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少年隊入隊試験編
22.屈辱と愛と拳
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終了まで、00:55:00
工業地帯
ガチャッ!
ゴウが逃げ役に手錠をかけた
近い距離でセツナとレナも逃げ役を捕まえ、順調に点を稼いでいる
ゴウは痛む手首を抑える
痛いは痛いが、、今のところ戦闘に影響はないな…
ゴウ4点
レナが逃げ役のリングの発光が赤色になったことを確認し、2人に声をかける
「2人とも怪我とかしてない?」
レナ5点
セツナは手の埃を払いながら答える
「うん 問題ないよ」
セツナ4点
「あぁ大丈夫だ」
ゴウは未だに手首の骨折を2人に伝えず処置を取らぬまま試験を続行した
荒地 スタート地点目前
「あかん!!」
ガオは迫ってくる拳を腕を交差させたところで受け止めるが勢いが殺しきれず後退する
「筋トレが足りねんじゃねぇか!!」
キドウが追い討ちをかける
「オラァ!!」
それを横からドリルを突き伸ばしてガイが阻止する
「あっぶね~」
いつものクセで腕で防御しかけた…ミスったら腕ちぎれるしマジで気をつけよ
「あんちゃんすまんな!」
「関西筋肉ゴリラ!!」
「か、関西筋肉ゴリラ!?!?!?」
「お前邪魔だ!ドリルのリーチに入ってくんならどっか行きやがれ!!」
「なんやと自分!俺が足でまとい言いたいんか!」
「そうだ!失せやがれ!!」
敵を目の前にして仲間割れを始めてしまった
キドウは様子を見て、呆れと驚きを混ぜた表情をする
「そもそも!あんちゃんがドリルなんて使わんかったら気にせんでいいことちゃうんか」
「なんで俺がお前に併せねぇといけねんだ」
「それで俺が怪我したらどうすんねん」
「嫌なら失せろっつってんだよ!」
言い合いは白熱してしまった
そんなことお構い無しにキドウは突っ込んでくる
「敵前にして喧嘩とは!いい度胸だな!!」
「「……!」」
ボコッ…!
ガイに大きく振ったラリアットが決まる
「グアッ…!」
体勢を崩し背中から倒れる
倒れたガイに容赦なく拳が迫る
「しまっ…ドゴォン!!!
ガイの胸筋に打ち付けられた拳は屈強な筋肉を超えて肋骨に到達し、微骨折させる
勢いは地面にも伝わり乾燥した砂埃が舞う
砂埃で視界が塞がっていることをいいことにガオはガイの上に乗ったキドウに拳を伸ばすがそれも完全に読まれ片腕で受け止められる
俺のパンチが効かへん…!?
拳を受け止められて動きが止まっていることをキドウは逃さない
「だーかーらー」
ガオの腕を両腕で縛る
「筋トレがぁ!」
ガオは引き抜こうとするが、縛る力が強く無理矢理抜けば腕の皮が引き剥がれることを察する
「足りてねぇんだよ!!」
「ぬァァァァッ!!」
ガオという筋骨隆々な人物を投げで地面に叩きつける
叩きつけられた衝撃で大きな隙が生まれた
そこにキドウはかかとを振り落とし、ガオの腹に食い込ませた
ドゴッ…!!
「ゴハッ…!」
ガオが血を吹き出す
2人は体が痺れ、身動き困難になっている
「支部の教育はレベルが低いのかぁ?あとでお前らんところに文句入れとかねぇとなぁ」
砂埃が晴れていく中、キドウは地面に転がる2人を見下しながら言う
「大切なことだから教えてやる 敵前で喧嘩は殺してくださいって言ってるようなもんだ」
砂埃が完全に振り払われると倒れた2人が見たのはキドウの額からツノが生え八重歯を見せているような鬼の姿だった
これが…Я の鬼姉鬼堂 美香
キドウは普段、訓練生たちの教育に尽力しているが、いざ戦闘になるとそのЯ 屈指の筋力で敵を一撃で気を失わさせる
かなりの古参メンバーでЯ の人員とはほとんど顔見知りである
今回の試験はキドウ自身かなり手を抜いているがほぼ装備なしの訓練生に全力で殴りかかれば身体の器官がいくつか持っていかれる
ガオが体を震わせながら立ち上がる
「俺はそう簡単に堕ちへんぞぉ」
「そんなブルンブルンな体で私に勝てるとでも!」
何とか食いついていくガオだが、ガイは肋骨の痛みで起き上がるのが難しい
「クッ…」
何とか起き上がろうと頭をあげるが、体の痺れと微骨折の痛みで頭をまた地面に落としてしまう
「クソッ…!」
意識も薄れていきドームの空いた天井から見える太陽の光がガイの目を閉じさせた
俺の師匠は2年前、、死んだ
さらにその前、小4の頃、北海道の豪雪は年々当たり前のことで気にせず学校に登校した
室内と室外の温度は出入りした瞬間、病気になったのではないかと錯覚しそうになるほどだ
「ガイって相変わらず力持ちだよね」
「まっ鍛えてるからな」
チビの頃から柔道とレスリングを習っていて小4にしては怪力自慢だったと思う
友達のランドセルを持つのもへっちゃらだし、畑作業なんて俺が1人いれば終わってた
そうやって、俺は強い みんなよりも強くて周りのヤツらから頼られる存在で自分は最強なんだってガキっぽく思ってた
でもそりゃ違った
その日、雪は勢いを増していて学校も緊急職員会議かなんかで全児童早退を吟味していた時、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
大きな揺れを感じた
俺たちは地震だと思い訓練通り机の下に潜ったがその揺れは地震じゃなかった
「あれ、、見て、、」
コスズが机の下から指さしたところに俺たちは目をやった
「……!」
その揺れの正体は、、
「雪崩れだぁぁぁあ!!」
山から雪の水分で倒壊した岩や砂、雪の塊が学校に向かってせまっていたんだ
ドゴォン!ドゴゴォン!!
学校の壁は破壊されて瓦礫が俺たちの上から降り注ぐ、流れてくる雪が瓦礫の間を埋めて瓦礫の中の児童を閉じ込める
「痛てて…」
俺が目を覚ますとそこは真っ暗で冷たかった
瓦礫が瓦礫に立てかかって支えあっていておかげで俺は下敷きにならずに済んだ
だが、後ろは岩で塞がれて前は雪が積まれている
「……! コスズ!!」
同じところにいたコスズを起こした
コスズは方にアスファルトの壁の固定に使われていた針金が折れた状態で刺さっていてとても痛がっていた
「ガイくん、、」
「コスズ耐えろ!大丈夫!レスキューが絶対助けにくる!!」
だが、すぐにレスキューが来ることはなかった
小さな村であるここにレスキュー隊が駆けつけるのは当たり前のように遅く、俺たちの息は荒くなっていた
「はぁはぁはぁはぁ…」
「はぁぁぁぁぁ…」
密閉空間で酸素がなくなっているのがわかって、影と地面から感じる冷たさと瓦礫と雪の小さな隙間から吹く冷気が俺たちを凍えさせる
俺は最強なんかじゃないんだとそん時、初めて分かった
目の前にある雪をかき分けれる力があれば生き残れた
コスズを抱きかかえる力があれば命を救えた
なのに俺は、、
無力で涙が溢れたのを覚えている
「ねぇ、、」
コスズがそう呟いたのが聞こえて俺は涙を払って顔を上げた
コスズは岩の方を見ていて目に驚きを宿していた
「なんか、聞こえた」
「え、、」
ドッ…!ドゴゴ!バゴッ!ガッ!!
「岩を、、削ってる?」
その俺の予感は的中し、その瞬間、岩の中心から上が破壊された
その衝撃で支え合っていた瓦礫が保ちきれず俺たちに向かって倒れてきたが、それが当たることはなかった
「君たち大丈夫か!」
紫色のジャケットを着た1人の男が俺たちを助けた
死にかけたあの日、俺とコスズはЯ の北海道支部に拾われた
雪崩れは村全体を襲ったらしく、俺たちの両親は行方不明になってしまったらしい
その日から俺はいざって時に誰でも救えて頼られる人間になると決めた
でも2年前、俺はまた無力を味わった雪王が俺たちの支部を襲った
俺たち訓練生は事前に予感を感じていた支部の人達から避難させられていて被害はなかったが、支部が襲撃された時、俺とコスズを助けて戦闘指導までしてくれた師匠は殺された
その報告を雪王を討伐したアカカミさんから聞いた時、俺はまた無力を実感した
俺はその時、眠れなくなっていて同室のコスズに話に付き合ってもらった
「悔しい…」
「うん、そうだね」
「師匠が殺された…俺は、また、、」
壁に拳を打ち付けた
その音は十分室内に響いたはずだが静かに思えた
「クソッ…!俺はまた何もできなかった!!」
「………」
あの冷たい暗闇の中で流した涙と同じものを俺はまた流してしまった
コスズはそんな俺の手をとった
「ガイくん 強くなろう!」
「………!」
「そして!あの日…私たちを救ってくれた師匠みたいにかけがえのない命を1つでも多く拾い上げよう!」
コスズの問いかけに俺の涙は収まった
「それが私たちにできる師匠への恩返し…私はそう思うんだ」
「あぁ…そうだ、そうだな…」
コスズの励ましも相まって俺はまた前を向いた
いざって時に誰でも救うことができる人間になるために
「だから!!」
改めて信念を渇望した男の目が開く
胸部の痛みに耐えながら体を少しずつ起こしていく
こんな痛み…!
あの日の冷たさに比べれば…!
足を地面につけて膝を伸ばす
あの日の無力さと屈辱に比べれば…!
「痒いようなもんだろ!!大神 凱!!」
勢いで立ち上がったガイに思いよらずキドウとガオが目を向ける
「マジか…w」
これには鬼姉も苦笑
「今が!!いざって時だろぉぉお!!」
ガイがドリルを回転させてキドウに迫る
「やべっ!」
危機を感じたキドウは目の前にいるガオを突き放し、ドリルの回避に集中する
ドリルがつけられてんのは右手首
だから左側に当たることはまずないだろ…!
真ん中か右、どっちも寸前でしゃがめばかわせる…!
だが、キドウが姿勢を低くするよりも先にガイがドリルを地面に振り下ろした
「はぁ!?」
「揺らすぜこん野郎ぉぉお!!」
地面に突き刺さったドリルが土中の固まった土を勢いよく削り、一瞬、大きな揺れ起こす
意表を突かれた行動に対応が遅れ、揺れによって体がふらつく
「関西筋肉ゴリラ!!」
「……!」
キドウが気づいた時にはガオは跳んでキドウの上から拳を振りかざそうとしていた
「俺の名前はガオや!!覚えとき!!」
やばっ頭がら空き…!
ボゴッ!!
ガオの全力の拳骨がキドウの前頭部に勢いよく撃たれた
「ニヒッ」と笑うガオだったが、キドウが頭を後ろに回した瞬間、嫌な予感がした
「私のタフさを舐めんなよ!!」
「しもうた…!」
キドウは頭を勢いよく前方に振りかぶる
「キリンの首振り!」
ボォン…!
「ゴハッ…!」
まさにキリンのような威力のヘッドスフィングがガオの腹に直撃し、吹き飛ばされる
「……!」
ドリルを地面から抜いたガイは距離をとろうとするがさせまいとキドウは右手首を踏みつけた
「ナアッ!」
「ヒヤッとしたぜ」
抜けようとするガイの手首をさらに力を込めて地面に踏みつける
「させねぇよ…って!マジか!!」
装備のドリルを外して手だけを足から抜いた
キドウは踏んだ勢いでドリルを踏み壊し、足にあった物がなくなってバランスが崩れる
その隙にガイは体勢を建て直して右拳を握った
「オラァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!」
ガイが枯れた声を上げて大きく振りかぶる間にキドウも建て直した
「振るのが遅せぇよ!!」
キドウの頭によぎったものがあった
本部で面倒をみてきた訓練生の微笑ましき景色
訓練ではライバル同士の子供たちが食卓ではたわいのない話で盛り上がっている
そんな自分が見てきた子供たちの成長していく様子が目に浮かぶ
ヘッ…何が【子供絶対防御】だ…そんなんがあっから…こういう時、拳に力が入んねんだよ…
握られた拳は弱々しく放つのも幅かれるようなものだ
キドウの中で試験者を落とす逃げ役の役目よりも今まで見てきた訓練生たちへの愛が勝った
静かな決着だ
ガイの拳がキドウの頬に直撃し、大して堪える準備もしていなかったキドウは地面にばさりと倒れたのだった
「はぁはぁ…」
ガイは息を荒くしながらキドウの手首に手錠を掛けた
キドウのリングが赤色に発光した瞬間、ガイも力尽きてキドウの横に仰向けで倒れた
クソッ…本当は関西筋肉ゴリラに取らせるつもりだったのに…
これじゃ救ったじゃなくて点の独り占めじゃねぇか…
疲れた目でガオが吹き飛ばされた方を見る
ガオは気を失って倒れているようだった
はぁ…気絶してるし…
「師匠…恩返しはまだまだ先になりそうだぜ…」
ガイ親衛班副班長 鬼姉 鬼堂 美香を確保し、30点獲得
水辺
「ぬァァァ!!」
ドボォン…!
プールに試験者が落ちた いや落とされた
「リクト!ヤバくない!?」
イチゴの慌てた問いかけにリクトはメガネを目元にあわせて答える
「はぁはぁ…こんなに早く遭遇してしまうとはね…!」
イチゴとリクトが同じ方を向いて焦っている
静かな一歩を刻みながら手に持った如意棒を芸のように巧みに回す男がいる
その男は腹に「特別!」と書かれた弾幕を貼っている
「本当に子供を痛みつけるのはいい気分がしないな」
呟く男にリクトとイチゴは焦りながらも構えた
静かに燃える魂を持つ男はその如意棒の先端を少年少女に向けた
「せめて一撃で沈めてあげないとな」
派遣班副班長 陽炎 赤上 勝
工業地帯
ガチャッ!
ゴウが逃げ役に手錠をかけた
近い距離でセツナとレナも逃げ役を捕まえ、順調に点を稼いでいる
ゴウは痛む手首を抑える
痛いは痛いが、、今のところ戦闘に影響はないな…
ゴウ4点
レナが逃げ役のリングの発光が赤色になったことを確認し、2人に声をかける
「2人とも怪我とかしてない?」
レナ5点
セツナは手の埃を払いながら答える
「うん 問題ないよ」
セツナ4点
「あぁ大丈夫だ」
ゴウは未だに手首の骨折を2人に伝えず処置を取らぬまま試験を続行した
荒地 スタート地点目前
「あかん!!」
ガオは迫ってくる拳を腕を交差させたところで受け止めるが勢いが殺しきれず後退する
「筋トレが足りねんじゃねぇか!!」
キドウが追い討ちをかける
「オラァ!!」
それを横からドリルを突き伸ばしてガイが阻止する
「あっぶね~」
いつものクセで腕で防御しかけた…ミスったら腕ちぎれるしマジで気をつけよ
「あんちゃんすまんな!」
「関西筋肉ゴリラ!!」
「か、関西筋肉ゴリラ!?!?!?」
「お前邪魔だ!ドリルのリーチに入ってくんならどっか行きやがれ!!」
「なんやと自分!俺が足でまとい言いたいんか!」
「そうだ!失せやがれ!!」
敵を目の前にして仲間割れを始めてしまった
キドウは様子を見て、呆れと驚きを混ぜた表情をする
「そもそも!あんちゃんがドリルなんて使わんかったら気にせんでいいことちゃうんか」
「なんで俺がお前に併せねぇといけねんだ」
「それで俺が怪我したらどうすんねん」
「嫌なら失せろっつってんだよ!」
言い合いは白熱してしまった
そんなことお構い無しにキドウは突っ込んでくる
「敵前にして喧嘩とは!いい度胸だな!!」
「「……!」」
ボコッ…!
ガイに大きく振ったラリアットが決まる
「グアッ…!」
体勢を崩し背中から倒れる
倒れたガイに容赦なく拳が迫る
「しまっ…ドゴォン!!!
ガイの胸筋に打ち付けられた拳は屈強な筋肉を超えて肋骨に到達し、微骨折させる
勢いは地面にも伝わり乾燥した砂埃が舞う
砂埃で視界が塞がっていることをいいことにガオはガイの上に乗ったキドウに拳を伸ばすがそれも完全に読まれ片腕で受け止められる
俺のパンチが効かへん…!?
拳を受け止められて動きが止まっていることをキドウは逃さない
「だーかーらー」
ガオの腕を両腕で縛る
「筋トレがぁ!」
ガオは引き抜こうとするが、縛る力が強く無理矢理抜けば腕の皮が引き剥がれることを察する
「足りてねぇんだよ!!」
「ぬァァァァッ!!」
ガオという筋骨隆々な人物を投げで地面に叩きつける
叩きつけられた衝撃で大きな隙が生まれた
そこにキドウはかかとを振り落とし、ガオの腹に食い込ませた
ドゴッ…!!
「ゴハッ…!」
ガオが血を吹き出す
2人は体が痺れ、身動き困難になっている
「支部の教育はレベルが低いのかぁ?あとでお前らんところに文句入れとかねぇとなぁ」
砂埃が晴れていく中、キドウは地面に転がる2人を見下しながら言う
「大切なことだから教えてやる 敵前で喧嘩は殺してくださいって言ってるようなもんだ」
砂埃が完全に振り払われると倒れた2人が見たのはキドウの額からツノが生え八重歯を見せているような鬼の姿だった
これが…Я の鬼姉鬼堂 美香
キドウは普段、訓練生たちの教育に尽力しているが、いざ戦闘になるとそのЯ 屈指の筋力で敵を一撃で気を失わさせる
かなりの古参メンバーでЯ の人員とはほとんど顔見知りである
今回の試験はキドウ自身かなり手を抜いているがほぼ装備なしの訓練生に全力で殴りかかれば身体の器官がいくつか持っていかれる
ガオが体を震わせながら立ち上がる
「俺はそう簡単に堕ちへんぞぉ」
「そんなブルンブルンな体で私に勝てるとでも!」
何とか食いついていくガオだが、ガイは肋骨の痛みで起き上がるのが難しい
「クッ…」
何とか起き上がろうと頭をあげるが、体の痺れと微骨折の痛みで頭をまた地面に落としてしまう
「クソッ…!」
意識も薄れていきドームの空いた天井から見える太陽の光がガイの目を閉じさせた
俺の師匠は2年前、、死んだ
さらにその前、小4の頃、北海道の豪雪は年々当たり前のことで気にせず学校に登校した
室内と室外の温度は出入りした瞬間、病気になったのではないかと錯覚しそうになるほどだ
「ガイって相変わらず力持ちだよね」
「まっ鍛えてるからな」
チビの頃から柔道とレスリングを習っていて小4にしては怪力自慢だったと思う
友達のランドセルを持つのもへっちゃらだし、畑作業なんて俺が1人いれば終わってた
そうやって、俺は強い みんなよりも強くて周りのヤツらから頼られる存在で自分は最強なんだってガキっぽく思ってた
でもそりゃ違った
その日、雪は勢いを増していて学校も緊急職員会議かなんかで全児童早退を吟味していた時、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
大きな揺れを感じた
俺たちは地震だと思い訓練通り机の下に潜ったがその揺れは地震じゃなかった
「あれ、、見て、、」
コスズが机の下から指さしたところに俺たちは目をやった
「……!」
その揺れの正体は、、
「雪崩れだぁぁぁあ!!」
山から雪の水分で倒壊した岩や砂、雪の塊が学校に向かってせまっていたんだ
ドゴォン!ドゴゴォン!!
学校の壁は破壊されて瓦礫が俺たちの上から降り注ぐ、流れてくる雪が瓦礫の間を埋めて瓦礫の中の児童を閉じ込める
「痛てて…」
俺が目を覚ますとそこは真っ暗で冷たかった
瓦礫が瓦礫に立てかかって支えあっていておかげで俺は下敷きにならずに済んだ
だが、後ろは岩で塞がれて前は雪が積まれている
「……! コスズ!!」
同じところにいたコスズを起こした
コスズは方にアスファルトの壁の固定に使われていた針金が折れた状態で刺さっていてとても痛がっていた
「ガイくん、、」
「コスズ耐えろ!大丈夫!レスキューが絶対助けにくる!!」
だが、すぐにレスキューが来ることはなかった
小さな村であるここにレスキュー隊が駆けつけるのは当たり前のように遅く、俺たちの息は荒くなっていた
「はぁはぁはぁはぁ…」
「はぁぁぁぁぁ…」
密閉空間で酸素がなくなっているのがわかって、影と地面から感じる冷たさと瓦礫と雪の小さな隙間から吹く冷気が俺たちを凍えさせる
俺は最強なんかじゃないんだとそん時、初めて分かった
目の前にある雪をかき分けれる力があれば生き残れた
コスズを抱きかかえる力があれば命を救えた
なのに俺は、、
無力で涙が溢れたのを覚えている
「ねぇ、、」
コスズがそう呟いたのが聞こえて俺は涙を払って顔を上げた
コスズは岩の方を見ていて目に驚きを宿していた
「なんか、聞こえた」
「え、、」
ドッ…!ドゴゴ!バゴッ!ガッ!!
「岩を、、削ってる?」
その俺の予感は的中し、その瞬間、岩の中心から上が破壊された
その衝撃で支え合っていた瓦礫が保ちきれず俺たちに向かって倒れてきたが、それが当たることはなかった
「君たち大丈夫か!」
紫色のジャケットを着た1人の男が俺たちを助けた
死にかけたあの日、俺とコスズはЯ の北海道支部に拾われた
雪崩れは村全体を襲ったらしく、俺たちの両親は行方不明になってしまったらしい
その日から俺はいざって時に誰でも救えて頼られる人間になると決めた
でも2年前、俺はまた無力を味わった雪王が俺たちの支部を襲った
俺たち訓練生は事前に予感を感じていた支部の人達から避難させられていて被害はなかったが、支部が襲撃された時、俺とコスズを助けて戦闘指導までしてくれた師匠は殺された
その報告を雪王を討伐したアカカミさんから聞いた時、俺はまた無力を実感した
俺はその時、眠れなくなっていて同室のコスズに話に付き合ってもらった
「悔しい…」
「うん、そうだね」
「師匠が殺された…俺は、また、、」
壁に拳を打ち付けた
その音は十分室内に響いたはずだが静かに思えた
「クソッ…!俺はまた何もできなかった!!」
「………」
あの冷たい暗闇の中で流した涙と同じものを俺はまた流してしまった
コスズはそんな俺の手をとった
「ガイくん 強くなろう!」
「………!」
「そして!あの日…私たちを救ってくれた師匠みたいにかけがえのない命を1つでも多く拾い上げよう!」
コスズの問いかけに俺の涙は収まった
「それが私たちにできる師匠への恩返し…私はそう思うんだ」
「あぁ…そうだ、そうだな…」
コスズの励ましも相まって俺はまた前を向いた
いざって時に誰でも救うことができる人間になるために
「だから!!」
改めて信念を渇望した男の目が開く
胸部の痛みに耐えながら体を少しずつ起こしていく
こんな痛み…!
あの日の冷たさに比べれば…!
足を地面につけて膝を伸ばす
あの日の無力さと屈辱に比べれば…!
「痒いようなもんだろ!!大神 凱!!」
勢いで立ち上がったガイに思いよらずキドウとガオが目を向ける
「マジか…w」
これには鬼姉も苦笑
「今が!!いざって時だろぉぉお!!」
ガイがドリルを回転させてキドウに迫る
「やべっ!」
危機を感じたキドウは目の前にいるガオを突き放し、ドリルの回避に集中する
ドリルがつけられてんのは右手首
だから左側に当たることはまずないだろ…!
真ん中か右、どっちも寸前でしゃがめばかわせる…!
だが、キドウが姿勢を低くするよりも先にガイがドリルを地面に振り下ろした
「はぁ!?」
「揺らすぜこん野郎ぉぉお!!」
地面に突き刺さったドリルが土中の固まった土を勢いよく削り、一瞬、大きな揺れ起こす
意表を突かれた行動に対応が遅れ、揺れによって体がふらつく
「関西筋肉ゴリラ!!」
「……!」
キドウが気づいた時にはガオは跳んでキドウの上から拳を振りかざそうとしていた
「俺の名前はガオや!!覚えとき!!」
やばっ頭がら空き…!
ボゴッ!!
ガオの全力の拳骨がキドウの前頭部に勢いよく撃たれた
「ニヒッ」と笑うガオだったが、キドウが頭を後ろに回した瞬間、嫌な予感がした
「私のタフさを舐めんなよ!!」
「しもうた…!」
キドウは頭を勢いよく前方に振りかぶる
「キリンの首振り!」
ボォン…!
「ゴハッ…!」
まさにキリンのような威力のヘッドスフィングがガオの腹に直撃し、吹き飛ばされる
「……!」
ドリルを地面から抜いたガイは距離をとろうとするがさせまいとキドウは右手首を踏みつけた
「ナアッ!」
「ヒヤッとしたぜ」
抜けようとするガイの手首をさらに力を込めて地面に踏みつける
「させねぇよ…って!マジか!!」
装備のドリルを外して手だけを足から抜いた
キドウは踏んだ勢いでドリルを踏み壊し、足にあった物がなくなってバランスが崩れる
その隙にガイは体勢を建て直して右拳を握った
「オラァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!」
ガイが枯れた声を上げて大きく振りかぶる間にキドウも建て直した
「振るのが遅せぇよ!!」
キドウの頭によぎったものがあった
本部で面倒をみてきた訓練生の微笑ましき景色
訓練ではライバル同士の子供たちが食卓ではたわいのない話で盛り上がっている
そんな自分が見てきた子供たちの成長していく様子が目に浮かぶ
ヘッ…何が【子供絶対防御】だ…そんなんがあっから…こういう時、拳に力が入んねんだよ…
握られた拳は弱々しく放つのも幅かれるようなものだ
キドウの中で試験者を落とす逃げ役の役目よりも今まで見てきた訓練生たちへの愛が勝った
静かな決着だ
ガイの拳がキドウの頬に直撃し、大して堪える準備もしていなかったキドウは地面にばさりと倒れたのだった
「はぁはぁ…」
ガイは息を荒くしながらキドウの手首に手錠を掛けた
キドウのリングが赤色に発光した瞬間、ガイも力尽きてキドウの横に仰向けで倒れた
クソッ…本当は関西筋肉ゴリラに取らせるつもりだったのに…
これじゃ救ったじゃなくて点の独り占めじゃねぇか…
疲れた目でガオが吹き飛ばされた方を見る
ガオは気を失って倒れているようだった
はぁ…気絶してるし…
「師匠…恩返しはまだまだ先になりそうだぜ…」
ガイ親衛班副班長 鬼姉 鬼堂 美香を確保し、30点獲得
水辺
「ぬァァァ!!」
ドボォン…!
プールに試験者が落ちた いや落とされた
「リクト!ヤバくない!?」
イチゴの慌てた問いかけにリクトはメガネを目元にあわせて答える
「はぁはぁ…こんなに早く遭遇してしまうとはね…!」
イチゴとリクトが同じ方を向いて焦っている
静かな一歩を刻みながら手に持った如意棒を芸のように巧みに回す男がいる
その男は腹に「特別!」と書かれた弾幕を貼っている
「本当に子供を痛みつけるのはいい気分がしないな」
呟く男にリクトとイチゴは焦りながらも構えた
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派遣班副班長 陽炎 赤上 勝
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国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
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