爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第249話 冷凍車

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 船大工のテドが朗報を持ってきたのだ。そう、船が完成したのだ。公国で初の船だ。作ってもらったのは漁船だ。中型の帆船で沖に向かって漁をすることだって出来るという代物だ。これで、公国の食糧事情にいい影響が出てくるだろう。公国内では、狩れる獣が限られている。どうしても栄養が足りないのだ。村内での魚の養殖や森での狩りでなんとか食いつないでいるが、人口増加で慢性的な栄養不足になってしまうだろう。

 その点では、漁船を入手すれば年中、魚を得ることが出来、貴重な栄養を得る事ができるのだ。もちろん、たった一隻でどうになかるものでもないが、この一隻が始まりなのだ。テドの仕事は早い。すでに二隻目、三隻目の建造が始まっていると言う。

 しかし、乗組員の確保はどうなっているんだ? 公国には船を操舵できるものがいない。

 「テド。乗組員についてはどうなっているんだ?」

 「その点については問題ない。オレの妻チカカが乗組員を育てているからな」

 ほお。確か、チカカとは女船長だったな。なるほど。それならば、安心か。テドは僕に話しの続きがあるようだ。

 「ロッシュ公。今回は公国で初の処女航海となる門出だ。ぜひとも、ロッシュ公に参加してもらいたいと思っているだ。どうだろうか?」

 そんなこと、聞くまでもない。船という魅力的な響きを無視できるほど、僕は出来た人ではない。それに、今後、船の重要性は高まりを見せていくだろうが、皆の理解を早く得るためにも、僕が参加したほうがいいだろうな。

 「もちろんだ。何を置いても参加させてもらうぞ。それで、どういった日程なのだ?」

 「ああ。ああ。そんなに興奮してくれるとは思ってもいなかったな。なんと言うか、嬉しいな。すでに進水式は終わらせているから、航海を残すのみだ。それに参加してもらいたいと思っている。日程だが、こちらはいつでも大丈夫だ。ロッシュ公の帰りを待って、調整をしていたからな」

 となると、今から行くか。いや、ダメか。流石に今から出発しては夕方になってしまう。明日の早朝でいいだろうな。僕はテドにそのように伝えると、いつでも出航できるように準備しておきます!! といって、屋敷を飛び出していった。終始ご機嫌で、こちらも楽しくなってしまうな。

 その後、ゴードンと船の話で盛り上がったが、ゴードンはいまいち漁というものが分かっていないようだ。それもそのはず、イルス辺境伯領には海はあるが、漁ができる場所がないのだ。魔の森が近いということもあって、海棲型の魔獣が出没するのだ。そのため、過去に漁を何度も挑戦したのだが、帰るものがいなかったのだ。イルス領では海産物が採れないので、仕方なく他の領土から運び込んだり、養殖に力を注いでいたという歴史がある。

 「漁というのはな、糸を垂らして釣ると言ったようなものではない。そのやり方がないわけではないが。僕が考えているのは網を用いた漁だ。まさに一網打尽と言った感じで魚を取っていくやり方だ」

 「ほお、それは凄そうですな。想像も付かないですが、是非、見てみたいものですな。ロッシュ村長がそれほど期待しているものですから、今から物流について考えておかねばなりますまい」

 その通りだな。しかし、物流か。確かに考えると難しいな。魚は基本的には腐りやすいものだ。どれほど物流が早く進んだとしても、生で運ぶことは難しい。それに、腐れば思わぬ病気が蔓延しないとも限らない。そうなると、生で食するのは新村のみに限定しかないだろうな。それ以外の地域は、加工した魚を物流に載せるというぐらいしかないだろう。

 「しかし、勿体無いですな。せっかくでしたら、村でも新鮮な海の魚を食してみたいものですが。まぁ、無理を言っても仕方ないですが」

 そんな顔をするな、ゴードン。僕も村で食べられたらと思うが、仕方がないのだ。少しくらいなら魔法の鞄で何とかなるが、村人やましてや海から離れた村や街に届けるのは不可能だな。なにか、いい方法があればいいが。魚を凍らせられれば良いのだが。こういう時は、スタシャに相談してみたほうが良さそうだな。

 僕はすぐにスタシャの屋敷へと向かっていった。スタシャは屋外のテラスで優雅に紅茶を飲んでいた。僕を見る目は相変わらず、冷めたような感じだ。

 「また来たのか。先程、貫通弾を持っていってくれたから助かったぞ。その様子を見に来たというわけでもなさそうだな。一体、何の用で来たんだ?」

 相変わらずだが、もう慣れたものだ。僕は、魚を遠方に運び込むための方法を聞きにやってきたのだ。

 「そんなのは知らないな。私は何でも屋ではないのだ。そこまでは面倒見きれない」

 ふむ。聞き方が悪かったようだ。魚を凍らせる方法を聞いたほうが早かったな。僕は再び、スタシャに運び込んでいる間、凍らせる方法はないかと聞いた。

 「最初からそう聞いていればいいのだ。ないわけではないな。まぁ、待っていろ」

 そういうと、立ち上がり工房の方に向かっていった。僕は、ホムンクルスに差し出された紅茶を飲みながらスタシャを待つことにした。しばらくしてからスタシャが戻ってきた。僕の目の前に青く輝いた石を置いた。スタシャは再び椅子に座り、冷めた紅茶を口にして、少し眉間にシワを寄せて、代わりを持ってくるように指示を出していた。

 「それが冷凍石だ。風呂の湯を沸かした時に使った燃焼石の逆のものと思ってくれていい。それがそばにあるだけで、周囲のものが凍りつく。それに手を触れれば分かる。手が凍りつくぞ」

 なるほど、よく見るとテーブルから白い靄のものが出て、凍っているのが分かる。あやうく、触ってしまうところだった。これならば、魚を凍らせて運ぶことが出来そうだが、扱いが難しそうだな。触れてしまうものを凍らせてしまうというのは。燃焼石の場合は触れても問題はなかったのだが。どうしたものか。

 「そんな顔をするな。お前の困った顔というのは見ていられない。そういえば、最近、ドワーフがやってきたそうではないか。その者に聞いてみたらどうなのだ? あやつらはそういうことに長けているからな」

 おお。そうか。ドワーフか。確かにドワーフならいい知恵をくれるかも知れない。僕はスタシャに礼を言って、その場を去った。もちろん、冷凍石を持って。といっても、袋に入れてだけど。どうやら、直接触れているものしか凍らせないみたいだ。どちらにせよ、これだけでは大量の魚を凍らせることは難しそうだ。

 フェンリルのハヤブサに乗って、ドワーフが居住する工房に向かった。久々に来たが、様子が一変していた。里が形成されており、中央に大きな建物。おそらく工房だろう。その周りに家のような建物が何軒も建てられていた。立派はドワーフの里になっているんだな。

 僕は、工房の扉を叩いた。出てきたのは、ドワーフのギガンスだ。

 「おお。ロッシュ。久しぶりじゃないか。とりあえずは、中に入れ」

 僕は中に入ると、そこには農機具と思われるようなものが何台も置かれていた。僕はそれに興味が湧いてしまった。これは、油絞り機か? 村にあった魔鉄製の物と似たような形だ。

 「おお。それは鉄製の油絞り機だ。どうしても、鉄だと強度が怪しいからな、そこにアダマンタイトの粉末を入れている。これでメンテナンスいらずになるだろう。職人は村にしかいないんじゃろ? これなら、どこででも使い続けられるわい」

 素晴らしい。これがあれば、各地で油を搾ることが出来るな。他にも、これは脱穀機か。なるほど、足で漕いで脱穀が出来るというわけか。

 「それにも鉄にアダマンタイトの粉末が含まれている。頑丈だし、サビも出にくくなっている。脱穀の効率も随分と上がるじゃろ。それよりも、水車の導入をしてはどうじゃ? 公国には多いんじゃろ? 水車があれば、脱穀から精米まで簡単に出来ると思うんじゃが」

 僕は、心がビクンと脈打つのを感じた。水車だと!? それが出来るというのか? 前々から水車を利用した脱穀というのは考えていた。しかし、技術を持つものがおらず、諦めていたのだが。まさか、ドワーフにその技術が?

 「もちろんじゃ。水車があれば、脱穀に人を割かなくていい。鍛冶に専念できるから重宝しておるんじゃ。何なら試作機を作ってみるか?」

 僕は頷きかけたが、ここに来た目的を思い出したのだ。水車はすぐにでも欲しいが、まずはこちらの方を先に済ましてしまおう。僕は袋に入った冷凍石をテーブルの上に置いた。袋からモヤが出ていたので、ギガンスも容易に触れようとはしなかった。僕の顔を見て、これは何じゃ? と聞いてきた。

 「これは冷凍石というものだ。触れるものを凍らせてしまうのだ。これを……」

 僕は魚の鮮度を維持したまま、遠方に運び込むために、魚を凍らせて運びたいことを伝え、そのために冷凍石を使いたいのだと言った。最初、ギガンスは訳が分からなかったみたいだ。この石を運び込む魚に放り込めばいいのではと思ったからだ。しかし、この石で凍らせるためには直接触れさせる必要がある。

 「なるほどの。要は、魚を冷却していればいいということじゃな? ならば、いい考えがあるぞ。ちょっと待っていろ」

 そういって、ギガンスは外に出ていった。一時間ほど経ってからギガンスが戻ってきた。僕は農機具に目を奪われていて時間を経つのを忘れていたのだ。ギガンスは僕を外に連れ出すと、そこには一両の荷車が置かれていた。しかし、通常の荷車と違っていたのだ。荷車は木製の荷台に幌がかぶさっているものが多く、隙間も多い。

 目の前にあるのは、大きな木箱に車輪が付いているというものだった。たしかに、これならば外気に触れないので、魚を運ぶのに適しているだろうな。しかしな……僕は荷車に近づき、触れるとその意味が分かってしまった。

 なるほど。これはすごいぞ。この荷車が凍っているのだ。いわば、冷凍車。荷車の中に入ってみると、ひんやりとした空気が身を包んでくる。僕はくまなく荷車を見て回った。冷たい空気が漏れている様子もないな。車輪は凍っていないんだな。直接付いていないからか。馭者席に座ると、お尻が冷たい。ここは要工夫だな。

 「ギガンス。これは素晴らしいな。これを是非とも何台か作ってもらいたい」

 ギガンスは、こんなものでいいのか? と変な顔をしていたが、僕は大満足だ。そうなると、冷凍石が更に必要となるな。僕はもう一度、スタシャのもとに戻り、冷凍石を量産するように頼んできた。当然、オリハルコンを要求されたが。

 再び、ギガンスのもとに戻り、ハヤブサに荷車を繋いで、屋敷に戻ることにした。荷車をつなげる時のハヤブサの嫌がりようはすごかったが、なんとか説得して運んでもらったのだ。

 これで、魚を運搬が出来るようになった。後は、明日の初航海を楽しみにしよう。
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