爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第42話 二年目の堤防設置

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 夏の訪れを感じ、稲がすくすくと成長している。今年、稲苗を植えた20枚の水田は、順調に真緑の稲に覆い尽くされていた。想定していた水不足も、全く起きる気配がないようだ。むしろ、初夏だというのに川の水かさは高い状態を維持していた。それは、北の山脈から流れ込む雪解け水であることが分かった。これなら、しばらくは水田用のダム建設は不要になるだろう。

 推測だが、あと10倍ほど水田の面積を拡大しても、水不足になる心配はなさそうだ。

 僕は、堤防の確認をするために堤防に向かった。エリスとゴードンも一緒だ。村の近くから上流に向かって歩いていく。すべての確認を終え、堤防には土が削れている様子がなく、まだしっかりとしており、漆喰が剥がれている場所なども見当たらなかった。

 「ロッシュ村長。この堤防はいつ見ても素晴らしいですな。おかげで、洪水に恐れずに畑作業に集中することが出来ましたよ。村の皆も同じ意見でしょう。予定では、上流に向かって堤防を延長していくと言うことでしたが、変更はございませんか? 」

 「そのつもりだ。やれる時にやっておいたほうがいいだろう。夏にやることと行ったら土木ぐらいしかないからな。何か気になることでもあるのか? 」

 「夏の作物があるといいのですが、なかなかいいのが見つかりませんな……堤防なんですが、延長するのでしたら、対岸に堤防を築くのを進言します。この堤防を築いたおかげで、村側の洪水の危険性はなくなりましたが、対岸は例年通り洪水が発生したようです。今はいいのですが、徐々に、対岸の方に川の流れが傾いていってしまう恐れがあります。その前に、対処をしておくのがよろしいかと思います」

 ゴードンは、いつも僕が気付けないことを教えてくれる。本当に有能な相談役だ。たしかに、ゴードンの言う通りだ。このまま、長い年月が経てば、いずれは流れが変わってしまうかもしれない。そうなってしまっては、水利事業をすべて見直さなければならない。そうならないためにも、ゴードンの助言は素直に聞いておこう。

 僕は、その次に日から、土魔法を駆使し、対岸の堤防の設置を始めた。総延長三キロメートルほどに達した。二週間ほどかかったが、前回より村人の動きが格段に良くなっていた。村人は、農作業に土木と本当によく働いてくれる。

 僕とエリスは、対岸に作った堤防の上を歩き、周りを見渡していた。
 
 「ロッシュ様。対岸ってだけで、随分と様子が違いますね。なんか、ドロドロしていて、入ったら出てこれないような場所ですね」
 「僕も見て驚いたよ。まさか、こんなに広大な湿地帯が広がっているなんてね。堤防を作って、ついでに、水田を拡張しようと思っていたけど、無理そうだね」

 「それは残念ですね。私、水田に緑の絨毯が出来たような風景が好きになったんですよ。あの風景が広がっていると、なんか心が洗われるような気がして」

 「わかるな。僕も水田のあの景色が好きだ。もっともっと、広げていきたいところだけど。それには、もう少し村に人が増えてからだね」

 「村に人が増えるのですか? 」

 僕は何気ないことを言ったつもりだが、エリスには嫌に聞こえたらしい。そうか、人が増えるということは……

 「人間はまだ苦手か? 人間の村民に接しているときは大丈夫そうだったから、克服したものと思っていたが……」

 エリスはぎゅっと拳を握っていた。

 「まぁ、今すぐ増えるということでもない。それに、エリスは僕のメイドだ。これから来る人間に媚びへつらう必要などない。堂々としていればいいのだ。そうしたら、向こうから折れてくれるだろう」

 エリスは、小さい声で、はいと答えた。僕が思っている以上に、亜人と人間の関係は根深い。人間の村人と仲良く出来ているエリスでさえ、外の人間は怖いようだ。僕は、この村以外のことは何も知らない。そろそろ、僕は村の外に一度出てみる必要があるのかもしれない。

 「エリス、いつか僕と外の世界に出てみる気はないかい? 僕は、この世界のことを何も知らない。人間のことだって、亜人のことだって。知らないから、僕は、理解することが出来ない。もっと、君のことを知るためには、僕は世界に出て、もっと知るべきなんだと思う。その時になったら、エリスも一緒に付いてきて欲しい」

 「もちろんです。ロッシュ様がどこに行こうとも付いていきます。それが、私にとって地獄だったとしても」

 僕とエリスは、夕暮れの中、二人で手を繋いで屋敷に戻っていった。

 僕は、屋敷に戻り、イリス領の記録を見ていた。湿地帯の利用方法がないものか調べていたのだ。あの一帯は、地下水位が非常に高い。現に、水田用に掘った穴がすべてが水没していた。僕が、ぱっと浮かんだのが、レンコンだったが、この世界にあるかどうか。

 僕は、記録を漁り、一つの可能性を見つけることが出来た。魚の養殖だった。常に水が張っており、地下水のため、水温が年間を通して安定している湿地帯は養殖には適している気がした。もちろん、僕にはその知識はないが魚が安定的に供給されれば、食糧事情は改善されることだし、貴重なタンパク源ともなる。

 早速、湿地帯を淡水魚の養殖池にすべく動き出すことにした。夕食時に、その話をしていると、マグ姉が食いついてきた。

 「是非、その養殖地で栽培してもらいた薬草があるわ。その薬草を基礎に薬を調合すると、効力が高まるのよ。以前、北の森の沼地に自生しているのを発見したけど、養殖できないものかと思案いたしたとき、魚を養殖の話が出たのは、幸運なことだわ」

 「そういう薬草があるのか。薬の効力が高まるのであれば、治療に大きく貢献するだろう。それも並行して進めていくことにしよう。ふむ。だんだん面白くなってきたな。明日にでも?、ゴードンに相談しておこう。そういえば、マグ姉。薬草づくりの進捗はどうなんだい? 」

 「とても、順調ですわ。薬草畑から採取できるものも出てきていますから、ある程度の種類の薬を作りましたら、薬局を開きたいと思っていますわ。それと、手伝いを一人いただけないかしら? 今は大丈夫ですが、薬局のほうが始まりましたら、一人では手が回らないと思いますので」

 「それはよかった。薬局の開設は、僕も待っていたんだ。やっぱり、土木作業中は怪我人が多くてね。僕の回復魔法で対応しているのだけど、そうすると、他の作業に支障が出始めていたんだよ。薬があれば、それも随分変わると思うんだ。マグ姉には、期待しているよ」

 湿地帯に、淡水魚の養殖と薬草栽培をすべく、開発を進めることにした。

 

 
 

 
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