白色のダリア

ななしの

文字の大きさ
2 / 25
再会

しおりを挟む
穏やかな春の日曜日の、陽が落ち始めた頃。
全寮制高校の2学年に進級し、寮の部屋替えがされた初日からルームメイトの九条が一向に見当たらず、同室者としての妙な責任感からとりあえず校内を探そうとウロウロしていた。
学級数の多いこの学校では、同級生を全員把握することは無理だ。
今年の春からルームメイトになった九条のことも、もちろん知らない。
「人に聞きながら探せば見つかるだろう」と軽い気持ちで出てきたが、尋ねる人みんなに「知らない」と言われてしまった。


「全然見つからないんだけど…!」


お腹も空いてきたし、もう諦めて戻ろうとした時、学園門の近くの小さな茂みから細々とした唸り声が聞こえた。
何だろうと恐る恐る覗くと、地面に男の人が二人、呻きながら突っ伏していた。
どの人も見たことのない顔だ。
そしてその近くに立つ長身の男の人。
茶色の髪はハーフアップにされていて、その間から大きめのピアスが見えた。
綺麗な顔をしているのに砂らしきもので少し汚れているようで、口元やら頬やらを拭いつつこっちに気づいて振り返った。

ばちっと目が合った。
その瞬間、お互いに息を呑んだのが分かった。

どこかで会ったことがあるような気がする。
…いや、でもどこでだっけ?
同じ寮生だし、すれ違ったことがあるのだろうか。

そんな事を考えていると、相手の男の子は視線を外してしまった。
そこで俺もやっと我に返った。


「あの、大丈夫ですか?何があったの?」


動揺しながらも駆け寄ろうとしたが、それよりも早くその茶髪の男の人が俺の方に近づいてきた。


「ここ離れるよ」


それだけ言うと、俺の手を引いて逆方向へ引っ張った。
彼の手はザラザラしていて、どうやら砂が付いているらしかった。


「待って…!あの人たちはあのままでいいんですか?もしかして喧嘩?」

「そんなところ。あいつ等はここの生徒じゃないから放っとけば勝手に帰るよ」

「え、なんで…」


『他校の生徒がここに?』と続けようとしたところで、それよりも彼の腕に切り傷を見つけてしまい注意が逸れた。


「腕、怪我してますよ。保健室行きましょう」

「ん―?平気だよ」

「ダメ、行きましょう!手当はしないと」

「だから平気だって」


声が穏やかで言うことを聞いてくれそうな雰囲気があるのに、実際には全く聞く耳をもってくれない。
これは押し問答になってしまうと思った俺は、一か八かに出た。


「寮長にこのこと言っちゃいますからね。厳しい、怖いで有名な壬生って奴なんですよ、今年度から」

「…それは面倒だな。分かったよ。ただし保健室は行かない。部屋でやる」


わずかにしかめっ面をして、渋々と言った感じで俺に同意した。
寮の入り口が近づいてきたところで、彼はやっと歩く速度を落とした。


「部屋、何階?あんたの部屋でやろう」


こっちを見ずにそう言ってエレベーターに乗り込む。


「えっと…8階」


そう応えれば、訝しげに一瞬俺を見た。
どうしたんだろうと思ったが、すぐに目をそらされたので黙っていることにした。

8階に着いて、今日移動してきたばかりの部屋の前まで向かう。
途端、彼はいきなり足を止めた。


「…805?あんた、もしかしてルームメイト?」

「え、じゃあ君が九条くん?」

しばらくの間、二人の間に沈黙が流れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年。 かつて自分を救った玲に再会した静は玲に対して同じ苦しみを味合わせようとする。

処理中です...