爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
120 / 408

第119話 女神、再び

しおりを挟む
 豊穣の女神の御神体を設置する時がやってきた。僕は、もしかしたら、また婆さんに逢えるかもしれないという淡い期待をいだきながら、この日を待っていたのだ。一応、お披露目は収穫祭の日ということになっているので、村民会議の構成員と屋敷の者達と他数名の少ない人数で設置を執り行うことになった。のはずだが、どこで噂を聞きつけたのか、村人が大勢中央広場に集まっていたのだ。仕方ないので、御神体の前に村人を集結させ、儀式を行うことにした。

 御神体は、巨石の横に設置されることになった。小さな小屋だが、社と言った感じで、丁寧に作り込まれていた。よくこんな短期間でと思ったが、どうやら前に使われていたのを補修しているだけのようだった。それでも、十分すぎる作りで、僕はかなり驚いている。小屋の中に鎮座する御神体は、まだ幕が取り付けられているため目にすることは出来ない。

 村人は、ぞろぞろと小屋の前に集まりだした。ゴードンがせっかくなので一言お願いします、と余計なことを言ってきたので、仕方なく挨拶をすることにした。

 「皆のもの。本日は御神体の設置に来てくれて感謝するぞ。皆が前々よりご神体を設置する声が上がっていたにも拘わらず、今日まで遅くなったことを詫たい。女神は豊穣を司ると聞く。皆で、この村、いや、この領土に豊穣をもたらしてくれることを願おう」

 皆は相当待ちわびていたのか、喝采を上げ、すぐに静かになった。既に祈りを始めている者が何人もいた。僕も、婆さんに会える気持ちを抑えるのに必死だった。もちろん、会えるかわからない。いや、会えないに決まっている。そういう葛藤をしながら、僕は除幕されるのを待ち望んでいた。

 一応、この村に神官の見習いのようなものをしてきた者がいたので、彼にそれを執り行わせることにした。その彼は、皆が静まったことを確認してから、呪文のような詠唱を唱え始めた。村人は、彼の呪文に合わせて、祈りを始めた。皆、真剣だ。それが終わってから、幕を静かに取り払った。

 おおっ、と皆が静かに声を上げ、祈りを再開した。地面に頭をこすりつけるような祈りをしている人が大半だ。それでは像が見えないだろうに。僕は像をじっと見つめた。そこにあった像は、紛れもなく屋敷の執務室にあった見慣れた像だ。しかし、社にあるせいか、厳かな雰囲気が漂い、とても同じ像とは思えなかった。像を見ていると、何かを訴えかけているような気がして、神官の制止を振り切り、像の側まで近付いた。

 像がなにやら光り輝き始め、その光に触った瞬間、ふと意識を失いけたような感覚に襲われた。意識が鮮明になり、目の前を見ると、そこには一人の女性と白い空間が広がっていた。

 「やっと来ましたね。この時を待ってましたよ」

 静かな雰囲気で、目の前の美しい女性は僕に声を掛けてきた。彼女の目はどこまでも澄み切っており、凝視するのも恐れ多く、つい目を逸らしてしまうほどだ。目を逸らした先にあるのは、かなり豊かな胸だ。惜しみなく強調された衣装を身にまとい、完璧な美を表現していた。彼女の目を見れない僕は、ずっと胸元を凝視し続けた。

 僕の視線を感じたのか、彼女は急に腕で胸元を隠して、少し後ずさりした。

 「まったく、本当にどう仕様もないエロ爺だこと」

 僕は、仕方ないので彼女の顔をまじまじと見ることにした。本当に美しい人だな。しかし、大きな疑問がある。

 「婆さんは一体、どこにいるんです?」

 一瞬、沈黙が流れた。

 「貴方、まだそんなことを言っていたの? いい? 貴方の奥さんは今頃、天国でいい暮らしをしているわよ。貴方をあの世界に送ったのはわ・た・し。分かった?」

 「どうゆうことだ? 婆さんじゃない、だと。まさか、信じられない。ということは、婆さんでもない人の頼みを聞いて、あの世界で苦労したというのか」

 僕は、打ちひしがられていると優しく肩に手を触れ、顔を近づけてきた。

 「私は貴方の奥さんではありませんが、貴方は本当によくやってくれています。私は大変感謝しているのですよ。改めて、私の願いを聞き届けてくれませんか?」

 僕はすっと立ち上がった。

 「貴方ほどの美しい方の頼みとあらば、聞きましょう。といっても、僕は婆さんの頼みでなくとも、あの世界を救う気持ちは変わりませんよ。僕にはあの世界で守るべきものがたくさんありますから。ところで……あなたは、女神様でいいのか?」

 「やっと……やっと、分かってくれましたか。やはり若い体だけあって、爺と違い耄碌してませんね。改めて、私は豊穣を司る女神よ。もっと早く再会するつもりだったんだけど、貴方がなかなか私を奉らないものだから、出る機会を失っていたのよ。私の力で、貴方の領地を豊かな土地にしてあげるわ」

 おお、さすがは女神だ。僕が土地を豊かにするためにかなりの苦労をしていたが、こうもあっさりと出来てしまうとはな。しかし、豊かと言われてもどうゆう風になるんだ? 豊かな土地に肥料をやったら、肥料焼けして、作物が枯れましたとか笑えないからな。具体的に何なのか聞いておいたほうがいいだろう。

 「具体的に? 変なことを聞くのね。そうね。貴方、品種改良の魔法を使えたわよね? 次に収穫した物全てをポイントを上限にしてあげるわ。それで品種改良をすると良いわ。それが、私からのプレゼントよ」

 それは助かるな。品種改良の魔法と言っても、栽培時期をいじるだけしか使ったことがないからな。やっと、品質を上げるために魔法を使うことが出来るんだな。なんか、やっと魔法を取得してよかったと思える瞬間だな。話はそこで終わった。

 女神は、小さな声で詠唱をすると、僕の横に魔法陣が展開された。これに見覚えがあるぞ。この魔法陣に入ると、あの世界に行くんだよな。

 「私からのプレゼントを受け取れば、貴方とは二度と会うことはないでしょう。それが天界の決まりなのです。最後に何か私に聞きたいことはないですか?」

 僕は、いろいろと聞きたいことを思い浮かべた。世界のことなんか特に知りたい。常識がずれることもあって、かなり恥ずかしい思いもしてきたからな……何から聞こうかな。僕はすっかり浮かれて、大切なことを聞くのを忘れていた。

 「女神様にどうしても聞きたいことがあったのです」

 そういって、僕は女神に見せるために持ってきた加工済みのアウーディア石の指輪を手に取り、女神に渡した。女神はその指輪をじっと凝視すると、急に慌てだした。

 「い、いけません。私、こんなの受け取れません。でも、どうしましょ。こんな指輪を渡されたことなんて初めてで……嬉しいのよ? でも、ダメよ。受け取れないわ。こんなの受け取ったら天界にいられなくなっちゃうわ」
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...