爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
20 / 408

第19話 父上の帰還とテンサイ糖

しおりを挟む
 ライル達がこの村に来てから、しばらく経ったころ、ライルが屋敷を訪ねてきた。
 「村長さん、お邪魔するぜ。今日は、ちょっと頼みがあってきたんだ。お前さんにも関わることだが……」

 「ライル。生活には慣れたか? 気になることを言うもんだな。話を聞こう」
 
 「皆には世話になっている。部下たちもすんなり溶け込めたよ。亜人がこんなに快適に暮らせるなんて、信じられねぇな。やっぱり、イルス隊長の息子さんだよ。さて、頼みってのはイルス隊長の遺骨をこっちに移してもらえないか? 」

 「父上の遺骨? あるんだったら、もちろんそうさせてもらいたいが。一体、どこに?」

 「おいおい、落ち着けよ。場所は、俺達が会ったあの採掘場だよ。あそこは、イルス隊長が亡くなった場所なんだよ。イルス隊長と共にあそこまで逃げ延びてきたが、隊長はあそこで息絶えたんだ。自分の領土の近くで亡くなるなんて、無念だったろうよ」

 ライルが泣くのを我慢している。父上は相当慕われていたんだろうな。

 「よくぞ教えてくれた。そこにすぐに向かおう。自警団を動かしてもらえないか?」

 「ああ。ありがとうよ。イルス隊長も故郷に戻れて、うれしいだろうよ。あいつらも喜ぶぜ」

 すぐに、出発することになった。エリスには、経緯の説明としばらく留守にすることをゴードンに伝言するように頼んだ。

 僕は馬上の人になった。といっても、乗れないから、ライルの背中にひっついているけど……採掘場までの道を魔法で整備しながら進むことにした。どうせ森の中じゃあ、馬は走れないからね。

 20キロメートルの道を作るのは、時間のかかることだった。魔法は一瞬なんだけど、休憩時間を多く必要とした。その間に自警団の連中は、獣を狩ったりして時間を潰していた。

 三日間かけて、鉄の採掘場にたどり着いた。

 「村長さん、あっちだ。イルス隊長が眠っているのは……。付いてきてくれ」

 僕は、ライルについて行った。採掘場の洞窟から少し離れたところに、古ぼけた膝くらいの高さの石が設置してあった。これはきっと墓なのだろう。この下に父上が……。僕は、手を合わせ、父上に今までの報告をした。そして、これから共に故郷に帰ることを……

 早速、掘り出し、父上の遺骨を回収した。埋葬時に、遺骨を小さい木箱に収めてくれたおかげで、回収は容易に済んだ。皆が待っている。早く帰ろう……帰る準備を指示すると……

 「村長さん。すまねぇが、オレらがアジトとして使っていた場所に来てくれねぇか? 荷物を取りに行きたいんだ。あの時は、着の身着のままで村に行っちまったからな」

 もちろん、僕は賛成した。アジトって言葉がすごく魅力的に聞こえた。どんなんだろう! 

 ライル達に従ってついていくと、掘っ立て小屋が何軒も建っていた。各々が自分の家に向かって、荷物を取りに行った。僕は、なんとなくアジト感がないな、ってショックを受け、興味をなくしたので、周りを見て回った。気になったのは、結構、畑があることだ。35人も食べていくんだから、これくらいは必要か。植えてあるのは、大体、村にあるものだな……ん? これは……ん? んん? 甜菜じゃないか? 

 ライルを呼び出し、甜菜について聞いてみた。どうやら、父上が入手したものらしい。父上は、一体、何者なんだ? 甜菜は、一般的には生食に向かない。食らべれなくはないが、とにかく泥臭い。しかし、ある方法を使うと、大きく化ける野菜なのだ。
 
 村に、確実に不足しているあれが……。

 畑にあるのは、まだ収穫期前だ。十分に肥大していない。全部、種用にするとしよう。冬になる前に取りに来ればいいだろう。ライルに聞くと、備蓄があるとのこと。収穫はしたけど、食べれないため、保管しておいたらしい。それが、父上の命令だったみたい。すべて、持ち帰ることにした。

 僕達は、村へ帰路についた。帰りは、整備した道のおかげで、3時間で着いた。これなら、人の足でも6時間もあれば着くだろう。鉄鉱石の運搬を考えると、運搬用の動物がやっぱり欲しい。

 屋敷に着くと、ゴードンが待っていた

 「ロッシュ村長!! 心配しましたぞ。エリスの報告を聞きましたが、それでも心配で……ご無事で何よりです。それで首尾はいかがだったでしょう?」

 ゴードンのすごい剣幕に怯んでしまったが、その言葉を聞いて、胸が熱くなった。ゴードンはまるで父上のようだな。
 
 「無事、父上の遺骨を持ってきた。適切な時期に、葬儀を行う故、村人に通知して欲しい。無理強いはするな。来たい者だけで良い。来なくても、不利に取り扱うことはないと付け加えておいてくれ。それと、レイヤに父上の墓を作るように伝えておいてくれ。僕は、その辺は疎い故、ゴードン、知恵を貸してもらいたい」

 「もちろんでございます。ゴードン、ロッシュ村長のためにいくらでも知恵を貸しますぞ」

 ゴードンは、村人にすぐに伝えるために、屋敷を後にした。

 残ったのは、エリスだけとなった。エリスも僕を心配していたようだ。帰ってきたことを、素直に喜んでくれた。

 「エリス、すごいお土産があるんだ。といっても、これから作るんだけど……ココは、今は畑か? 一段落したら、来るように伝えておいてくれ」

 エリスが、キョトンとした顔をしたが……何のことかわからず、首を傾げている。しかし、すぐに小さく頷いた。 

 僕は、先程収穫した甜菜を取り出した。甜菜の肥大した根っこを細かく切って、茹でて、煮汁だけを取り出した。この残りカスは、家畜の餌に……って家畜、いないや。煮汁を舐めてみると……少し甘いな……。これを煮詰めるだけだが……魔法でやってしまおう。水魔法で、水のみを取り出すと、ちょっと色づいた粉が出来た。舐めてみると……甘い。これが、テンサイ糖だ。今の技術ではこれが限界だな。もう少し、精製の精度を上げたいところだが……これで、今は十分だろう。

 てんさい糖を角砂糖に加工して……エリスとココを呼んだ。前もって、エリスにコーヒーを持ってくるように伝えておいた。

 食卓を囲んで、コーヒを各々の前に置いた。真っ先にココが反応した。

 「ココ、このコーヒーって……まずくて、きらいだよ。飲まなくちゃいけないの?」

 「飲まなければならないでしょうか? ロッシュ様……でしょ!」

 エリスがココに言葉遣いを教えている。どうも、覚えが悪いようだ。まだ、8歳だからな。僕は、エリスを制止し、気にしないように、と伝えた。

 「まぁ、飲んでみてくれ。僕がこのコーヒーに魔法を掛けたからさ」

 ココがちょっと嫌そうな顔をしながら、一口飲むと、目を見開いた。

 「甘いよ! すごく甘い! ココ、このコーヒーなら好き!」

 ココがすごく上機嫌になった。上々の成果だ。ココの変貌ぶりにびっくりしたエリスが続けて口にすると……
 「これ、砂糖ですか?」

 ほお、エリスは砂糖を知っていたか……

 「違うよ。これは甜菜から取れたテンサイ糖っていうやつだ。十分に甘いだろ? これを、この村で作ろうと思うんだ。まだ、少量しか作れないから、二人にしか振る舞えなかったけど……今度、父上の葬儀の際に皆に振る舞おうと思うんだ。なにか、いい案があれば教えて欲しい」

 「テンサイ糖というんですか……こんな甘いものが砂糖以外で存在するなんて……ロッシュ様は本当に物知りなのですね。考えておきます。皆がびっくりするようなものを……」

 また、村に貴重な食料が手に入った。来年の作付け計画を見直さないとな。計画づくりは、本当に億劫だが、こういうのだったら、楽しく出来るんだよな。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...