追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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王都トリスタニア

第50話 錬金術な剣が完成した

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公爵屋敷敷地内、工房。

「帰ってきたぁぁぁ!!」

大した時間ではなかったが、物凄く長く感じる旅だった。

ああ、工房の匂いが堪らない!

「お兄ちゃん。あのね……」
「どうした?」

いつもと違う雰囲気……。

「ううん……なんでもない。荷物、ここに置いておくよ」
「ああ」

なんだったんだ?

お腹でも空いたのかな?

すこし心配だったが、手にしている物の方にどうしても注意が行ってしまう。

なんてことはない、ただの包みだ。

だけど、中身は……。

鉄だ。

それもただの鉄じゃない。

錬金術を施された特別な鉄だ。

……。

グレンコットから帰る直前。

魔女ベローネ様に呼び止められた。

「お主に直接、礼をしようと思ってな」
「それは既に頂いていると思いますけど」

たしかに礼はしてもらった。

「いや、言葉だけでは足りぬからな、お主にこれを渡そうと思ってな」

……これは……。

「鉄……ですか?」
「うむ。これはかつて鍛冶師の技術が未熟だった頃、生み出された金属じゃ」

どう言う意味だ?

鉄は今も昔も存在しているはずだ。

「どういうことでしょう?」
「少し昔話をするかの……」

実に興味深い話だった。

まさに鍛冶師が表舞台に登場したのは数百年も昔の話。

その頃から、戦争というものが当たり前に行われ始めた。

より斬れる武器。

より固い鎧。

自国を勝利に導くために武器開発は加速していった。

その当時は鍛冶師は不遇の存在だった。

武具を作るほどの技術がなかったからだ。

だが、エルフが提供した金属で状況は一変した。

従来の鉄では不可能とされた加工を容易に行えるようになったのだ。

それから鍛冶師という仕事の歴史が始まった……。

「今では、この鉄も無用の長物じゃ……じゃが、お主には必要かも知れぬと思ってな」

……。

それがこの鉄だ。

かつて言われていた……鍛冶師は錬金術から生まれた……。

そういう事だったんだな。

僕は『鑑定』スキルを発動した。



品質: B
耐久度: 1499/1500
特性:■■■■

……見えないのか。

特性の項目以外は、普通だ。

やや品質のいい金属という以外に思うところはない。

やっぱり、これで剣を作ってみるしかないな……。

……。

カン! カン!!

……柔らかい?

カン! カン!!

……なんだ? この不思議な感覚は……

だけど……今までで一番の出来であることは間違いない。

今まで、どうしても剣の形をした何かだった。

だけど、ここにあるのは明らかな剣だ。

これだけでも、僕が一つ成長したことを意味する。

そして……。

シュッ……シュッ……。

治すべき場所が減っている。

シュッ……シュッ……。

いい作品に生まれてくれ……。

……惚れ惚れするような刀身が目の前にあった。

鏡面のように美しい刃。

重心も見事だ。

重さも申し分ない。

だが、僕が判断できるのはこれくらいだ。

あとは……僕は生唾を飲み込み、『鑑定』メガネを装着した。

その結果は……。

僕はそれを見て、崩れ落ちてしまった。

「ついに……出来たんだ……」


■■■■剣
品質: A
耐久度: 300/4500

僕の初めてのA品質。

これは『鍛冶師』のプレミア級……つまり、父上ほどの実力がなければ、作れない。

それを……僕は作ったんだ。

『鍛冶師』スキルも持たない僕が……

一から作ったんだ。

僕は剣を抱きしめながら、泣いていた。

「お兄ちゃん、どうしたの?」
「ついに完成したんだよ。僕の剣が」

「良かったね!! お兄ちゃん」

……まるで自分のことのように喜んでくれるんだな。

ありがとう、アリーシャ。

「ねぇねぇ、お姉ちゃんにも見せに行こうよ」

さすがに、それは……。

「剣を持って、屋敷をうろつくことは出来ないよ」
「ええっ!! じゃあさ、呼びに行こうよ。きっと、お姉ちゃんも喜ぶよ!!」

そうかな?

僕は浮かれていた。

奇跡のような結果が、こうも簡単に出来てしまったことに。

「じゃあ、行こうか」

僕は出来上がった剣を今までの作品と一緒に壁に立てかけた。

「お兄ちゃん!! 早くぅ!! 置いていっちゃうよぉ」
「これでいいな。おい!! アリーシャ。あまりはしゃぐなよ」

全く……。

「申し訳ございません。お嬢様はただ今、ご当主様とお出掛けになっております」

タイミングが悪かったみたいだな。

「分かりました。また、あとで伺わせてもらいます」
「ねぇねぇ!」

アリーシャが執事さんに何かをねだっている。

「アリーシャ。やめなさい!!」
「えーっ! だって……」

「いいんですよ。ライルさん。少々、お待ち下さい」

……で? 何をねだったんだ?

執事には「ねぇねぇ」だけで通じるのか?

もしや……

「アリーシャ。僕に内緒で色々とねだっているじゃないだろうか?」
「ええと……さあ?」

「アリーシャ!!」
「ごめんなさぁい」

まったく……。

こんな純真無垢な顔をされたら、怒るに怒れないだろうに。

迷惑をかけていないか、それだけが心配だよ。

「お待たせしました」
「これは……」

大量のお菓子だった。

「すみません」
「いえいえ。アリーシャちゃんには我々も感謝しております。この前なんか……」

知らなかった。

時々、アリーシャは姿を消す。

ほんの短い時間だから、気にしていなかったけど……。

「獣人孤児院……ですか?」
「ええ。当主様の肝いりで。お嬢様が提案なさったみたいですが……」

そんなものが……。

そして、その孤児院にアリーシャは足繁く通っているそうだ。

このお菓子を持って……。

自分が食べるためじゃなかったのか……。

「ごめんな。気付いてやれなくて」
「ううん。お兄ちゃんは私を救ってくれた。だから、私はあの子達を助けてあげるの」

あれ?

なんだろう……涙が出てくる。

アリーシャがこんなに立派に成長して……。

兄としてこれ程嬉しいことがあるだろうか。

「分かる!! 分かるぞ!! ライル君!! さあ、兄の気持ちを一緒に分かち合おうじゃないか!」

デルバート様……いつの間に。

「えっと……フェリシラ様は?」
「何? 我が妹と密会をするつもりなのか? 私の目の前で!!」

目の前で会っていたら、密会にならないだろうに。

そんなのはどうでもいい。

「いいえ。実は見せたい剣がありまして……」
「ほお」

予定にはなかったけど、デルバート様にも見てもらうことになった。

それはとても興奮を抑えられない様子だった。

やっぱり、嬉しいものだな……。

……。

数日後、公爵家屋敷に侵入者がいたと情報が入った。

屋敷内の金品が奪われたが、フェリシラ様には危害はなかった。

そして……。

僕の剣は姿を消していた……。
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