追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

文字の大きさ
12 / 69
地方コンテスト

第11話 幼馴染との再会

しおりを挟む
本当に拍子抜けするほど、普通の食事だった。

その前に武具に関心が高い公爵家のコレクションを色々と見せてもらった。

その中にはウォーカー家の代々当主の作品も含まれていた。

「これが……」

かなり説明が長かったが、はっきり言って……

とても興奮した。

名工と言われた人たちの作品をこうやって、間近で見られる機会はほとんどない。

デルバート様の説明はほとんど耳に残らなかった。

「さすがだな……」

それだけが耳に残った。

きっと、武具を褒めてのことだったのだろう。

さて、食事は……。

「アリーシャ。もうちょっと、ゆっくりと食べなよ」
「うぐっ……苦しい」

まったく、詰め込みすぎるから。

「君もすっかりお兄さんだな。おや? どうやら、良いライバル関係になってしまったようだな。どちらがいいお兄さんか比べようじゃないか!」

何を争っているんだ、この人は?

「……いえ、僕のお兄さん歴はデルバート様の比ではありません。比べるまでもないでしょう」
「うむ。まぁ、それもそうだな。大人気なかったな」

いや、そこで引かれても……

どちかというと、お兄さん比べをいい出した時点で考え直してほしかった。

「さてと、僕達はそろそろ……」

どれくらいの時間が経っているのだろうか?

アリーシャも食べ疲れてしまったのか、ウトウトしだしている。

僕もなんだか、眠いな。

なんだかんだで、コンテストに向けて睡眠を削っていたからな。

「ライル君。どうだろう? 今日はここに泊まっていかないかな?」
「それは……さすがに……あれ? なんで、こんなに眠いんだろう」

「ライル君……」

それを最後に僕は意識を手放してしまった。

目が覚めたのは真っ暗な部屋の中だった。

ソファーに横たわり、毛布だけがかかっていた。

「すっかり寝てしまったみたいだな。それにしても、ここはどこだろう? アリーシャは?」

薄暗い部屋にはアリーシャの姿はなさそうだ。

窓が少し開いていて、冷たい空気が部屋中に流れ込んでくる。

ちょっと寒いな。

閉めようと窓に近づくと、そこにはベッドがあった。

大きな、様々な装飾が施されたものだった。

さすがは大貴族だな。

客室にまで、こんなベッドを……

しかし、なんで僕はソファーに?

まさか、庶民にはベッドを使わせたくないということか?

……と思っても怒りなんて湧かない。

それが当然か。

カーテンがゆらゆらと揺れ、月明かりがベッドの上を明るく照らした。

人?

誰か、寝ているのか?

まさか……

「アリーシャ? そこにアリーシャがいるのか?」

さすがに僕を差し置いて、ベッドで寝るとは思えないけど……。

だけど、デルバート様なら考えられるな。

とにかく、帰ったほうがいいだろう。

朝までいたら、いつ帰れるかわからないもんな。

あとで勝手に帰ったことを謝罪しておけば……

「アリーシャ。さあ、帰ろう。僕が背負ってあげるから」

手探りでアリーシャの体に触れた……つもりだった。

柔らかい?

なんだ、この弾力のある柔らかさは。

これは……アリーシャじゃない!

一体、誰なんだ?

「ん……だれ? お兄様?」

女性の声のようだが、とても掠れている。

まるで老婆のようだ。

だけど……不思議と懐かしい感じがした。

「僕は……」
「ひっ!! だれ? お兄様じゃ……ない?」

その人は動こうと必死になってはいるが、位置は全く変わることはなかった。

「動けないんですか?」
「だれ……だれなの?」

「僕はライル。デルバール様に夕飯に招待されたんだけど、眠っちゃって。気づいたら、ここにいたんだよ」
「……」

そうだよね。

いくらなんでも、僕がいていい場所ではない事くらい分かっている。

それにきっと、この人は重い病気なのだろう。

月明かりがこの人のシーツから覗かせる体を映し出した。

痛々しいまでの包帯が巻かれ、顔にも幾重にも巻かれていた。

かろうじて、目だけがこちらを向いていた。

青い瞳……デルバート様と同じ瞳をしている。

きっと、縁者か何かなのかもしれない。

「失礼しました。僕はいなくなりますね」

ゆっくりとベッドから降りる。

少しでも振動させないように……きっと、この人が痛むだろうから。

「待って」

それはとても小さく、か細い声だった。

それでも僕は聞き逃すことはなかった。

「僕とどこかでお会いになったことがありますか?」

変な質問だが、どうしても気になっていたんだ。

既視感がどうしても拭えなくて。

「ええ。昔……」

昔?

ということは奉公時代か。

公爵家は大きなお屋敷だったから、百人以上には会っていたよな。

誰だろ?

「覚えていない? 噴水の前で私に……その愛の告白を……」

うそ、だろ?

そ、そんなはずはない。

彼女は今頃、王都の学園にいるはずなんだ。

ここにいるはずは……ないんだ。

風の噂で聞いていたんだ。

第二王子との婚約が決まったって。

その時はショックで、修行に没頭することくらいしか、その事実から逃げることは出来なかった。

「フェリシラ……様なのですか?」
「ええ……こんな姿で貴方にだけは会いたくなかった」

それは変な再会だった。

彼女は体を動かすことも出来ない病人になっていたのだから。

やっぱり、彼女は僕を嫌っていたのかな。

「ごめんなさい。僕はもう出ていくよ。きっと、もう会うことはないと思う」

これが本当の最後の別れだろう。

でも、彼女の声を聞けて良かった気がする。

なんとなく、踏ん切りがついたよ。

「待って。行かないでよ」
「僕と話しているのは辛いですよね?」

嫌味で言っているつもりはない。

彼女はきっと重病人だ。

これ以上、僕との会話で無駄な体力は削ってほしくないんだ。

「そうじゃない……そうじゃないの。そういう意味で……ごほっごほっ」

僕は駆け足で駆け寄った。

「大丈夫ですか? あまり無理はしないで下さい」
「ううん。私ね、ずっと後悔していたの。あの時、ちゃんと言っていれば良かったって」

何の話だ?

いや、なんとなく分かる。

でも、今更どうでもいいんだ。

はっきりと断っておけばよかった……そういうことなんだろう?

「いいんだ。フェリシラ様が気にすることはないんだよ。僕が勝手にしたことなんだから」
「ううん。私ね……貴方が好きだったの。ずっと……」

僕は声が出なかった。

昔とは全然違う、掠れた声でその言葉を聞いた。

信じられる?

いや、僕はその前にとても嬉しかった。

たとえ、姿が変わったとしても、僕はずっとフェリシラ様が好きだったから……。

「僕も……」

言おうとした時にノックが聞こえてきた。

返事も待たずに、ドアがゆっくりと開いた。

フェリシラ様の部屋に容赦なく入れる人……それは……

「フェリシラ。やっと言えたんだな。お兄ちゃんは嬉しいぞ! よし!! 祝杯だ!! 皆を起こせ!」

この人……ドア越しにずっと聞いてたな。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...