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リナリーの能力
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リナリーは寮の地下室、霊界統括調律師団の修行場と言われる場所に連れてこられていた。
「寮の地下にこんな場所があったんだ。なんにもない場所だね」
リナリーは興味津々に修行場を見回す。
「あんたにはそのうちここで修行をつけてやろうと思ってたんだよ。思ったより少し早くなったが…」
アンナはそう言いながら入口のコンソールを操作し、リナリーの利用登録を行った。
「これでよし。さて、リナリー早速修行を始めようか」
「はい!よろしくお願いします!」
リナリーは深々とお辞儀をする。
「まずはあんたの時空間破壊だがどこまで制御出来るんだい?」
「昔は上手く出来なかったんだけど今は…」
リナリーは両手を前に重ねて突き出し、念じるように目を閉じた。
すると目の前に円形の小さな黒色の空間が現れる。現れた空間の中心に吸い込まれるように周りに空気の流れが生まれる。
しばらくすると空間は中心に向かい次第に小さくなっていった。
「ふぅ、今は大きさもだいぶコントロール出来るようになったんだよ」
「なかなか上手くコントロール出来ているようだね」
リナリーの時空間破壊能力は時空間、時間の流れを破壊する(消し去る)力だ。
現在、存在する場所(時空間)の一部をほんの少し消し去るだけで『消滅した時間を埋める』ように周りの時間が集まり大きな引力が発生する。
原理は複雑で一言で説明する事は出来ないが分かりやすく表現すると一種の『ブラックホール』のようなものである。
時空間上で大きな時空間破壊が行われると、そこに周りの時間が消え去った時間の穴を埋めるように集まり内向きの力が発生する。その後、その反力でとてつもない大きな膨張する力が発生する事になる。これがいわゆるビックバンと呼ばれる宇宙の始まりの大爆発なのだ。
破壊神シヴァはこの力を使い、世界の破壊と再生を行う。
宇宙空間で発生する引力『ブラックホール』もこの時間軸の消滅に起因する時空間の歪みによるものだ。
「でも大きくなりすぎると全くコントロール出来なくなるんだよ。まるでわたしの力を勝手に吸い取って大きくなるみたいに…」
「時空間破壊は神技の中でも通常は神しか扱えない能力。消費する聖神力も物凄いのだろう。神技はね聖神力の上限を上回る力を使ってしまうとたちまちコントロールを失うものなのさ。あんたがコントロール出来なくなったのもこれが理由さ」
「リナリーは普通の霊界人より多くの聖神力を持っているはずなのさ。まずは自分でこの聖神力の上限値を把握すること。そして聖神力の上限値を上げる。そうすればある程度の大きさであっても制御出来るようになるはずさ」
アンナはそう言うと修行場の四方の床に丸い円を描き始める。
「リナリーは時空間移動の移動先調整は得意かい?」
「移動先調整って時空間移動の着地点の調整だよね。たぶんクルスより得意だよ!」
「なら、話が早いね。時空間移動で一度『天界』まで行ってすぐにここに帰ってくる。帰って来る時には着地点をこの部屋に書いた円の中に収まるように調整しな」
「うん。でもなんで四つの円が書いてあるの?」
「まぁちょっと見てな」
アンナはそう言うと一番近くの円の中に立ち、目を閉じる。その瞬間、アンナの体はふと消え反対側の角の円に現れる。またすぐ消え、四方の部屋の角を時計回りに回るように移動を行ったのだ。
「これが上級調律師の基本移動術、いわゆる瞬間移動だね」
リナリーはアンナの早すぎる時空間移動のスピードに驚く。
通常、時空間移動には移動先の時空間の時のスピードに合わせて時間を飛び越える、飛行する為にある程度自分の中でタイミングを合わせる必要がある。
イメージ的には併走して走るスピードの違う乗り物に飛び移るようなイメージだ。スピードの違う電車に乗り移る姿を想像するとわかりやすいかもしれない。
アンナが移動先を天界に指定したのには理由がある。時空間速度が0倍の天界は『止まった世界』である。移動元の時間が安定していることにより、着地点の調整が行いやすいのである。
「この基本移動術は上級調律師全員が身につける必要がある。それには理由があってね、四方の円を時計回りに移動する回数と時間で聖神力の上限値を測ることが出来るからなのさ」
「わかったかい?」
「うん。でもアンナさんほど早くは出来ないと思う」
「まずはスピードではなく『正確に円の中に着地する事』を意識してやってみな」
「わかった。やってみる」
そう言うとリナリーは一番近くの円の中に立ち、目を閉じる。リナリーの体がふと消え、約30秒後、目標の円から1メートルほど離れた位置に現れた。
「あちゃー、思ったよりかなり難しいよ、これ」
「あたしは少し用事を済ましてくるから、飛べなくなるまで繰り返し練習しな。ひとまずの目標は円の中に着地出来る状態で時計回りに10回転だね。」
「頑張るんだよ」
そう言うとアンナは修行場を後にした。
アンナがいなくなった修行場でリナリーはひたすら基本移動術の繰り返し練習を行なう。
リナリーはこう見えて意外と負けず嫌いなのだ。
「絶対、今日中に移動先調整を身につけてやる」
そう意気込むリナリーだがこの移動先調整は時空間移動を自由に行える調律師でもなかなか難しい。上級調律師になるための第一の壁がこの移動先調整と移動速度の向上なのである。
この基本移動術が身につかなければもちろん上級調律師になる事も出来ないが練習すれば誰もが身につけられる移動術という訳では無い。
しかしこの後リナリーは負けず嫌いな性格と生まれ持った才能でアンナも驚くほどの思わぬ上達を見せる。
「寮の地下にこんな場所があったんだ。なんにもない場所だね」
リナリーは興味津々に修行場を見回す。
「あんたにはそのうちここで修行をつけてやろうと思ってたんだよ。思ったより少し早くなったが…」
アンナはそう言いながら入口のコンソールを操作し、リナリーの利用登録を行った。
「これでよし。さて、リナリー早速修行を始めようか」
「はい!よろしくお願いします!」
リナリーは深々とお辞儀をする。
「まずはあんたの時空間破壊だがどこまで制御出来るんだい?」
「昔は上手く出来なかったんだけど今は…」
リナリーは両手を前に重ねて突き出し、念じるように目を閉じた。
すると目の前に円形の小さな黒色の空間が現れる。現れた空間の中心に吸い込まれるように周りに空気の流れが生まれる。
しばらくすると空間は中心に向かい次第に小さくなっていった。
「ふぅ、今は大きさもだいぶコントロール出来るようになったんだよ」
「なかなか上手くコントロール出来ているようだね」
リナリーの時空間破壊能力は時空間、時間の流れを破壊する(消し去る)力だ。
現在、存在する場所(時空間)の一部をほんの少し消し去るだけで『消滅した時間を埋める』ように周りの時間が集まり大きな引力が発生する。
原理は複雑で一言で説明する事は出来ないが分かりやすく表現すると一種の『ブラックホール』のようなものである。
時空間上で大きな時空間破壊が行われると、そこに周りの時間が消え去った時間の穴を埋めるように集まり内向きの力が発生する。その後、その反力でとてつもない大きな膨張する力が発生する事になる。これがいわゆるビックバンと呼ばれる宇宙の始まりの大爆発なのだ。
破壊神シヴァはこの力を使い、世界の破壊と再生を行う。
宇宙空間で発生する引力『ブラックホール』もこの時間軸の消滅に起因する時空間の歪みによるものだ。
「でも大きくなりすぎると全くコントロール出来なくなるんだよ。まるでわたしの力を勝手に吸い取って大きくなるみたいに…」
「時空間破壊は神技の中でも通常は神しか扱えない能力。消費する聖神力も物凄いのだろう。神技はね聖神力の上限を上回る力を使ってしまうとたちまちコントロールを失うものなのさ。あんたがコントロール出来なくなったのもこれが理由さ」
「リナリーは普通の霊界人より多くの聖神力を持っているはずなのさ。まずは自分でこの聖神力の上限値を把握すること。そして聖神力の上限値を上げる。そうすればある程度の大きさであっても制御出来るようになるはずさ」
アンナはそう言うと修行場の四方の床に丸い円を描き始める。
「リナリーは時空間移動の移動先調整は得意かい?」
「移動先調整って時空間移動の着地点の調整だよね。たぶんクルスより得意だよ!」
「なら、話が早いね。時空間移動で一度『天界』まで行ってすぐにここに帰ってくる。帰って来る時には着地点をこの部屋に書いた円の中に収まるように調整しな」
「うん。でもなんで四つの円が書いてあるの?」
「まぁちょっと見てな」
アンナはそう言うと一番近くの円の中に立ち、目を閉じる。その瞬間、アンナの体はふと消え反対側の角の円に現れる。またすぐ消え、四方の部屋の角を時計回りに回るように移動を行ったのだ。
「これが上級調律師の基本移動術、いわゆる瞬間移動だね」
リナリーはアンナの早すぎる時空間移動のスピードに驚く。
通常、時空間移動には移動先の時空間の時のスピードに合わせて時間を飛び越える、飛行する為にある程度自分の中でタイミングを合わせる必要がある。
イメージ的には併走して走るスピードの違う乗り物に飛び移るようなイメージだ。スピードの違う電車に乗り移る姿を想像するとわかりやすいかもしれない。
アンナが移動先を天界に指定したのには理由がある。時空間速度が0倍の天界は『止まった世界』である。移動元の時間が安定していることにより、着地点の調整が行いやすいのである。
「この基本移動術は上級調律師全員が身につける必要がある。それには理由があってね、四方の円を時計回りに移動する回数と時間で聖神力の上限値を測ることが出来るからなのさ」
「わかったかい?」
「うん。でもアンナさんほど早くは出来ないと思う」
「まずはスピードではなく『正確に円の中に着地する事』を意識してやってみな」
「わかった。やってみる」
そう言うとリナリーは一番近くの円の中に立ち、目を閉じる。リナリーの体がふと消え、約30秒後、目標の円から1メートルほど離れた位置に現れた。
「あちゃー、思ったよりかなり難しいよ、これ」
「あたしは少し用事を済ましてくるから、飛べなくなるまで繰り返し練習しな。ひとまずの目標は円の中に着地出来る状態で時計回りに10回転だね。」
「頑張るんだよ」
そう言うとアンナは修行場を後にした。
アンナがいなくなった修行場でリナリーはひたすら基本移動術の繰り返し練習を行なう。
リナリーはこう見えて意外と負けず嫌いなのだ。
「絶対、今日中に移動先調整を身につけてやる」
そう意気込むリナリーだがこの移動先調整は時空間移動を自由に行える調律師でもなかなか難しい。上級調律師になるための第一の壁がこの移動先調整と移動速度の向上なのである。
この基本移動術が身につかなければもちろん上級調律師になる事も出来ないが練習すれば誰もが身につけられる移動術という訳では無い。
しかしこの後リナリーは負けず嫌いな性格と生まれ持った才能でアンナも驚くほどの思わぬ上達を見せる。
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