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少年隊入隊試験編
33.謎の男〜2〜
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試験終了から3日後の2月25日
TOP10以外の支部の人達はそれぞれ支部に帰還した
その先や本部で不合格だった人物たちの今後対応が行われた
非戦闘の親衛班となるか、組織の情報を漏らさないことを条件に世の中に社会復帰するかを選択し、各々の対応をしていた
そして、私たちTOP10は本部の座学用教室に集められていた
「絶対俺入っとるわぁ」
「リュウが入ってるならオレも入ってるか」
TOP2名が駄べっている
私はそれを見ながらあくびして机に伏せる
レナはアカカミちゃんと話してるし、ゴウはオオガミくんに捕まってるし、、はぁ、私も新しい人間的関係を組み立てなきゃなぁ…
そうやって目を塞ぐと背中を誰かにバシッと叩かれた
「イタい!」
振り返るとそこにはハヤテが笑って立っていた
「あははwいい反応すんね~ジブン」
滋賀支部のカケハシくんだ…この人優男っぽすぎてちょっと怖いんだよね…
「あら?無視かいな」
「あ、ごめん何」
ハヤテは隣の席に座ってセツナの方を向いた
「いや特に話したいことも無いんやけど 1人が寂しそうやな思て」
「余計な気遣いどうも」なんて口に出すわけもないが少し煩わしい
「お、アンタ今、余計なことや思ったやろ」
「……!」
鋭い指摘にセツナの声が詰まった
「な、なんで、、」
「あ、ほんとに思とったんかい なははw参るわ~」
いやいや、参るのわこっちの方なんだけど
「根拠なんてないで 勘や」
「えええ、なんかその人間心理的な何かしらかあるとかじゃ…」
「ない!」
はっきり言い切ったハヤテを見てますます怖くなった…根拠なしにして人の思っていることをズバリ当ててくるって…
ハヤテに戦いていると教室のドアがガラガラと引かれ、少年隊隊長キヤマ サトシが入室した
「よぉし全員揃ってんなー めんどくさいから自己紹介は省くぞー」
紹介なんてされずともこの男がどんな者なのかは皆が認知していることである
現少年隊隊長であり、4月からは特攻班へ自動昇級 さらには次期幹部候補
Я 内で足技の技術は群を抜いている
「今回の潜入任務は俺を含んだ6人で行く」
話は一気に本題に差しかかり、サトシを抜いた残り5人は誰となるのか、口から発せられたのは、、
「ミカワ ニッタ キッタカ オオガミ カケハシ そして、俺 以上だ」
まさかの結果だった
TOP2名は含まれず、10位以内の実力で決まっていないことは確かだった
「なんでやねん!」「な、なんで!!」
もちろんリュウマとコウマは抗議する
「こん中で強いんは俺らやろ!」
「そうだそうだー!」
2人の不満にサトシは冷静に答える
「決めたのは俺じゃないし、俺に言われても困るな」
「じゃあせめて理由を教えて欲しいもんやわ」
「俺がコイツらより劣っているってこと?」
他を下に見る発言が周囲をイラつかせた
しかし、他のTOP10は何も言わず、コウマのその言葉に煩わしさを感じるのみだった
「だから知らねぇって俺に聞くなよ」
今度はこのテキトーな態度がコウマを逆撫でした
「へぇ~…そんなことなら自力でその席奪ってやんよ!!」
椅子を蹴って前に飛び出したと思えば、コウマの右足がサトシの右手に収まっていた
「ッ……!」
他の9人も立ち上がって警戒態勢に入る
「俺をボコせば自分が任務に行けるとでも?」
「その通りだよ!!」
バク転で後退したと見せかけて途中で床に両手を着いて、勢いよく飛び上がり、かかとを落とす
それを左腕で受け止め、笑顔で睨むコウマを鋭く睨み返す
「俺がお前ごときに倒せると思うなよ」
言いながら左腕を払ってコウマを浮かせ、そこに二度蹴りをキメる
「うっ…!」
勢いよく吹き飛んだコウマは教室の後ろの壁に打ち付けられる
サトシは同時に踏み込んで飛び出す
コウマは床にしりをつけて目を開けると目の前にサトシの左足裏があった
ブォンッ!
「……!」
寸止めされた蹴りが起こした風圧はコウマのみならず、他のメンバーも飲み込んだ
「ナメるなよお前ら 本気の俺はお前ら全員でかかっても殺せないからな」
足を下ろして、教室の前へ一歩一歩戻る中、サトシは語る
「ここにいるほとんどが試験中に30pt持ちの戦闘に関与、及び特攻班相手に勝ち続けた奴だろうが自惚れるなよ」
全員が棒立ちで教室の中央を歩くサトシから目を離さない
「手加減している幹部に勝てた程度でここからの命の取り合いに着いていけると思うな 下手をすれば仲間も自分も死ぬ」
ホワイトボードを拳で叩きつけた音が響く
「軽率な判断をするな ここから先は生命活動の極限状態がお前らに何度も訪れる 一瞬一瞬に命が掛かっていると思え」
全員の瞳を流れるように厳しく見つめていく
「生死は1つの選択で簡単にひっくり返る そのことを頭のど真ん中にぶち込んで判断しろ」
凍てついた空気がそこを支配していたが、サトシが説教じみたことをやめて改めて口を開いた
「任務の詳細は後日伝える 任務に選ばれた者は教室を出ろ 他は残れ」
指示を聞いて、5人は退室する
その際にセツナはレナとゴウに手を振った
ハヤテはリュウマの肩を叩いて教室を出た
少しの静けさが流れると、またサトシが話し始める
「お前らが選ばれなかったのは理由がある」
レナが首を傾げた
「お前らには任務期間中、訓練してもらう」
「訓練…」
小さく復唱したリュウマ
「そう お前らそれぞれに合った訓練カリキュラムを組んでいる 今からそれを伝える」
サトシが名指ししながら各人に訓練場所と訓練に就く人物を伝える
「タキタツ、コイン 2人はここの武道場だ 講師はムラカミさんとシバキさんだ」
「「……!」」
Я きっての強者2人に教わることはきっと大きい
期待で2人はハイタッチして喜んだ
「アサミ お前は仙台支部でアカカミさんとだ」
「わかりました」
お、お兄様ぁぁあ……//
心中穏やかでない
「ヒロヌマは青森にあるЯ の傘下 土俵坂 講師はその総代 千島 大介 御歳78歳の爺さんだが、見くびると骨の2、3本持ってかれるから気をつけろよ」
「は、はい…!」
ま、マジかその爺さん…
「最後にレナ お前はここの付近にある全く使われていない寂れた公園だ そこでキドウさんに稽古をつけてもらう」
「私だけなんで公園、、」
「文句言うな キドウさんは最適な場所を選んだと言ってたぞ」
「はーい」
不満は拭いきっていないが決まったことで仕方ないという返事をした
「ってことで話終わり 解散かいさーん」
その場はゆるりと終了し、各人は後日から各々の時間を過ごした
ゴウは筋トレを毎日、レナとセツナはショッピング、リュウマとコウマは組手、ランマルは握力増強を、シイナはダンスの勉強を、ガイは破壊されたドリルの調製を、ハヤテは坂ダッシュ、アサミは兄との妄想を膨らませていた
しかし、悔しき思いをした者たちは穏やかな日常や、戦闘力の向上に励む余力は無かった
それはここ、東京にも、、
東京都 港区 旗本家
リクトは学習机に着いて、参考書とノートを開いてペンを動かしていた
瞳は疲れを感じさせ、今にも頭を机に落としそうになるのを気合いで止める
すると、部屋のドアが開く
「リクト 勉強は順調か」
威厳のある声がリクトをイラつかせる
「ええ…お父さん 受験に合格できるよう励みます」
その嫌様を表に出さず、適切で丁寧な返事をする
「そうか 家出をした時はどうしたものかと思ったが、学業への支障が少なくて済んだようだな」
「はい…その節は申し訳ございません…」
「良い お前が俺の事業を継いでくれるのならば問題ない」
ドアが閉じる音が劈く
父親は会社の社長で金持ち、祖父から続く会社を継いで大成している
故に父親は息子に社長という地位を保ち続けて欲しいようだ
俺の四つ上の兄は引き継ぐつもりは無いと家出して海外に行った矢先、死んだ 海外ではよくある無差別な発砲で
正直、僕もこの家を継ぐつもりなんてなくて…それが嫌で家出して仙台まで飛んだ
その結果、試験に落ちて秘密を条件にここに後戻り 勉強は嫌いじゃないけど誰かに強要される勉強は無駄に感じる
「はぁ…」
深いため息をついて立ち上がり、電気を消し、部屋を出る
玄関に続く階段下っていくと、広い玄関とそれを照らすシャンデラがリクトを迎える
「コンビニに筆記用具を買いに行ってきます」
夜分に靴を履いて、リビングにいる両親に用事を伝え外出する
っていうのは嘘で、ほんとは疲れ治しに甘いものでも買って食べようとか思ってるんだけど…
街灯で明るく照らされる真っ黒な歩道をしばらく歩くと青いコンビニに到着する
そこのコンビニは2階にマッサージ店が常設されておりこじんまりとしているが、内装は他の同店と変わらない
自動ドアが開くと店内からやる気のない「いらっしゃいませ」が聞こえる それを全く気にすることなく、レジの前を通り過ぎて、ケーキやプリンが置かれている商品棚の前で止まる
夜間に売れ残っているショートケーキとモンブラン、冷たい抹茶大福からハズレのないショートケーキを手に取ると、ふと目に入ったアイスコーナーに引き寄せられる
一旦、ショートケーキを元の場所に置き、冷凍ボックスの中を覗く
そこにはリクトが好んでいるバニラアイスをチョコで覆って固めている棒アイスがあった
リクトは溶けることを何一つとして考慮せず、ショートケーキを忘れてそのアイスを手に取る
リクトは誤魔化しのために筆記用具コーナーでシャー芯を取って、その2つを購入する
自動ドアが開いて「ありがとうございました」という声が店外に流れ出る
リクトは真っ直ぐ自宅に帰り、黒い玄関の扉を開くと暖房の効いた室内の空気が冷えた自分の身体を襲い、気温差で熱いと感じさせる
「ただいま帰りました」と言葉を放とうとした瞬間、視界は足元に吸い込まれた
「……!」
床には母親がうつ伏せで横たわっており、首から血を流して玄関マットを濡らしていた
そこからリビングに続く床に足跡の血痕が並んでいた
リクトは土足のまま居間に入り、足跡を追うとそこにはフードの着いた黒服を着た怪しい男が父親の胸ぐらを掴んで持ち上げている姿があった
「お前…!誰だ!」
手に持ったレジ袋を床に投げ落とし、臨戦態勢をとる
「り、リクト……」
気づいた父親が苦しそうに名前を呼ぶと若い男もこちらを向いた そして男は嬉々として口を開いた
「おお!キミがリクトくんか!」
フードから見える首まで伸ばした紺色のウルフカットと猟奇的な笑顔
リクトは警戒を解かず、足を引いた
「お母様を殺したのはお前か…」
「あぁ…うん ナイフ持ってる程度で叫ばれたし」
それで首を一突きか…
リクトは男の頭部めがけて飛び襲おうと引いた足に力を入れる
それに気づいた男が慌ててナイフと父親を手放した
「おーっと!キミに危害を加えるつもりはひとつもない!」
「なに…」
武器や人質を手放した相手に対しても警戒を緩めず、構えを維持する
これは戦闘の意思がないと見せ掛けた不意打ちを防ぐための対処である
「いやね!俺、ていうかぁ 俺たち?今やりたいことがあってさぁ 戦力集めてんのっ」
悠長に話し始めたと思えば、若い男はゆっくりこちらに近づいてくる
「それが僕の家に何が関係ある…」
厳しい視線で声を曇らせて問う
「率直に言うと…」
男はリクトの眼前にまで顔を近づけて目を至近距離であわせる
「リクトくん キミが欲しい」
「……!」
フードから見えた右眼の赤黒い眼光がリクトを刺すと同時に言葉で動揺させる
「ど、どういう意味だ…」
動揺を隠しきれないその問いに男は曲げた腰を伸ばして笑いながら答える
「なーにそのまんまの意味だよっ!強いて言うなら…」
男が今度はリクトの左耳に口を近づけ、小声で言った
「Я 関係者がほしい」
「……!」
その言葉を戦闘開始の合図と受け取ったリクトは引いた右足を大きく振りかぶるが、男はバク宙で回避し、後ろにさがった
「おっとっと 酷いなぁ急に攻撃なんて」
「お前がそれを知っているはずがない だが知っているならお前は敵だ」
「うひょ~好戦的なガキだことっ」
再び飛びかかったリクトの蹴りを右腕で防ぐ
「……!」
コイツ…ただの犯罪者じゃない…!
「そこら辺にいる底辺と同じにすんなよっと!」
右腕で脚を払い、無防備に宙に浮いたリクトの腹にミドルキックを打ち込んだ
「オエッ…!」
蹴り飛ばされたリクトは玄関との間の壁に背をぶつける
僕以上の蹴りの威力…コイツ…どっかの犯罪組織の人間か…!
「はいはい もうわかったでしょ 俺には勝てないって」
男は床に腰を落とすリクトの顎を指で持ち、また目をあわせる
「キミがЯ から見捨てられたのは知ってる だから迎えに来てあげたんだ」
「なにを…言ってる…」
「キミは逃げ出したかったからこの家を飛び出したんだろ」
「それは……」
「だったらまた飛び出せばいい 俺たちはキミを見捨てたりしない」
呑んではいけない勧誘だ
そんなことは一目瞭然でこの男に着いていけばЯ の信念に背くことは充分に分かっている
「Я は…そう簡単に…呑まれない」
「何を言ってるんだキミは」
「なに…」
ヘラヘラとした笑顔が男から消えた
「キミはアイツらの信念を突き通し守るためにアソコにいたのか?違うだろ」
男はリクトの胸ぐらを掴んで立ち上がる
リクトは力無く持ち上げられ見上げられる
「お前は!この監獄から永久追放されるためにあの場所にいた!なら脱獄先を変えればいい!」
突然の怒号にリクトは黙って聞くことしかできなかった
「来いよ 旗本 陸斗!目の前の檻をぶち壊して!信念なんてもんも何もかも忘れて!変えようぜ自分と周り全てを!」
洗脳だ 男はリクトを手中に収めようとしている
しかし、この言葉は現状のリクトの心を大きく揺さぶってしまう
真っ暗な狭い檻の中で学習机の明かりだけを頼りにノートにペンを立てて動かす
そんな虚無な自分に飽き飽きして、ふとノートから目を離すと何も見えない檻の外から手を伸ばされていて、リクトはその手に向かって立ち上がる
強制させられる勉強は嫌い…この家にいれば…僕はまた嫌いなことを永遠とさせられるのか…なんで…?ああ…そうだ 全部
「Я が悪いんだ」
呟いた一言で男はまた口を吊る
「Я が僕を落とさなきゃここに後戻りせずに済んだ なのにЯ は…」
残酷な言葉がリクトの脳内に再び流れる
『今からは脱落生だ 素直に20点未満の奴は後ろに下がれ』
「クソがッ…」
リクトが縦格子の間から伸ばされる手をとった
呑み込まれた
男の言葉が密かに脳に染みついていた憎しみを呼び起こしたのだ
「離せ」
男はその言葉でリクトを手から離すとリクトは反撃の意思を見せることなく足を床につける
「ノる気になったかな」
「あぁ…ノってやる…この監獄から抜け出して、Я に復讐するために」
リクトは言いながらある人物の元へ足を進める
「だからまずは、、」
足を止めると足元に腰を落としている人物を見下す
「監獄の管理人を殺る」
「リクト……」
父親は言葉を失い、無慈悲に落とされる足に抵抗できず頭を踏みつけられた
グチャッ…!カンッ!グチャッ!ガンッ!グチャッ!ガンッ!
父親を踏む音と檻の格子を殴る音が重なる
「壊れろ」
命を奪う瞬間、リクトの中で檻が破壊される
バァーーーーーーン!
アイスとそれを覆うチョコレートが溶け、床で混ざり合う
そこに流れた血液が混ざり、そのビターな色を赤黒く染めていく
それを眺めるリクトの瞳が血液に映し出される
徐々に色を変えていく液体と同時に、リクトの瞳も赤黒く染まっていった
その一連の事象を干渉しない位置でじっと見ていた若い男は鋭い微笑みをしながら思う
Я お前らはまたとんでもない憎悪を創り出しちまったらしいな
安心しろ お前らが捨てた闇は俺が全部取り込んでやるからな
TOP10以外の支部の人達はそれぞれ支部に帰還した
その先や本部で不合格だった人物たちの今後対応が行われた
非戦闘の親衛班となるか、組織の情報を漏らさないことを条件に世の中に社会復帰するかを選択し、各々の対応をしていた
そして、私たちTOP10は本部の座学用教室に集められていた
「絶対俺入っとるわぁ」
「リュウが入ってるならオレも入ってるか」
TOP2名が駄べっている
私はそれを見ながらあくびして机に伏せる
レナはアカカミちゃんと話してるし、ゴウはオオガミくんに捕まってるし、、はぁ、私も新しい人間的関係を組み立てなきゃなぁ…
そうやって目を塞ぐと背中を誰かにバシッと叩かれた
「イタい!」
振り返るとそこにはハヤテが笑って立っていた
「あははwいい反応すんね~ジブン」
滋賀支部のカケハシくんだ…この人優男っぽすぎてちょっと怖いんだよね…
「あら?無視かいな」
「あ、ごめん何」
ハヤテは隣の席に座ってセツナの方を向いた
「いや特に話したいことも無いんやけど 1人が寂しそうやな思て」
「余計な気遣いどうも」なんて口に出すわけもないが少し煩わしい
「お、アンタ今、余計なことや思ったやろ」
「……!」
鋭い指摘にセツナの声が詰まった
「な、なんで、、」
「あ、ほんとに思とったんかい なははw参るわ~」
いやいや、参るのわこっちの方なんだけど
「根拠なんてないで 勘や」
「えええ、なんかその人間心理的な何かしらかあるとかじゃ…」
「ない!」
はっきり言い切ったハヤテを見てますます怖くなった…根拠なしにして人の思っていることをズバリ当ててくるって…
ハヤテに戦いていると教室のドアがガラガラと引かれ、少年隊隊長キヤマ サトシが入室した
「よぉし全員揃ってんなー めんどくさいから自己紹介は省くぞー」
紹介なんてされずともこの男がどんな者なのかは皆が認知していることである
現少年隊隊長であり、4月からは特攻班へ自動昇級 さらには次期幹部候補
Я 内で足技の技術は群を抜いている
「今回の潜入任務は俺を含んだ6人で行く」
話は一気に本題に差しかかり、サトシを抜いた残り5人は誰となるのか、口から発せられたのは、、
「ミカワ ニッタ キッタカ オオガミ カケハシ そして、俺 以上だ」
まさかの結果だった
TOP2名は含まれず、10位以内の実力で決まっていないことは確かだった
「なんでやねん!」「な、なんで!!」
もちろんリュウマとコウマは抗議する
「こん中で強いんは俺らやろ!」
「そうだそうだー!」
2人の不満にサトシは冷静に答える
「決めたのは俺じゃないし、俺に言われても困るな」
「じゃあせめて理由を教えて欲しいもんやわ」
「俺がコイツらより劣っているってこと?」
他を下に見る発言が周囲をイラつかせた
しかし、他のTOP10は何も言わず、コウマのその言葉に煩わしさを感じるのみだった
「だから知らねぇって俺に聞くなよ」
今度はこのテキトーな態度がコウマを逆撫でした
「へぇ~…そんなことなら自力でその席奪ってやんよ!!」
椅子を蹴って前に飛び出したと思えば、コウマの右足がサトシの右手に収まっていた
「ッ……!」
他の9人も立ち上がって警戒態勢に入る
「俺をボコせば自分が任務に行けるとでも?」
「その通りだよ!!」
バク転で後退したと見せかけて途中で床に両手を着いて、勢いよく飛び上がり、かかとを落とす
それを左腕で受け止め、笑顔で睨むコウマを鋭く睨み返す
「俺がお前ごときに倒せると思うなよ」
言いながら左腕を払ってコウマを浮かせ、そこに二度蹴りをキメる
「うっ…!」
勢いよく吹き飛んだコウマは教室の後ろの壁に打ち付けられる
サトシは同時に踏み込んで飛び出す
コウマは床にしりをつけて目を開けると目の前にサトシの左足裏があった
ブォンッ!
「……!」
寸止めされた蹴りが起こした風圧はコウマのみならず、他のメンバーも飲み込んだ
「ナメるなよお前ら 本気の俺はお前ら全員でかかっても殺せないからな」
足を下ろして、教室の前へ一歩一歩戻る中、サトシは語る
「ここにいるほとんどが試験中に30pt持ちの戦闘に関与、及び特攻班相手に勝ち続けた奴だろうが自惚れるなよ」
全員が棒立ちで教室の中央を歩くサトシから目を離さない
「手加減している幹部に勝てた程度でここからの命の取り合いに着いていけると思うな 下手をすれば仲間も自分も死ぬ」
ホワイトボードを拳で叩きつけた音が響く
「軽率な判断をするな ここから先は生命活動の極限状態がお前らに何度も訪れる 一瞬一瞬に命が掛かっていると思え」
全員の瞳を流れるように厳しく見つめていく
「生死は1つの選択で簡単にひっくり返る そのことを頭のど真ん中にぶち込んで判断しろ」
凍てついた空気がそこを支配していたが、サトシが説教じみたことをやめて改めて口を開いた
「任務の詳細は後日伝える 任務に選ばれた者は教室を出ろ 他は残れ」
指示を聞いて、5人は退室する
その際にセツナはレナとゴウに手を振った
ハヤテはリュウマの肩を叩いて教室を出た
少しの静けさが流れると、またサトシが話し始める
「お前らが選ばれなかったのは理由がある」
レナが首を傾げた
「お前らには任務期間中、訓練してもらう」
「訓練…」
小さく復唱したリュウマ
「そう お前らそれぞれに合った訓練カリキュラムを組んでいる 今からそれを伝える」
サトシが名指ししながら各人に訓練場所と訓練に就く人物を伝える
「タキタツ、コイン 2人はここの武道場だ 講師はムラカミさんとシバキさんだ」
「「……!」」
Я きっての強者2人に教わることはきっと大きい
期待で2人はハイタッチして喜んだ
「アサミ お前は仙台支部でアカカミさんとだ」
「わかりました」
お、お兄様ぁぁあ……//
心中穏やかでない
「ヒロヌマは青森にあるЯ の傘下 土俵坂 講師はその総代 千島 大介 御歳78歳の爺さんだが、見くびると骨の2、3本持ってかれるから気をつけろよ」
「は、はい…!」
ま、マジかその爺さん…
「最後にレナ お前はここの付近にある全く使われていない寂れた公園だ そこでキドウさんに稽古をつけてもらう」
「私だけなんで公園、、」
「文句言うな キドウさんは最適な場所を選んだと言ってたぞ」
「はーい」
不満は拭いきっていないが決まったことで仕方ないという返事をした
「ってことで話終わり 解散かいさーん」
その場はゆるりと終了し、各人は後日から各々の時間を過ごした
ゴウは筋トレを毎日、レナとセツナはショッピング、リュウマとコウマは組手、ランマルは握力増強を、シイナはダンスの勉強を、ガイは破壊されたドリルの調製を、ハヤテは坂ダッシュ、アサミは兄との妄想を膨らませていた
しかし、悔しき思いをした者たちは穏やかな日常や、戦闘力の向上に励む余力は無かった
それはここ、東京にも、、
東京都 港区 旗本家
リクトは学習机に着いて、参考書とノートを開いてペンを動かしていた
瞳は疲れを感じさせ、今にも頭を机に落としそうになるのを気合いで止める
すると、部屋のドアが開く
「リクト 勉強は順調か」
威厳のある声がリクトをイラつかせる
「ええ…お父さん 受験に合格できるよう励みます」
その嫌様を表に出さず、適切で丁寧な返事をする
「そうか 家出をした時はどうしたものかと思ったが、学業への支障が少なくて済んだようだな」
「はい…その節は申し訳ございません…」
「良い お前が俺の事業を継いでくれるのならば問題ない」
ドアが閉じる音が劈く
父親は会社の社長で金持ち、祖父から続く会社を継いで大成している
故に父親は息子に社長という地位を保ち続けて欲しいようだ
俺の四つ上の兄は引き継ぐつもりは無いと家出して海外に行った矢先、死んだ 海外ではよくある無差別な発砲で
正直、僕もこの家を継ぐつもりなんてなくて…それが嫌で家出して仙台まで飛んだ
その結果、試験に落ちて秘密を条件にここに後戻り 勉強は嫌いじゃないけど誰かに強要される勉強は無駄に感じる
「はぁ…」
深いため息をついて立ち上がり、電気を消し、部屋を出る
玄関に続く階段下っていくと、広い玄関とそれを照らすシャンデラがリクトを迎える
「コンビニに筆記用具を買いに行ってきます」
夜分に靴を履いて、リビングにいる両親に用事を伝え外出する
っていうのは嘘で、ほんとは疲れ治しに甘いものでも買って食べようとか思ってるんだけど…
街灯で明るく照らされる真っ黒な歩道をしばらく歩くと青いコンビニに到着する
そこのコンビニは2階にマッサージ店が常設されておりこじんまりとしているが、内装は他の同店と変わらない
自動ドアが開くと店内からやる気のない「いらっしゃいませ」が聞こえる それを全く気にすることなく、レジの前を通り過ぎて、ケーキやプリンが置かれている商品棚の前で止まる
夜間に売れ残っているショートケーキとモンブラン、冷たい抹茶大福からハズレのないショートケーキを手に取ると、ふと目に入ったアイスコーナーに引き寄せられる
一旦、ショートケーキを元の場所に置き、冷凍ボックスの中を覗く
そこにはリクトが好んでいるバニラアイスをチョコで覆って固めている棒アイスがあった
リクトは溶けることを何一つとして考慮せず、ショートケーキを忘れてそのアイスを手に取る
リクトは誤魔化しのために筆記用具コーナーでシャー芯を取って、その2つを購入する
自動ドアが開いて「ありがとうございました」という声が店外に流れ出る
リクトは真っ直ぐ自宅に帰り、黒い玄関の扉を開くと暖房の効いた室内の空気が冷えた自分の身体を襲い、気温差で熱いと感じさせる
「ただいま帰りました」と言葉を放とうとした瞬間、視界は足元に吸い込まれた
「……!」
床には母親がうつ伏せで横たわっており、首から血を流して玄関マットを濡らしていた
そこからリビングに続く床に足跡の血痕が並んでいた
リクトは土足のまま居間に入り、足跡を追うとそこにはフードの着いた黒服を着た怪しい男が父親の胸ぐらを掴んで持ち上げている姿があった
「お前…!誰だ!」
手に持ったレジ袋を床に投げ落とし、臨戦態勢をとる
「り、リクト……」
気づいた父親が苦しそうに名前を呼ぶと若い男もこちらを向いた そして男は嬉々として口を開いた
「おお!キミがリクトくんか!」
フードから見える首まで伸ばした紺色のウルフカットと猟奇的な笑顔
リクトは警戒を解かず、足を引いた
「お母様を殺したのはお前か…」
「あぁ…うん ナイフ持ってる程度で叫ばれたし」
それで首を一突きか…
リクトは男の頭部めがけて飛び襲おうと引いた足に力を入れる
それに気づいた男が慌ててナイフと父親を手放した
「おーっと!キミに危害を加えるつもりはひとつもない!」
「なに…」
武器や人質を手放した相手に対しても警戒を緩めず、構えを維持する
これは戦闘の意思がないと見せ掛けた不意打ちを防ぐための対処である
「いやね!俺、ていうかぁ 俺たち?今やりたいことがあってさぁ 戦力集めてんのっ」
悠長に話し始めたと思えば、若い男はゆっくりこちらに近づいてくる
「それが僕の家に何が関係ある…」
厳しい視線で声を曇らせて問う
「率直に言うと…」
男はリクトの眼前にまで顔を近づけて目を至近距離であわせる
「リクトくん キミが欲しい」
「……!」
フードから見えた右眼の赤黒い眼光がリクトを刺すと同時に言葉で動揺させる
「ど、どういう意味だ…」
動揺を隠しきれないその問いに男は曲げた腰を伸ばして笑いながら答える
「なーにそのまんまの意味だよっ!強いて言うなら…」
男が今度はリクトの左耳に口を近づけ、小声で言った
「Я 関係者がほしい」
「……!」
その言葉を戦闘開始の合図と受け取ったリクトは引いた右足を大きく振りかぶるが、男はバク宙で回避し、後ろにさがった
「おっとっと 酷いなぁ急に攻撃なんて」
「お前がそれを知っているはずがない だが知っているならお前は敵だ」
「うひょ~好戦的なガキだことっ」
再び飛びかかったリクトの蹴りを右腕で防ぐ
「……!」
コイツ…ただの犯罪者じゃない…!
「そこら辺にいる底辺と同じにすんなよっと!」
右腕で脚を払い、無防備に宙に浮いたリクトの腹にミドルキックを打ち込んだ
「オエッ…!」
蹴り飛ばされたリクトは玄関との間の壁に背をぶつける
僕以上の蹴りの威力…コイツ…どっかの犯罪組織の人間か…!
「はいはい もうわかったでしょ 俺には勝てないって」
男は床に腰を落とすリクトの顎を指で持ち、また目をあわせる
「キミがЯ から見捨てられたのは知ってる だから迎えに来てあげたんだ」
「なにを…言ってる…」
「キミは逃げ出したかったからこの家を飛び出したんだろ」
「それは……」
「だったらまた飛び出せばいい 俺たちはキミを見捨てたりしない」
呑んではいけない勧誘だ
そんなことは一目瞭然でこの男に着いていけばЯ の信念に背くことは充分に分かっている
「Я は…そう簡単に…呑まれない」
「何を言ってるんだキミは」
「なに…」
ヘラヘラとした笑顔が男から消えた
「キミはアイツらの信念を突き通し守るためにアソコにいたのか?違うだろ」
男はリクトの胸ぐらを掴んで立ち上がる
リクトは力無く持ち上げられ見上げられる
「お前は!この監獄から永久追放されるためにあの場所にいた!なら脱獄先を変えればいい!」
突然の怒号にリクトは黙って聞くことしかできなかった
「来いよ 旗本 陸斗!目の前の檻をぶち壊して!信念なんてもんも何もかも忘れて!変えようぜ自分と周り全てを!」
洗脳だ 男はリクトを手中に収めようとしている
しかし、この言葉は現状のリクトの心を大きく揺さぶってしまう
真っ暗な狭い檻の中で学習机の明かりだけを頼りにノートにペンを立てて動かす
そんな虚無な自分に飽き飽きして、ふとノートから目を離すと何も見えない檻の外から手を伸ばされていて、リクトはその手に向かって立ち上がる
強制させられる勉強は嫌い…この家にいれば…僕はまた嫌いなことを永遠とさせられるのか…なんで…?ああ…そうだ 全部
「Я が悪いんだ」
呟いた一言で男はまた口を吊る
「Я が僕を落とさなきゃここに後戻りせずに済んだ なのにЯ は…」
残酷な言葉がリクトの脳内に再び流れる
『今からは脱落生だ 素直に20点未満の奴は後ろに下がれ』
「クソがッ…」
リクトが縦格子の間から伸ばされる手をとった
呑み込まれた
男の言葉が密かに脳に染みついていた憎しみを呼び起こしたのだ
「離せ」
男はその言葉でリクトを手から離すとリクトは反撃の意思を見せることなく足を床につける
「ノる気になったかな」
「あぁ…ノってやる…この監獄から抜け出して、Я に復讐するために」
リクトは言いながらある人物の元へ足を進める
「だからまずは、、」
足を止めると足元に腰を落としている人物を見下す
「監獄の管理人を殺る」
「リクト……」
父親は言葉を失い、無慈悲に落とされる足に抵抗できず頭を踏みつけられた
グチャッ…!カンッ!グチャッ!ガンッ!グチャッ!ガンッ!
父親を踏む音と檻の格子を殴る音が重なる
「壊れろ」
命を奪う瞬間、リクトの中で檻が破壊される
バァーーーーーーン!
アイスとそれを覆うチョコレートが溶け、床で混ざり合う
そこに流れた血液が混ざり、そのビターな色を赤黒く染めていく
それを眺めるリクトの瞳が血液に映し出される
徐々に色を変えていく液体と同時に、リクトの瞳も赤黒く染まっていった
その一連の事象を干渉しない位置でじっと見ていた若い男は鋭い微笑みをしながら思う
Я お前らはまたとんでもない憎悪を創り出しちまったらしいな
安心しろ お前らが捨てた闇は俺が全部取り込んでやるからな
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