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7−3 初恋とメロンソーダ
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「冗談はやめて。すぐからかうんだから。その手には乗らないからね」
今だから言い返せる。
「あの頃だって、彼女いたでしょ」
あの頃、颯太はモテて、彼女がいなかったことはなかった。
特定の、と言うより、とっかえひっかえだったような気もするけど。
美香が入り込む隙なんて、全然なかった。
それでも、美香にちょっかいをかけてくる颯太が、よくわからなかったが、構われることが、嫌じゃなかった。
むしろ好きになっていった。
打ち明けることのない初恋。
「男とまともに付き合えねえようだからよ」
「いいの。男はいらないんですぅ。二股かけるようなやつは、特に」
「言うねえ」
だから、あの時は、あのままでいいのだ。
過去の自分を惨めに思う必要は、ない。
「ご心配なく。後悔なんて、してないから」
「ちぇっ」
と、肩にもたれるようにして、颯太が顔を近づけてきた。
アルコールの匂いがしている。
「癒されるんだよな。好きだった」
「嘘ばっか」
お酒の勢いでも嘘でも、胸はドキドキして、甘い熱がアイスを溶かす。
「美香はどうだった?」
「もう、知らない。あっちいって」
肩を押しやった。
「私を口説くなら、離婚してきて」
普段の美香からは思いもよらない言葉が飛び出した。
自分でも驚いたが、言ってしまった後、胸がスッとして気持ち悪さが和らいだ。
ソーダを全部飲み干したような爽快感だった。
「・・・」
颯太も絶句して目を丸くし、にっと笑った。
「強くなったな、美香。伊達に振られてねえな」
名古屋駅に着き、一人でも大丈夫と言ったのに、颯太は、家まで送り届ける責任があるからと、アパートまで荷物を持って着いてきた。
「ありがとう。ここでいいから」
ドアの前で手を振ったが、颯太はアパートを眺めながら、動かない。
「ちょっとぐらい、休んでってもいいだろ。友達なんだから」
友達、というところを強調されて、拒めなかった。
「ちょっとだけだよ」
「わかってる」
ドアを開けて、颯太を中に入れた。
「へえ、綺麗にしてるじゃねえか」
「ゴールデンウィークに断捨離したんだ」
「もっと散らかってるかと思ってた」
「前はね」
部屋の中を片付けてなかったら、颯太を入れなかったかもしれない。
少し広めの1DK。
「コーヒーでも飲む? 私は、ちょっとムカムカするから飲まないけど」
「水でいい」
冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを出した。
「いい部屋だな」
「いいでしょ」
「この写真、うまく撮れてるな」
京都で、西野が撮ってくれた写真は、プリントアウトして飾っていた。
思い出にとっておきたかったのと、もっと痩せるぞ、という戒めとして。
その頃よりも、体重は減って、今の方が痩せている。
今は、少し複雑な思いが湧いてきてしまうため、しまおうかどうか迷う。
「あの頃も、こんなふうに笑ってた」
颯太の声が優しくなる。
「そうかな。そんな昔のことなんて、忘れた。今の颯太の話を聞かせて。奥さんはどんな人?」
今、一人になるのが怖かった。
今だから言い返せる。
「あの頃だって、彼女いたでしょ」
あの頃、颯太はモテて、彼女がいなかったことはなかった。
特定の、と言うより、とっかえひっかえだったような気もするけど。
美香が入り込む隙なんて、全然なかった。
それでも、美香にちょっかいをかけてくる颯太が、よくわからなかったが、構われることが、嫌じゃなかった。
むしろ好きになっていった。
打ち明けることのない初恋。
「男とまともに付き合えねえようだからよ」
「いいの。男はいらないんですぅ。二股かけるようなやつは、特に」
「言うねえ」
だから、あの時は、あのままでいいのだ。
過去の自分を惨めに思う必要は、ない。
「ご心配なく。後悔なんて、してないから」
「ちぇっ」
と、肩にもたれるようにして、颯太が顔を近づけてきた。
アルコールの匂いがしている。
「癒されるんだよな。好きだった」
「嘘ばっか」
お酒の勢いでも嘘でも、胸はドキドキして、甘い熱がアイスを溶かす。
「美香はどうだった?」
「もう、知らない。あっちいって」
肩を押しやった。
「私を口説くなら、離婚してきて」
普段の美香からは思いもよらない言葉が飛び出した。
自分でも驚いたが、言ってしまった後、胸がスッとして気持ち悪さが和らいだ。
ソーダを全部飲み干したような爽快感だった。
「・・・」
颯太も絶句して目を丸くし、にっと笑った。
「強くなったな、美香。伊達に振られてねえな」
名古屋駅に着き、一人でも大丈夫と言ったのに、颯太は、家まで送り届ける責任があるからと、アパートまで荷物を持って着いてきた。
「ありがとう。ここでいいから」
ドアの前で手を振ったが、颯太はアパートを眺めながら、動かない。
「ちょっとぐらい、休んでってもいいだろ。友達なんだから」
友達、というところを強調されて、拒めなかった。
「ちょっとだけだよ」
「わかってる」
ドアを開けて、颯太を中に入れた。
「へえ、綺麗にしてるじゃねえか」
「ゴールデンウィークに断捨離したんだ」
「もっと散らかってるかと思ってた」
「前はね」
部屋の中を片付けてなかったら、颯太を入れなかったかもしれない。
少し広めの1DK。
「コーヒーでも飲む? 私は、ちょっとムカムカするから飲まないけど」
「水でいい」
冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを出した。
「いい部屋だな」
「いいでしょ」
「この写真、うまく撮れてるな」
京都で、西野が撮ってくれた写真は、プリントアウトして飾っていた。
思い出にとっておきたかったのと、もっと痩せるぞ、という戒めとして。
その頃よりも、体重は減って、今の方が痩せている。
今は、少し複雑な思いが湧いてきてしまうため、しまおうかどうか迷う。
「あの頃も、こんなふうに笑ってた」
颯太の声が優しくなる。
「そうかな。そんな昔のことなんて、忘れた。今の颯太の話を聞かせて。奥さんはどんな人?」
今、一人になるのが怖かった。
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