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第119話 女神、再び
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豊穣の女神の御神体を設置する時がやってきた。僕は、もしかしたら、また婆さんに逢えるかもしれないという淡い期待をいだきながら、この日を待っていたのだ。一応、お披露目は収穫祭の日ということになっているので、村民会議の構成員と屋敷の者達と他数名の少ない人数で設置を執り行うことになった。のはずだが、どこで噂を聞きつけたのか、村人が大勢中央広場に集まっていたのだ。仕方ないので、御神体の前に村人を集結させ、儀式を行うことにした。
御神体は、巨石の横に設置されることになった。小さな小屋だが、社と言った感じで、丁寧に作り込まれていた。よくこんな短期間でと思ったが、どうやら前に使われていたのを補修しているだけのようだった。それでも、十分すぎる作りで、僕はかなり驚いている。小屋の中に鎮座する御神体は、まだ幕が取り付けられているため目にすることは出来ない。
村人は、ぞろぞろと小屋の前に集まりだした。ゴードンがせっかくなので一言お願いします、と余計なことを言ってきたので、仕方なく挨拶をすることにした。
「皆のもの。本日は御神体の設置に来てくれて感謝するぞ。皆が前々よりご神体を設置する声が上がっていたにも拘わらず、今日まで遅くなったことを詫たい。女神は豊穣を司ると聞く。皆で、この村、いや、この領土に豊穣をもたらしてくれることを願おう」
皆は相当待ちわびていたのか、喝采を上げ、すぐに静かになった。既に祈りを始めている者が何人もいた。僕も、婆さんに会える気持ちを抑えるのに必死だった。もちろん、会えるかわからない。いや、会えないに決まっている。そういう葛藤をしながら、僕は除幕されるのを待ち望んでいた。
一応、この村に神官の見習いのようなものをしてきた者がいたので、彼にそれを執り行わせることにした。その彼は、皆が静まったことを確認してから、呪文のような詠唱を唱え始めた。村人は、彼の呪文に合わせて、祈りを始めた。皆、真剣だ。それが終わってから、幕を静かに取り払った。
おおっ、と皆が静かに声を上げ、祈りを再開した。地面に頭をこすりつけるような祈りをしている人が大半だ。それでは像が見えないだろうに。僕は像をじっと見つめた。そこにあった像は、紛れもなく屋敷の執務室にあった見慣れた像だ。しかし、社にあるせいか、厳かな雰囲気が漂い、とても同じ像とは思えなかった。像を見ていると、何かを訴えかけているような気がして、神官の制止を振り切り、像の側まで近付いた。
像がなにやら光り輝き始め、その光に触った瞬間、ふと意識を失いけたような感覚に襲われた。意識が鮮明になり、目の前を見ると、そこには一人の女性と白い空間が広がっていた。
「やっと来ましたね。この時を待ってましたよ」
静かな雰囲気で、目の前の美しい女性は僕に声を掛けてきた。彼女の目はどこまでも澄み切っており、凝視するのも恐れ多く、つい目を逸らしてしまうほどだ。目を逸らした先にあるのは、かなり豊かな胸だ。惜しみなく強調された衣装を身にまとい、完璧な美を表現していた。彼女の目を見れない僕は、ずっと胸元を凝視し続けた。
僕の視線を感じたのか、彼女は急に腕で胸元を隠して、少し後ずさりした。
「まったく、本当にどう仕様もないエロ爺だこと」
僕は、仕方ないので彼女の顔をまじまじと見ることにした。本当に美しい人だな。しかし、大きな疑問がある。
「婆さんは一体、どこにいるんです?」
一瞬、沈黙が流れた。
「貴方、まだそんなことを言っていたの? いい? 貴方の奥さんは今頃、天国でいい暮らしをしているわよ。貴方をあの世界に送ったのはわ・た・し。分かった?」
「どうゆうことだ? 婆さんじゃない、だと。まさか、信じられない。ということは、婆さんでもない人の頼みを聞いて、あの世界で苦労したというのか」
僕は、打ちひしがられていると優しく肩に手を触れ、顔を近づけてきた。
「私は貴方の奥さんではありませんが、貴方は本当によくやってくれています。私は大変感謝しているのですよ。改めて、私の願いを聞き届けてくれませんか?」
僕はすっと立ち上がった。
「貴方ほどの美しい方の頼みとあらば、聞きましょう。といっても、僕は婆さんの頼みでなくとも、あの世界を救う気持ちは変わりませんよ。僕にはあの世界で守るべきものがたくさんありますから。ところで……あなたは、女神様でいいのか?」
「やっと……やっと、分かってくれましたか。やはり若い体だけあって、爺と違い耄碌してませんね。改めて、私は豊穣を司る女神よ。もっと早く再会するつもりだったんだけど、貴方がなかなか私を奉らないものだから、出る機会を失っていたのよ。私の力で、貴方の領地を豊かな土地にしてあげるわ」
おお、さすがは女神だ。僕が土地を豊かにするためにかなりの苦労をしていたが、こうもあっさりと出来てしまうとはな。しかし、豊かと言われてもどうゆう風になるんだ? 豊かな土地に肥料をやったら、肥料焼けして、作物が枯れましたとか笑えないからな。具体的に何なのか聞いておいたほうがいいだろう。
「具体的に? 変なことを聞くのね。そうね。貴方、品種改良の魔法を使えたわよね? 次に収穫した物全てをポイントを上限にしてあげるわ。それで品種改良をすると良いわ。それが、私からのプレゼントよ」
それは助かるな。品種改良の魔法と言っても、栽培時期をいじるだけしか使ったことがないからな。やっと、品質を上げるために魔法を使うことが出来るんだな。なんか、やっと魔法を取得してよかったと思える瞬間だな。話はそこで終わった。
女神は、小さな声で詠唱をすると、僕の横に魔法陣が展開された。これに見覚えがあるぞ。この魔法陣に入ると、あの世界に行くんだよな。
「私からのプレゼントを受け取れば、貴方とは二度と会うことはないでしょう。それが天界の決まりなのです。最後に何か私に聞きたいことはないですか?」
僕は、いろいろと聞きたいことを思い浮かべた。世界のことなんか特に知りたい。常識がずれることもあって、かなり恥ずかしい思いもしてきたからな……何から聞こうかな。僕はすっかり浮かれて、大切なことを聞くのを忘れていた。
「女神様にどうしても聞きたいことがあったのです」
そういって、僕は女神に見せるために持ってきた加工済みのアウーディア石の指輪を手に取り、女神に渡した。女神はその指輪をじっと凝視すると、急に慌てだした。
「い、いけません。私、こんなの受け取れません。でも、どうしましょ。こんな指輪を渡されたことなんて初めてで……嬉しいのよ? でも、ダメよ。受け取れないわ。こんなの受け取ったら天界にいられなくなっちゃうわ」
御神体は、巨石の横に設置されることになった。小さな小屋だが、社と言った感じで、丁寧に作り込まれていた。よくこんな短期間でと思ったが、どうやら前に使われていたのを補修しているだけのようだった。それでも、十分すぎる作りで、僕はかなり驚いている。小屋の中に鎮座する御神体は、まだ幕が取り付けられているため目にすることは出来ない。
村人は、ぞろぞろと小屋の前に集まりだした。ゴードンがせっかくなので一言お願いします、と余計なことを言ってきたので、仕方なく挨拶をすることにした。
「皆のもの。本日は御神体の設置に来てくれて感謝するぞ。皆が前々よりご神体を設置する声が上がっていたにも拘わらず、今日まで遅くなったことを詫たい。女神は豊穣を司ると聞く。皆で、この村、いや、この領土に豊穣をもたらしてくれることを願おう」
皆は相当待ちわびていたのか、喝采を上げ、すぐに静かになった。既に祈りを始めている者が何人もいた。僕も、婆さんに会える気持ちを抑えるのに必死だった。もちろん、会えるかわからない。いや、会えないに決まっている。そういう葛藤をしながら、僕は除幕されるのを待ち望んでいた。
一応、この村に神官の見習いのようなものをしてきた者がいたので、彼にそれを執り行わせることにした。その彼は、皆が静まったことを確認してから、呪文のような詠唱を唱え始めた。村人は、彼の呪文に合わせて、祈りを始めた。皆、真剣だ。それが終わってから、幕を静かに取り払った。
おおっ、と皆が静かに声を上げ、祈りを再開した。地面に頭をこすりつけるような祈りをしている人が大半だ。それでは像が見えないだろうに。僕は像をじっと見つめた。そこにあった像は、紛れもなく屋敷の執務室にあった見慣れた像だ。しかし、社にあるせいか、厳かな雰囲気が漂い、とても同じ像とは思えなかった。像を見ていると、何かを訴えかけているような気がして、神官の制止を振り切り、像の側まで近付いた。
像がなにやら光り輝き始め、その光に触った瞬間、ふと意識を失いけたような感覚に襲われた。意識が鮮明になり、目の前を見ると、そこには一人の女性と白い空間が広がっていた。
「やっと来ましたね。この時を待ってましたよ」
静かな雰囲気で、目の前の美しい女性は僕に声を掛けてきた。彼女の目はどこまでも澄み切っており、凝視するのも恐れ多く、つい目を逸らしてしまうほどだ。目を逸らした先にあるのは、かなり豊かな胸だ。惜しみなく強調された衣装を身にまとい、完璧な美を表現していた。彼女の目を見れない僕は、ずっと胸元を凝視し続けた。
僕の視線を感じたのか、彼女は急に腕で胸元を隠して、少し後ずさりした。
「まったく、本当にどう仕様もないエロ爺だこと」
僕は、仕方ないので彼女の顔をまじまじと見ることにした。本当に美しい人だな。しかし、大きな疑問がある。
「婆さんは一体、どこにいるんです?」
一瞬、沈黙が流れた。
「貴方、まだそんなことを言っていたの? いい? 貴方の奥さんは今頃、天国でいい暮らしをしているわよ。貴方をあの世界に送ったのはわ・た・し。分かった?」
「どうゆうことだ? 婆さんじゃない、だと。まさか、信じられない。ということは、婆さんでもない人の頼みを聞いて、あの世界で苦労したというのか」
僕は、打ちひしがられていると優しく肩に手を触れ、顔を近づけてきた。
「私は貴方の奥さんではありませんが、貴方は本当によくやってくれています。私は大変感謝しているのですよ。改めて、私の願いを聞き届けてくれませんか?」
僕はすっと立ち上がった。
「貴方ほどの美しい方の頼みとあらば、聞きましょう。といっても、僕は婆さんの頼みでなくとも、あの世界を救う気持ちは変わりませんよ。僕にはあの世界で守るべきものがたくさんありますから。ところで……あなたは、女神様でいいのか?」
「やっと……やっと、分かってくれましたか。やはり若い体だけあって、爺と違い耄碌してませんね。改めて、私は豊穣を司る女神よ。もっと早く再会するつもりだったんだけど、貴方がなかなか私を奉らないものだから、出る機会を失っていたのよ。私の力で、貴方の領地を豊かな土地にしてあげるわ」
おお、さすがは女神だ。僕が土地を豊かにするためにかなりの苦労をしていたが、こうもあっさりと出来てしまうとはな。しかし、豊かと言われてもどうゆう風になるんだ? 豊かな土地に肥料をやったら、肥料焼けして、作物が枯れましたとか笑えないからな。具体的に何なのか聞いておいたほうがいいだろう。
「具体的に? 変なことを聞くのね。そうね。貴方、品種改良の魔法を使えたわよね? 次に収穫した物全てをポイントを上限にしてあげるわ。それで品種改良をすると良いわ。それが、私からのプレゼントよ」
それは助かるな。品種改良の魔法と言っても、栽培時期をいじるだけしか使ったことがないからな。やっと、品質を上げるために魔法を使うことが出来るんだな。なんか、やっと魔法を取得してよかったと思える瞬間だな。話はそこで終わった。
女神は、小さな声で詠唱をすると、僕の横に魔法陣が展開された。これに見覚えがあるぞ。この魔法陣に入ると、あの世界に行くんだよな。
「私からのプレゼントを受け取れば、貴方とは二度と会うことはないでしょう。それが天界の決まりなのです。最後に何か私に聞きたいことはないですか?」
僕は、いろいろと聞きたいことを思い浮かべた。世界のことなんか特に知りたい。常識がずれることもあって、かなり恥ずかしい思いもしてきたからな……何から聞こうかな。僕はすっかり浮かれて、大切なことを聞くのを忘れていた。
「女神様にどうしても聞きたいことがあったのです」
そういって、僕は女神に見せるために持ってきた加工済みのアウーディア石の指輪を手に取り、女神に渡した。女神はその指輪をじっと凝視すると、急に慌てだした。
「い、いけません。私、こんなの受け取れません。でも、どうしましょ。こんな指輪を渡されたことなんて初めてで……嬉しいのよ? でも、ダメよ。受け取れないわ。こんなの受け取ったら天界にいられなくなっちゃうわ」
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