16 / 138
16 布の確保
しおりを挟む
水の運搬問題も解決し、俺の異世界サバイバルはさらに快適になっていった。狩猟、漁、農業をバランスよく行い、水を確保し、調理によって食事に不思議な効果を持たせることもできるようになった。だが、ここで新たな問題が発生する。
「……寒い」
異世界の気候は予測が難しい。日中は陽が照りつけ、汗をかくほど暑いのに、夜になると驚くほど冷え込む。シェルターを小屋にアップグレードしたとはいえ、隙間風が容赦なく入り込んでくる。これはいよいよ衣服を作る必要がある。
「よし、動物の皮をなめして服を作ろう」
幸い、六本足ウサギ(仮)や、森で仕留めた獣の皮がいくつかある。まずはナイフで余分な肉を削ぎ落とし、天日干しにする。これである程度の硬さが出るはずだ。
だが、ここで問題が発生した。
「……硬すぎる」
完全にカチカチなのだ。いや、硬いというより「石に近い」。手で曲げることなど到底不可能で、試しにナイフで削ろうとしても刃が立たない。
「これ、服っていうか盾では?」
異世界の動物の皮は、通常の革とは違う特性を持っているらしい。つまり、このままでは着られない。
「なんとか柔らかくする方法はないか……」
俺は再び森へと向かい、何か使えそうなものを探すことにした。
そして、そこで奇妙なものを発見する。
それは、岩陰に生えていた青白く光る苔だった。
夜になると、ほんのりと発光し、まるで微細な星屑が地面に広がったかのような美しい輝きを放っている。試しに触れてみると、ひんやりとしており、手に吸い付くような独特の質感があった。
「……これ、使えそうだな」
俺はナイフで少し削り取り、試しに硬化した皮に擦り付けてみる。すると──
──スッ。
「……ん?」
皮の表面が、じわりと柔らかくなった。
「まさか……?」
試しに苔を水に溶かし、その液体に皮を浸してみる。数時間後、取り出してみると──
「……おお、これは!」
石のように硬かった皮が、驚くほどしなやかになっている。まるで長年使い込まれた革製品のような、しっとりとした手触りだ。どうやら、この苔には硬質化したものを軟化させる作用があるらしい。
「これで服が作れる!」
俺はさっそく、この柔らかくなった革を縫い合わせ、簡単な防寒着を作ることにした。異世界の夜の寒さにも耐えられる、厚手の革製ジャケットが完成した。
だが、この苔にはもう一つ、奇妙な性質があった。
夜になると、微かに「囁く」のである。
「……ん?」
最初は風の音かと思った。だが、耳を澄ますと、確かに何かがささやくような、かすかな音が聞こえる。
──サワ……サワ……
まるで風が木の葉を撫でる音にも似ているが、どこか不自然だった。
「……まさか、この苔、生きてるのか?」
発光し、皮を柔らかくし、夜になると囁く苔。
「この世界の自然、やっぱりおかしいな……」
だが、ともかく防寒具は完成した。こうして俺の異世界生活はまた一歩、快適な方向へと進んだのだった。
「……寒い」
異世界の気候は予測が難しい。日中は陽が照りつけ、汗をかくほど暑いのに、夜になると驚くほど冷え込む。シェルターを小屋にアップグレードしたとはいえ、隙間風が容赦なく入り込んでくる。これはいよいよ衣服を作る必要がある。
「よし、動物の皮をなめして服を作ろう」
幸い、六本足ウサギ(仮)や、森で仕留めた獣の皮がいくつかある。まずはナイフで余分な肉を削ぎ落とし、天日干しにする。これである程度の硬さが出るはずだ。
だが、ここで問題が発生した。
「……硬すぎる」
完全にカチカチなのだ。いや、硬いというより「石に近い」。手で曲げることなど到底不可能で、試しにナイフで削ろうとしても刃が立たない。
「これ、服っていうか盾では?」
異世界の動物の皮は、通常の革とは違う特性を持っているらしい。つまり、このままでは着られない。
「なんとか柔らかくする方法はないか……」
俺は再び森へと向かい、何か使えそうなものを探すことにした。
そして、そこで奇妙なものを発見する。
それは、岩陰に生えていた青白く光る苔だった。
夜になると、ほんのりと発光し、まるで微細な星屑が地面に広がったかのような美しい輝きを放っている。試しに触れてみると、ひんやりとしており、手に吸い付くような独特の質感があった。
「……これ、使えそうだな」
俺はナイフで少し削り取り、試しに硬化した皮に擦り付けてみる。すると──
──スッ。
「……ん?」
皮の表面が、じわりと柔らかくなった。
「まさか……?」
試しに苔を水に溶かし、その液体に皮を浸してみる。数時間後、取り出してみると──
「……おお、これは!」
石のように硬かった皮が、驚くほどしなやかになっている。まるで長年使い込まれた革製品のような、しっとりとした手触りだ。どうやら、この苔には硬質化したものを軟化させる作用があるらしい。
「これで服が作れる!」
俺はさっそく、この柔らかくなった革を縫い合わせ、簡単な防寒着を作ることにした。異世界の夜の寒さにも耐えられる、厚手の革製ジャケットが完成した。
だが、この苔にはもう一つ、奇妙な性質があった。
夜になると、微かに「囁く」のである。
「……ん?」
最初は風の音かと思った。だが、耳を澄ますと、確かに何かがささやくような、かすかな音が聞こえる。
──サワ……サワ……
まるで風が木の葉を撫でる音にも似ているが、どこか不自然だった。
「……まさか、この苔、生きてるのか?」
発光し、皮を柔らかくし、夜になると囁く苔。
「この世界の自然、やっぱりおかしいな……」
だが、ともかく防寒具は完成した。こうして俺の異世界生活はまた一歩、快適な方向へと進んだのだった。
96
あなたにおすすめの小説
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる