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地方コンテスト
第17話 ベイドをついに殴る
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「ライル君は頃合いになったら、フェリシラと来てくれ給え」
……困ったな。
どうして、僕がフェリシラの着替えを手伝っているんだろうか……。
こういうのは女中の仕事……。
「女性の前でため息を付くのは感心いたしませんわ。でも、無理はないですよね。こんなに醜い体を見ているんですもの」
彼女の体は以前に比べれば、大きく変わった。
動けなかった体も補助なしで歩けるようにもなった。
包帯だって……。
ただ、浅黒いシミのようなものは全身に広がっていた。
「いいえ。僕はただ……」
フェリシラ様の体に触れることが恥ずかしいから……とは口が裂けても言えない。
庶民が公爵令嬢にそんな感情を持ってはいけないんだ。
「ただ……なにかしら?」
「いえ。本当に何も。しかし、本当に包帯を全部取ってしまってもいいんですか?」
「構いません。今の全てをさらけ出すのも貴族としての勤めです」
本当に相変わらず凛とした人だな。
「分かりました。では、このままドレスを……」
不慣れなドレスを着させ……
「どこ、触っているんですか?」
「す、すみません」
「ちょ……苦しい」
「す、すみませぇん」
「もう、一人でやります」
「すみませぇぇん」
……。
「さあ、行きましょうか」
悪戦苦闘した末、ようやく部屋を出ることが出来た。
「ねぇ、ライル」
その言葉にドキリとした。
どうしたんだ?
「この結婚、うまくいくかしら?」
……。
「きっと……」
それ以上先は何も言えなかった。
彼女の気持ちを尊重すれば、応援しなければならない。
この屋敷に仕える人ならば、迷いもせずに成功を約束するはずだ。
だけど……。
「僕は今でも失敗してほしいと思っています」
「そう……」
会話はそれだけだった。
スターコイド家とウォーカー家の当主がいる部屋に着いた。
中からは歓談しているのか、時々、笑い声が聞こえてきた。
デルバート様もこの婚約には前向きだ。
この部屋には入りたくない。
「行きましょう」
僕は観念して、ノックをした。
「フェリシラお嬢様をお連れしました」
「うむ。入り給え」
「いや、俺が行きます」
なんか、嫌な声が聞こえてきたな。
室内から野蛮な足音が聞こえ、ドアが勢い良く開かれた。
ベイドだ。
精一杯背伸びをした豪奢な服を着ていた。
化粧まで……気持ち悪いやつだ。
「な、なんで、てめぇがここにいんだよ!」
「僕は……」
だが、ベイドは僕の話を聞かずに僕を横に押し退けた。
「お前なんて、どうでもいい。フェリシラ様の顔を……は?」
フェリシラ様はベイドをじっと見つめていた。
一歩も引かず、ずっと……。
「なんだ、この化物はぁ!! おい、フェリシラ様をどこにやった!? 美人の俺の嫁さんはどこ行ったんだよ!!」
バカは俺に殴りかからんばかりに、胸ぐらをつかみ喚き始めた。
やっぱり……こいつはバカだ。
「お初にお目にかかります。私がフェリシラ=スターコイドです」
「うそだぁ! こんな化物が」
僕は我慢が出来なかった。
フェリシラ様がどんな思いでここに来たのか。
自らの貴族として使命で、ここまで体を回復させ、自分の足で歩いてきた彼女を……。
化物呼ばわりなんて……。
僕はベイドに殴りかかった。
何度も何度も殴った。
「ぶへっ……やめ……やめてくれ」
「ふざけるな」
こんなクソ野郎にフェリシラ様を……
「お前なんか……」
「いいの。ライル」
激情した気分が一気に落ち着く。
それほど静かで威厳に満ちた声だった。
「でも……」
「いいのです。覚悟は……出来ていましたから」
「ぐえっ……」
「我が手の者が失礼しました。私を侮辱したことについては、これで不問にいたします。よろしいですね?」
なんだろう……。
フェリシラ様ってものすごく怖い人なのか?
ベイドはそのまま気絶してしまった。
しかし、この状況でデルバート様は何をやって……。
この人……笑っているぞ。
いや、表情はほとんど変わっていない。
でも分かる。
この人……この状況を楽しんでいる。
なぜ……フェリシラ様が侮辱されているというのに。
ウォーカー家の当主様は……見ていられないほど、青ざめていた。
それはそうだよな。
男爵程度の……それも息子が公爵令嬢を侮辱したんだ。
しかも、考えられない言葉で……。
「も、も、申し訳ありません」
「わ、私からも謝罪を……息子がお嬢様に対して発した言葉は決して本心では。きっと、動揺していたのでしょう……」
母上はこんな時でもベイドを庇うんだな。
なんとなく、冷めた目で母親を見てしまった。
ダメだな……この人。
「黙れ!! ベイドのしたことは、どう言い繕っても許されるものではない。デルバート様、本当に申し訳ありませんでした」
デルバート様の表情は変わらない。
だけど……やっぱり、笑っているよ、この人。
苦々しく見つめていたら、デルバート様は何を思ったのか、ウインクをしてきた。
何のつもりだ?
「まぁ、私としては妹が不問と言っている以上は事態を荒立てるつもりはない。だが、当人がこの調子では皆と話……という訳にはいかない。どうだろう? ウォーカー男爵、二人で話を……」
「こちらは格下の立場。異論はございません」
「それは結構。ライル君、すまないけどフェリシラと部屋に戻ってくれないか?」
「はい……」
この人の目は何かを企んでいる目だ。
それだけは分かる。
だけど……僕は絶対に関わるつもりはないぞ。
……部屋に戻ったフェリシラ様は大変なものでした。
ベイドへの罵詈雑言を僕はひたすら聞いていた。
翌朝のデルバート様からの呼び出しがやってくるまで……。
……困ったな。
どうして、僕がフェリシラの着替えを手伝っているんだろうか……。
こういうのは女中の仕事……。
「女性の前でため息を付くのは感心いたしませんわ。でも、無理はないですよね。こんなに醜い体を見ているんですもの」
彼女の体は以前に比べれば、大きく変わった。
動けなかった体も補助なしで歩けるようにもなった。
包帯だって……。
ただ、浅黒いシミのようなものは全身に広がっていた。
「いいえ。僕はただ……」
フェリシラ様の体に触れることが恥ずかしいから……とは口が裂けても言えない。
庶民が公爵令嬢にそんな感情を持ってはいけないんだ。
「ただ……なにかしら?」
「いえ。本当に何も。しかし、本当に包帯を全部取ってしまってもいいんですか?」
「構いません。今の全てをさらけ出すのも貴族としての勤めです」
本当に相変わらず凛とした人だな。
「分かりました。では、このままドレスを……」
不慣れなドレスを着させ……
「どこ、触っているんですか?」
「す、すみません」
「ちょ……苦しい」
「す、すみませぇん」
「もう、一人でやります」
「すみませぇぇん」
……。
「さあ、行きましょうか」
悪戦苦闘した末、ようやく部屋を出ることが出来た。
「ねぇ、ライル」
その言葉にドキリとした。
どうしたんだ?
「この結婚、うまくいくかしら?」
……。
「きっと……」
それ以上先は何も言えなかった。
彼女の気持ちを尊重すれば、応援しなければならない。
この屋敷に仕える人ならば、迷いもせずに成功を約束するはずだ。
だけど……。
「僕は今でも失敗してほしいと思っています」
「そう……」
会話はそれだけだった。
スターコイド家とウォーカー家の当主がいる部屋に着いた。
中からは歓談しているのか、時々、笑い声が聞こえてきた。
デルバート様もこの婚約には前向きだ。
この部屋には入りたくない。
「行きましょう」
僕は観念して、ノックをした。
「フェリシラお嬢様をお連れしました」
「うむ。入り給え」
「いや、俺が行きます」
なんか、嫌な声が聞こえてきたな。
室内から野蛮な足音が聞こえ、ドアが勢い良く開かれた。
ベイドだ。
精一杯背伸びをした豪奢な服を着ていた。
化粧まで……気持ち悪いやつだ。
「な、なんで、てめぇがここにいんだよ!」
「僕は……」
だが、ベイドは僕の話を聞かずに僕を横に押し退けた。
「お前なんて、どうでもいい。フェリシラ様の顔を……は?」
フェリシラ様はベイドをじっと見つめていた。
一歩も引かず、ずっと……。
「なんだ、この化物はぁ!! おい、フェリシラ様をどこにやった!? 美人の俺の嫁さんはどこ行ったんだよ!!」
バカは俺に殴りかからんばかりに、胸ぐらをつかみ喚き始めた。
やっぱり……こいつはバカだ。
「お初にお目にかかります。私がフェリシラ=スターコイドです」
「うそだぁ! こんな化物が」
僕は我慢が出来なかった。
フェリシラ様がどんな思いでここに来たのか。
自らの貴族として使命で、ここまで体を回復させ、自分の足で歩いてきた彼女を……。
化物呼ばわりなんて……。
僕はベイドに殴りかかった。
何度も何度も殴った。
「ぶへっ……やめ……やめてくれ」
「ふざけるな」
こんなクソ野郎にフェリシラ様を……
「お前なんか……」
「いいの。ライル」
激情した気分が一気に落ち着く。
それほど静かで威厳に満ちた声だった。
「でも……」
「いいのです。覚悟は……出来ていましたから」
「ぐえっ……」
「我が手の者が失礼しました。私を侮辱したことについては、これで不問にいたします。よろしいですね?」
なんだろう……。
フェリシラ様ってものすごく怖い人なのか?
ベイドはそのまま気絶してしまった。
しかし、この状況でデルバート様は何をやって……。
この人……笑っているぞ。
いや、表情はほとんど変わっていない。
でも分かる。
この人……この状況を楽しんでいる。
なぜ……フェリシラ様が侮辱されているというのに。
ウォーカー家の当主様は……見ていられないほど、青ざめていた。
それはそうだよな。
男爵程度の……それも息子が公爵令嬢を侮辱したんだ。
しかも、考えられない言葉で……。
「も、も、申し訳ありません」
「わ、私からも謝罪を……息子がお嬢様に対して発した言葉は決して本心では。きっと、動揺していたのでしょう……」
母上はこんな時でもベイドを庇うんだな。
なんとなく、冷めた目で母親を見てしまった。
ダメだな……この人。
「黙れ!! ベイドのしたことは、どう言い繕っても許されるものではない。デルバート様、本当に申し訳ありませんでした」
デルバート様の表情は変わらない。
だけど……やっぱり、笑っているよ、この人。
苦々しく見つめていたら、デルバート様は何を思ったのか、ウインクをしてきた。
何のつもりだ?
「まぁ、私としては妹が不問と言っている以上は事態を荒立てるつもりはない。だが、当人がこの調子では皆と話……という訳にはいかない。どうだろう? ウォーカー男爵、二人で話を……」
「こちらは格下の立場。異論はございません」
「それは結構。ライル君、すまないけどフェリシラと部屋に戻ってくれないか?」
「はい……」
この人の目は何かを企んでいる目だ。
それだけは分かる。
だけど……僕は絶対に関わるつもりはないぞ。
……部屋に戻ったフェリシラ様は大変なものでした。
ベイドへの罵詈雑言を僕はひたすら聞いていた。
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