爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第294話 模擬戦後の祭り 二日目

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 模擬戦の二日目が終わるとライル軍とニード軍は別々の行動を始めた。ライル軍は疲労の度合いが強いのか、すぐに兵たちに解散を命じ、休息を取ることを厳とした。一方、ニード軍は敗戦が相当悔しかったのか訓練を開始した。たしかに、休むには日がまだ高いが、この両軍の違いが明日どのような影響が出来るか。それを考えるだけでも楽しいものだな。今日の負傷兵の殆どがニード軍から出ている。そのため、負傷兵達も治療が終わると訓練へと駆り出されていった。

 僕は無理をするなと告げると、明日は負けられませんからと、全ての兵が口に漏らしていた。模擬戦に掛ける情熱が末端の兵まで行き渡っているとは。ニード軍の執念は大したものだ。僕は、足早に砦から離れることにした。僕がいては休息しようにもしづらそうな雰囲気を感じ取ったからだ。

 僕は、考え事をしているオリバを無理やり馬車に乗り込ませ、シラーと共に街へと向かった。馬車の中では、ずっとオリバは何かを呟いていた。今日の模擬戦は相当濃かったようだな。まだ、歌としてまとまらないようだ。僕はシラーに今日の戦いで吸血鬼全員で戦うとしたどうやって戦うのだ? と聞いてみた。

 「ふふっ。もちろん、突撃あるのみです」

 「しかし、大楯やクロスボウをどうやって攻略するんだ? 実践なら、貫通弾だってありうる。そうなれば吸血鬼と言えども無傷では済まないだろう」

 「確かに貫通弾は厄介かも知れませんが、数百の貫通弾同時射撃がなければ容易に回避は出来るでしょう。回避しているうちに弾数はなくなるでしょう。そこが攻め時となりますね。大楯は所詮は人間が持っているに過ぎませんから大楯を蹴り飛ばせば人間ごと吹き飛びますよ。貫通弾以外は我々にとっては脅威ではないですから、やっぱり突撃だけすれば終わりです」

 「そうか……」

 なんというか、吸血鬼に勝つだけの戦力を保有すればどの軍隊にも負けない気がするな。一度、その線で軍を再編するのも面白いかも知れないな。対魔族部隊。なんだか、かっこいい響きだ。使い途はなさそうだけどね。吸血鬼には作戦という概念はないようで、面白い話は残念ながら聞くことは出来なかった。それでもいい時間つぶしが出来たな。街にもう到着してしまった。

 祭りも二日目を迎え、早いうちから広場には人が集まるようになっていた。昨日の開始の宣言からは基本的に休まずに飲食が提供されている。基本的には、バイキング方式で大皿に盛られた食事を各々が好きな量だけ取っていくという方法だが、人数が少ない時間帯は注文制にしてある。今日が休みの者は、ずっと広場に屯し、好きな食べ物と酒を味わいながら住民たちと談笑する。仕事がある者も昼食だけ食べに来るというものが少なくない。

 僕も遅めの昼食となったが、注文をして食事を祭り開催本部に持ってきてもらうことにした。本来であれば、出前はしないのだが、僕が注文すると出前までやってくれると言ってくれたのだ。実にありがたい。本日の食事は、なんと刺し身だ。これは新村から届けられた新鮮な魚だろう。脂が乗って実にうまそうだ。それに海藻サラダ、ご飯、漬物も添えられている。立派な刺身定食になっている。シラーも同じ物を注文し、オリバは刺し身を敬遠しているのか焼肉定食を注文していた。是非、新村産の海産を食して欲しいところだが、魚介は食べたことがないと言うので無理強いはすることは出来ないな。

 僕とシラーは、すでに新村産の魚介は飽きるほど食べているので旨さに疑いはない。刺し身を一切れ食べたがやはり旨いな。獲りたてのほうが……と思うが、無理を言っても仕方がない。すぐ近くに海がない場所でこれほどの新鮮な魚介を食べれることに幸せを感じなければならないだろう。シラーも同じように美味しそうに刺し身を食べていた。

 僕達の美味しそうに食べる姿に触発されたのか、じっと僕の食べる姿を凝視しているものがいた。当然、目の前で一緒に食べているオリバだ。僕は一切れをオリバに差し出すと、恐縮した顔と興味津々と言った表情が入り混じった不思議な表情で、口に入れた。おそるおそる、ゆっくりと咀嚼していく。

 「おいしいですね……。まさか、これほど美味しいものを今まで食べずに過ごしていたなんて。幸せを何割か失っていたところでした。ちょっと、注文してきますね」

 そういって、テントから勢い良く出ていった。しかし、オリバはトボトボとした足取りですぐに戻って来た。

 「もう品切れみたいです。次の入荷は明日になるからまたおいでって。一切れじゃあ満足できません」

 急にオリバが子供っぽくなってしまったな。品切れは僕のせいかも知れない。だって、僕の皿にはあきらかに二人前以上の刺し身が乗っているのだから。気を利かせてくれたのだろうけど、正直こんなに食べれないところだ。

 「オリバ。僕ので良かったら半分食べないか? どうやら多く盛ってくれたみたいで食べ切れる量じゃないんだ」

 「いいんですか?」

 なぜ、潤んだ瞳で僕を見るんだ。僕は適当な皿に刺し身を盛り分け、オリバに差し出した。オリバは礼をいうと、刺し身を大事そうに一切れずつ、ゆっくりと食べていた。とても美味しそうに食べるな。もうちょっと、何か食べてみるか。再び、食堂に向かい魚介で食べれそうなものがないか聞くと、白い物体を持ってきたのだ。どうやら、どのように調理をしていいか分からずに残ってしまった食材のようだ。

 これはどう見ても、イカだ。それもかなり大きいな。イカはいろいろな料理をして食べることが出来、捨てるところが全く無い優れた食材だ。とはいえ、ここで手軽に作れるとすれば焼きイカだろう。僕は厨房を借り、イカを下拵えをしていく。それを鉄板の上で焼き、きれいに焼き色が付けば完成だ。適当な大きさに切り分け、皿に盛って一品の出来上がり。早速、ひとくち食べてみる。

 「旨いな……」

 店員も一口食べると、体を震わせて旨さを表現していた。器用なことができる店員だな。明日から料理の一品に加えると言って大張り切りだ。僕はイカ焼きを持って再びテントに戻った。オリバは、僕からもらった刺し身に焼肉定食を食べたせいでお腹いっぱいと言った様子でお腹を擦っていた。

 「オリバ、お腹いっぱいになっちゃったか。残念だ。美味しいものを持ってきてやったのに」

 僕とシラーは美味しそうにイカ焼きを食べていると、オリバはすかさず手を伸ばしてきた。これも気に入ってくれたようで、お腹いっぱいのはずがパクパクと食べていき、僕達より食べていた。

 「魚介最高です!!」

 そういって、オリバは倒れてしまった。食い倒れって本当にあるんだな……。

 オリバを放っておいて、ソロークを呼び出した。どうやら、ゴードンと一緒にいたようだな。ソロークはゴードンと共に本部に入ってきた。イカの匂いにゴードンが反応していたが、食べ終わってしまったことを告げるとひどく落ち込んでいた。ゴードンは昔から魚介には目がなかったようだな。非常に申しわけない気持ちだ。

 「ソローク。ゴードンからは色々と学べているか?」

 「勿論です。今も街に行き、人の行き交う様子をずっと観察するように言われました」

 ほお。それは面白そうなことをしているな。一応理由を聞いてみるか。

 「はい。ゴードン先生が言うには、人の流れが街の性質を決めるといいます。行政官となれば、まず街の性質を熟知しなければならない。そのために人の流れを観察する癖を付け、いかなる街に出向いても性質をすぐに理解することが出来ると言うのです。今の私には難しいですが、必ず観察眼を極めたいと思っております」

 なかなか面白い事を言うものだが、一理あるな。もっといえば、人の格好や仕草からも街の性質を理解する上で重要となってくるだろう。しかし、それを伝えようとしたが、気になったことがある。ゴードン……先生?

 「はい。私の師となるお方ですから、先生と付けるのは当然かとおもいます」

 そうか。たしかにその通りだ。しかし、ゴードンが先生とはちょっと面白いな。だが、ふと考えたがゴードンは公国の重役と周りに評価されているはずだ。それに対する敬称が未だにないことが気になるな。ちょっと考えてみることにしよう。

 「まぁ、今回呼んだのは、明日の模擬戦についてだ。最後の一戦となるが、ソロークも観戦に加われ。これは命令だ」

 ソロークは一言だけ、了解しました、と告げた。そして、ゴードンには明日の祭りを楽しむようにいうと、一言だけ、了解しました、と答えた。同じ返事とは恐れいる。ソロークはゴードンから再び講義を受けるために外に飛び出していった。

 さて、僕も祭りに繰り出し、大いに楽しもうではないか。予定よりも随分と早いが祭りで時間を気にするのは無粋というものだろう。僕はオリバを起こし、シラーと共に大いに飲み食いをした。明日もあるために早めに切り上げたつもりだったが、相当な量を飲んでしまったな。

 明日の模擬戦最終日を想像しながら、眠りについた。朝起きてみると、シラーはともかくなぜかオリバも一緒に寝ていたみたいだ。まぁ、三人共かなり酔っていたからな。オリバも屋敷に戻ってきて寝落ちしてしまったのだろうな。シラーとオリバの可愛い寝顔を見ながら、僕は支度を始めた。

 すると、オリバが起きたと思うと急に声を出した。

 「ああ。ついにロッシュ様と一線を越えてしまったみたいですね」
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