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家に帰り、普通の日常が戻ってくる。
以前と違うのは、毎日のように、成宮からスタンプか短い言葉が送られてくるようになったことだ。
会えない夏休み。
まるで生存確認のようなやりとりしかしていないが、既読スルーされるのは嫌らしく、しつこいくらいに来るために、なんでもいいから適当に返しておく。
意外に束縛体質なのかもしれない。
「れん。先輩と仲良くなったんだな。これ」
悠人が、家に勉強しに来たとき、スマホの画面を見せてニヤニヤした。
新撰組の衣装を着て、成宮が後ろかられんの肩を抱いている写真だ。
送ろうかどうか迷った末に、結局送った。
「うん」
「照れるなって。よかったじゃん」
「そう、かな・・・」
「俺も、やっていい?」
「え?」
驚いていると、立ち上がった悠人が、笑いながらテーブルを回ってきて、れんの腕を引いた。
「ちょっと、何すんの」
ダイニングから、ソファーのあるリビングの方へ連れて行かれる。
「わっ」
足を絡められて、もつれるようにソファーに倒れ込んだ。
「悠人ってば・・・」
悠人には気を許しているが、これほど密着してきたことはない。
頭がパニクりかけて、抵抗できなかった。
れんに抱きついた悠人が、いつの間に持っていたのか、スマホを器用に持って、写真を撮る。
「先輩なんて言うかな」
素早く成宮に送ったようだ。
「ふざけるなよ」
からかわれているだけだということはわかっている。
悠人を押しのけて立ち上がった。
「怒った?」
押し黙ったれんの顔を覗き込むようにするが、その顔に、悪びれた様子も、心配そうな色もなかった。
「もう大丈夫なんじゃない?」
と笑っている。
そう言われて、突然に思い至った。
ーーれんは守られている。
成宮の言葉の意味が、わかった。
れんは、悠人にずっと守られていたことに、気がついたのだ。
「れん?」
うつむいて黙っているれんが、さすがに心配になってきたのか、顔を曇らせる。
「悠人・・・」
「どうしたんだよ。改まっちゃって、まさか・・・」
「ありがと」
れんは、手を伸ばして、悠人の体に触る。
「うふふっ」
「おい、れんっ! あはは、やめろって」
悠人がソファーに倒れ込んだ。
脇腹や、脇の下をくすぐる。
れんの手をガードしようと動かすが、その隙間を狙って攻めた。
「れん、くすぐったいって」
顔をくしゃくしゃにして笑う悠人を見て嬉しくなり、れんも声をあげて笑った。
ずっとこんなふうにじゃれあいたかったんだ。
悠人も、きっと。
「いい加減にしろって。ガキだなあ、おまえ」
今まで、気を遣わせていた分、取り戻せたらいいと思う。
「さあ、宿題片付けようぜ」
「ええ~、やだなあ、遊ぼうよ」
「だめ」
「けち」
「じゃあ、自分家でやったら?」
「やだー、見捨てないで~~」
「はい、やるよ」
「連れてってえ」
子供のように手を伸ばしてくる。
「しょうがないなあ。はい」
背中を向けると、悠人が後ろからおぶさってきた。
「おも。ガキなのはどっちだよ」
「ガキなので、勉強も教えてください」
「もう」
あっという間に夏休みも過ぎて、二学期が始まった。
れんは迷っていた。
歴史研究部に席は置いていたが、続けるかどうか決められないまま、ずるずると休んでいた。
これではいけないと決断する。
退部届を持って、部室に行くことにした。
以前と違うのは、毎日のように、成宮からスタンプか短い言葉が送られてくるようになったことだ。
会えない夏休み。
まるで生存確認のようなやりとりしかしていないが、既読スルーされるのは嫌らしく、しつこいくらいに来るために、なんでもいいから適当に返しておく。
意外に束縛体質なのかもしれない。
「れん。先輩と仲良くなったんだな。これ」
悠人が、家に勉強しに来たとき、スマホの画面を見せてニヤニヤした。
新撰組の衣装を着て、成宮が後ろかられんの肩を抱いている写真だ。
送ろうかどうか迷った末に、結局送った。
「うん」
「照れるなって。よかったじゃん」
「そう、かな・・・」
「俺も、やっていい?」
「え?」
驚いていると、立ち上がった悠人が、笑いながらテーブルを回ってきて、れんの腕を引いた。
「ちょっと、何すんの」
ダイニングから、ソファーのあるリビングの方へ連れて行かれる。
「わっ」
足を絡められて、もつれるようにソファーに倒れ込んだ。
「悠人ってば・・・」
悠人には気を許しているが、これほど密着してきたことはない。
頭がパニクりかけて、抵抗できなかった。
れんに抱きついた悠人が、いつの間に持っていたのか、スマホを器用に持って、写真を撮る。
「先輩なんて言うかな」
素早く成宮に送ったようだ。
「ふざけるなよ」
からかわれているだけだということはわかっている。
悠人を押しのけて立ち上がった。
「怒った?」
押し黙ったれんの顔を覗き込むようにするが、その顔に、悪びれた様子も、心配そうな色もなかった。
「もう大丈夫なんじゃない?」
と笑っている。
そう言われて、突然に思い至った。
ーーれんは守られている。
成宮の言葉の意味が、わかった。
れんは、悠人にずっと守られていたことに、気がついたのだ。
「れん?」
うつむいて黙っているれんが、さすがに心配になってきたのか、顔を曇らせる。
「悠人・・・」
「どうしたんだよ。改まっちゃって、まさか・・・」
「ありがと」
れんは、手を伸ばして、悠人の体に触る。
「うふふっ」
「おい、れんっ! あはは、やめろって」
悠人がソファーに倒れ込んだ。
脇腹や、脇の下をくすぐる。
れんの手をガードしようと動かすが、その隙間を狙って攻めた。
「れん、くすぐったいって」
顔をくしゃくしゃにして笑う悠人を見て嬉しくなり、れんも声をあげて笑った。
ずっとこんなふうにじゃれあいたかったんだ。
悠人も、きっと。
「いい加減にしろって。ガキだなあ、おまえ」
今まで、気を遣わせていた分、取り戻せたらいいと思う。
「さあ、宿題片付けようぜ」
「ええ~、やだなあ、遊ぼうよ」
「だめ」
「けち」
「じゃあ、自分家でやったら?」
「やだー、見捨てないで~~」
「はい、やるよ」
「連れてってえ」
子供のように手を伸ばしてくる。
「しょうがないなあ。はい」
背中を向けると、悠人が後ろからおぶさってきた。
「おも。ガキなのはどっちだよ」
「ガキなので、勉強も教えてください」
「もう」
あっという間に夏休みも過ぎて、二学期が始まった。
れんは迷っていた。
歴史研究部に席は置いていたが、続けるかどうか決められないまま、ずるずると休んでいた。
これではいけないと決断する。
退部届を持って、部室に行くことにした。
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