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7 島の探索
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槍を肩に担ぎながら、森の奥へと足を踏み入れた。異世界に放り込まれた以上、ただ闇雲に動くのは得策ではない。まずは地形を把握し、危険と資源の位置関係を把握することが重要だ。
木々の間を抜けると、目の前に奇妙な光景が広がっていた。
岩が、浮いている。
大小さまざまな石が、宙にぷかぷかと漂っていた。風に流されるでもなく、何かに吊るされているわけでもなく、ただ、そこに「在る」という感じで静かに浮かんでいる。
「……は?」
信じられない光景に思わず呆気にとられる。重力とは何か? 物理法則とは何か? そんな当たり前の概念が、ここでは当たり前ではないらしい。
試しに槍の柄で突いてみると、浮遊岩はゆるやかに揺れた後、また元の位置に戻った。手を伸ばしてつかもうとすると、なぜか指先が岩をすり抜けそうな錯覚に襲われる。まるでそこに結界でも張られているような、目には見えない膜のような何かが、俺の手を拒んでいるかのようだった。
「これは……うかつに触るべきじゃないな」
異世界で妙なものに迂闊に手を出せば、命を落としかねない。とりあえず、この浮遊岩の存在は頭の片隅に置いておくことにした。
慎重に森の奥へと進むと、さらに不可解なものが目に入った。
根が、動いている。
まるで大蛇のようにのたうつ根が、大地の上を這っていた。ごつごつとした幹は岩のように硬そうで、樹皮には無数のヒビが走っている。しかし、それが微かに蠢くのを俺はこの目で見た。
風のせいか? いや、そんなはずはない。風で木の根が動くなど、ありえない。これは、確実に「生きている」。
じっと観察していると、根の先端がずるりと地面を這い、ゆっくりと持ち上がった。その動きはまるで、寝ぼけた動物がまどろみながら伸びをしているようだった。
俺は反射的に槍を構えた。
この世界では木でさえも、油断ならない存在なのか? もしこの根が獲物を絡め取るような性質を持っていたら──俺はたちまち、逃げ場を失う。
俺が固唾をのんで見守る中、大樹は大きく身じろぎした。枝葉がざわざわと揺れ、微かに土が鳴る音がする。
しかし、それ以上動く気配はない。まるで、俺の存在を確認した上で「まあいいか」とでも言うように、ゆったりと静まった。
「……怒らせないほうがよさそうだな」
俺は慎重に後ずさりし、大樹から距離を取る。
そのまま森を歩き続けると、今度は奇妙な果実を見つけた。
それはまるでガラス細工のように透き通っており、内部には青白い光を放つ種が浮かんでいる。果実全体が淡く光を帯び、周囲にほのかな燐光を落としていた。
試しに指先で弾いてみると、ぽんっと軽やかな音が響く。
「食えるのか……?」
いや、待て。ここは異世界だ。下手に食べて、毒でもあったら洒落にならない。
俺は慎重に果実をナイフで割ってみた。
すると、中からとろりとしたゼリー状の果肉が溢れ出し、同時にふわりと甘い香りが広がった。
直感が囁く──これは、食える。
恐る恐る一滴、指先につけて舐めてみる。
──甘い。
単なる甘さではない。まるで森の朝露を凝縮したかのような、澄んだ甘さだった。
これは、異世界の食糧として使えそうだ。保存が効くかどうかはわからないが、少なくとも飢えをしのぐ手段としては悪くない。
俺はその果実をいくつか収穫し、袋に詰める。
探索を続けるうちに、さらに驚くべきものを発見した。
遠くに、巨大な遺跡のようなものが見える。
半ば崩れかけた石造りの建造物が、森の奥深くにそびえていた。
「……まさか、誰かが住んでいたのか?」
この島が単なる無人島ではないのは確かだ。文明の痕跡がある以上、かつてここに人間──もしくは、それに類する何者かが存在していたのは間違いない。
俺はしばし立ち尽くし、目の前の光景を噛み締める。
空に浮かぶ岩、動く大樹、発光する果実、そして謎の遺跡。
この島は、何かを隠している。
──俺は、いったいどんな場所に迷い込んでしまったんだ?
木々の間を抜けると、目の前に奇妙な光景が広がっていた。
岩が、浮いている。
大小さまざまな石が、宙にぷかぷかと漂っていた。風に流されるでもなく、何かに吊るされているわけでもなく、ただ、そこに「在る」という感じで静かに浮かんでいる。
「……は?」
信じられない光景に思わず呆気にとられる。重力とは何か? 物理法則とは何か? そんな当たり前の概念が、ここでは当たり前ではないらしい。
試しに槍の柄で突いてみると、浮遊岩はゆるやかに揺れた後、また元の位置に戻った。手を伸ばしてつかもうとすると、なぜか指先が岩をすり抜けそうな錯覚に襲われる。まるでそこに結界でも張られているような、目には見えない膜のような何かが、俺の手を拒んでいるかのようだった。
「これは……うかつに触るべきじゃないな」
異世界で妙なものに迂闊に手を出せば、命を落としかねない。とりあえず、この浮遊岩の存在は頭の片隅に置いておくことにした。
慎重に森の奥へと進むと、さらに不可解なものが目に入った。
根が、動いている。
まるで大蛇のようにのたうつ根が、大地の上を這っていた。ごつごつとした幹は岩のように硬そうで、樹皮には無数のヒビが走っている。しかし、それが微かに蠢くのを俺はこの目で見た。
風のせいか? いや、そんなはずはない。風で木の根が動くなど、ありえない。これは、確実に「生きている」。
じっと観察していると、根の先端がずるりと地面を這い、ゆっくりと持ち上がった。その動きはまるで、寝ぼけた動物がまどろみながら伸びをしているようだった。
俺は反射的に槍を構えた。
この世界では木でさえも、油断ならない存在なのか? もしこの根が獲物を絡め取るような性質を持っていたら──俺はたちまち、逃げ場を失う。
俺が固唾をのんで見守る中、大樹は大きく身じろぎした。枝葉がざわざわと揺れ、微かに土が鳴る音がする。
しかし、それ以上動く気配はない。まるで、俺の存在を確認した上で「まあいいか」とでも言うように、ゆったりと静まった。
「……怒らせないほうがよさそうだな」
俺は慎重に後ずさりし、大樹から距離を取る。
そのまま森を歩き続けると、今度は奇妙な果実を見つけた。
それはまるでガラス細工のように透き通っており、内部には青白い光を放つ種が浮かんでいる。果実全体が淡く光を帯び、周囲にほのかな燐光を落としていた。
試しに指先で弾いてみると、ぽんっと軽やかな音が響く。
「食えるのか……?」
いや、待て。ここは異世界だ。下手に食べて、毒でもあったら洒落にならない。
俺は慎重に果実をナイフで割ってみた。
すると、中からとろりとしたゼリー状の果肉が溢れ出し、同時にふわりと甘い香りが広がった。
直感が囁く──これは、食える。
恐る恐る一滴、指先につけて舐めてみる。
──甘い。
単なる甘さではない。まるで森の朝露を凝縮したかのような、澄んだ甘さだった。
これは、異世界の食糧として使えそうだ。保存が効くかどうかはわからないが、少なくとも飢えをしのぐ手段としては悪くない。
俺はその果実をいくつか収穫し、袋に詰める。
探索を続けるうちに、さらに驚くべきものを発見した。
遠くに、巨大な遺跡のようなものが見える。
半ば崩れかけた石造りの建造物が、森の奥深くにそびえていた。
「……まさか、誰かが住んでいたのか?」
この島が単なる無人島ではないのは確かだ。文明の痕跡がある以上、かつてここに人間──もしくは、それに類する何者かが存在していたのは間違いない。
俺はしばし立ち尽くし、目の前の光景を噛み締める。
空に浮かぶ岩、動く大樹、発光する果実、そして謎の遺跡。
この島は、何かを隠している。
──俺は、いったいどんな場所に迷い込んでしまったんだ?
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