触れられたいと思うまで〜トラウマを克服したら溺愛が始まるようです〜

かじや みの

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「あ、れん君来たんだ」
「よかったあ。もう来てくれないのかと思ってた」

 みんな、れんを歓迎してくれる。

 あれさえなければ、何も文句はないのだけど。

「ねえねえ、これ読んだ? めっちゃきゅんきゅんするよ」
「どれどれ? 漫画?」
「小説もあるよ」
「うわあ、絵が綺麗」
「かわいいね」
「貸して貸してえ」

 持ち寄ったBL漫画でひとしきり盛り上がる。

「この人の歴史BLいいんだよねえ」
「私も読みましたよ。いいですよね」
「いいよねえ」

 三年生から一年生まで、全員が輪に入っている。

 絶対に、男子が入れない輪だ。

「義経と弁慶なんて、あり得ないでしょお?」
「きゃー、もう・・・」

 ときに黄色い声が響く。
 れんがいても気にならないらしい。

「やっぱり信長さまと蘭ちゃんだよ」
「江戸時代の残酷ものもいいわよお。小姓同士の」
「ちょっとハードすぎです」
「私は、やっぱり平安時代がいいですう」

 全然集中できない。
 そもそも、仮名文字辞典をめくっていても、まったく頭に入ってこないけど・・・。

「れん君、うるさくてごめんねえ」

 新島が声をかけてきた。

「れん君も、これ読む?」

 と、漫画を机に置いた。

「免疫つけなきゃね」
「ちょっと、奈緒子、免疫って・・・」
 甘利が慌てて、新島を引っ張ったが、
「まあ、それが一番手っ取り早いか。うん」
 納得してしまっている。
「でしょう。漫画から入るのが一番入りやすいと思うけどな」
「確かに。よかったら読んでみて」

 見ると、表紙は王子様のような男の子と、騎士が描かれている。

 現実離れして、おとぎ話のようだ。

 れんは、手にとって、めくってみる。

「人に恋する気持ちは尊いと思わない? それが男同士だって、同じでしょ」
「ちょっと、奈緒子」
 甘利が心配そうにれんを見ている。

「何度も言って悪いけど、昔は、それが、普通のことだったんだから。ちょっと行きすぎることもあったかもしれないけど。れん君には、毛嫌いしないでほしいな」

「・・・」

 れんは、うつむいたまま、つぶやいた。

「俺、嫌いじゃないです。先輩のことは。人として」

 顔が赤くなっているかもしれない。
 恥ずかしくて顔が上げられないのだ。

「うんうん。よかった。嫌われてないってだけで、きっと喜ぶわね」

「借りていってもいいですか」

 これなら、読めるかもしれないと思った。

「どうぞどうぞ。遠慮しないで、じゃんじゃん読んじゃって」
「奈緒子」
 新島をたしなめる甘利も嬉しそうに笑っている。

「まずは、知ることから始めようよ」

 れんのことをもっと知りたいと言ってくれた、成宮の言葉を思い出していた。

(俺も、誠先輩のことが、もっと知りたいな)

 今度会えたときは、笑顔で話せたらいいと、素直に思えた。

「一歩前進ね」

 古文書の解読は、まったくと言っていいほど、進まなかったが、その日から、れんの歴研での活動がスタートした。
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