39 / 142
冒険者編
39 side タラス④
しおりを挟む
ボリの街に着いたぜ。
「やっぱ、ボリの街は公都とは規模がちげぇな。あんな田舎臭い場所より、こっちの方が断然、オレがいる場所だぜ。オレが公主になったら、公都を変えてやるぜ」
大きなギルドがある大通りなんかに興味はねぇ。
行きたいのは裏通り。
「流石ですね。タラス様。情報収集の基本をしっかりと押さえられている。して、どこの酒場から攻めます?」
何言ってんだ? こいつは。
オレが裏通りに来たのは、当然……
「タラス様……ここは……」
「女を買うに決まってんだろ。王国の女の味を堪能してからでねぇと、王国を知ったことにはならねぇ。ドランは勝手に忌み子の情報を集めてこい」
「へい……」
ドランがいて助かったな。
アイツに任せておけば、ある程度は目星がつくだろう。
その間にオレは……へへっ。楽しむか。
オレは三日三晩……夜の街を歩き回り、王国を大いに堪能した。
「おい、ドラン!! 次だ。次の店はここだ!! 金を先に払っておけよ。請求されるなんて、興ざめも良いところだからな。多めに出しておけよ。なにせ、オレは公国の後継者なんだからな!! まぁ、言えねぇけどよ。気概は大事だよな」
金払いの良さに、自分に惚れ惚れするぜ。
どうして、オレはこんなに気前が良いんだ?
やっぱり、根っからのトップになるべき存在なんだな。
こんなオレを、忌み子ごときで……いや、待てよ。
親父はオレが後継者になることに消極的だった。
つまり、オレが怖かったってことか?
オレの才能、才覚を恐れたんだ。
小せえな。
王国に来たのは正解だったな。
オレの中の王としての器が開花していくようだ。
親父が小さく見えて仕方がない。
ちっ!! ドランめ。さっきから何してやがるんだ。
オレにもっと世界を見せろ!!
「おい、ドラン。さっさとしろ!!」
「それが……タラス様……金の底が尽きました」
何を言ってやがる。
「それがどうした? なければ、強請るでも何でもして作りゃあいいだろ!! そんなことも分かんねぇのか?」
「いや、しかし。ここは公国ではないんですよ。さすがに同じ調子ってわけには……」
世界の小せぇヤツだ。
まぁ、王国の女を抱いてねぇんだ。無理はねぇ。
「しょうがねぇ。オレが王道ってやつを見せてやるぜ。付いてこい!!」
「は、はい!!」
ボリの街はデケェ店がたくさんある。
どうせ、悪どい商売で大金を稼いでいるに違いねぇ。
オレの行いは、それを女どもに配る……いわば、善行ってやつだ。
この店にするか……
「おう」
「いらっしゃいませ。トワール商会にようこそ。何か、お探しでしょうか?」
「オレはナザー……いや、なんでもねぇ。金を出しな」
「……」
ビビってやがるな。
正義の前に悪人は黙り込むもんだ。あと一歩だな。
「お客様。失礼します」
……何が起きやがった?
どうして、こんなところでオレは寝ているんだ?
たしか……駄目だ、記憶がねぇ。
「タラス様……タラス様!!」
「ドランか……一体何があったんだ?」
「ヤバイですよ。タラス様が手を出したのはトワール商会って言って、王国でも三本の指に入る大店ですぜ」
あん? トワール商会だから何だって言うんだ。
たかが商会じゃねぇか。
「タラス様。違うんです。ここは公国ではないんです。商会って言っても、国ほどの力があるんですよ。それに喧嘩を売った意味が分からないんですか!?」
国ほどの力だと? 馬鹿馬鹿しい。
そんな訳が……。
「見つかってしまいましたね。ずらかりましょう」
「ちょ……おい!! ドラン!!」
遠くから黒尽くめの男たちがこっちに近づいてくる。
「くそ!! 待て、ドラン!!」
「やっぱ、ボリの街は公都とは規模がちげぇな。あんな田舎臭い場所より、こっちの方が断然、オレがいる場所だぜ。オレが公主になったら、公都を変えてやるぜ」
大きなギルドがある大通りなんかに興味はねぇ。
行きたいのは裏通り。
「流石ですね。タラス様。情報収集の基本をしっかりと押さえられている。して、どこの酒場から攻めます?」
何言ってんだ? こいつは。
オレが裏通りに来たのは、当然……
「タラス様……ここは……」
「女を買うに決まってんだろ。王国の女の味を堪能してからでねぇと、王国を知ったことにはならねぇ。ドランは勝手に忌み子の情報を集めてこい」
「へい……」
ドランがいて助かったな。
アイツに任せておけば、ある程度は目星がつくだろう。
その間にオレは……へへっ。楽しむか。
オレは三日三晩……夜の街を歩き回り、王国を大いに堪能した。
「おい、ドラン!! 次だ。次の店はここだ!! 金を先に払っておけよ。請求されるなんて、興ざめも良いところだからな。多めに出しておけよ。なにせ、オレは公国の後継者なんだからな!! まぁ、言えねぇけどよ。気概は大事だよな」
金払いの良さに、自分に惚れ惚れするぜ。
どうして、オレはこんなに気前が良いんだ?
やっぱり、根っからのトップになるべき存在なんだな。
こんなオレを、忌み子ごときで……いや、待てよ。
親父はオレが後継者になることに消極的だった。
つまり、オレが怖かったってことか?
オレの才能、才覚を恐れたんだ。
小せえな。
王国に来たのは正解だったな。
オレの中の王としての器が開花していくようだ。
親父が小さく見えて仕方がない。
ちっ!! ドランめ。さっきから何してやがるんだ。
オレにもっと世界を見せろ!!
「おい、ドラン。さっさとしろ!!」
「それが……タラス様……金の底が尽きました」
何を言ってやがる。
「それがどうした? なければ、強請るでも何でもして作りゃあいいだろ!! そんなことも分かんねぇのか?」
「いや、しかし。ここは公国ではないんですよ。さすがに同じ調子ってわけには……」
世界の小せぇヤツだ。
まぁ、王国の女を抱いてねぇんだ。無理はねぇ。
「しょうがねぇ。オレが王道ってやつを見せてやるぜ。付いてこい!!」
「は、はい!!」
ボリの街はデケェ店がたくさんある。
どうせ、悪どい商売で大金を稼いでいるに違いねぇ。
オレの行いは、それを女どもに配る……いわば、善行ってやつだ。
この店にするか……
「おう」
「いらっしゃいませ。トワール商会にようこそ。何か、お探しでしょうか?」
「オレはナザー……いや、なんでもねぇ。金を出しな」
「……」
ビビってやがるな。
正義の前に悪人は黙り込むもんだ。あと一歩だな。
「お客様。失礼します」
……何が起きやがった?
どうして、こんなところでオレは寝ているんだ?
たしか……駄目だ、記憶がねぇ。
「タラス様……タラス様!!」
「ドランか……一体何があったんだ?」
「ヤバイですよ。タラス様が手を出したのはトワール商会って言って、王国でも三本の指に入る大店ですぜ」
あん? トワール商会だから何だって言うんだ。
たかが商会じゃねぇか。
「タラス様。違うんです。ここは公国ではないんです。商会って言っても、国ほどの力があるんですよ。それに喧嘩を売った意味が分からないんですか!?」
国ほどの力だと? 馬鹿馬鹿しい。
そんな訳が……。
「見つかってしまいましたね。ずらかりましょう」
「ちょ……おい!! ドラン!!」
遠くから黒尽くめの男たちがこっちに近づいてくる。
「くそ!! 待て、ドラン!!」
57
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる