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吟遊詩人
しおりを挟むミーナはまじまじと俺を見て、ニコリとしながら俺に職業を聞いてきた。
「どんな仕事をしてるの?」
「仕事?え~、ん~」
返事に困る、学生と答えるのが正解なのだろうか、この身なりは学生にしか見えないであろう、しかしここは無職だろうか……ニートが正解なのか。
「おそらく旅人ね」
「おいおい、勝手に決めんなよ、学生だよ!」
「ギャンベル魔法学校の学生ね」
「勝手に決めるなよ!」
魔法学校?便利なものがこの世界にはあるのか、制服からそう見えたのであろう。
「私が街外れを歩いていたら、魔法陣からユウキが落ちてきて泡を吹いていたわ、あれは召喚、運命の出会いよ」
「運命なんか感じてねーよ、誰かが勝手に召喚したんだろうよ」
こいつの最初から親しげな振る舞いが鼻につく、突然落ちて現れたというのに、俺のことを全く疑いもしない痛い子だ。
魔物が存在する世界てのが気になるが、RPG風の異世界ってやつか、格好からして俺だけが浮いているじゃないか!
「スライムがいるのか? ツチノコすら見たことないのに……」
「ツチノコは何か分からないけれど、スライムならいるわよ、数百年前に魔物を封じ込めた神ペテロが悪魔レヴィアを封じていた重厚な扉の鍵をうっかり閉め忘れて逃げ出したの、そして魔物は全世界に広がりって……あくまでも噂なんだけどね」
ふんぞり返ってはなして来やがる、なんだこの不確定要素満載な会話は……ソッコーでオレオレ詐欺にひっかかりそうな奴だな。
看板などの文字はさっぱり分からんが、今更だけど言葉は通じる、チートスキルなどの現実離れした力を使えるようになるのか?
俺はとりあえずポケットをまさぐって持ち物を確認してみる、興味本位で手を出したタバコとライター、財布には小銭が数枚、タバコは水を掛けられた事で無駄になってしまった、体に悪いのは分かっていたから、いいきっかけだ、タバコは握りつぶした。
ほぼほぼ使えそうなものはない、俺にも魔法は覚えられるのか、異世界で一番のご褒美といえばチートスキルだよな、ここはひとまず……
「使えねー物ばっか」
「えっ?」
「いや、こっちの話、それより今の俺の能力を知りたい」
「職業案内所で仕事探してみたら?」
「ーーーー仕事?」
「私はそこで吟遊詩人になったの、ユウキも何か探してみたら?魔法学校もいいわね」
「吟遊詩人?なんだよそのつかえね~職業」
「使えねーってなによ!!」
怒った顔も可愛いじゃねーか、このままいじめてやるか、しかしこの世界で遊び人の次に使えねー仕事の定番じゃないのか……こんな職業を選ぶ奴の気が知れねー。
とりあえず明日にでも職業案内所に行ってみるか。
召喚者の俺ならチートスキルでチョチョイと英雄になれるだろ、淡い期待を抱く、にやつく。
「ハローワークだな、ミーナは魔法を使えるのか?」
「なによ、にやついちゃって、ハローワークは知らないけど、魔法は今、使わないようにしてる……」
「どうして?」
「たいした理由はないわ、まっそのうち分かるわよ」
不思議な言い回しをしてきた。
「今日帰るとこはあるの?とりあえずお腹減ったでしょしばらく家に来ない?晩御飯食べていけばいいわ、服も着替えないと風邪ひくわよ」
そういえばご飯を食べてる途中だった……
あたりはすっかり夕焼けで赤く染まっている。
おじーとミーナと俺は馬小屋の隣にある家のリビングに移動した。
「ご飯作るわね」
ミーナは晩御飯の支度をはじめる、薪を使った台所も情緒があっていい。
「ご飯できたわよ、いっぱい食べてね」
しばらくすると食卓に呼ばれた。
「サンキュー、お腹減ってたんだ~いただきま~す」
「おうぇっ」えずいた……
ミーナの手料理は不味い。
たまったもんじゃない、こいつの料理が不味いのか、この世界の料理が俺の口には合わないのか、青い顔をして鼻を摘まんで食べた。
「顔色が悪いわよ」
「ーーーー」
こりゃあ毎日外食か、自分で作ることだな、今度正直に言ってやるまずいと。
「これ、おじいちゃんの服だけど、乾くまでこれ着てて」
隣の空いたイスに掛けられた服、それはぼろ麻布に首と腕部分に穴があいた服とは言えないものだ、こんな服縄文人も着ていないだろう。
「本当におじーは毎日これ着てんのか?」
オジーと同じ服を着せられる羽目になる。
可笑しな世界だ、現世に戻れないとなると、どうしてここで生活をするのか考なければならない、帰る方法はあるのか……この世界はどんな世界なんだ、クエストをこなし、RPGの世界であれば、魔王を討伐すれば帰れるのか?現世で味わった屈辱をこの世界で返したい。
「ユウキはどこから来てどこへ向かってるの?」
キタキタ!この質問、日本人と言えば分かってくれるだろう。
俺は人差し指を立てて自信満々に答えた。
「フロムジャパン!そして行くあてはなーい!」
ミーナは首を傾げ疑問符を浮かべている、おそらくジャパンを知らないのであろう、地球でジャパンを知らないのは無知蒙昧なやつしかいないはず。
「そのジャパンは遠いの近いの?」
「本当にメイド・イン・ジャパンを知らないのか?俺も含めて世界一だぜ最高なんだぜ、ここからどれくらいあるのか分からないけど」
「ユウキは世界一ではないわね、世界一は私よ!」
なんやこいつ……さっきから話がかみ合ってないですけど。
この世の世界地図があるらしい、ミーナは壁に貼ってある四角い地図を見せてくれた。
「メイドさんは家には居ないけど……これが世界地図よ」
今まで見たこともない地図に6つの大小の大陸が描かれている、俺は驚き、肩を落とした、この地図にはジャパンどころか見たこともない大陸ばかりだ、ますます現世に帰れない事が現実味を帯びてきた……帰れない事に気づかされた。
ミーナは地図の右下を指差し今の場所を教えてくれた。
「ここがダビデよ、世界は広いわよ、ダビデから一番遠いここが悪魔が逃げ出したところらしいわ、ここは悪魔から一番遠い場所だけど、もう配下の魔物は少しずつこの村の周りにも来てるのよ」
「ミーナ、ひとつ教えてくれ、誰も魔物や悪魔を倒そうとしないのか?」
「魔王には、配下がたくさんいて、その配下にも部下が……もう数え切れないくらいたーくさん、だから独りはムリよ、沢山の戦士がパーティーやギルドを作っては倒れてるの、庶民の私達が勝てる訳ないのこれもうわさ話を聞いただけだけどね」
でた、また知ったかぶり……痛い。
「ミーナ、俺に魔法教えてくれ!そして、悪魔を倒しに行こうぜ!ここから抜け出す方法はゲームだとすると敵を倒すのみ」
「魔法は無理ね、まずは職業案内所で魔法使いか、僧侶、吟遊詩人、賢者にならないとね、他にもいろいろあるけれど、まずは職業探しね」
とりあえず職業案内所へ向かおう、そして俺の手にはしっかりフィギュアが握りしめた。
しかしこいつ使えねー。
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