爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第178話 四年目の新年会③

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 僕が食卓に向かうと、すでに大樽が何個も打ち捨てられていた。樽は再利用するんだから、大事に使わないといけないな。僕が席に着いても、僕に関心を示す者はいない。ミヤ、マグ姉、シェラ、クレイは皆、酒に夢中だからだ。考えたくもないが、一年間でどれだけこの屋敷だけで飲んでいるのだろうか? エリスに夕飯を持ってきてもらう間、適当な酒でも飲んで時間を潰そう。

 しかし、改めて見るが、すごい組み合わせだよな。ミヤは吸血鬼の王女、マグ姉はアウーディア王国の王女、シェラは女神、クレイはレントーク王国の王女。本来であれば、宮廷とかでしか出会えない人たちなんだよな。シェラに至っては、死なないと会えないだろうし。それが、ここで一つのテーブルを囲んで、酒の飲んでるんだから不思議な光景だな。

 僕が一人で寂しく飲んでいると、エリスが夕飯を持ってきてくれた。今日も旨そうな料理だ。最近、特に食材の種類が豊富になったことで、料理の幅が広がったエリスが喜んでいたな。戦場では、僕は魔法の鞄のおかげでエリスの弁当を食べることが多かったから、食に不満を持つことはなかったが、他の兵たちは不満を抱えていたようだ。それはそうだよね。パンが硬すぎて、スープに浸してようやく食べれるほどのものだ。唯一、米だけはその場で炊いて食べれるから、好評だったが、その主菜が干し肉しかないというのは味気がない。やはり、戦場で食べれる、満足がいく食事というものの開発をしておいた方が良いだろう。

 酒のツマミに、蛇肉の燻製が出たが、これが絶品だった。燻製だから、カラカラに乾いているのかと思ったが、半生で肉の食感があって、口の中に肉汁と燻製の独特の香りが広がり、一層、酒が欲しくなる。酒ももう少し種類が欲しくなってくるな。料理の種類が増えたのだから、酒の種類も増やしたいものだ。特に果実酒が欲しい。

 どうにかして果実が手に入らないものか。そういえば、エルフの里でワインのようなものを飲んだが、あれはどこで作られているのだ? もしかしたら、魔の森で手に入る果実で作っているのかもしれない。それだったら、リードが知っているかもしれない。ちょうど、リードがキッチンから出てきたので聞いてみることにした。

 「リード。聞きたいんだが、エルフの里って酒を飲むだろ? あれはどこで調達しているものなのだ?」

 「やっと、聞いて頂けましたか。私もいつか言いたいと思っていましたが、酒を欲しがるなど、端ないマネと思い控えておりましたが」

 リードがそのようなことを言うと、ミヤが端ないマネをしているの自分のことかと言わんばかりリードを睨んだが、酒の話が聞けるかもしれないと思ったのか、話を折るようなマネはしなかった。ミヤの酒にかける情熱は半端ではないな。僕は、一度止まりかけた話を促した。リードは一度、咳払いをし仕切り直しをした。

 「里で飲まれている酒は、全て里の中で作られています。魔の森では果実が実る木があるのですが、不思議と一箇所にまとまっていることがなく、狩りなどをしているとき偶々見つけると、果実を収穫して、それで酒を作るのです。一度見つければ、数年分の酒を作れるほどの果実が採れるので、その時は里の皆総出で収穫作業をするんですよ」

 なるほど。あの時飲んだワインのような酒は、里で作れていたものなのか。是非、作りたいが、果実の木が転々と場所が変わるのでは、手に入れるのは難しそうだな。こっちも少量というわけにはいかないから、リリから譲ってもらうのは難しいか。自力で探すとなると、ミヤの眷族を使うしかないかが、眷族は今、方々で仕事を任せているから無理だろうな。

 「果実を探そうと思ったら、どれくらいかかりそうだ?」

 リードは首を傾げ、考える仕草をした。

 「そうですね。里の者が毎日にように狩りに出て、数年に一度ですから、何人の人を探索に当てるかによりますが、十年以上はかかると覚悟したほうがいいかもしれませんね。それよりも栽培をしたほうが早いかもしれませんね」

 ん? 栽培って言ったか? 僕はつい食いつくようにリードに色々と質問をしてしまった。農業となると、興味がどうしても湧いてしまう。リードから聞いた話では、エルフの里でも栽培には何度か挑戦したが、どうしても上手くいかなかったみたいだ。僕が聞いても、何が原因なのかは見当がつかなかった。種は里に行けば、いくらでも手に入るそうだ。種類は、話を聞いた限りでは、ブドウ、レモン、リンゴ、オレンジのようなものがあるみたいだ。それぞれ名前があるらしいが覚えられなかった。まさか、ここでこのような話があるとはな。

 すぐにでも、種を入手して栽培を始めたいものだ。果樹は収穫できるまでかなりの時間を要するから、早く着手したほうが良いだろうな。その間は、ミヤは手を休めて、話を聞いていたが、話が終わると僕の方を見て、よろしくと言わんばかりに肩に手をおいてから、手を動かすのを再開した。言われなくても、やるつもりだ。果実が手に入れば、エリスもきっと喜ぶだろう。

 その間にクレイが酔って、外の空気を吸ってくると言って外に出ようとしていた。外は既に雪が振り始めているため、かなり寒い。止めても聞かなそうなので、僕が付き添うことにした。この屋敷にはバルコニーがあるため、そのまま、窓から出られるのだ。外に出ると、風はなかったが、息を吸い込むと、体の芯が冷える感覚があった。クレイを見ると、部屋着のままだったので上着を掛けてやると、ありがとうございます、と酔っていながらも凛とした声でお礼を言ってきた。今は、どっちだ? クレイの腰に短刀があった。家では、武器を装備するのはやめろと言ったはずだが。

 「クレイ、まだ、武器は屋敷内で外さないのか?」

 「申し訳ありません。決して、ロッシュ様の言っていることに逆らっているわけではないのですが、どうも、幼少の時からの習慣でして、まだ、武器を持っていないと落ち着かないと言うか、もう少し時間を頂けると」

 ふむ。やはり、すぐに習慣というのは直せないものなのだな。屋敷内で武器を持っているというのは、どんな理由であれ、いいものではない。何か良い方法があると良いが。そういえば、今年はクレイとの結婚式を考えなければならないな。

 「クレイは聞いているか、分からないが。今年の夏ころに成人式というものが、村で行われる。今年からは、公国内ということになるのか? とにかく、式が行われるのだが、そのときに一緒に結婚式というのも行われることになっているのだ。これは、去年からだから、日も浅いが僕は続けていこうと思っている。それに、クレイも参加してほしいのだ。僕と結婚式をしてほしい。どうだ?」

 暗がりだからよく顔が見えないが、クレイの顔が少し赤くなった気がした。酒のせいか?

 「ありがとうございます。結婚式には、是非参加させてください。実は、その話はマーガレットさんから聞いています。いずれ、ロッシュ様から話があるだろうから、待っていなさいと言われましたが、今、言われるとは思ってもいませんでした。私、無理やりロッシュ様の婚約者になった形ですから、そういう式とかないものと思っていましたが、やっぱり、ずっと子供の頃から憧れがあったものですから、すごく、嬉しいです」

 喜んでもらえて良かった。クレイのお披露目も兼ねているから、豪勢に行いたいものだな。特に、今年はルドとマリーヌも参加するだろうしな。きっと、楽しい式になることだろう。なんだか、楽しくなってきたな。ふと、思い返すと、こうやって二人で話をするというのがなかった気がする。クレイは随分と酔いが覚めてきたようだ。

 「クレイはこっちの暮らしはどうだ? 何か不自由なことはないか? 当然、風習が違ったりすることはあるだろうが、我慢することはないんだぞ。僕達は家族になのだからな」

 「ロッシュ様は変わっていらっしゃいますね。とても貴族とは思えません。しかし、私はそこが好きなのかもしれませんが。不満は特にありません。むしろ、新しいことの発見で、いつも楽しく過ごさせてもらっています。それに、レントーク王国の民達が何の縁か、アウーディアの王都に奴隷として売られ、偶々、公国に助けられ、かつての暮らしより豊かな生活を享受できております。これほどの幸せはないものと思っています。王都にいた時は、皆、故郷に帰りたがっていましたが、こちらに来てから、そのようなことを申す者がいなくなったんですよ」

 クレイがそこまで公国を評価していてくれたとは、これほど嬉しいことはない。僕からすれば、まだまだ足りないものだらけで、不満があるが、言葉にできないのではと思っていたが、それは僕の杞憂だったようだ。ただ、今の現状に満足してもらっては困るな。

 「その言葉は嬉しかった。新参者というのは、なかなか口には不満を出しにくい立場だろう。そう思っていたが、ある程度の満足をしてくれるのは喜ばしい限りだ。だが、公国は更に豊かになっていくことだろう。そのために、皆の協力は不可欠だ。クレイもそうだが、新村にいる皆にも、頑張ってくれるように伝えてくれ。僕はその頑張りに必ず報いようと」

 僕がそういうと、やっぱり貴族らしくないですね、とクレイは笑っていた。やっぱり、僕は貴族らしくなれないのかな? だって、元は別の世界の人間……そういえば、クレイには秘密を打ち明けていなかった気がする。僕は、クレイに秘密を打ち明けると、そんな事があるなんて信じられないです、というだけだった。

 僕達は屋敷の中に戻り、再び、皆で騒ぎながら夜を明かした。
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