爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第309話 ダークエルフ

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 「お前たち、一体ここで何をしているんだ!?」

 僕達から返事が帰ってこないので矢継ぎ早に質問を繰り返してくる。僕達がこの年老いたダークエルフを人質にでも取っていると思っているのかもしれない。なかなか攻撃を仕掛けてこない。すると、年老いたダークエルフがやってきた若いダークエルフに大きめの口調で話しかけた。

 「ルードや。この者たちに危害を加えてはならぬ。我らをこの窮地から救い出してくれる存在のお方じゃ」

 「な、何を言っているのです? この者たちは人間なのですよ。ただの種としか存在価値がないと教えてくれたではないですか」

 おお、何という教育だ。人間を種としか見ていないエルフの考えを聞いてしまうとちょっと助けたい気持ちが薄くなっていく。老いたダークエルフが手紙を若いダークエルフに渡した。それを読み進めていると表情が一変する。武器を投げ捨て、跪く仕草をしてくるのだ。しかし、この手紙には一体何が書かれているのだ? すると、ようやく年老いたダークエルフが説明を始めてくれた。

 「この手紙には我らの窮状を嘆き、里のリーダーたるハイエルフが近い将来やってくることが書かれているのじゃ。そこにはロッシュという人間の若者から種をもらえばハイエルフが産まれる可能性が非常に高い。それが駄目でも、始祖エルフが誕生したことでハイエルフが溢れるように産まれるだろう、と」

 くそ、やはりリリも僕を種としか見ていないのか。僕はリリの要請には応じるつもりはないぞ。いくら困っているとは言え、他の方法を模索するべきだ。僕の様子にはお構いなしに年老いたダークエルフはルードと呼ばれた若いダークエルフに話しかける。

 「ルードや。私はもはや子供を成せる体ではない。お前がロッシュという若者から種をもらうのじゃ。この里では子供しかいない中で、唯一子供を産めるからの。里の未来のために犠牲になっておくれ」

 泣く泣く年老いたダークエルフはお願いをしていた。それに感極まったのかルードが泣きながら近づき、手を取り合いながら二人の世界に入っていく。

 「分かりました。私がロッシュという若者に頭を垂れて、種をもらいましょう。言うことを聞かなければ力づくでも……」

 僕が後ろにいることを理解しているのか? 会話が丸聞こえなんだけど。なんというか、ますます助けたくなくなっていく。ルードは決心をした表情を浮かべ、僕と対峙する。そして、再び僕の前で跪いた。

 「ロッシュとやら。種をくれ!!」

 「断る!!」

 「なっ!! どうして!?」

 「僕は君たちが窮状と言う話を聞いて助けに来たつもりだ。しかし、人間を種扱いし、自分たちの都合のみしか考えない君たちを助ける気は失せた。だから、僕達は帰らせてもらうぞ」

 「くっ。こうなれば……」

 ルードが立ち上がった。無理矢理にでも手篭めにするつもりか? 僕はルードが襲い掛かってくることに対して身構えた。しかし、ルードの取った手段は来ている服を脱ぐことだった。自分の服を破り捨て、あられもない姿を晒しだす。

 「どうだ!! これを見れば、種を注ぎたくなってくるであろう!!」

 くっ……何という破壊力だ。もともといい体をしていると思っていたが、まさか晒しを巻いてボリュームを抑えていたというのか。何と言う大きさだ。それにも拘わらず、筋肉質な体でとても矛盾をした体つきだ。たしかに理性が暴走してしまいそうになる。しかし、ここは耐えなければ。

 「くっ。人間のくせになかなか耐えるではないか。それならば……」

 ルードが一歩、また一歩と僕に近づいてくる。その度に僕の理性から警鐘が鳴る。この場を離れなければまずい。しかし、この場を離れようとしない僕の本能が邪魔をしてくる。わざとらしく揺らしてくるとは。ルードは一体、どこでこの技を? ルードの後ろにいる年老いたダークエルフは満足げにしきりに頷いてた。この婆さんがルードにとんでもないことを教えた張本人か。しかし、破壊力だけは抜群だ。

 僕の後ろに控えていた船員たちもルードの裸体を見て、身動き一つ取れないでいた。誰も助けてくれないのか!? このままでは……後一歩でルードの体が触れそうな距離まで届きそうな時にシラーが間に入ってきてくれた。シラーのいい香りが一瞬漂い、僕は冷静さを取り戻すことが出来た。

 「はい、そこまでです。一応言っておきますが、ルードさんのやり方はご主人様はあまり好まれません。やり方を変えることをおすすめしますよ」

 至って冷静なシラーの言葉に周囲も冷静さを取り戻す。ルードもその一人だ。こうなると全裸で突っ立っている残念な女性という感じになってしまう。とりあえず、再び恐慌状態に陥らないためにも僕は自分が羽織っているマントをルードがかぶせた。しかし、却ってマントから見え隠れすることになり、凶器性を増したような気がする。なるべく見ないようにしよう。

 「それはどういうことですか? これがエルフ流のやり方だと教えてもらって……これ以外に方法なんてあるんですか?」

 シラーはコクリと頷くと、ルードがわなわなと震えて腰を抜かしてしまったようだ。後ろにいる婆さんも同じように戦慄している。

 ……なんだ、この状況は? 

 シラーはルードになにやら小声で話している。ここからでは聞こえないが、近づけばルードの凶器に触ってしまうかもしれない。聞きたいが、我慢することにしよう。きっとシラーはルードを諌めているに違いない。ようやく話が終わると、ルードが立ち上がり僕に謝罪をしてきた。

 「ロッシュ殿。本当に申しわけありませんでした。リリ様の助言に従い行動したまで。全てはリリ様が悪いのです」

 リリ……君が一番の悪者になってしまったぞ。

 「そこでロッシュ殿の種は是非とも欲しいところですが、今は一旦諦めます。それで頼みがあるのです。是非とも私達をロッシュ殿の里で住まわせてくれないでしょうか? きっとお役に立てると思います」

 ほお。急に態度を変えたな。しかし……

 「ダメだな。君たちを村に連れて行くことは出来ない」

 「えっ!? だって、シラーさんがそう言えば良いって……私達を助けに来てくれたのではないのですか!? 話が違うじゃないですか」

 取り乱し方が半端ではないな。

 「いいか? 君たちは村人にとって危険な存在だ。村には人間が多く住む。人間を種としか見れないような君達を置くことは出来ないのだ。分かってくれ」

 僕がそういうとルードは泣きそうな顔になりながら、シラーに駆け寄って、助けてくれるように懇願していた。シラーの困りきった顔は忘れられそうにないな。なんというか、ルードは必死なんだろうが少し滑稽に映ってしまったからだ。

 「ご主人様がそうおっしゃっているのですから、諦めましょう。ここでの暮らしは不便そうですが、今までなんとか出来たのですから」

 「そ、そんなぁ。私達の悲願であるリーダーが……ハイエルフが目の前にいるのに……分かりました。諦めます」

 「というのは冗談ですよ。あなた達はエルフでも珍しく魔力が高いようですね。きっとご主人様のお役に立てるはずです」

 シラーがそう言うと、僕の方に振り向いた。

 「ご主人様。ダークエルフは風魔法を使える優秀な戦士です。それに土木作業でも大いに役立つと思いますよ。連れて行っても損はないとおもいますよ。それにこの里を見る限り、子供しかいませんから人間を襲う者はいないでしょう。ルードを除いて。だから、ルードだけを監視していれば大丈夫ですし、彼女はご主人様以外の男に興味はなさそうですから」

 シラーの後ろにいるルードがなにやらペコペコと頭を下げている。確かに風魔法が使えるのであれば、木材を伐採するのに役に立つな。スヤスヤと眠っているダークエルフの子供を見ていると、シラーの言い分は最もだと思えてくる。僕は、シラーの言葉を受けてダークエルフ達を村に連れていくことにした。

 ルードは大はしゃぎして、僕に遠慮もなく抱きついてくる。せっかく冷静になっていた本能が再び表に出てこようとしている。それを察してくれたようでシラーがルードを引き剥がしていく。

 「ご主人様は一旦、受け入れると簡単に体を許してしまうという悪い癖がありますから。続きは村に戻ってからにしてくださいね」

 ちょっと落ち込んだ。

 婆さんダークエルフは里の窮状が少しでも改善することがわかったのか、ずっと影で泣いていた。余程、苦労をしたのだろう。村に戻ったら、ゆっくりと休ませてやったほうが良さそうだな。僕達は、スヤスヤと眠る子供ダークエルフを抱え、船に戻る事を提案した。意外にもルードは即断して、とくに手荷物もない様子で出掛けようとしていた。たしかに、見渡しても家財道具らしいものは見当たらないな。

 「ルード。エルフは家具作りが得意なのではないか? ここにはそのようなものがないが?」

 「私達には作れませんよ。黒きエルフ、ロッシュ殿のいうダークエルフには風魔法と狩猟しかできませんよ」

 同じエルフでも肌の色だけでなく特技も変わってくるのか。不思議な種族だな。僕達も各家の子どもたちを集め、移動を開始しようとしていた時、年老いたダークエルフがゆっくりとした足取りで僕に近寄ってきた。

 「ロッシュ殿。この者たちをよろしくお願いします。私はこの子どもたちに何も残せてやれなかったが、最後の最後でロッシュ殿と会い、この者たちを託せたことで私の肩に荷が降りました。本当に感謝しております」

 「そんな礼は村に戻ってからでいい。あなたは荷車にでも乗っていくといい」

 「私は……ここに残ります」

 僕がなにか言う前にルードが間に入ってきた。

 「何を言っているんですか!? まだ、私達には長の言葉が必要なんです。一緒に行きましょう」

 「長はハイエルフのみがなれるんじゃ。私は長ではない。偶々最後まで生き残ったエルフなんじゃ。それに老い先も短い。それならば、かつての仲間たちと共に最後を迎えたいんじゃ。許しておくれ。そして、ルードが子どもたちをこれからを引っ張っていくんじゃ。草葉の陰からハイエルフが産まれることを祈っておる」

 そういって年老いたダークエルフはゆっくりとした足取りでボロボロの掘っ立て小屋に戻っていった。その後ろ姿を負える者はいなかった。それほど年老いたダークエルフの表情は未練も何もない穏やかなものだったのだ。

 船員たちは子供エルフを抱き上げ、次々と船に向かって移動を開始していた。残されたのは僕とシラー、そしてルードだけだった。ルードはずっと掘っ立て小屋の方を向き、深くお辞儀をしてから船に向かって歩き始めた。僕達もその後を追った。

 「ルード。本当にいいのか? 今からなら無理矢理にでも連れて行った方が」

 「ロッシュ殿。お気遣い感謝します。しかし、長は決めたら考えを絶対に曲げません。無理やり連れていけば、船上で海に身を投げてでも戻ろうとするでしょう。それにあんなに穏やかな表情の長を見たことがありません。きっとロッシュ殿と出会えて、安心したんだと思います。ロッシュ殿。本当にありがとうございます」

 そういうとルードは溢れる涙を抑えずにはいられなかった。僕の胸にしがみつくルードを優しく抱きしめるくらいしか僕には出来なかった。
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