追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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王都トリスタニア

第57話 ライル=シーオドア(最終話)

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僕は彼女に出会った頃からずっと好きだった。

公爵令嬢という高嶺の花だと思っていた。

でも、彼女は僕の話を聞いてくれた。

告白は失敗しちゃったけど……。

それでも彼女は僕の目の前にいてくれる。

「フェリシラ様……とってもキレイですよ」
「ありがとう。ねぇ、ライル。様はもう、いらないのでは?」

えっと……。

「フェリシラ?」
「なぁに? ライル」

なんだ、この幸せな時間は。

僕は一歩、踏み出した。

そして、慣れた彼女の手を掴んだ。

「本当に僕でいいんですか?」
「貴方でないと、イヤです」

真正面から見つめてくる彼女は本当にキレイで……。

吸い込まれるような瞳をしていた。

「よろしくおねがいします……フェリシラ」
「ええ。よろしく。旦那様」

見つめ合う二人に距離は不要だ。

僕はゆっくりと顔を近づける。

目を閉じ、僕を待つ彼女……

「んんっっ!!」

デルバート様の咳払いでどこにいるのかを思い出した。

だが、関係あるか!!

鍛冶師をなめるな!!

僕は最愛の彼女と唇を重ねた。

「結婚しましょう。フェリシラ」
「ええ。ずっと、この時を待っていました。子供の頃からずっと、これだけを夢見て……」

そうか……。

そうだったのか。

「そろそろ、いいかな? 私としては祝福したい気分と殺してやりたい気分が半々なんだが……」

あれ?

物凄く、怒っている?

「ふふっ。冗談だ」

いや、間違いなく、本気だった。

「まぁ、婚礼は盛大にやろう。だが、授爵式が終わり、落ち着いてからだ。それまでは……いいな?」

それって……。

「お兄様!! 本当に余計なことを言わないで下さい!!」

顔を真っ赤にする彼女も本当に可愛い。

「分かりました! お兄さん」
「い、いま、なんと? なんと、言ったのだ? ライル君」

「じゃあね。フェリシラ」
「ええ。また」

「ライルくぅぅぅぅん!!!」

断末魔のような叫びを聞きながら、僕は部屋を離れた。

工房に戻るといつもの景色だ。

使い慣れた道具が整然と並び、鍛え上げた剣が所狭しと並べられている。

「この辺も整理しないとな……」
「お兄ちゃん」

アリーシャ……。

僕は少しずつ、アリーシャの態度に変化を感じていた。

グレンコットから帰ってきてから、ずっと大人になった感じだ。

「アリーシャ。お前も準備をしてくれ。一月後には王都だよ」
「ねぇ、お兄ちゃん」

なんだよ……上目遣いなんてして。

まさか……。

「また、欲しい物が出来たのか? ……まぁ、高すぎなければ、買ってもいいぞ」
「ほんとっ!!?」

こういう所は出会った頃のままだな。

「ううん。違うの。実は……お兄ちゃんにお別れを言いに来たの」

……何を言っているんだ?

「冗談……だよな?」

アリーシャは僕と一緒に王都に行って……

鍛冶工房で働くんじゃないのか?

「あのね……私、やりたいことが見つかったの」

……料理か?

たしかにアリーシャの料理は格別だ。

だけど、別に別れをするほどでは。

「王都では出来ないことなのか? 設備だって全部揃えるよ。人だって……」

アリーシャのためだったら、僕はなんだってやる。

可愛い妹みたいなものだから。

「前に言ったよね? ここに獣人の孤児院があるって」

たしか、スターコイド家が運営しているって……。

アリーシャが時々遊びに行っていることも……。

「それがどうかしたのか?」
「うん。実はね、公爵に言われたの。子どもたちをずっと見守る立場にならないかって」

それって……院長ってこと?

それはさすがにアリーシャでは。

だって、まだ子供だろ?

「アリーシャはやりたいのかい?」
「うん。分からないことだらけだし、私に出来るかも分からない。だけど、私みたいな獣人を一人でも減らしたいの。そして、お兄ちゃんみたいな優しい家族と巡りあわせたい」

……そうか。

子供と思っていたのに、こんなにしっかりとした考えを持ったんだな。

街角で震えて、ひとかけらのパンを求めていた少女が……。

「そうか……じゃあ、やってみるといい」
「お兄ちゃん、大好き!!」

デルバート様が背後にいるんだ。

イタズラをしてくる輩もいないだろう。

そう言う意味では安心かな……。

「だけど、無理はするなよ。ダメだと思ったら、すぐに助けを呼ぶこと。自分で何でも解決しようとするな」
「うん!!」

なんだか、とても寂しいはずなのに……。

とてもうれしい気持ちだ。

「ねぇ、お兄ちゃん。お姉ちゃんと付き合っているの?」

なんだよ、急に。

まぁ、今では婚約者という立場だけど……。

ああ、顔がニヤついてしまう。

「そうだな。付き合っていることになるのかな」
「付き合うと、一緒に暮らすものなの?」

結婚のことかな?

「そうだね。そうならない人もいるけど……そうなりたいと願う人と付き合うんだよ」
「そっか! じゃあ、私も将来はウィネットちゃんと一緒に暮らさないと。呼んだら、来てくれるかな?」

……ん?

まぁいいか。

大したことではない。

うん、きっと大したことではないんだ。

「じゃあ、僕とはここでお別れかな?」
「ううん。一緒に王都に行く。観光したいから」

そっか……。

少し別れが長引いてくれて、僕は嬉しいよ。

「じゃあ、フェリシラのドレス姿を見ていくと良いよ。とってもキレイだよ」

……それから一月後。

「ライル=シーオドア。貴殿に名誉子爵位を与え、王家直属の筆頭鍛冶師の任を与える」
「ははっ!! 謹んでお受けいたします」

それからしばらくが経った。

「シーオドア鍛冶長! 仕上げをお願いします!!」
「ああ。それにしても、いい出来ですね!! この調子でお願いします」
「はい!! 鍛冶長!!」

工房で信頼できる部下を持ち、完全な分業制を実現した。

一人の鍛冶師ではなく、数十人の鍛冶師で一本の剣を作り上げていく。

そして、その中にも魔道具技師のロンスリーの姿もいた。

「なぁ、ライル。イディア様に告白してもいいかな?」

何度目だ?

こいつのイディア様への恋は実ることがあるのだろうか?

そして、僕の横にはいつも笑顔の彼女がいる。

「ねぇ、そこの家具を見に行きましょう!!」
「ええっ!! ちょっと買いすぎじゃないかな?」

王都をデートする度に、家具が一つ増える不思議に悩まされる毎日。

僕はライル=ウォーカー改め、ライル=シーオドア。

男爵の次男から子爵当主へと成り上がった男だ。

そして……最愛の女性と結婚できたんだ。
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みんなの感想(9件)

A・l・m
2023.06.09 A・l・m

父親は『まともな剣を作れるようになった(誤解)』跡継ぎが『弟を嫌っている』というくだらない理由で『主人公を追い出しています』

『持っているのは銀貨一枚と小さな砥石』


財布も着替えもな~んにもなし!
何処かへの紹介状もお供も、馬車の切符も「〇〇へ行ってみろ」も何にも無しで貴族の子供(成人したて?)を放り出していますが、それでも父親は悪いことしてないよね?って言いますか?


ひのきのぼうや100ゴールド(または銀貨)すら無しで「低級スキルとは情けない!」した男が本当に悪くないですか?


ちょこっと送金とかもしてませんよ?


まあ、ランク上昇効果とはいえ耐久値削れ過ぎ!
鍛冶道具とか自分の腕とか研いだらもう少し自力でやれたんじゃないですかね……。
(ハンマー複数消費しそうではある)

解除
A・l・m
2023.06.09 A・l・m

side陰謀公爵デルバート

レイモンド王子が名門鍛冶屋メレキさんの名前になっているような……?

解除
A・l・m
2023.06.09 A・l・m

23わ。

いくら集中しても口と口でキスしたら気付くやろ!(頬にしとけ頬に!)


……主人公、お嬢の口に指突っ込むとかやってそう。

解除

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