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41 増え続けるウサギ
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異世界において、ウサギというものはずいぶんと分をわきまえない生き物らしい。もとより六本足という形態で生まれ落ちた時点で相当な異端児であったはずなのに、彼らはさらに一線を超えた。そう、ウサギというものは草を食み、すばしこく跳ね回り、肉食獣の餌としての生を全うするのが本来の宿命である。それがどうだ。俺の目の前には、木の枝を杖のように抱え、整然と並ぶ六本足ウサギ(仮)たちの姿があった。
──何を隠そう、彼らは進化したのである。
俺の脳裏には、これまでの奇妙な出来事の数々が駆け巡る。魔素の影響か、温泉の効能か、はたまたこの村に漂う文明の香りに感化されたのか。いずれにせよ、六本足ウサギ(仮)はもはやただのウサギではなかった。あるものは木の実を器用に仕分け、あるものは葉っぱを丁寧に並べて干し草を作り、あるものは見慣れぬ図形を地面に描いて、仲間同士で「何か」を議論している。
──いや、これはもうウサギの範疇を超えているではないか。
「おい、お前ら……何をしているんだ?」
俺がそう声をかけると、ウサギたちは一斉に動きを止めた。そして、彼らの中心から、一際堂々とした一匹がゆっくりと前へ出る。
通常の六本足ウサギ(仮)よりも一回り大きく、毛並みは妙に整っており、瞳には奇妙な知性の光が宿っていた。こいつが、いわゆる「群れのリーダー」なのだろう。
そのウサギは、まるで「ふむ」とでも言うように前足を組み、しばし俺を見上げた。そして、おもむろに、
「グ、ル、ル……」
と低い声を発した。
──喋った。
いや、喋ったというより、「発声を試みた」というべきか。言葉にはなっていないが、明らかに意志を持った声である。
「……お前、俺の言葉を理解しているのか?」
俺がそう訊くと、ウサギはゆっくりと頷いた。
──頷いた。
いや、待て。ウサギはそういう動作をする生き物だったか? 俺は自分の目を疑うが、リーダーウサギは、さらに前足を上げ、地面に何かを描き始める。
それは、どう見ても「文字」だった。
文字とは言っても、俺の知る文字ではない。しかし、ある種の法則性を持って並べられているのは明白だった。
「お、おい、セリア……!」
俺は慌ててセリアを呼びつけた。彼女は面倒くさそうに近寄ってきて、俺の指差す地面を覗き込む。
「これは……原始文字?」
「いや、ウサギが文字を書くのがそもそもおかしいんだよ!」
セリアは少し考え込んだあと、呆れたように肩をすくめた。
「魔素の影響でしょうね。知能が向上し、言語体系を獲得しようとしているのかもしれないわ」
「いや、それはわかるが……」
俺は唸りつつ、地面の文字に目を戻した。リーダーウサギはじっと俺の反応を窺っている。彼は何を伝えようとしているのか?
俺は慎重に、描かれた図形を辿る。
そこには、「群れ」「協力」「発展」といった概念を象徴するような記号が並んでいた。そして最後に、単純な矢印が俺のほうを向いている。
──つまり、「我々はお前と共にある」
そういうことなのか?
俺はしばし考え込み、そして決意した。
「……わかった。お前たちは、もうただのウサギじゃない」
リーダーウサギは満足げに頷いた。
──何を隠そう、彼らは進化したのである。
俺の脳裏には、これまでの奇妙な出来事の数々が駆け巡る。魔素の影響か、温泉の効能か、はたまたこの村に漂う文明の香りに感化されたのか。いずれにせよ、六本足ウサギ(仮)はもはやただのウサギではなかった。あるものは木の実を器用に仕分け、あるものは葉っぱを丁寧に並べて干し草を作り、あるものは見慣れぬ図形を地面に描いて、仲間同士で「何か」を議論している。
──いや、これはもうウサギの範疇を超えているではないか。
「おい、お前ら……何をしているんだ?」
俺がそう声をかけると、ウサギたちは一斉に動きを止めた。そして、彼らの中心から、一際堂々とした一匹がゆっくりと前へ出る。
通常の六本足ウサギ(仮)よりも一回り大きく、毛並みは妙に整っており、瞳には奇妙な知性の光が宿っていた。こいつが、いわゆる「群れのリーダー」なのだろう。
そのウサギは、まるで「ふむ」とでも言うように前足を組み、しばし俺を見上げた。そして、おもむろに、
「グ、ル、ル……」
と低い声を発した。
──喋った。
いや、喋ったというより、「発声を試みた」というべきか。言葉にはなっていないが、明らかに意志を持った声である。
「……お前、俺の言葉を理解しているのか?」
俺がそう訊くと、ウサギはゆっくりと頷いた。
──頷いた。
いや、待て。ウサギはそういう動作をする生き物だったか? 俺は自分の目を疑うが、リーダーウサギは、さらに前足を上げ、地面に何かを描き始める。
それは、どう見ても「文字」だった。
文字とは言っても、俺の知る文字ではない。しかし、ある種の法則性を持って並べられているのは明白だった。
「お、おい、セリア……!」
俺は慌ててセリアを呼びつけた。彼女は面倒くさそうに近寄ってきて、俺の指差す地面を覗き込む。
「これは……原始文字?」
「いや、ウサギが文字を書くのがそもそもおかしいんだよ!」
セリアは少し考え込んだあと、呆れたように肩をすくめた。
「魔素の影響でしょうね。知能が向上し、言語体系を獲得しようとしているのかもしれないわ」
「いや、それはわかるが……」
俺は唸りつつ、地面の文字に目を戻した。リーダーウサギはじっと俺の反応を窺っている。彼は何を伝えようとしているのか?
俺は慎重に、描かれた図形を辿る。
そこには、「群れ」「協力」「発展」といった概念を象徴するような記号が並んでいた。そして最後に、単純な矢印が俺のほうを向いている。
──つまり、「我々はお前と共にある」
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俺はしばし考え込み、そして決意した。
「……わかった。お前たちは、もうただのウサギじゃない」
リーダーウサギは満足げに頷いた。
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