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運動会だ。
全校児童三人の運動会なのに、島の人みんなが集まった。
「わあ、島の中にこれだけ人がいるんだ。初めて見る人もいっぱいいる。緊張しちゃうよ」
お年寄りがいっぱいだ。卒業生の中学生や高校生も来ている。
「うちら、小学校で最後の運動会なんよ。タケルくん、がんばろうね!」
なみ子さんが言った。
「いや、タケルくんはふつうでいいんよ。うちらがしっかりがんばるからね」
みな子さんも言った。でも、二人とも声がうわずってる。せっかくのハッピ姿も元気がない。
なみちゃんとみなちゃんこそだいじょうぶかなあ
開会式にみんな集合。ばらばらに並んで、校長先生があいさつして、PTA会長さんもあいさつして、そしていよいよ選手宣誓だ。
タケル、いよいよ朝礼台に上がる。
こんなの、盆踊りのやぐらと一緒じゃないか。あの時はもっと高かった。緊張するなよ!
「今から大運動会を始めます!」と頭の中で何べんも何べんもくり返して言いながら、朝礼台に上がった。
「今から大運動会を始めましたっ!」
勢いをつけて言ってしまって、しまった!あれ?と思った。でも、これくらいまあいいか
運動会、始めましたっ!
進行は応援団長の仕事だ。だから、タケルは運動会の初めから終わりまでマイクを手放せない。でも、進行って意外とゆっくりゆっくりだ。なんたってお年寄りが多いんだ。
「最初の種目は自由参加の徒競走です。参加希望の人は全員が入場門の前に集合してください」
なみ子さんとみな子さんが横から言う通りに、タケルがマイクで言った。
みんなが誘いあいながらぞろぞろ入場門に移動する。タケルが「全員」と言ったのがいけなかったんだろうか。島の人ほぼ全員が入場門に集合した。
入場門の前では、中原先生がてんてこまい。集合した人を並ばせて、スタート地点まで誘導するのが先生の仕事だ。
これが大変だった。次から次にやってくる人たちに、「三人ずつで並んで列を作って」と言ったって、みんなおしゃべりしたり、座り込んだりして、だれも思うように動いてくれない。ニ人の中学生が手伝ってくれて、三人ずつ走るメンバーが決まったところから、順番に座ってもらう。でも、「うちはこの人と走るよ」なんて言ったり、「ワシを一番最初に走らせろ」って言ったりして、勝手に順番を変えてしまう。お年よりってワガママなんだ。
十分くらいたってようやっと入場。中原先生を先頭に、ぞろぞろ歩きながらトラックに入ってきた。最後の人までが並んですわるのがまた時間がかかる。
ようやっと中原先生が一列目の人に合図した。
「第一コース、浜通りの西山のおじいちゃん。がんばってください」
タケルがなみ子さんに言われたまんまに紹介すると、西山のおじいちゃんは両手を思いっきりあげて、「おーいッ」と返事をした。
「第二コース、漁協の売店の松下さん。がんばってください」
今度はみな子さんのいう通りに紹介した。
松下のおねえさん、両手をふって、ぴょんぴょん跳ねている。三人の中ではずっと若い。いかにもスピードの出そうなスタイルだ。きっと楽勝だよ。
さて、三人目。
はて?なみ子さんとみな子さんが困ってしまった。
「あれぇ、あの人だれじゃったかねえ?」
「うちも分からん。島の中では全然見たことがないよ。不審者じゃないよね」
なんだ、知ってるのはタケルだけなのか。
「第三コース、海神様!じゃなくって、元野球部の岡田さん。がんばってください」
海神様は立ち上がって、うつむいたままちょっと手をふった。少しまわりがどよめいた。みんな久しぶりだったんだ。
「位置について、ヨーイ!」
出発のピストルは校長先生の仕事だ。
「ドン!」で、三人が走り出す。海神様は、もうずい分な年だ。ゴールまで走れるのかな?
ところが、海神様が突然変身した。走り出してすぐにマッハを超える全速力!走るフォームなんて、陸上選手みたいだ。顔を上げ、両腕をしっかり振り、おしりから赤いタオルを真っすぐピンと立てている。赤いシッポだ。コーナーもスピードをおとさず、そのままゴール!松下のおねえさんに半周くらい差をつけた。みんな、おどろいてきょとんとしている。
「一着、赤いタオルの岡田さん!さすが名門野球部のオニコーチ!」
タケルが言ったもんだから、場内みんなが拍手かっさいだ。すぐに何人かのおじさんが岡田さんのまわりにかけよった。
「コーチ、お久しぶりです!」
元野球部のおじさんたちだ。赤シッポの海神様は、人差し指でタケルを指さしてちょっぴりにらんでる。
「よけいなことを言うな!」って
でも、タケルはそんなこと気にしてない。応援団長は忙しいのだ。
「はい、次の列の方、立ってください」
中原先生の仕事まで取り上げた。
「一コース、給食の尾崎のおばちゃん、二コースうちのとなりの大下さんちのおばあちゃん、三コースはえーっと、そうだこのあいだぼくにアイスをくれた、渡し場の中西のおばちゃんだ。さあみんな白い線まで出て、ダメだよ、もっともっと線の前にそろって。そうそう、さあ準備はいいかい、ヨーイ」
なんて、もう副団長からのアドバイスなんて待っちゃいない。思いついたことをかたっぱしに言っている。夏休みの間にあれだけ練習した応援ダンスなんて意味がない。まるっきり吹っ飛んだ。
体と口が勝手に動くんだ。あの盆踊りのとき、組合長さんと思いっきり動き回った。それを体が覚えているんだ。体も口も自然と動く。大漁ハッピをなびかせて、ホイッスルをピッピッピと吹きながら、「三人ともがんばれ、がんばれ」って、両手に日の丸センスの応援団長が朝礼台の上を踊り回る。
タケルが自由に勝手に進行だ。
みんなゆかいそうな顔をしてタケルのことを見ている。タケルから紹介されたら、一人ひとりがうれしそうにパフォーマンスをしてみせる。みんながタケルの紹介に合わせてくれているんだ。タケルはもう楽しくて仕方ない。
「あっ、徒競走の最後!ぼくも出るんだった。第一コース村上のみな子さん。教室では大人しいのに、外に出たらやたらとはしゃいじゃう人、第二コースは村上のなみ子さん、教室でも外でもとってもはしゃいじゃう人。第三コースがぼくだ!」
走りながらハッピをぬいで、マイクも放ってスタートラインへゴールイン。
「はあはあ~、もう走りすぎて動けないよ」
「さっきのうちの紹介、あれはなんなんよ!」
「そうよ、だいたいうちとみなちゃんのコースは逆じゃろ!」
なんてブツブツ言われながら、ヨーイドン!
なみ子さんとみな子さんは速い!
六年生だもん。タケルが半分ほど走ったら、もう二人ともゴールだ。でも、一人だけで走るタケル、気持ちいいぞ。みんなが応援してくれた。
「タケル、がんばれよ!」
「応援団長、がんばれ!がんばれ!」
「島の宝、タケルくん。最後までがんばって」
ちょっと照れ笑いしながら、でもゴールまで一生懸命走った。
大玉転がしだ。赤と黄と青とで分かれて二人一組で大玉を転がしていく。
これは忙しい。みんなを紹介なんて、目につく人の名前くらいしか言う間がない。あとは「みんながんばれがんばれ」って叫ぶだけだ。そして朝礼台の上で、センスを広げて踊りまわる。あれ、ウリ坊がぽんちゃんと一緒に押してるぞ。どっかから白い大玉を持ってきた。鼻先で大玉を突いて、うまいこと転がすじゃないか。
「ウリ坊、がんばれよ!」
アッ、でもそこのコーンでぐるっと回って帰ってこなくちゃいけないんだぞ。でも、ウリ坊、ぽんちゃんを置き去りにして、そのまんま真っすぐ、ずっと向こうまで転がしていっちゃった。
次は玉入れだ。一つのカゴにみんなで玉を入れていく。みんなで何個入れられるか。もちろんタケルたちも参加した。校長先生も、中原先生もみんな入った。島の人みんながカゴにめがけて玉を投げる。
「去年は八十二個入った。それ以上はいきたいなあ」
PTA会長さんがそう言った。
あれ、モンタがカゴの上にいる。おいおいそこにいちゃじゃまだぞ。玉が入らないよ。いや、でもモンタは飛んできた玉を上手につかんでカゴの中に入れている。うまいぞ!どんどんカゴに玉がたまっていくじゃないか。
ひとーつ、ふたーつ・・・、これが最後の百二十五個だ!
すごいよ、島の人みんなの力で百二十五個。大記録だよ。これまでの最高記録達成だ。カゴがいっぱいで、落ちちゃったのもたくさんあったんだもの。
「やったあ、今年は豊漁、豊作間違いなしじゃあ!」
組合長さんがさけんだ。
最後に盆踊り。みんな盆踊りが好きなんだ。これならみんながよく知っている。朝礼台を真ん中に持って行って、タケルの合図で盆踊りが始まった。
真っ昼間の盆踊りだ。夜の盆踊りとはふんい気が全然ちがう。ちょうちんの明りもワタアメの匂いもない。でも踊ってる人の笑顔は変わらない。歌にあわせて、みんな楽しそうな顔で踊っている。タケルもどんどん調子に乗ってきた。ピッピッピッピッ、青い大漁ハッピをなびかせて、朝礼台で踊りまわる。音も踊りも派手な応援団長だ。
どんなもんだい。お盆の夜の組合長さんより、ぼくの方がずっとうまいぞ!
「みーんな踊れっ、踊れや踊れっ!お盆じゃないのに盆踊り。ホレ、ウリ坊もモンタも、ぽんちゃんも踊れ。ぽんちゃんしっぽをちゃんと立てなきゃ砂まみれ。ほれほれ、ほれほれ、よいよいよいよい。じいちゃんもばあちゃんも、いつも楽しくがんばって。あれっ、向こうでとうさんとかあさんも踊ってる・・・」
アッ、危ないッ!
狭い台の上で、はしゃぎすぎた応援団長。つい、足をすべらせ、すってんころりん。
「フー、あぶないところだったよ」
とっさにぽんちゃんがすべり込んできて、シッポの上にすってんころんだ。
「おーい、応援団長だいじょうぶかあ?」
「今のとっさの宙返りはうまかったなあ」
いつのまにか、ぽんちゃんもウリ坊もモンタもいなくなっていた。
楽しい運動会だったよ。島の人みんなが喜んでくれた。
「タケルくん、ありがとう!」
「いままでで一番楽しい運動会だったよ」
みんな、ニコニコ笑顔で学校から帰って行った。校長先生と中原先生となみ子さんとみな子さんと、校門に立って、みんなの帰りを見送った。
「来年は、タケルくん一人になるけど、もうだいじょうぶよね」
「再来年は、お寺のユキちゃんが入ってくるから、それまでは一人でがんばってね」
なみ子さんとみな子さんがそう言った。
「だいじょうぶ・・・」
これくらいなら一人でだいじょうぶだ、って言いたかったけど、途中でやめた。
一人か・・・。一人はやっぱりさびしいなぁ
タケルはいつまでも、両手にセンスを握って、ホイッスルをピッピと鳴らして踊りながらみんなを見送った。
全校児童三人の運動会なのに、島の人みんなが集まった。
「わあ、島の中にこれだけ人がいるんだ。初めて見る人もいっぱいいる。緊張しちゃうよ」
お年寄りがいっぱいだ。卒業生の中学生や高校生も来ている。
「うちら、小学校で最後の運動会なんよ。タケルくん、がんばろうね!」
なみ子さんが言った。
「いや、タケルくんはふつうでいいんよ。うちらがしっかりがんばるからね」
みな子さんも言った。でも、二人とも声がうわずってる。せっかくのハッピ姿も元気がない。
なみちゃんとみなちゃんこそだいじょうぶかなあ
開会式にみんな集合。ばらばらに並んで、校長先生があいさつして、PTA会長さんもあいさつして、そしていよいよ選手宣誓だ。
タケル、いよいよ朝礼台に上がる。
こんなの、盆踊りのやぐらと一緒じゃないか。あの時はもっと高かった。緊張するなよ!
「今から大運動会を始めます!」と頭の中で何べんも何べんもくり返して言いながら、朝礼台に上がった。
「今から大運動会を始めましたっ!」
勢いをつけて言ってしまって、しまった!あれ?と思った。でも、これくらいまあいいか
運動会、始めましたっ!
進行は応援団長の仕事だ。だから、タケルは運動会の初めから終わりまでマイクを手放せない。でも、進行って意外とゆっくりゆっくりだ。なんたってお年寄りが多いんだ。
「最初の種目は自由参加の徒競走です。参加希望の人は全員が入場門の前に集合してください」
なみ子さんとみな子さんが横から言う通りに、タケルがマイクで言った。
みんなが誘いあいながらぞろぞろ入場門に移動する。タケルが「全員」と言ったのがいけなかったんだろうか。島の人ほぼ全員が入場門に集合した。
入場門の前では、中原先生がてんてこまい。集合した人を並ばせて、スタート地点まで誘導するのが先生の仕事だ。
これが大変だった。次から次にやってくる人たちに、「三人ずつで並んで列を作って」と言ったって、みんなおしゃべりしたり、座り込んだりして、だれも思うように動いてくれない。ニ人の中学生が手伝ってくれて、三人ずつ走るメンバーが決まったところから、順番に座ってもらう。でも、「うちはこの人と走るよ」なんて言ったり、「ワシを一番最初に走らせろ」って言ったりして、勝手に順番を変えてしまう。お年よりってワガママなんだ。
十分くらいたってようやっと入場。中原先生を先頭に、ぞろぞろ歩きながらトラックに入ってきた。最後の人までが並んですわるのがまた時間がかかる。
ようやっと中原先生が一列目の人に合図した。
「第一コース、浜通りの西山のおじいちゃん。がんばってください」
タケルがなみ子さんに言われたまんまに紹介すると、西山のおじいちゃんは両手を思いっきりあげて、「おーいッ」と返事をした。
「第二コース、漁協の売店の松下さん。がんばってください」
今度はみな子さんのいう通りに紹介した。
松下のおねえさん、両手をふって、ぴょんぴょん跳ねている。三人の中ではずっと若い。いかにもスピードの出そうなスタイルだ。きっと楽勝だよ。
さて、三人目。
はて?なみ子さんとみな子さんが困ってしまった。
「あれぇ、あの人だれじゃったかねえ?」
「うちも分からん。島の中では全然見たことがないよ。不審者じゃないよね」
なんだ、知ってるのはタケルだけなのか。
「第三コース、海神様!じゃなくって、元野球部の岡田さん。がんばってください」
海神様は立ち上がって、うつむいたままちょっと手をふった。少しまわりがどよめいた。みんな久しぶりだったんだ。
「位置について、ヨーイ!」
出発のピストルは校長先生の仕事だ。
「ドン!」で、三人が走り出す。海神様は、もうずい分な年だ。ゴールまで走れるのかな?
ところが、海神様が突然変身した。走り出してすぐにマッハを超える全速力!走るフォームなんて、陸上選手みたいだ。顔を上げ、両腕をしっかり振り、おしりから赤いタオルを真っすぐピンと立てている。赤いシッポだ。コーナーもスピードをおとさず、そのままゴール!松下のおねえさんに半周くらい差をつけた。みんな、おどろいてきょとんとしている。
「一着、赤いタオルの岡田さん!さすが名門野球部のオニコーチ!」
タケルが言ったもんだから、場内みんなが拍手かっさいだ。すぐに何人かのおじさんが岡田さんのまわりにかけよった。
「コーチ、お久しぶりです!」
元野球部のおじさんたちだ。赤シッポの海神様は、人差し指でタケルを指さしてちょっぴりにらんでる。
「よけいなことを言うな!」って
でも、タケルはそんなこと気にしてない。応援団長は忙しいのだ。
「はい、次の列の方、立ってください」
中原先生の仕事まで取り上げた。
「一コース、給食の尾崎のおばちゃん、二コースうちのとなりの大下さんちのおばあちゃん、三コースはえーっと、そうだこのあいだぼくにアイスをくれた、渡し場の中西のおばちゃんだ。さあみんな白い線まで出て、ダメだよ、もっともっと線の前にそろって。そうそう、さあ準備はいいかい、ヨーイ」
なんて、もう副団長からのアドバイスなんて待っちゃいない。思いついたことをかたっぱしに言っている。夏休みの間にあれだけ練習した応援ダンスなんて意味がない。まるっきり吹っ飛んだ。
体と口が勝手に動くんだ。あの盆踊りのとき、組合長さんと思いっきり動き回った。それを体が覚えているんだ。体も口も自然と動く。大漁ハッピをなびかせて、ホイッスルをピッピッピと吹きながら、「三人ともがんばれ、がんばれ」って、両手に日の丸センスの応援団長が朝礼台の上を踊り回る。
タケルが自由に勝手に進行だ。
みんなゆかいそうな顔をしてタケルのことを見ている。タケルから紹介されたら、一人ひとりがうれしそうにパフォーマンスをしてみせる。みんながタケルの紹介に合わせてくれているんだ。タケルはもう楽しくて仕方ない。
「あっ、徒競走の最後!ぼくも出るんだった。第一コース村上のみな子さん。教室では大人しいのに、外に出たらやたらとはしゃいじゃう人、第二コースは村上のなみ子さん、教室でも外でもとってもはしゃいじゃう人。第三コースがぼくだ!」
走りながらハッピをぬいで、マイクも放ってスタートラインへゴールイン。
「はあはあ~、もう走りすぎて動けないよ」
「さっきのうちの紹介、あれはなんなんよ!」
「そうよ、だいたいうちとみなちゃんのコースは逆じゃろ!」
なんてブツブツ言われながら、ヨーイドン!
なみ子さんとみな子さんは速い!
六年生だもん。タケルが半分ほど走ったら、もう二人ともゴールだ。でも、一人だけで走るタケル、気持ちいいぞ。みんなが応援してくれた。
「タケル、がんばれよ!」
「応援団長、がんばれ!がんばれ!」
「島の宝、タケルくん。最後までがんばって」
ちょっと照れ笑いしながら、でもゴールまで一生懸命走った。
大玉転がしだ。赤と黄と青とで分かれて二人一組で大玉を転がしていく。
これは忙しい。みんなを紹介なんて、目につく人の名前くらいしか言う間がない。あとは「みんながんばれがんばれ」って叫ぶだけだ。そして朝礼台の上で、センスを広げて踊りまわる。あれ、ウリ坊がぽんちゃんと一緒に押してるぞ。どっかから白い大玉を持ってきた。鼻先で大玉を突いて、うまいこと転がすじゃないか。
「ウリ坊、がんばれよ!」
アッ、でもそこのコーンでぐるっと回って帰ってこなくちゃいけないんだぞ。でも、ウリ坊、ぽんちゃんを置き去りにして、そのまんま真っすぐ、ずっと向こうまで転がしていっちゃった。
次は玉入れだ。一つのカゴにみんなで玉を入れていく。みんなで何個入れられるか。もちろんタケルたちも参加した。校長先生も、中原先生もみんな入った。島の人みんながカゴにめがけて玉を投げる。
「去年は八十二個入った。それ以上はいきたいなあ」
PTA会長さんがそう言った。
あれ、モンタがカゴの上にいる。おいおいそこにいちゃじゃまだぞ。玉が入らないよ。いや、でもモンタは飛んできた玉を上手につかんでカゴの中に入れている。うまいぞ!どんどんカゴに玉がたまっていくじゃないか。
ひとーつ、ふたーつ・・・、これが最後の百二十五個だ!
すごいよ、島の人みんなの力で百二十五個。大記録だよ。これまでの最高記録達成だ。カゴがいっぱいで、落ちちゃったのもたくさんあったんだもの。
「やったあ、今年は豊漁、豊作間違いなしじゃあ!」
組合長さんがさけんだ。
最後に盆踊り。みんな盆踊りが好きなんだ。これならみんながよく知っている。朝礼台を真ん中に持って行って、タケルの合図で盆踊りが始まった。
真っ昼間の盆踊りだ。夜の盆踊りとはふんい気が全然ちがう。ちょうちんの明りもワタアメの匂いもない。でも踊ってる人の笑顔は変わらない。歌にあわせて、みんな楽しそうな顔で踊っている。タケルもどんどん調子に乗ってきた。ピッピッピッピッ、青い大漁ハッピをなびかせて、朝礼台で踊りまわる。音も踊りも派手な応援団長だ。
どんなもんだい。お盆の夜の組合長さんより、ぼくの方がずっとうまいぞ!
「みーんな踊れっ、踊れや踊れっ!お盆じゃないのに盆踊り。ホレ、ウリ坊もモンタも、ぽんちゃんも踊れ。ぽんちゃんしっぽをちゃんと立てなきゃ砂まみれ。ほれほれ、ほれほれ、よいよいよいよい。じいちゃんもばあちゃんも、いつも楽しくがんばって。あれっ、向こうでとうさんとかあさんも踊ってる・・・」
アッ、危ないッ!
狭い台の上で、はしゃぎすぎた応援団長。つい、足をすべらせ、すってんころりん。
「フー、あぶないところだったよ」
とっさにぽんちゃんがすべり込んできて、シッポの上にすってんころんだ。
「おーい、応援団長だいじょうぶかあ?」
「今のとっさの宙返りはうまかったなあ」
いつのまにか、ぽんちゃんもウリ坊もモンタもいなくなっていた。
楽しい運動会だったよ。島の人みんなが喜んでくれた。
「タケルくん、ありがとう!」
「いままでで一番楽しい運動会だったよ」
みんな、ニコニコ笑顔で学校から帰って行った。校長先生と中原先生となみ子さんとみな子さんと、校門に立って、みんなの帰りを見送った。
「来年は、タケルくん一人になるけど、もうだいじょうぶよね」
「再来年は、お寺のユキちゃんが入ってくるから、それまでは一人でがんばってね」
なみ子さんとみな子さんがそう言った。
「だいじょうぶ・・・」
これくらいなら一人でだいじょうぶだ、って言いたかったけど、途中でやめた。
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