の中に手を入れて胸を撫で、もう片方の手で股間を弄る。
 カチカチに固く、熱いものを握った。
「もうこんなに・・・。侍女の誰かさんに来てもらう? それとも、ここでやりましょうか?」
「馬鹿な」
 伊原は動かない。
 その耳に、息を吹きかける。
「バレなかったらいいでしょ?」
「あれほどやって、まだやり足りないのか」
 目を細めて久美を横目に見た。
 恍惚の表情に見えるのは、久美が握った男根をしごいているからだ。
「その手には乗らない」
 伊原が久美に手を出せば、それをネタに護衛から外すことができる。
 不義は御法度だ。
 外れるだけでは済まなくなるかもしれない。
「そんなこと、私がすると思うの?」
 こんなに楽しいことを、手放したくない。
 久美は、通春に抱かれながら、襖の向こうに気を配ることが楽しくて仕方がなかったのだ。
 自分がそういう性癖を持っていることに驚いたのだが、伊原がそこにいると思うだけで、余計に体が熱くなるようだった。
 刺客が現れるまで、楽しむことにする。

「戻ります」
 あっさりと伊原から離れて、立ち上がった。



 行きと同じように、部屋まで送ってもらう。

 廊下で、灯りを持った貴子の侍女、あやとすれ違った。

「ご苦労さまでございます」

 見回りだろうか。
 それとも・・・。

「ここでいいわ。ありがとうございました。早く戻ったほうがいいのでは?」

 振り返ると、まだ、あやの後ろ姿が見えている。

 今日は笠間の方へ行くのかもしれない。

「本当に、殿の方が良かったのか」
 伊原もあやの姿を目で追っている。

「さあ、どうでしょう。静馬さまこそ、あの女の方がいいのでしょ?」
「・・・」

 何も言わずに男は踵を返した。
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