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第312話 ルードが家族になる一歩
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ルードが、家族として受け入れられるのには時間がかかった。僕はともかく、妻達が快く思っていないのだ。特にエリスやマグ姉だ。ルードは僕の種が欲しいために村にまで来たと言う認識がどうしても邪魔しているようだ。見ようによっては僕はルード達の安寧を壊した侵略者みたいなものだ。偶々、ルード達が僕の種に有用性を見出したに過ぎない。そうでなければ、ここには絶対にいないだろう。
ルードが妻達に快く思われていなくても、ここにいるのは、ひとえに長との約束があるからだ。それでも同じ魔族であるリードやミヤ、シラーは目的に対して悪い印象を持っていないため、嫌悪感を現していないが正直なところ興味がないと言った様子だ。シェラもそういう意味では同じかな。
エリスがルードに僕の事を好きなのかどうかを重視し、マグ姉は血を残すのではなく長を求めるためというエルフ独特の考え方に理解が出来ないというところに集約されていった。なかなか難しいが、時間がきっと解決してくれるだろう……多分。
それでもルードは村にやってきてからは、よく働くのだった。ルードは威力が強い風魔法を使えるので、木材の伐採に大いに重宝された。特に新村での活躍が目覚ましい。新村の木材はこの辺りでもかなり硬い木に分類さる。ここの木材は主に造船用として用いられており、最近、造船熱が高まっているせいで木材の需要が高いのだが、伐採にかなりの人数と時間を要するのだ。それをルード一人で空師何十人分をやってのけてしまうのだ。
そして、他のダークエルフ。子供たちも活躍している。麦の脱穀作業の手伝いだ。麦を脱穀をすると、どうしても麦の殻や枝、葉などのカスが混じってしまう。それらを風が強い日を選んだり、隙間風を利用したりしてカスだけを飛ばす作業を繰り返される。そうすることで麦だけを選り分けていくのだが、その作業が非常に大変なのだ。
そこで子供ダークエルフが風魔法で適当な風を吹かせ、麦だけを選別していく。そこで作り出されたのが選別装置だ。高さ四メートルほどの高さに大きい樽を設置する。地上部で脱穀された麦を滑車を使って、その高さまで運んでいく。脱穀された麦には当然カスも大量だ。それから樽の底に麦がこぼれ落ちるほどの穴を開け、そこから麦を落としていく。
そこで横から子供エルフたちが風を起こすと……軽いカスだけが飛んでいき、重い麦は下の受け皿にどんどん溜まっていくという仕組みだ。これによって、選別作業という一大作業がなくなったのだ。しかも、この装置一台には子供ダークエルフ一人で十分すぎるため、30台の装置が急遽作られることになった。この装置の誕生により、各地で脱穀された麦が村に集められるという事態が起こった。
その甲斐もあって、ダークエルフは公国中で慕われ、その容姿も相まってか絶大な人気を誇るようになっていた。しかし、僕は麦をいちいち村に集約することにかなり不経済と思っていたのだ。それでも麦にカスが入っているか否かで雑味のあるなしに関わるらしく、どうしても美味しいパンを食べたいという欲求が強く、続々と各地から麦が送られてきた。
ただ、輸送するための荷車の数には限界がある。麦だけを運ぶために使ってしまうと他の物流に大きな影響を与えてしまう。三村ー新村の航路があるため、南の地の麦については大して影響はないのだが、北の地は陸路しかないため、物流の弊害を心配した物流部門代表のリックが村に麦を運ぶことを禁止した。
そんなある日、一つの騒動が起きた。子供ダークエルフの数人が行方不明になってしまったのだ。このせいでルードが大騒ぎをし、捜索隊を繰り出すことになった。子供ダークエルフの行動範囲は虱潰しに探したのだが見つからず、村周辺やラエルの街、新村にまで拡大したが発見されることはなかった。
その時、おかしな話を耳にした。城郭都市周辺にある小さな村の代表者がグルドに雑味のないパンを献上してきたという話だった。別に不思議な話ではないし、意味もあるとは思わなかった。どちらかというとその地域を統括しているグルドに献上する行為そのものが問題視されるというものだ。
確かに南の地では雑味のないパンはさほど貴重ではないが、北の地では入ってくる数に限りがあるため貴重性がある。それを献上品にするということは、その代表者は雑味のないパンの入手先を確保しているということだ。そんな話が出た後に、物流部門責任者のリックが急いでやってきた。
「ロッシュ公。先日伺いました雑味のないパンを献上したという話。ちょっと気になったので調べてみたら、ダークエルフのお嬢ちゃんがいなくなった日に、代表者が治める村の荷車がちょうどこっちに来てたんですよ。ちょっと妙じゃないですか?」
たしかに。ちょっと偶然すぎる感じもするな。僕はゴードンにその代表者の身元を調べるように頼むとすぐに答えが返ってきた。どうやら元北部諸侯連合の侯爵家の財務を担当していたものらしい。ゴードンが侯爵家の財務を調べていた時、かなりメチャクチャな経理が行われていたことがあったが、移住のどさくさで有耶無耶になっていたようだ。
その者がまさか……。僕はハトリに調査を頼むと、すぐに戻ってきた。
「ハトリ、随分と早かったな」
「ハッ!! まずは結果を。子供ダークエルフ三人を発見いたしました。やはり、脱穀作業を手伝わされていたようです。しかし、その者は隠すこともなく大々的にやっていたのですぐに発見となりました」
「子供たちは無事か?」
「怪我らしいものは見受けられず、虐待をされている様子もありませんでした」
ふむ。とりあえずは安心か。僕はガムドに兵を出動することを命じた。そして、グルドにも同様に伝えた。そして、心配そうに側にいるルードに声を掛けた。
「ルード。遅くなって済まなかったな。子供たちは僕が必ず無事に連れ戻す」
「いいえ。ここまで私達のために努力をしてくださったロッシュ殿に謝ってもらう必要はありません。こちらこそ感謝しています」
「それはまだ早い。子供たちを連れ戻したら、また話を聞こう」
僕は迎えに来たガムドと共に城郭都市に向かって出発した。兵は一万人。かなり過剰とも言える数だったが、久々の遠征ということもあって訓練がてらというのがガムドの言い分だ。それならば、急行しても文句はあるまい。ラエルの街から城郭都市まで100キロメートルを一気に走破した。それでも脱落者は一人もおらず、公国軍の強さの一端を見ることが出来た。
そこでグルドと合流という手はずだったが、グルドはすでに二万人の兵を連れて村を包囲しに行ってしまったと言う。その時のグルドは怒りに満ち溢れていたらしい。早く向かわねばならないな。グルドがその代表者を殺しかねない。
城郭都市からその村はすぐ近くだった。北の街道からは離れており、海沿いの方にある村だった。遠目から見ても分かるくらい、村は何重にも包囲がされており、逃げ場が全く無いほどだった。僕達はすぐにグルドのもとに行った。
「グルド。ご苦労だな。しかしこの大軍は一体どうしたというのだ。たかだか二千人程度の村にやり過ぎではないか?」
「何をおっしゃるですか? ロッシュ公。我らの公国民を誘拐したのですぞ。八つ裂きにしても足りぬほど怒りに満ち溢れておりますぞ。大軍はその不届き者を逃さないためのもの。絶対に地獄を見せてやりますぞ。あんなに可愛い子供を……」
最後の小声はよく聞き取れなかったが、そこまで公国民を考えていてくれたとは。僕は胸が熱くなる思いがした。後ろのガムドは頭を抱えている様子だったが。頭でも痛いのか?
さて、村の中の様子はと言うと勿論、大混乱だ。それはそうだ。三万人の兵に囲まれて平常心を保っていたら大したものだ。しかも、僕達がやってきて、すぐにライルが率いる第一軍も合流したのだ。一万人の兵を引き連れて。
「ロッシュ公。知らせを受けてすぐにやってきたんだが、遅参したとは恥ずかしい限りだ。本来はオレと供回りだけで来るつもりだったが、ダークエルフの子供を誘拐したやつがわかったことを軍の奴らに伝えたら、全員が救いに行くと言って息巻いてな。これだけの人数にするだけでも大変だったぞ」
ん? ライルには招集をかけたつもりはなかったが……なんていい奴らなんだ。本来は命令違反を問うてもおかしくない場面だが、どうしてもそれをすることは出来なかった。僕は自警団に日付を誤魔化した召集令状を作らせ、ライルに渡した。ライルはその文書をみて、ちょっと苦笑いをしていた。
その村には四万人という戦争でもするのかという規模の兵が参集してしまった。僕はライルを使者として、投降を呼びかけた。その間にハトリに命じ、ダークエルフの子供の救出をしてもらうことにした。その任務はすぐに終わった。所詮は新造の村だ。隠せる場所など限られている。
それでも投降に応ずる態度を示さなかったため、一千人の兵で代表者の屋敷を取り囲み、無理矢理に引きずり出した。まずは理由を聞こう。それにクズ飛ばしの装置の入手についてだ。なぜか、この村に一台だけあったのだ。作り自体は難しいものではないのだが、村で作られた装置は素材が違うのだ。樽は魔の森の木を使い、金属には鉄と錫の合金が用いられている。
その代表者は観念したのか、洗いざらい白状した。どうやら侯爵家が解体された時、侯爵の側に仕えていた者たちが公国に散ったことを良いことに、その者たちが結託をして利益を吸い取ろうとしたらしい。そして、その利益で自分たちの地位を向上させることを目論んだらしい。その一環として、雑味のないパンを入手することだったらしい。
なんと愚かなことをしたんだ。僕は怒りに満ち溢れた顔でその者を睨んだが、その者は悪びれる様子もなく、ただただ自分だけの助命だけを懇願してきた。このような者に公国民を任せたのは一生の恥だ。僕はこの者と共に結託したもの全ての捕縛を命じ、それは関係者にも広げることにした。
結果的に、その関係者は数百人にも及んだ。しかし、この者たちを裁くための法律がない。しかも全員が公国に対して裏切り行為をしていたわけではないので、一部のものに対しては国外追放。その他のものには、くみ取り作業を強制した。
ひとまずは一件落着だ。ただ、グルドから小言を言われた。
「ロッシュ公。今回の件は良い教訓だ。それほど雑味のないパンは北の地では魅力的なものなのだ。南北で差を付けることはこういう輩を蔓延らせる原因となるんだぞ。すぐに対処をした方が良い」
僕は、城郭都市にクズ飛ばしの装置を設置し子供ダークエルフをその一時期だけ派遣するということにした。これには北の地では祭りのような騒ぎとなり、くすぶっていた不満が解消することとなった。
僕達はその場で解散となり、僕は一足先に村に戻ることにした。子供ダークエルフをルードに引き合わせ、お互いに涙を流して抱き合っていた。ルードがスっと立ち上がり、僕にお礼を言ってきた。
「本当にありがとうございました。無事に戻ってこれたのはロッシュ殿のおかげです。今回の一件でロッシュ殿のお優しさがよく分かりました」
なんだか、ルードの距離が一層近づいた気がした。その一件以降、エリスとマグ姉のルードへの態度がかなり軟化したような気がする。一体、何があったのだろうか?
ルードが妻達に快く思われていなくても、ここにいるのは、ひとえに長との約束があるからだ。それでも同じ魔族であるリードやミヤ、シラーは目的に対して悪い印象を持っていないため、嫌悪感を現していないが正直なところ興味がないと言った様子だ。シェラもそういう意味では同じかな。
エリスがルードに僕の事を好きなのかどうかを重視し、マグ姉は血を残すのではなく長を求めるためというエルフ独特の考え方に理解が出来ないというところに集約されていった。なかなか難しいが、時間がきっと解決してくれるだろう……多分。
それでもルードは村にやってきてからは、よく働くのだった。ルードは威力が強い風魔法を使えるので、木材の伐採に大いに重宝された。特に新村での活躍が目覚ましい。新村の木材はこの辺りでもかなり硬い木に分類さる。ここの木材は主に造船用として用いられており、最近、造船熱が高まっているせいで木材の需要が高いのだが、伐採にかなりの人数と時間を要するのだ。それをルード一人で空師何十人分をやってのけてしまうのだ。
そして、他のダークエルフ。子供たちも活躍している。麦の脱穀作業の手伝いだ。麦を脱穀をすると、どうしても麦の殻や枝、葉などのカスが混じってしまう。それらを風が強い日を選んだり、隙間風を利用したりしてカスだけを飛ばす作業を繰り返される。そうすることで麦だけを選り分けていくのだが、その作業が非常に大変なのだ。
そこで子供ダークエルフが風魔法で適当な風を吹かせ、麦だけを選別していく。そこで作り出されたのが選別装置だ。高さ四メートルほどの高さに大きい樽を設置する。地上部で脱穀された麦を滑車を使って、その高さまで運んでいく。脱穀された麦には当然カスも大量だ。それから樽の底に麦がこぼれ落ちるほどの穴を開け、そこから麦を落としていく。
そこで横から子供エルフたちが風を起こすと……軽いカスだけが飛んでいき、重い麦は下の受け皿にどんどん溜まっていくという仕組みだ。これによって、選別作業という一大作業がなくなったのだ。しかも、この装置一台には子供ダークエルフ一人で十分すぎるため、30台の装置が急遽作られることになった。この装置の誕生により、各地で脱穀された麦が村に集められるという事態が起こった。
その甲斐もあって、ダークエルフは公国中で慕われ、その容姿も相まってか絶大な人気を誇るようになっていた。しかし、僕は麦をいちいち村に集約することにかなり不経済と思っていたのだ。それでも麦にカスが入っているか否かで雑味のあるなしに関わるらしく、どうしても美味しいパンを食べたいという欲求が強く、続々と各地から麦が送られてきた。
ただ、輸送するための荷車の数には限界がある。麦だけを運ぶために使ってしまうと他の物流に大きな影響を与えてしまう。三村ー新村の航路があるため、南の地の麦については大して影響はないのだが、北の地は陸路しかないため、物流の弊害を心配した物流部門代表のリックが村に麦を運ぶことを禁止した。
そんなある日、一つの騒動が起きた。子供ダークエルフの数人が行方不明になってしまったのだ。このせいでルードが大騒ぎをし、捜索隊を繰り出すことになった。子供ダークエルフの行動範囲は虱潰しに探したのだが見つからず、村周辺やラエルの街、新村にまで拡大したが発見されることはなかった。
その時、おかしな話を耳にした。城郭都市周辺にある小さな村の代表者がグルドに雑味のないパンを献上してきたという話だった。別に不思議な話ではないし、意味もあるとは思わなかった。どちらかというとその地域を統括しているグルドに献上する行為そのものが問題視されるというものだ。
確かに南の地では雑味のないパンはさほど貴重ではないが、北の地では入ってくる数に限りがあるため貴重性がある。それを献上品にするということは、その代表者は雑味のないパンの入手先を確保しているということだ。そんな話が出た後に、物流部門責任者のリックが急いでやってきた。
「ロッシュ公。先日伺いました雑味のないパンを献上したという話。ちょっと気になったので調べてみたら、ダークエルフのお嬢ちゃんがいなくなった日に、代表者が治める村の荷車がちょうどこっちに来てたんですよ。ちょっと妙じゃないですか?」
たしかに。ちょっと偶然すぎる感じもするな。僕はゴードンにその代表者の身元を調べるように頼むとすぐに答えが返ってきた。どうやら元北部諸侯連合の侯爵家の財務を担当していたものらしい。ゴードンが侯爵家の財務を調べていた時、かなりメチャクチャな経理が行われていたことがあったが、移住のどさくさで有耶無耶になっていたようだ。
その者がまさか……。僕はハトリに調査を頼むと、すぐに戻ってきた。
「ハトリ、随分と早かったな」
「ハッ!! まずは結果を。子供ダークエルフ三人を発見いたしました。やはり、脱穀作業を手伝わされていたようです。しかし、その者は隠すこともなく大々的にやっていたのですぐに発見となりました」
「子供たちは無事か?」
「怪我らしいものは見受けられず、虐待をされている様子もありませんでした」
ふむ。とりあえずは安心か。僕はガムドに兵を出動することを命じた。そして、グルドにも同様に伝えた。そして、心配そうに側にいるルードに声を掛けた。
「ルード。遅くなって済まなかったな。子供たちは僕が必ず無事に連れ戻す」
「いいえ。ここまで私達のために努力をしてくださったロッシュ殿に謝ってもらう必要はありません。こちらこそ感謝しています」
「それはまだ早い。子供たちを連れ戻したら、また話を聞こう」
僕は迎えに来たガムドと共に城郭都市に向かって出発した。兵は一万人。かなり過剰とも言える数だったが、久々の遠征ということもあって訓練がてらというのがガムドの言い分だ。それならば、急行しても文句はあるまい。ラエルの街から城郭都市まで100キロメートルを一気に走破した。それでも脱落者は一人もおらず、公国軍の強さの一端を見ることが出来た。
そこでグルドと合流という手はずだったが、グルドはすでに二万人の兵を連れて村を包囲しに行ってしまったと言う。その時のグルドは怒りに満ち溢れていたらしい。早く向かわねばならないな。グルドがその代表者を殺しかねない。
城郭都市からその村はすぐ近くだった。北の街道からは離れており、海沿いの方にある村だった。遠目から見ても分かるくらい、村は何重にも包囲がされており、逃げ場が全く無いほどだった。僕達はすぐにグルドのもとに行った。
「グルド。ご苦労だな。しかしこの大軍は一体どうしたというのだ。たかだか二千人程度の村にやり過ぎではないか?」
「何をおっしゃるですか? ロッシュ公。我らの公国民を誘拐したのですぞ。八つ裂きにしても足りぬほど怒りに満ち溢れておりますぞ。大軍はその不届き者を逃さないためのもの。絶対に地獄を見せてやりますぞ。あんなに可愛い子供を……」
最後の小声はよく聞き取れなかったが、そこまで公国民を考えていてくれたとは。僕は胸が熱くなる思いがした。後ろのガムドは頭を抱えている様子だったが。頭でも痛いのか?
さて、村の中の様子はと言うと勿論、大混乱だ。それはそうだ。三万人の兵に囲まれて平常心を保っていたら大したものだ。しかも、僕達がやってきて、すぐにライルが率いる第一軍も合流したのだ。一万人の兵を引き連れて。
「ロッシュ公。知らせを受けてすぐにやってきたんだが、遅参したとは恥ずかしい限りだ。本来はオレと供回りだけで来るつもりだったが、ダークエルフの子供を誘拐したやつがわかったことを軍の奴らに伝えたら、全員が救いに行くと言って息巻いてな。これだけの人数にするだけでも大変だったぞ」
ん? ライルには招集をかけたつもりはなかったが……なんていい奴らなんだ。本来は命令違反を問うてもおかしくない場面だが、どうしてもそれをすることは出来なかった。僕は自警団に日付を誤魔化した召集令状を作らせ、ライルに渡した。ライルはその文書をみて、ちょっと苦笑いをしていた。
その村には四万人という戦争でもするのかという規模の兵が参集してしまった。僕はライルを使者として、投降を呼びかけた。その間にハトリに命じ、ダークエルフの子供の救出をしてもらうことにした。その任務はすぐに終わった。所詮は新造の村だ。隠せる場所など限られている。
それでも投降に応ずる態度を示さなかったため、一千人の兵で代表者の屋敷を取り囲み、無理矢理に引きずり出した。まずは理由を聞こう。それにクズ飛ばしの装置の入手についてだ。なぜか、この村に一台だけあったのだ。作り自体は難しいものではないのだが、村で作られた装置は素材が違うのだ。樽は魔の森の木を使い、金属には鉄と錫の合金が用いられている。
その代表者は観念したのか、洗いざらい白状した。どうやら侯爵家が解体された時、侯爵の側に仕えていた者たちが公国に散ったことを良いことに、その者たちが結託をして利益を吸い取ろうとしたらしい。そして、その利益で自分たちの地位を向上させることを目論んだらしい。その一環として、雑味のないパンを入手することだったらしい。
なんと愚かなことをしたんだ。僕は怒りに満ち溢れた顔でその者を睨んだが、その者は悪びれる様子もなく、ただただ自分だけの助命だけを懇願してきた。このような者に公国民を任せたのは一生の恥だ。僕はこの者と共に結託したもの全ての捕縛を命じ、それは関係者にも広げることにした。
結果的に、その関係者は数百人にも及んだ。しかし、この者たちを裁くための法律がない。しかも全員が公国に対して裏切り行為をしていたわけではないので、一部のものに対しては国外追放。その他のものには、くみ取り作業を強制した。
ひとまずは一件落着だ。ただ、グルドから小言を言われた。
「ロッシュ公。今回の件は良い教訓だ。それほど雑味のないパンは北の地では魅力的なものなのだ。南北で差を付けることはこういう輩を蔓延らせる原因となるんだぞ。すぐに対処をした方が良い」
僕は、城郭都市にクズ飛ばしの装置を設置し子供ダークエルフをその一時期だけ派遣するということにした。これには北の地では祭りのような騒ぎとなり、くすぶっていた不満が解消することとなった。
僕達はその場で解散となり、僕は一足先に村に戻ることにした。子供ダークエルフをルードに引き合わせ、お互いに涙を流して抱き合っていた。ルードがスっと立ち上がり、僕にお礼を言ってきた。
「本当にありがとうございました。無事に戻ってこれたのはロッシュ殿のおかげです。今回の一件でロッシュ殿のお優しさがよく分かりました」
なんだか、ルードの距離が一層近づいた気がした。その一件以降、エリスとマグ姉のルードへの態度がかなり軟化したような気がする。一体、何があったのだろうか?
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