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しおりを挟む「遅いよ!!」
「わりーな。ところで今日の朝ごはんは何だ?」
「今日は食パンにベーコンエッグ、それとサラダだよ」
「おー!美味そうだな!」
今日は妹が朝食を作る番だ。現在、母さんと父さんは結婚記念日3周年で長期間の海外旅行中だ。父さんは「監視役」という仕事があるのになんて呑気(のんき)なんだ。おめでたい話だけど。
まあ、しかし、「監視役」の代理は俺と決まっているから大丈夫だろうけど。
そう思いつつ、俺はカチッと、リモコンのスイッチを押した。
《現在、新宿にある銀行で立てこもり事件が発生中。犯人は建物の中にいたお客様と従業員を人質にしています》
《現場の中野(なかの)アナ、人質は無事なのでしょう?》
《はい。今の所は無事です。犯人は1時間以内に現金10億円を要求しています。守れなかった場合、人質を皆殺しにする、と言っています。こちらは以上》
《今お伝えしたように現在、新宿にある銀行で立てこもり事件が発生しております。大変危険です。近隣の住民は近づかないようにしてください。これで朝のニュースを終わります》
「ここから近いな。白波、危ないから近づくなよ」
「・・・」
「おい、聞いているのか?」
「え?あ・・・うん!ちゃんと聞いてるよ」
「まさか助けに行こうだなんて考えていないだろうな」
「だ、大丈夫だって。そんな無茶なことしないから」
白波は正義感が人一倍高い。それ故、無茶を承知で何ごとにも取り組んでしまう。彼女の長所でもあるが欠点でもある。だから、俺は心配なのだ。
「今日は入学式なんだから」
「うん。分かってる。じゃあ、いってきます」
そう言うと、白波は家を出た。俺は食事を済ませ、食器を洗った。
さっきのニュースが気になり、またテレビを点けた。
やはり、さっきの銀行立てこもり事件のニュースがやっていた。
俺は目を疑った。そこには白波の姿あったからだ。これはまずい。非常にまずい。
何がまずいかと言うと、先ほども説明はしたが白波の魔法力は異常なほどに高すぎるのだ。制御は多少は出来ると思う。それにこちらからも抑えつけてはいる。しかし、それでも人を一瞬でチリとかしてしまうほどの魔法力だ。相手が一般人だろうが魔導師だろうが関係ない。いくら、防御系統の魔法を張ったって一瞬で、だ。
それほど、やばいのだ。
《何と言うことでしょう。一人の少女が警察官を押し切り銀行の中へと入ってしまいました》
「何で行ったかなー。あれほど行くなって言っといたのに」
白波のことだ。行くことなんて大体予想はついていた。
俺は使用できる数少ない魔法の一つ、古代魔法【空間転移(テレポーテーション)】の術式を展開させた。
「空間転移(テレポーテーション)」
魔法を起動式を展開したところで、家にプルルルル、と一本の電話がかかった。
◆◇新宿、銀行前にて◇◆
「どいて!」
「ここから先は危険です!近づかないでください」
「いいからここを通して!」
そう言うと、白波は銀行前にいた警察官を押し切り銀行の中へと入っていったのだった。
◆◇横浜、警察庁重要会議室にて◇◆
「おい!まだ、身代金10億円を用意できんのか!」
「はい。申し訳ありません。要求されたお金が莫大な量なので用意するのに相当な時間がかかると思われます」
「早くしないと人質が殺されるぞ!」
「そんなこと分かっておる!量が量がすぐには用意できん」
「わ、渡邊警察庁長官...!!!」
会議室の重い扉を開け、入っていたのは渡邊守人(わたなべしゅうじん)警察庁長官だった。警察法で階級制度を適用されていない唯一の警察官であり事実上、警察組織の最高位である。
「な、何故、警察組織の最高位である渡邊警察庁長官がこちらへ」
「おい!その言葉、渡邊警察庁長官に失礼だろう!」
「も、申し訳ありません!警察官である以上、当然の行いでありました。ご無礼お許しください」
「かまわんよ。一般人が人質に取られている以上、警察官である我々が出るのは当たり前だ」
「では、さっそく本題に入ろうか」
「グレイ・潤・フォーカス少佐、説明を頼む」
「はい」
そう言うと、フォーカス少佐は会議室の電気を消し、モニターの映像とともに現在の状況の説明をはじめた。
「現在、新宿にある銀行にて「ダーク・フォックス」と名乗る武装集団が立てこもり、人質を盾に身代金10億円を要求しております」
「そうか。1時間以内に用意することは可能か?」
「厳しいかと思われます。30分が経過し現在3億5500万円しか用意できていません。あと30分で7億円近いお金を用意するのはほぼ不可能です」
「お金を用意するのは厳しいな。犯人と人質の各人数を教えてくれ」
「はい。現場にいる魔導師によると「ダーク・フォックス」と名乗る武装集団は7名、人質は12名です。魔法【透視(クリア)】を使い、銀行内部を調べたのでこの情報は確かかと」
「うむ。そうか。では、フォーカス少佐。君の考えを聞かせてもらおう」
「はい。喜んで。私は要求された身代金10億円を集めるのは不可能だと考えています。ですから、現場に魔法【人体透明化(ミストボディ)】が使える魔導師を送ることが最善の方法だと考えています」
「そんな高等魔法使える人物がいるのか?」
「ええ。いますよ、1人」
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