爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第41話 千歯扱きとドワーフ族の存在

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 麦の収穫が終えて、次の日、ふと疑問に思ったことがあった。
 そういえば、この世界で、麦の脱穀の現場というものを見たことがないな……この世界ではどのようなやり方なのだろうか? ちょうど、近くにエリスがいたから聞いてみた。

 「麦の脱穀ですか? それは、千歯扱きというんですか? それを使ってやっています。私が、幼少の頃は、木で叩いて脱穀をしていたのですが、いつからか千歯扱きというのが使われるようになったのです。その時は、物凄く脱穀作業が楽になったんですよ」

 ほお。千歯扱きが既に主流になっていたか。それは、いい事を聞いた。千歯扱きも改良の余地はあるが、現状の生産量では、必要ないだろう。もっとも、作る技術がないだろうが。だた、エリスの表情が変だな。

 「話の続きがあるんです。その千歯扱き、もう使えないんです」

 え!? それは非常に困る。理由を聞くとなんてことはなかった、メンテナンスをしてこなかったせいで、故障してしまったらしい。具体的に聞いてみると、千歯扱きの鉄の櫛がボロボロになってしまったらしい。それならば、この村には鍛冶工房がある。麦の脱穀まで時間的余裕はあるだろう。

 麦の収穫現場に、鎌のメンテナンスをしてもらうために鍛冶工房のカーゴを呼んであったのだ。僕は、カーゴの下に向かった。

 「カーゴ。鎌のメンテナンスの方は、どうだ? 」

 「あ、村長。予備も用意しておいたから、十分間に合うも」

 「それはよかった。ところで、千歯扱きが壊れて動かないと聞いた。メンテナンスをしてくれないか? 」

 「もちろんだとも」

 エリスに案内をしてもらい。村の道具蔵に行った。僕は、ここに来るのは初めてだな。道具蔵とは、農機具をしまっておく倉庫だ。千歯扱きもここにあるそうだ。僕は、道具蔵を前にして楽しみな顔をしていると、エリスが残念そうな顔をしていた。

 「ロッシュ様。申し上げにくいのですが、この蔵の中にあるものは、どれもメンテナンスが出来なくなってから壊れてしまったのです。あまり期待しすぎると傷つきますよ」

 「あっはっはっ!! エリスは、おかしなことを言うな。壊れているならば、直せば良い。昔の人で、壊れたから使えない、なんて言う人はいないぞ。ここには、カーゴもいるんだぞ」

 エリスは急に笑顔になり、それもそうですね、と言って蔵を開けた。しばらくぶりに開けられたのか、ホコリが舞い上がった。中の農機具には、薄い布が掛けられており、一応は大切に扱われていたようだな。エリスは、千歯扱きにかかっている布を取ると、ホコリがかかっていないが、かなり年季の入った千歯扱きが現れた。

 僕は、カーゴと共に千歯扱きを明るい場所に移動して、入念に検査をした。千歯扱きの櫛の部分以外は問題なさそうだ。エリスに確認すると、蔵には千歯扱きが20台ほど残っているらしい。すべてを検査したが、同じ状態だった。

 僕は、千歯扱きの櫛を取り出し、カーゴに同じ物を作るように頼んだ。カーゴは、やってみるも、と息込んで工房に戻っていった。僕は、蔵には他にも色々ありそうなので物色することにした。

 主に麦の脱穀に使うものが置いてあったので、これらも補修をして大事に使わせてもらおう。

 それ以外には……ん? これは? エリスに確認すると……

 「それは、油を搾るための機械みたいです。そこのハンドルを回すと、油が搾れるみたいですね。これもやはり壊れていて使えなくなってます。修理なさるんですか? 」

 ん~これは、かなり技術が高いな。ネジ式になっていて、ハンドルを回せば、板が下がる仕組みか。このネジを作る技術は……おそらく、カーゴには難しいだろう。この国の鉄の加工技術は、思っていたより進んでいるのだろう。

 「私もよく知らないのですが、魔族が作ったという話を聞いたことがあります。なんでも、金属加工が得意な魔族がいるということらしいんですけど、ゴードンさんが私より詳しいと思いますけど……」

 油の搾り器は是非欲しいが、蔵にあったものはダメだな。今の技術ではどうしようもない。しかし、魔族にそのような者がいるとは……その者を招致できないか、いや、出来なくとも油搾り機を作ってもらえないだろうか。
 まずは、ゴードンに話を聞こう。後で、魔族のことはミヤに聞くのがいいだろう。

 僕とエリスは、倉を後にし、ゴードンを探しに畑に行ったが、既に帰宅したとのことで、もう遅いこともあったので明日、屋敷で会うことにした。

 次の日の朝、ゴードンを屋敷に呼んだ。

 「朝早く済まないな。ゴードン。麦の収穫前の仕事前に少し聞きたいことがあってな……道具蔵にある油搾り機について覚えているか? エリスから聞いたが、なんでも魔族が作ったとか」

 ゴードンは、しばらく思い出す素振りをした。

 「ええ、たしかにありましたな。油搾り機は、先代様の頃に持ち込まれたものですな。どこかの魔族が作ったものが王都に流れていたそうで、誰も見向きもしなかったので格安で買ってきたと、先代様が自慢していたのを覚えております。その魔族は、小さい巨人という名で知られる種族らしく、小さいなりをしているが巨人のような力を持っているということらしいのです。その種族が、油搾り機を作ったということだそうです」

 小さな巨人という種族か。新たな情報だな。しかし、父上もメンテナンスが出来なければ、宝の持ち腐れだろうに…・・それとも、僕に見せるために残したとか? 考え過ぎか……

 ゴードンには、畑に戻ってもらって、村人の収穫作業を指揮する様に頼んだ。僕は、ミヤの部屋に向かった。この屋敷の女性たちは、最近引きこもりがちだ。一体何をしているんだか。

 ミヤの部屋をノックすると、中から「誰? 」と声がしたので、「僕だ」と答えると、中からバタバタと音がして、扉が空いた。

 ミヤが寝癖で頭をボサボサにして、服装がすごく乱れていた。一体何をしていたんだか。

 「どうしたの? 朝から私を襲いにでも来てくれたの? 」

 僕は、ミヤをどかし、部屋に入った。部屋の中が大変なことになっていた。糸、糸、糸、糸だらけなのだ。確かにミヤには糸作りを頼んだが……これは、一体どういうことだ?

 「えへっ。なんか、糸作りをし始めたら、楽しくて……ついね。見てみて、これなんか一番の出来なんだから」

 確かに上質な糸であることは分かる。七色に輝いているように見え、これで布を作れば、さぞかし立派な布が出来るだろう。使いみちが分からないけど。僕は、ミヤの頭を撫で、たくさん褒めてやった。もっとも、身長が違うので、かなり背伸びしたけど。

 さて、本題だ。ミヤに、小さな巨人について聞いてみた。

 「小さな巨人? ああ……ドワーフ族のことね、きっと。魔界でも、魔鉄の製造に関しては右に出るものはいなかったあわよ。彼らの作る魔鉄器は、破壊されない限り壊れないので有名だったわね。でもね、ドワーフ族ってすごく酒好きなのよ。魔酒が一時で回らないときがあって、その時はドワーフ族が独占しているって噂が出てたから。あの時のことを考えると、今でも腹立つわ」

 いい情報を得られたな。しかし、魔界の物がどうして王都に流れたんだ? それに、蔵にあった油搾り機は破壊された様子もなかったが、壊れていたぞ? どういうことだ?

 「まず、どうして王都に流れたかって話だけどね……昔は魔の森に冒険者が入っていたんでしょ? 魔の森のドワーフ族が作った物を、冒険者が持ち去って王都に流れたのではないかしら。それと、ドワーフ族が扱うのは、魔鉄よ。魔鉄っていうのはね、言葉の通り、魔素を含んだ鉄なの。魔素のない土地に存在していると、魔鉄が急激に劣化してしまうのよ。だから、壊れていたと思うわ……」

 さすがは、魔族で魔王の娘だ。博識だな。魔の森にドワーフ族がいると聞けたのは僥倖だ。ドワーフ族の住む場所はどうだ?

 「さすがに、場所までは……でも、エルフ族なら分かると思うわ。同じ魔の森に住む魔族なんだから」

 なるほどな。エルフの森に行くときは、ドワーフ族の話を聞いてみるか。ドワーフ族は酒に目がないか……村の酒は気に入ってもらえるだろうか?
 ミヤから貴重な情報を聞けて、僕は満足し、ミヤの部屋を後にしようとしたが、やっぱりこの部屋の散らかり様は酷いものがある。僕は、ミヤの反対を押しのけて、掃除をすることにした。なんだかんだ、一日かかってしまった。
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