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第264話 北部諸侯連合
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僕は、北部諸侯連合のロドリ子爵と空気と化したガットン伯爵と会合をしていた。内容は食料支援に関することだ。僕は北部諸侯連合を全く知らない。ロドリ子爵の口から説明を受けることにした。
「まずは北部諸侯についてお話します。北部諸侯は……」
北部諸侯の成り立ちはかなり古い。王国の敵といえば東に広がる帝国だ。その帝国に対抗するために北部の接する諸侯を侯爵を中心として組織したのが始まりだったみたいだ。イルス辺境伯領も南部で帝国に接する重要な拠点の一つだったのだ。10の有力貴族たちで組織され、広大な領土を保有している。それらが一致団結して帝国に対抗していたのだ。そのため、保有している兵力も王国でも群を抜いており、王都の直轄軍を抜かせば、王国一の実力を持っている。
当然、ガムド子爵もその一つに数えられている。しかし、その組織にも転機があった。先の大戦の終戦だ。王が崩御され、王国は混沌を極めた。その中で王家で立ち上がったのが王弟と第一王子であるルドベックだ。北部諸侯は合議の上、王弟を支持することに決め、見事王弟を権力の中枢に置くことに成功した。そこまでは良かったのだが、その後の土地の荒廃が明暗を分けてしまった。
王都周辺は荒廃の影響を受けなかったのか食料の生産を続けられたが、北部諸侯の領土では十分な食料生産が出来なくなっていったのだ。北部諸侯は初めのうちは楽観していた。王弟には恩がある。食料に困ることはないだろうと思っていたのだが、王弟は食料を徐々に出し渋るようになっていった。
次第に見返りを求められるようになる。最初は、領内にいる亜人の引き渡しだ。労働力として使うみたいだ。次に貴族たちの家族を人質に要求されはじめた。この辺りから、北部諸侯の貴族たちは王弟に対して疑いを持ち始めた。食料を握られている以上、逆らうことが出来ずにはいたが、北部諸侯には精強な軍がいる。いざとなれば、兵を起こせば良いと甘い考えを持っていた。
しかし、王弟は家族と食料を盾に取り、イルス辺境伯領への出兵を命じてきたのだ。ここで、北部諸侯達は王弟が自分たちの力を削ごうとしていることを実感しだす。それでもイルス辺境博領は先代の当主ならともかく聞いたこともない若造が跡を継ぎ、次々と住民が逃げ出しているという話を王国からもたらされたこともあり、安心して、精強な兵を引き連れて出兵をした。
まさか辺境伯相手に兵が消耗することはないだろう。むしろ、王弟に北部諸侯の軍がいかに精強かを示すことが出来るとさえ思っていた。しかし、結果を見れば散々なものだった。北部諸侯の軍は辺境伯の兵に完膚なきまで叩かれ、多くの兵を失うとと共にガムド領が辺境伯に寝返るという信じられないことまで起こった。
それからの北部諸侯は惨めなものだった。王弟から敗戦の責任を追求され、特産物を無償で長期に渡って譲り渡す契約を結ばされ、残存した兵士の大半を王国に没収されてしまった。なんとか、立て直しを図ろうとしたが王国は食料の供給を不安定なものにしだした。そんな組織の軍に入るものなどいない。なかなか立て直しが出来ないまま、今に至った。
そして、ついに王国は北部諸侯への食料支援を打ち切ったのだ。北部諸侯はこうなることは薄々気づいていたため、王国には内密で食料を温存することにした。数年でそれなりの量にはなったが、北部諸侯の領土には40万人の人が住んでいる。その者たちを養うには十分な量とは言えない。精々、一年と言ったところだろうか。
北部諸侯は何度も食料の催促をしたが、その都度追い返され、ついには侯爵ですら王弟への謁見すら叶わなくなった。侯爵といえば、大臣を務められるほど由緒ある家柄。それを無視するというのは事態が深刻であることを如実に現していた。
そして、最悪の事態が起こった。それは一人の王国からの使者がやってきたのだ。北部諸侯は食料支援についてだと信じて疑わなかったが、その内容は、人質として囚われていた家族の病死を伝えるものだった。しかし、こんな報告を信じるものはいない。王弟に殺されたのだと。
侯爵はついに王国を見限り、独立をし王国へ反旗を翻すことにしたのだ。北部諸侯の中で独立を宣言する侯爵へ異を唱えるものはいなかった。それほど王国への憎しみが募っていたのだ。北部諸侯と呼ばれていたのを、侯爵を中心として北部諸侯連合と改め、独立をすることにした。
ここまでが北部諸侯連合が設立された経緯だ。ロドリ子爵は話し続けたせいで喉が渇いたのか、コップに入った水を一気に飲み干した。僕もなかなか言葉が見つからない。王国、いや王弟の残虐さが信じられないからだ。
「そんなことがあったのか。確かに王国に対して反旗を翻すだけの理由があると思う。しかし、そんなことをしても勝てる見込みはあるのか? 僕には正直、北部諸侯連合に勝ち目はないように感じるのだが」
「そんなことはありません!!」
そういって、ロドリ子爵は興奮したかのようにテーブルを叩きつける。さすがにこの行動は良くないと思ったのか、すぐに謝罪してきた。
「申し訳ありません。しかし、北部諸侯連合は弱体化したと言っても王国でも最強を誇った軍を保有したのです。今でも……」
ロドリは北部諸侯連合の内情を明かしてくれた。北部諸侯連合は人口40万人を誇り、王国でも有数の人口密集地体だ。産業も木材、鉄鋼などの天然資源に恵まれ、加工技術の高さも有名だ。今でこそ見る影もないが、食料生産量も多い地域であった。兵力は10万人ほどいたが、再編中とはいえ4万人程度にはなる。
たしかにその数字だけを見ると王国軍と互角に対抗できるように思えるが、やはり問題は食料だな。その点を解決しなければ、北部諸侯連合の未来は破滅しかないだろう。多くの流浪者を生み出し、多くの者が飢餓で苦しむことになるだろう。もしかしたら、王国軍に蹂躙され、悲惨な最後を遂げるものも多いだろう。僕が考えていると、ロドリ子爵が僕の顔を向けた。
「そこで、イルス公の御慈悲に縋りたいのです。イルス公国は大量の食料を保有していると専らの噂。しかも、あのような巨大な都市を建設している様子を見るに、王国との決戦の構えがあると見えます。どうか、我らと協力して王国を打ち倒そうではありませんか」
ふむ。悪い話ではないな。確かに北部諸侯連合の四万人の軍は魅力的だ。公国に不足しているは絶対的な兵力の不足だ。どんなに兵器を改良しても、物量の前では勝率を大きく下げてしまう。それを改善させる方法が目の前にあるのだ。これほど提案が他にあるだろうか。四十万人の食料を提供するというのは至難の業と言えるが、一年の猶予があるならば出来ないことはないだろう。
公国の生産力はそれほどまで上がっているのだ。ただ、疑問がないわけではない。独立をする理由も十分だ。戦うだけの戦力があることも頷ける。食料の問題さえ克服できれば、北部諸侯連合は長らく存続することが出来るだろう。しかし、その鍵を握っている公国に、目の前にいる不遜なガットン伯爵を寄越すだろうか。最初から、ロドリ子爵を寄越していれば、こんな疑問を持たずに済んだのだが。
ただ、疑問はそれだけだ。それを差し引いても公国にとっては有益であることは間違いないだろう。もともと北部諸侯の領土を緩衝地帯と考えていて、交渉が難航すると思っていたのが、北部諸侯の方から話が舞い込んできたのだ。
「ロドリ子爵の話は一々尤もだ。この話は公国にとって有益だと僕は思う。しかし、これからの未来を考える前に今を考えたほうがいいのでないだろうか」
ロドリ子爵は首を傾げる。どういうことだ? 僕は確かにガットン伯爵に告げたはずだが。
「北部諸侯の領土に王国軍が近付いている。あと、どれくらいの到着になるかわからないが向かっているのは間違いないだろう。僕が作っている都市はその対策でもあるのだ。それに対して、そちらの対応を伺いたい」
ロドリ子爵は空気になっているガットン伯爵の方を向き、意見を聞こうとしたが首を横に振るだけだ。ガットン伯爵がなぜ知らないふりをして、この場を過ごしているのか理解できない。責任を取りたくないのか、分からないだけなのか。なんにしても、不信感が募る出来事であることは間違いない。ロドリ子爵は埒が明かないと思ったのか、こちらを振り向き直した。
「とりあえず、この話は連合に持って帰らなければ分かりません。しかし、急を要すること。イルス公には是非、我々と共に侯爵に会ってはいただけないでしょうか。今回の一件と王国軍の動きについての情報を教えていただきたいのです」
どうも北部諸侯連合は一筋縄ではいかなそうだが、僕が出向いたほうがいいだろう。僕は頷き、同行者を認めてもらうことを条件に出向くことにした。
「勿論です。本来であれば、頼みごとをしているこちらから出向くのが筋です。来て頂けるのであれば、如何なる条件でも結構でございます。それでは、準備が出来次第、すぐに参りましょう」
僕は北部諸侯連合の本部に向かうことになった。一体、何が起こるのか。僕にも一切予想も油断も出来ない事だった。
「まずは北部諸侯についてお話します。北部諸侯は……」
北部諸侯の成り立ちはかなり古い。王国の敵といえば東に広がる帝国だ。その帝国に対抗するために北部の接する諸侯を侯爵を中心として組織したのが始まりだったみたいだ。イルス辺境伯領も南部で帝国に接する重要な拠点の一つだったのだ。10の有力貴族たちで組織され、広大な領土を保有している。それらが一致団結して帝国に対抗していたのだ。そのため、保有している兵力も王国でも群を抜いており、王都の直轄軍を抜かせば、王国一の実力を持っている。
当然、ガムド子爵もその一つに数えられている。しかし、その組織にも転機があった。先の大戦の終戦だ。王が崩御され、王国は混沌を極めた。その中で王家で立ち上がったのが王弟と第一王子であるルドベックだ。北部諸侯は合議の上、王弟を支持することに決め、見事王弟を権力の中枢に置くことに成功した。そこまでは良かったのだが、その後の土地の荒廃が明暗を分けてしまった。
王都周辺は荒廃の影響を受けなかったのか食料の生産を続けられたが、北部諸侯の領土では十分な食料生産が出来なくなっていったのだ。北部諸侯は初めのうちは楽観していた。王弟には恩がある。食料に困ることはないだろうと思っていたのだが、王弟は食料を徐々に出し渋るようになっていった。
次第に見返りを求められるようになる。最初は、領内にいる亜人の引き渡しだ。労働力として使うみたいだ。次に貴族たちの家族を人質に要求されはじめた。この辺りから、北部諸侯の貴族たちは王弟に対して疑いを持ち始めた。食料を握られている以上、逆らうことが出来ずにはいたが、北部諸侯には精強な軍がいる。いざとなれば、兵を起こせば良いと甘い考えを持っていた。
しかし、王弟は家族と食料を盾に取り、イルス辺境伯領への出兵を命じてきたのだ。ここで、北部諸侯達は王弟が自分たちの力を削ごうとしていることを実感しだす。それでもイルス辺境博領は先代の当主ならともかく聞いたこともない若造が跡を継ぎ、次々と住民が逃げ出しているという話を王国からもたらされたこともあり、安心して、精強な兵を引き連れて出兵をした。
まさか辺境伯相手に兵が消耗することはないだろう。むしろ、王弟に北部諸侯の軍がいかに精強かを示すことが出来るとさえ思っていた。しかし、結果を見れば散々なものだった。北部諸侯の軍は辺境伯の兵に完膚なきまで叩かれ、多くの兵を失うとと共にガムド領が辺境伯に寝返るという信じられないことまで起こった。
それからの北部諸侯は惨めなものだった。王弟から敗戦の責任を追求され、特産物を無償で長期に渡って譲り渡す契約を結ばされ、残存した兵士の大半を王国に没収されてしまった。なんとか、立て直しを図ろうとしたが王国は食料の供給を不安定なものにしだした。そんな組織の軍に入るものなどいない。なかなか立て直しが出来ないまま、今に至った。
そして、ついに王国は北部諸侯への食料支援を打ち切ったのだ。北部諸侯はこうなることは薄々気づいていたため、王国には内密で食料を温存することにした。数年でそれなりの量にはなったが、北部諸侯の領土には40万人の人が住んでいる。その者たちを養うには十分な量とは言えない。精々、一年と言ったところだろうか。
北部諸侯は何度も食料の催促をしたが、その都度追い返され、ついには侯爵ですら王弟への謁見すら叶わなくなった。侯爵といえば、大臣を務められるほど由緒ある家柄。それを無視するというのは事態が深刻であることを如実に現していた。
そして、最悪の事態が起こった。それは一人の王国からの使者がやってきたのだ。北部諸侯は食料支援についてだと信じて疑わなかったが、その内容は、人質として囚われていた家族の病死を伝えるものだった。しかし、こんな報告を信じるものはいない。王弟に殺されたのだと。
侯爵はついに王国を見限り、独立をし王国へ反旗を翻すことにしたのだ。北部諸侯の中で独立を宣言する侯爵へ異を唱えるものはいなかった。それほど王国への憎しみが募っていたのだ。北部諸侯と呼ばれていたのを、侯爵を中心として北部諸侯連合と改め、独立をすることにした。
ここまでが北部諸侯連合が設立された経緯だ。ロドリ子爵は話し続けたせいで喉が渇いたのか、コップに入った水を一気に飲み干した。僕もなかなか言葉が見つからない。王国、いや王弟の残虐さが信じられないからだ。
「そんなことがあったのか。確かに王国に対して反旗を翻すだけの理由があると思う。しかし、そんなことをしても勝てる見込みはあるのか? 僕には正直、北部諸侯連合に勝ち目はないように感じるのだが」
「そんなことはありません!!」
そういって、ロドリ子爵は興奮したかのようにテーブルを叩きつける。さすがにこの行動は良くないと思ったのか、すぐに謝罪してきた。
「申し訳ありません。しかし、北部諸侯連合は弱体化したと言っても王国でも最強を誇った軍を保有したのです。今でも……」
ロドリは北部諸侯連合の内情を明かしてくれた。北部諸侯連合は人口40万人を誇り、王国でも有数の人口密集地体だ。産業も木材、鉄鋼などの天然資源に恵まれ、加工技術の高さも有名だ。今でこそ見る影もないが、食料生産量も多い地域であった。兵力は10万人ほどいたが、再編中とはいえ4万人程度にはなる。
たしかにその数字だけを見ると王国軍と互角に対抗できるように思えるが、やはり問題は食料だな。その点を解決しなければ、北部諸侯連合の未来は破滅しかないだろう。多くの流浪者を生み出し、多くの者が飢餓で苦しむことになるだろう。もしかしたら、王国軍に蹂躙され、悲惨な最後を遂げるものも多いだろう。僕が考えていると、ロドリ子爵が僕の顔を向けた。
「そこで、イルス公の御慈悲に縋りたいのです。イルス公国は大量の食料を保有していると専らの噂。しかも、あのような巨大な都市を建設している様子を見るに、王国との決戦の構えがあると見えます。どうか、我らと協力して王国を打ち倒そうではありませんか」
ふむ。悪い話ではないな。確かに北部諸侯連合の四万人の軍は魅力的だ。公国に不足しているは絶対的な兵力の不足だ。どんなに兵器を改良しても、物量の前では勝率を大きく下げてしまう。それを改善させる方法が目の前にあるのだ。これほど提案が他にあるだろうか。四十万人の食料を提供するというのは至難の業と言えるが、一年の猶予があるならば出来ないことはないだろう。
公国の生産力はそれほどまで上がっているのだ。ただ、疑問がないわけではない。独立をする理由も十分だ。戦うだけの戦力があることも頷ける。食料の問題さえ克服できれば、北部諸侯連合は長らく存続することが出来るだろう。しかし、その鍵を握っている公国に、目の前にいる不遜なガットン伯爵を寄越すだろうか。最初から、ロドリ子爵を寄越していれば、こんな疑問を持たずに済んだのだが。
ただ、疑問はそれだけだ。それを差し引いても公国にとっては有益であることは間違いないだろう。もともと北部諸侯の領土を緩衝地帯と考えていて、交渉が難航すると思っていたのが、北部諸侯の方から話が舞い込んできたのだ。
「ロドリ子爵の話は一々尤もだ。この話は公国にとって有益だと僕は思う。しかし、これからの未来を考える前に今を考えたほうがいいのでないだろうか」
ロドリ子爵は首を傾げる。どういうことだ? 僕は確かにガットン伯爵に告げたはずだが。
「北部諸侯の領土に王国軍が近付いている。あと、どれくらいの到着になるかわからないが向かっているのは間違いないだろう。僕が作っている都市はその対策でもあるのだ。それに対して、そちらの対応を伺いたい」
ロドリ子爵は空気になっているガットン伯爵の方を向き、意見を聞こうとしたが首を横に振るだけだ。ガットン伯爵がなぜ知らないふりをして、この場を過ごしているのか理解できない。責任を取りたくないのか、分からないだけなのか。なんにしても、不信感が募る出来事であることは間違いない。ロドリ子爵は埒が明かないと思ったのか、こちらを振り向き直した。
「とりあえず、この話は連合に持って帰らなければ分かりません。しかし、急を要すること。イルス公には是非、我々と共に侯爵に会ってはいただけないでしょうか。今回の一件と王国軍の動きについての情報を教えていただきたいのです」
どうも北部諸侯連合は一筋縄ではいかなそうだが、僕が出向いたほうがいいだろう。僕は頷き、同行者を認めてもらうことを条件に出向くことにした。
「勿論です。本来であれば、頼みごとをしているこちらから出向くのが筋です。来て頂けるのであれば、如何なる条件でも結構でございます。それでは、準備が出来次第、すぐに参りましょう」
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