爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第19話 父上の帰還とテンサイ糖

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 ライル達がこの村に来てから、しばらく経ったころ、ライルが屋敷を訪ねてきた。
 「村長さん、お邪魔するぜ。今日は、ちょっと頼みがあってきたんだ。お前さんにも関わることだが……」

 「ライル。生活には慣れたか? 気になることを言うもんだな。話を聞こう」
 
 「皆には世話になっている。部下たちもすんなり溶け込めたよ。亜人がこんなに快適に暮らせるなんて、信じられねぇな。やっぱり、イルス隊長の息子さんだよ。さて、頼みってのはイルス隊長の遺骨をこっちに移してもらえないか? 」

 「父上の遺骨? あるんだったら、もちろんそうさせてもらいたいが。一体、どこに?」

 「おいおい、落ち着けよ。場所は、俺達が会ったあの採掘場だよ。あそこは、イルス隊長が亡くなった場所なんだよ。イルス隊長と共にあそこまで逃げ延びてきたが、隊長はあそこで息絶えたんだ。自分の領土の近くで亡くなるなんて、無念だったろうよ」

 ライルが泣くのを我慢している。父上は相当慕われていたんだろうな。

 「よくぞ教えてくれた。そこにすぐに向かおう。自警団を動かしてもらえないか?」

 「ああ。ありがとうよ。イルス隊長も故郷に戻れて、うれしいだろうよ。あいつらも喜ぶぜ」

 すぐに、出発することになった。エリスには、経緯の説明としばらく留守にすることをゴードンに伝言するように頼んだ。

 僕は馬上の人になった。といっても、乗れないから、ライルの背中にひっついているけど……採掘場までの道を魔法で整備しながら進むことにした。どうせ森の中じゃあ、馬は走れないからね。

 20キロメートルの道を作るのは、時間のかかることだった。魔法は一瞬なんだけど、休憩時間を多く必要とした。その間に自警団の連中は、獣を狩ったりして時間を潰していた。

 三日間かけて、鉄の採掘場にたどり着いた。

 「村長さん、あっちだ。イルス隊長が眠っているのは……。付いてきてくれ」

 僕は、ライルについて行った。採掘場の洞窟から少し離れたところに、古ぼけた膝くらいの高さの石が設置してあった。これはきっと墓なのだろう。この下に父上が……。僕は、手を合わせ、父上に今までの報告をした。そして、これから共に故郷に帰ることを……

 早速、掘り出し、父上の遺骨を回収した。埋葬時に、遺骨を小さい木箱に収めてくれたおかげで、回収は容易に済んだ。皆が待っている。早く帰ろう……帰る準備を指示すると……

 「村長さん。すまねぇが、オレらがアジトとして使っていた場所に来てくれねぇか? 荷物を取りに行きたいんだ。あの時は、着の身着のままで村に行っちまったからな」

 もちろん、僕は賛成した。アジトって言葉がすごく魅力的に聞こえた。どんなんだろう! 

 ライル達に従ってついていくと、掘っ立て小屋が何軒も建っていた。各々が自分の家に向かって、荷物を取りに行った。僕は、なんとなくアジト感がないな、ってショックを受け、興味をなくしたので、周りを見て回った。気になったのは、結構、畑があることだ。35人も食べていくんだから、これくらいは必要か。植えてあるのは、大体、村にあるものだな……ん? これは……ん? んん? 甜菜じゃないか? 

 ライルを呼び出し、甜菜について聞いてみた。どうやら、父上が入手したものらしい。父上は、一体、何者なんだ? 甜菜は、一般的には生食に向かない。食らべれなくはないが、とにかく泥臭い。しかし、ある方法を使うと、大きく化ける野菜なのだ。
 
 村に、確実に不足しているあれが……。

 畑にあるのは、まだ収穫期前だ。十分に肥大していない。全部、種用にするとしよう。冬になる前に取りに来ればいいだろう。ライルに聞くと、備蓄があるとのこと。収穫はしたけど、食べれないため、保管しておいたらしい。それが、父上の命令だったみたい。すべて、持ち帰ることにした。

 僕達は、村へ帰路についた。帰りは、整備した道のおかげで、3時間で着いた。これなら、人の足でも6時間もあれば着くだろう。鉄鉱石の運搬を考えると、運搬用の動物がやっぱり欲しい。

 屋敷に着くと、ゴードンが待っていた

 「ロッシュ村長!! 心配しましたぞ。エリスの報告を聞きましたが、それでも心配で……ご無事で何よりです。それで首尾はいかがだったでしょう?」

 ゴードンのすごい剣幕に怯んでしまったが、その言葉を聞いて、胸が熱くなった。ゴードンはまるで父上のようだな。
 
 「無事、父上の遺骨を持ってきた。適切な時期に、葬儀を行う故、村人に通知して欲しい。無理強いはするな。来たい者だけで良い。来なくても、不利に取り扱うことはないと付け加えておいてくれ。それと、レイヤに父上の墓を作るように伝えておいてくれ。僕は、その辺は疎い故、ゴードン、知恵を貸してもらいたい」

 「もちろんでございます。ゴードン、ロッシュ村長のためにいくらでも知恵を貸しますぞ」

 ゴードンは、村人にすぐに伝えるために、屋敷を後にした。

 残ったのは、エリスだけとなった。エリスも僕を心配していたようだ。帰ってきたことを、素直に喜んでくれた。

 「エリス、すごいお土産があるんだ。といっても、これから作るんだけど……ココは、今は畑か? 一段落したら、来るように伝えておいてくれ」

 エリスが、キョトンとした顔をしたが……何のことかわからず、首を傾げている。しかし、すぐに小さく頷いた。 

 僕は、先程収穫した甜菜を取り出した。甜菜の肥大した根っこを細かく切って、茹でて、煮汁だけを取り出した。この残りカスは、家畜の餌に……って家畜、いないや。煮汁を舐めてみると……少し甘いな……。これを煮詰めるだけだが……魔法でやってしまおう。水魔法で、水のみを取り出すと、ちょっと色づいた粉が出来た。舐めてみると……甘い。これが、テンサイ糖だ。今の技術ではこれが限界だな。もう少し、精製の精度を上げたいところだが……これで、今は十分だろう。

 てんさい糖を角砂糖に加工して……エリスとココを呼んだ。前もって、エリスにコーヒーを持ってくるように伝えておいた。

 食卓を囲んで、コーヒを各々の前に置いた。真っ先にココが反応した。

 「ココ、このコーヒーって……まずくて、きらいだよ。飲まなくちゃいけないの?」

 「飲まなければならないでしょうか? ロッシュ様……でしょ!」

 エリスがココに言葉遣いを教えている。どうも、覚えが悪いようだ。まだ、8歳だからな。僕は、エリスを制止し、気にしないように、と伝えた。

 「まぁ、飲んでみてくれ。僕がこのコーヒーに魔法を掛けたからさ」

 ココがちょっと嫌そうな顔をしながら、一口飲むと、目を見開いた。

 「甘いよ! すごく甘い! ココ、このコーヒーなら好き!」

 ココがすごく上機嫌になった。上々の成果だ。ココの変貌ぶりにびっくりしたエリスが続けて口にすると……
 「これ、砂糖ですか?」

 ほお、エリスは砂糖を知っていたか……

 「違うよ。これは甜菜から取れたテンサイ糖っていうやつだ。十分に甘いだろ? これを、この村で作ろうと思うんだ。まだ、少量しか作れないから、二人にしか振る舞えなかったけど……今度、父上の葬儀の際に皆に振る舞おうと思うんだ。なにか、いい案があれば教えて欲しい」

 「テンサイ糖というんですか……こんな甘いものが砂糖以外で存在するなんて……ロッシュ様は本当に物知りなのですね。考えておきます。皆がびっくりするようなものを……」

 また、村に貴重な食料が手に入った。来年の作付け計画を見直さないとな。計画づくりは、本当に億劫だが、こういうのだったら、楽しく出来るんだよな。
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