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1.刹那
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6月15日
初夏にしては暑い上、梅雨として湿度が高い
体はノミだらけで着ている服はほつれが目立つ
散歩中の犬に気づかれると必要以上に吠えられるし、誰も近づいてこない
すれ違う大人は私を避ける
子連れの親は子供にその姿を見せまいと子供の両目を手で塞ぐ
ゴミ溜まりの残飯を漁り、到底、人が食べられるものでない廃棄された食物や他人の吐瀉物が冷えて固まったものを貪る
時には、路地裏にチラつくネズミやトカゲを生きたまま喰う
水分は自分の汗や捨てられた雑巾から絞った汚水、水溜まり、公衆トイレの水道水で摂取する
もう慣れた
家族を殺してからずっとこの生活
人間の順応力はすばらしいと思う
1ヶ月くらい前まで普通の料理を食べて生きてきたのに、食えた物じゃないものを簡単に口に入れることができる
でも、多分、限界が来てだんだろう
私は人通りの少ない一本道の道路の上で気絶していた
目を開けば警察がいてついに私もここで終わりかと思った
けど、私はその瞬間、奇跡を知った
目の前で何が起こったのかは理解できなかった
知らない男が警察官2人を容赦なく殺した
倒れた体と流れる血液がそれを表していることだけが分かった
男は30代くらいの細身で黒縁の縁の先が角張った眼鏡をかけていた
死んだ2人の警察官の血を踏みつけて私にそいつはこう言った
「やぁ家族殺し 怪我はねぇか…って!ボロボロじゃねぇか」
私の様子を見て言ったんだろう
そいつは私に手を伸ばしたけど私はそれを警戒心いっぱいの手で振りほどいた
でも、その私の警戒心に反してお腹が鳴った
「あ、」
私は思わず目をお腹にやる
すると、そいつの目は点になって、それから笑った
私は恥ずかしくなって少し顔を赤らめた
「腹減ってんのか~」
そいつが「おらよっ」と投げたを私はキャッチすることができず、地面に落ちる
私はその変哲もないコンビニおにぎりに犬のように飛びついてコンビニのおにぎりの開け方を無視して破り、行儀悪く口に入る限り詰め込む
おいしい……!
1ヶ月間、ゴミのようなものしか口にしていなかったからただのコンビニのおにぎりも美味しく感じられたんだと思う
「美味そうに喰うね~」
そう言ってそいつは私に背中を向けて手を振った
「じゃあな家族殺し あんま道のど真ん中でぶっ倒れんじゃねぇぞー」
警察官から流れた血液を水溜まりのように踏みながら立ち去ろうとした
あぁ、待って…待ってくれ…
私はまた、大人に怯えなきゃいけないの…?
捕まったらどうなるの…殺されちゃうのかな…
やだよ…そんなの
1人で怯えながら逃げるのも、ゴミ溜まりを漁るのも、もうやだよ…!
「ぬおっ!」
そう思ったら勝手に手が伸びていた
力のない腕でそいつを抱きしめた
「私に人の殺し方教えて」
「は?」
「あんたみたいに強くなれば もうあんな奴らに怖がらなくて済むでしょ 教えて」
かなり困った表情で返事される
「そんなもん教えるようなことじゃ…」
「お願い…」
私は明確な意志を相手に伝えるため抱きしめている腕に力を入れた
すると、相手は呆れたようにため息をついた
「はぁ…わかったわかった だが俺は明日には九州出るんだわ それでも着いてくるか」
私は、彷徨って自分がどこにいるか分からなかったけど、相手の言葉からここはまだ福岡なんだとわかった
私が頷くと相手は「お前 名前は」と聞いてきた
「美川…未夢」
「似合わねーなー 苗字は置いといて名前が殺人鬼っぽくねぇ」
殺人鬼っぽさなんて考えて名前なんてつけるもんじゃないでしょ
なんて強気に思った
「そんなこと言われてもあのクソ親からつけられた名前だし…」
不貞腐れたように言うと相手はまた、質問してきた
「お前、命の危機に晒された数は」
「そんなの何回もあって覚えてない」
そう答えると相手はなにか決定した素振りで私の頭を撫でた
「じゃあギリギリで生き抜いてるってことで刹那って名前はどーだ」
「セツナ…?」
言葉の意味を知ってる
端的に言えば一瞬ってこと
でも、なんで私に新しい名前が与えられたのかよく分からなかった
「なんだ…いやか?」
私が首を傾げて少し俯いていたら心配してくれた
いや…じゃない…
だって、親は嫌いだし、その親からつけられた名前なんていらないとかも思ってたから…
でも…
「なんで名前、くれるの?」
1番の疑問を口に出して伝えた
その質問に相手は笑って答えた
「お前は俺に着いてきて新しい人生を始めるんだ だから、もう昔に囚われなくても良いようにこの名前をやる」
その答えを聞いて私の中で相手の印象が変わった
人の命を簡単に奪う、とんでもなくやばい人なんだと思ってた
それで良いとも思っていたし、そんな最低な人でも私に人の殺し方を教えてくれる良いと思ってた
でも、その答えでこの人は根は優しい人なんだと改めさせられた
「じゃあいくぞ セツナ」
と私に背を向けて着いてこいと言わんばかりに一歩を踏み出そうとしたが、相手はなにか思い出したかのように止まった
「俺の名前を教えてなかったな…」
そして、また私の方に振り返って親指を自身の胸あたりに向けてこう豪語した
「市島 一郎だ」
シジマ…なんか聞いたことある苗字…
よくある苗字だったからそんなこともあるかなんて勝手に完結させた
「師匠って呼んでくれ」
その呼び方は少し気が引けたけどこれからお世話になる人への敬意としてやるべきかと思い、そう呼ぶことを決めた
すると、師匠のポケットからなにか振動音が聞こえた
師匠はポケットからガラケーを取り出すと勢いをつけて閉じてられていた画面が開く
師匠はガラケーを耳に当てた
「村上~ どしたよ」
『どしたよじゃねぇよ!!!』
通話相手の大きな声は普通の声では聞こえないであろう私にも聞こえた
シジマが耳をキンとさせながらも相手の怒号に対応する
「おいおい リーダーにその口はねぇだろ」
『リーダーはいつ帰ってくんの』
シジマの言葉を無視して話を進める
「いつって明日には多分…」
『あした~~? 長崎の過激派宗教団体の解隊させた セキちゃん たちはもう昨日の夜には戻ってきたんですけどぉ?』
「そっちと違って、こっちゃ1人だったんだ 大目に見ろ!」
煽り口調だったからかシジマも少し大口で反発する
「とにかく、明日には戻る待ってろ!!」
勢いで電話を切ってポケットの中にガラケーを突っ込んだ
「い、今のだれ」
セツナが当然の疑問を尋ねると電話の時の口調とは相反して少々、自慢げな表情で答える
「俺、いや、、俺たちの仲間」
仲間という単語にセツナはピンと来なかったが、なんであれセツナのすることは決まっている
「じゃあいくぞ セツナ」
「う、うん…!」
その大きな背中を追うようにセツナは人生の一歩を踏み出した
と、強く思い切ったのはいいが、まだ重要なことを聞いていなかった
「どこにいくの?」
シジマは格好がつかないような素振りをして答える
「名古屋」
「へ?」
初夏にしては暑い上、梅雨として湿度が高い
体はノミだらけで着ている服はほつれが目立つ
散歩中の犬に気づかれると必要以上に吠えられるし、誰も近づいてこない
すれ違う大人は私を避ける
子連れの親は子供にその姿を見せまいと子供の両目を手で塞ぐ
ゴミ溜まりの残飯を漁り、到底、人が食べられるものでない廃棄された食物や他人の吐瀉物が冷えて固まったものを貪る
時には、路地裏にチラつくネズミやトカゲを生きたまま喰う
水分は自分の汗や捨てられた雑巾から絞った汚水、水溜まり、公衆トイレの水道水で摂取する
もう慣れた
家族を殺してからずっとこの生活
人間の順応力はすばらしいと思う
1ヶ月くらい前まで普通の料理を食べて生きてきたのに、食えた物じゃないものを簡単に口に入れることができる
でも、多分、限界が来てだんだろう
私は人通りの少ない一本道の道路の上で気絶していた
目を開けば警察がいてついに私もここで終わりかと思った
けど、私はその瞬間、奇跡を知った
目の前で何が起こったのかは理解できなかった
知らない男が警察官2人を容赦なく殺した
倒れた体と流れる血液がそれを表していることだけが分かった
男は30代くらいの細身で黒縁の縁の先が角張った眼鏡をかけていた
死んだ2人の警察官の血を踏みつけて私にそいつはこう言った
「やぁ家族殺し 怪我はねぇか…って!ボロボロじゃねぇか」
私の様子を見て言ったんだろう
そいつは私に手を伸ばしたけど私はそれを警戒心いっぱいの手で振りほどいた
でも、その私の警戒心に反してお腹が鳴った
「あ、」
私は思わず目をお腹にやる
すると、そいつの目は点になって、それから笑った
私は恥ずかしくなって少し顔を赤らめた
「腹減ってんのか~」
そいつが「おらよっ」と投げたを私はキャッチすることができず、地面に落ちる
私はその変哲もないコンビニおにぎりに犬のように飛びついてコンビニのおにぎりの開け方を無視して破り、行儀悪く口に入る限り詰め込む
おいしい……!
1ヶ月間、ゴミのようなものしか口にしていなかったからただのコンビニのおにぎりも美味しく感じられたんだと思う
「美味そうに喰うね~」
そう言ってそいつは私に背中を向けて手を振った
「じゃあな家族殺し あんま道のど真ん中でぶっ倒れんじゃねぇぞー」
警察官から流れた血液を水溜まりのように踏みながら立ち去ろうとした
あぁ、待って…待ってくれ…
私はまた、大人に怯えなきゃいけないの…?
捕まったらどうなるの…殺されちゃうのかな…
やだよ…そんなの
1人で怯えながら逃げるのも、ゴミ溜まりを漁るのも、もうやだよ…!
「ぬおっ!」
そう思ったら勝手に手が伸びていた
力のない腕でそいつを抱きしめた
「私に人の殺し方教えて」
「は?」
「あんたみたいに強くなれば もうあんな奴らに怖がらなくて済むでしょ 教えて」
かなり困った表情で返事される
「そんなもん教えるようなことじゃ…」
「お願い…」
私は明確な意志を相手に伝えるため抱きしめている腕に力を入れた
すると、相手は呆れたようにため息をついた
「はぁ…わかったわかった だが俺は明日には九州出るんだわ それでも着いてくるか」
私は、彷徨って自分がどこにいるか分からなかったけど、相手の言葉からここはまだ福岡なんだとわかった
私が頷くと相手は「お前 名前は」と聞いてきた
「美川…未夢」
「似合わねーなー 苗字は置いといて名前が殺人鬼っぽくねぇ」
殺人鬼っぽさなんて考えて名前なんてつけるもんじゃないでしょ
なんて強気に思った
「そんなこと言われてもあのクソ親からつけられた名前だし…」
不貞腐れたように言うと相手はまた、質問してきた
「お前、命の危機に晒された数は」
「そんなの何回もあって覚えてない」
そう答えると相手はなにか決定した素振りで私の頭を撫でた
「じゃあギリギリで生き抜いてるってことで刹那って名前はどーだ」
「セツナ…?」
言葉の意味を知ってる
端的に言えば一瞬ってこと
でも、なんで私に新しい名前が与えられたのかよく分からなかった
「なんだ…いやか?」
私が首を傾げて少し俯いていたら心配してくれた
いや…じゃない…
だって、親は嫌いだし、その親からつけられた名前なんていらないとかも思ってたから…
でも…
「なんで名前、くれるの?」
1番の疑問を口に出して伝えた
その質問に相手は笑って答えた
「お前は俺に着いてきて新しい人生を始めるんだ だから、もう昔に囚われなくても良いようにこの名前をやる」
その答えを聞いて私の中で相手の印象が変わった
人の命を簡単に奪う、とんでもなくやばい人なんだと思ってた
それで良いとも思っていたし、そんな最低な人でも私に人の殺し方を教えてくれる良いと思ってた
でも、その答えでこの人は根は優しい人なんだと改めさせられた
「じゃあいくぞ セツナ」
と私に背を向けて着いてこいと言わんばかりに一歩を踏み出そうとしたが、相手はなにか思い出したかのように止まった
「俺の名前を教えてなかったな…」
そして、また私の方に振り返って親指を自身の胸あたりに向けてこう豪語した
「市島 一郎だ」
シジマ…なんか聞いたことある苗字…
よくある苗字だったからそんなこともあるかなんて勝手に完結させた
「師匠って呼んでくれ」
その呼び方は少し気が引けたけどこれからお世話になる人への敬意としてやるべきかと思い、そう呼ぶことを決めた
すると、師匠のポケットからなにか振動音が聞こえた
師匠はポケットからガラケーを取り出すと勢いをつけて閉じてられていた画面が開く
師匠はガラケーを耳に当てた
「村上~ どしたよ」
『どしたよじゃねぇよ!!!』
通話相手の大きな声は普通の声では聞こえないであろう私にも聞こえた
シジマが耳をキンとさせながらも相手の怒号に対応する
「おいおい リーダーにその口はねぇだろ」
『リーダーはいつ帰ってくんの』
シジマの言葉を無視して話を進める
「いつって明日には多分…」
『あした~~? 長崎の過激派宗教団体の解隊させた セキちゃん たちはもう昨日の夜には戻ってきたんですけどぉ?』
「そっちと違って、こっちゃ1人だったんだ 大目に見ろ!」
煽り口調だったからかシジマも少し大口で反発する
「とにかく、明日には戻る待ってろ!!」
勢いで電話を切ってポケットの中にガラケーを突っ込んだ
「い、今のだれ」
セツナが当然の疑問を尋ねると電話の時の口調とは相反して少々、自慢げな表情で答える
「俺、いや、、俺たちの仲間」
仲間という単語にセツナはピンと来なかったが、なんであれセツナのすることは決まっている
「じゃあいくぞ セツナ」
「う、うん…!」
その大きな背中を追うようにセツナは人生の一歩を踏み出した
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