無人島転生 〜素材チートで開拓してたら、村どころか王国ができそうです〜

しゅがれっと

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44 元大工の男

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 異世界において、「家」とは単なる雨風をしのぐための箱ではない。そこには暮らしがあり、文化があり、誇りがある。たとえば、人はなぜ屋根を作るのか? それは、ただ単に雨に濡れたくないからではない。天井の下にこもる温もり、壁に囲まれた安心感、そして「ここが俺の城である」という確固たる実感こそが、人間を人間たらしめるのである。

 ──さて。

 そんな哲学的な思索にふけっている暇もなく、俺たちの村は今、明らかに限界を迎えつつあった。

 人口は増え、村は賑わい、食糧も十分に確保できるようになった。だが、俺たちの住環境はというと、相変わらず木材と土壁を組み合わせた「仮住まい」の域を出ていない。簡単に言えば、家がボロいのである。風が吹けばミシミシと軋み、雨が降れば屋根の隙間からしずくが落ちてくる。もはや「この異世界で生き抜いてやるぜ!」と意気込む段階は終わった。次に目指すべきは、より快適な「文明的な暮らし」である。

 そんな折、またしても俺たちは漂流者を拾った。

 ──今度の男は、やけにがっしりした体つきをしていた。

 広い肩幅、筋張った腕、無駄のない肉付き。砂浜に倒れ伏していた男は、俺たちが声をかけると、ゆっくりと顔を上げた。

 「……ここは……?」

 「ようこそ、異世界へ」

 男はしばらく俺をじっと見つめたあと、ぐっと拳を握りしめた。

 「異世界、か……ふむ」

 なぜか納得したようだった。

 俺はセリアとリュナに視線を向けた。彼女たちも「今度の漂流者は妙に落ち着いているな」と思っているようだった。

 「お前、何者だ?」

 俺の問いに、男はぐっと胸を張る。

 「俺は大工だ。名をゴロツキのゴロウという」

 「ゴロツキ……?」

 「いや、昔のあだ名だ。真面目に大工をやっていたのだが、ちょっとしたトラブルで職を追われてな……」

 「……なるほど」

 異世界に漂流してくる人間というのは、なぜこうも個性的なのだろうか。だが、大工というのは悪くない。むしろ、俺たちが今最も求めていた職業ではないか。

 「お前、家を建てられるのか?」

 「当然だ。だが、どうやら材料と道具が足りないようだな」

 ゴロウは周囲を見渡し、何やら考え込むような表情を見せた。そして、おもむろに俺を見据える。

 「……お前、ゴーレムを作れるんだってな?」

 俺は驚いた。

 「なぜそれを?」

 「村のあちこちで動き回っているのを見れば分かるさ。あれを使えば、大掛かりな建築も可能ではないか?」

 俺は思わず手を打った。

 ──なるほど、それだ。

 ゴーレムはこれまで農業や水汲み、荷運びに活用してきたが、よく考えれば「建築」という分野にも応用できるはずだ。重い石材を運び、土台を固め、柱を組み上げる。人間がやれば時間のかかる作業も、ゴーレムの力を借りれば一気に進むだろう。

 「ゴロウ、お前、村に残る気はあるか?」

 「ふむ……家さえあればな」

 「家を作るために、お前の力が必要なんだが」

 ゴロウは少し考え、やがて豪快に笑った。

 「なるほど、それも一興! ならば、まずは一軒、俺の手で立派な家を建ててやろう!」

 こうして、大工・ゴロウを中心に「本格的な建築計画」が始動した。

 ──まず、素材の確保である。

 これまでは木材が中心だったが、今回は「石造りの建物」に挑戦することになった。ゴーレムを使って岩を運び、村の周囲に石材加工場を設ける。石を組み上げるには専門的な技術が必要だが、ゴロウの指示のもと、俺たちは試行錯誤しながら新しい工法を学んでいった。

 「おい、ゴーレムの手が雑すぎるぞ! もうちょい角を整えろ!」

 「いや、ゴーレムに繊細な作業を求めるのは難しいんだよ……」

 「だったら、型枠を作れ! そこに石をはめて、強固な壁にするんだ!」

 なるほど、型枠か。ゴロウの指示に従い、俺たちは木枠を作り、そこに石材をはめ込んでいく。これにより、より精度の高い建築が可能になった。

 ──次に、家畜エリアの拡張である。

 六本足ウサギ(仮)はもはや単なる家畜ではなく、村の重要な労働力となっている。彼らのために、より快適な住処を作る必要があった。加えて、最近は飼育する家畜の種類も増え、羊や鳥類の導入も検討されている。

 「ここには柵を作って、ウサギたちが自由に動けるスペースを確保しよう」

 「それなら、水場も必要だな。飲み水の供給設備を作らないと」

 俺たちは話し合いながら、家畜エリアを次々と整備していった。

 ──そして、貯蔵庫の建設である。

 食糧供給が安定したことで、今後の課題は「長期保存」になった。これまでは穴を掘って保存する程度だったが、今回は本格的な石造りの倉庫を作ることにした。

 「ここに氷室を作れば、肉や魚の保存もできるんじゃないか?」

 「氷室だと? そんなものがこの村に……」

 「温泉があるだろ? つまり、熱源があるなら、逆に冷却もできるはずだ」

 俺たちは新たな実験に挑みながら、より発展した村づくりを進めていった。

 ──こうして、村はまた一歩、文明の階段を上ったのである。

 そして次なる計画は、「海辺の開拓」。

 俺たちは、本格的に漁業を始めることになる。
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