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第321話 再び、都建設現場へ
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僕の体調は魔力の乱れ? のようなものでなかなか本調子にはならなかった。その間はエリスやマグ姉に代わる代わる看病を受けていたのだが、まるで子供のような扱いを常に受け続けた。なんともやるせない気持ちだ。時々、見舞いがてら報告にやってくるゴードンやガムドの存在がありがたかった。特にゴードンは隠れて酒を持ってきてくれる。
僕は常に酒はカバンに忍ばせているのだが、一度こっそりと飲んでいるのをマグ姉に見つかり没収されてしまったのだ。そんな噂を聞きつけてゴードンが酒を布団の中に忍ばせてくれる。そんな生活を一週間続けていると今まで不調だったのが信じられないほど、急に調子が良くなった。シェラが僕の体を調べてくれた。
「魔力が安定したみたいですね。これなら普段の生活に戻っても大丈夫ですよ。ただ、無茶だけはしないでくださいね。私もなにか解決方法を探してみますね」
僕は頷いた。また無茶をすれば命に関わると言われれば誰だって真剣になるだろう。ただ、今回は僕がそれほど無茶をしたという感じではなかったのだ。力加減がなかなか難しいな。僕はそのことをシェラに相談すると、指を顎に当てて考え事をしていた。
「それならばこれを使ってください」
そういって渡してきたのは腕輪だった。やや大きめで手首だとブカブカになるようなサイズだ。おそらく金で出来ていて、透明な石が嵌め込まれていた。シェラがとにかく手首にはめてくださいというので、仕方なく嵌めると金の腕輪はみるみる小さくなった。なんと、僕の腕にぴったりな腕輪になってしまった。
装着が完了すると、透明だった石が徐々に色づき始め、紫色に変わっていった。なんとも変わった石だがその色が金色の腕輪に映えて、格好良くなった。しかし、これは一体?
「それを一言で言えば、魔力を測定する腕輪です。万全な状態の時は紫、やや危険になると赤、危険になると白か透明になるんですよ。腕輪は魔金で出来ていますから、常に旦那様から魔力を少しずつ奪っていますが、微量なので問題はありません。その腕輪を肌身離さず持って、石が赤に変わったら魔法を使うのを止めてください。それで目安になると思います」
ほお。それは便利なものがあるんだな。助かったぞ。
「シェラ。ありがとう。これがあれば、もう倒れる心配はないな。ところでシェラはなんでこんなものを持っているんだ? まさか、天界から持ってきたものとか?」
「いいえ。知っての通り天界からのものではありませんよ。それこそ裸一つでこの世界に来ましたから。これは石をスタシャさんに、腕輪をギガンスさんに作ってもらったんですよ。旦那様の窮状を聞いて、二人共協力的でしたよ」
二人が……なんだか嬉しいな。ギガンスはともかく、あのがめついスタシャが僕のために、と思うと涙が出てくるな。
「二人には感謝しかないな。何か礼でも持っていったほうがいいだろうか?」
「それには及びませんよ。二人にはそれなりにお礼を渡してありますから」
シェラがそんなに気を回してくれるなんて珍しいこともあるものだな。ちなみに何を渡したんだ?
「ギガンスさんには魔酒の一番古いものを」
ほう。あれを放出したか。まぁギガンスにそれくらいを渡しても当然だ。そして、スタシャは?
「それがスタシャさんは謝礼は不要と言うので、何も渡していないんですよ」
なんと!! 信じられぬ。あのスタシャが謝礼を要求しないだなんて。彼女は体が小さいが心は婆だ。性格は変わりようがないと思っていたが、成長……しているんだな。僕は一人で頷いていると、シェラが最後に材料に費やして量を報告してきた。
「ギガンスさんには魔金のインゴットを一本。スタシャさんにはアダマンタイト、ミスリルのインゴットを一本とオリハルコンを少々、アウーディア石のかけらですね。スタシャさんの錬金は素晴らしいですよ。これらの素材から水晶のような石を作ってしまうんですから」
……言葉にならなかった。完全にボッタクられてる!! そりゃあ、謝礼はいらないって言うよ。それに多分、元からある水晶だと思うよ。多分錬金してない。
「シェラ……うん、頑張ってくれてありがとうな」
僕はシェラの頭をなでて、これからはシェラをスタシャのもとに行かせるのは止めよう。完全にカモにされてしまうだけだ。頭を撫でられているシェラはとても幸せそうだ。
しかし、この腕輪は本物そうだ。とりあえずスタシャが適当な物を作っていなかっただけマシか。僕はシラーとルードに再び都予定地に出発することを告げた。二人は僕の身を案じて、もう少し休んでいたほうがいいと言ってくれたが、そうも言っていられない。
「予定地では、すでに居住区に多くの建物が出来始めている。そのせいで手が空いた人が増え始めているというのだ。僕が早く行って、仕事を与えなければならない。そのためにも二人の協力が不可欠だ。よろしく頼むぞ」
二人は頷き、僕達は再び出発する準備を始めた。するとオリバがやってきた。
「ロッシュ様。どうか私も連れて行ってはくれませんか? やはり、ロッシュ様のお手回りの事が出来るものが一人でもいたほうがいいと思います。シラーさんやルードさんでは役不足というわけではありませんが、二人共仕事をしておられますから。私ならばロッシュ様のお世話に専念できるので」
ふむ。それはいい考えかもしれない。僕の腕輪にも常に気を配ってもらえれば助かるし、オリバならば料理も出来るからマリーヌの負担も減るだろう。僕は了承すると、オリバは飛び上がらんばかりに喜んでいた。すると、シラーが僕にこそっと言ってきた。
「オリバさん、クレイさんが一緒に作業をしていると聞いて悔しがっていましたから、きっとそれで付いてくると思いますよ。まぁ、言っていたことは本音でしょうけど」
未だにオリバはクレイを意識しているのか。まぁ、問題がなければ僕がいちいち口を出す必要はないだろう。エリスとマグ姉、シェラ、リードに別れを告げ、僕達は出発した。
都予定地に到着すると、外堀には水が静かに流れおり、遠目には居住区だろうか、建物がたくさん作られていた。一週間でここまで完成させるとは。簡易住居の建設の速さは、移住者が多い公国の得意技にまでなっているな。僕達は司令室に行くと、ゴードンが方々に指示を出しているところだった。
「ゴードン。見舞いの際は世話になったな。色々と助かったぞ」
「おお。ロッシュ公。お加減はもうよろしいので? それは良かった。まぁ、お互い様といいますか私のときもどうかよろしくお願いします」
「もちろんだ。僕の出来る範囲でやらせてもらおう」
二人であやしい会話を繰り広げている時、シラー達は寒々とした視線を僕達に向けていた。僕はその視線に気づき、咳払いを一つした。ゴードンに現状の説明を求めた。
「十万人の住居については、その半数は出来てありますが半分のものは住居を求めておりません」
一体どういうことだ? ゴードンが言うには、今の仮宿舎で我慢する代わりに優先的に都の住居を提供してほしいというのだ。工事作業員は都郊外にある移住者の街で寝起きを強いられている。そのため急ぎ、都の居住区に長屋を建設して順次寝泊まりの場所を移動してもらっている。計画では、工事作業員十万人分の長屋が完成し、上下水などの整備が完了した後、居住区を再整備する予定なのだ。当然、あとから作られた居住区の方が上下水道が完備されている分、利便性が高い。
そちらに真っ先に住みたい気持ちはよく分かる。だからといって、今を我慢するから優先権をもらいたいというのは筋としては間違っている。移住者の街の建物は元侯爵領から持ってきたものだけに快適なものが多い。一方、長屋は掘っ立て小屋に近いため快適とはいい難い。それでも長屋に移り住んでもらうのは移住者の街の建物内の鮨詰め状態を解消するためだ。
長屋に移り住む者が増えれば、実は移住者に残った者たちのほうが快適な居住環境を送れるということだ。その者たちに優先権を渡すというのは如何なものかと思う。僕としてはむしろ長屋に住む者たちに優先権を与えたいくらいだ。しかし、優先権を求めている者たちの言葉に耳を貸さなければ、不満が噴出してしまうかもしれない。ただでさえ、劣悪な住環境で肉体労働をしてもらっているのだ。
「ゴードン。この者たちについてはどのように対処をすればいいだろうか?」
「そうですな。私としてもロッシュ公と同じ意見ですな。現実を見ると、とても優先権を認めることは出来ないでしょう。でしたら、居住区を改めて設けて、そちらに新住居を建設してみては? さらに移住者全員分の住居を作るまでは移住を許可しないようにしましょう。理由はどうとでもなりましょう」
「なるほど。そう言っておけば、長屋を拒んでいる者も優先権を主張し辛くなるか。しかし、元侯爵領の建物を利用できないだろうか? あの街並みは是非とも残しておきたいところだ」
「左様ですな。確かにあの街並みは美しいですからな。しかし難しいですな」
そうなのだ。これが意外と難しい。勿論無駄な建物を作るのであれば、頭を使う必要はない。建てればいいだけなのだから。しかし、そうもいかないないのが難しいところだ。元侯爵領の建物には十五万人程度が住むことができる。長屋は五万人分が出来上がっている。残りの五万人が優先権を欲しがっている者たちだ。総勢25万人だ。
ここに十万人分の新住居が出来たとする。あとは元侯爵領の建物を都内に移築すれば住む話なのだが、一瞬で移築が出来るわけではない。それなりに時間がかかることだ。となると十五万人を移動しなければならない。移動先は新住居10万人分のところに無理やり15万人を入れるか、長屋を増やし、そこに住んでもらうかだ。
問題は前者を選ぶと元侯爵領の建物に住むものに優先権を与えたことになってしまう。これでは長屋に住んでいる者たちから不満が出てしまうだろう。一方、後者であれば快適な建物から長屋に移されることで不満が噴出する。どちらにしても不満が出てしまう。しかも十万人以上の単位でだ。
新住居25万人分が作れれば話は簡単なのだが……
「ロッシュ公。強引ですが、新住居十万人分の場所に数万人を移動して、元侯爵領の建物を一部ずつ移設していくと言う方法は如何でしょう」
ん? 一部ずつか……悪くないな。むしろ、最善の方法かもしれん。しかし、元侯爵領の建物で誰が先に移住をするかで揉めそうな気もするが。
「その時は……その時考えましょう。今は新住居を建設するまでの道筋をしっかりと決めなければなりません。ロッシュ公にはもうしばらく気張ってもらって、水路の残りと上下水道はよろしくお願いします」
それが良さそうだな。あまり考えすぎて、先に進めないのは良くないことだ。話を進めてみると意外と活路が見つかるかもしれない。
それから僕とシラーは協力して残りの水路を作り続けた。もちろん腕輪に注意しながらだ。それでも内側二本だけの水路だったため、さほどの時間がかからなかった。問題は、貯水池にある。貯水池は水路への水を安定的に供給するだけではなく、火災用の水として用いるために作られる。そのため、都の規模に沿ったものではなくてはならない。ちなみに上水道の水源は別に取る予定だ。
明日から始まる貯水池作りには魔力を使いすぎないように気をつけねば。
僕は常に酒はカバンに忍ばせているのだが、一度こっそりと飲んでいるのをマグ姉に見つかり没収されてしまったのだ。そんな噂を聞きつけてゴードンが酒を布団の中に忍ばせてくれる。そんな生活を一週間続けていると今まで不調だったのが信じられないほど、急に調子が良くなった。シェラが僕の体を調べてくれた。
「魔力が安定したみたいですね。これなら普段の生活に戻っても大丈夫ですよ。ただ、無茶だけはしないでくださいね。私もなにか解決方法を探してみますね」
僕は頷いた。また無茶をすれば命に関わると言われれば誰だって真剣になるだろう。ただ、今回は僕がそれほど無茶をしたという感じではなかったのだ。力加減がなかなか難しいな。僕はそのことをシェラに相談すると、指を顎に当てて考え事をしていた。
「それならばこれを使ってください」
そういって渡してきたのは腕輪だった。やや大きめで手首だとブカブカになるようなサイズだ。おそらく金で出来ていて、透明な石が嵌め込まれていた。シェラがとにかく手首にはめてくださいというので、仕方なく嵌めると金の腕輪はみるみる小さくなった。なんと、僕の腕にぴったりな腕輪になってしまった。
装着が完了すると、透明だった石が徐々に色づき始め、紫色に変わっていった。なんとも変わった石だがその色が金色の腕輪に映えて、格好良くなった。しかし、これは一体?
「それを一言で言えば、魔力を測定する腕輪です。万全な状態の時は紫、やや危険になると赤、危険になると白か透明になるんですよ。腕輪は魔金で出来ていますから、常に旦那様から魔力を少しずつ奪っていますが、微量なので問題はありません。その腕輪を肌身離さず持って、石が赤に変わったら魔法を使うのを止めてください。それで目安になると思います」
ほお。それは便利なものがあるんだな。助かったぞ。
「シェラ。ありがとう。これがあれば、もう倒れる心配はないな。ところでシェラはなんでこんなものを持っているんだ? まさか、天界から持ってきたものとか?」
「いいえ。知っての通り天界からのものではありませんよ。それこそ裸一つでこの世界に来ましたから。これは石をスタシャさんに、腕輪をギガンスさんに作ってもらったんですよ。旦那様の窮状を聞いて、二人共協力的でしたよ」
二人が……なんだか嬉しいな。ギガンスはともかく、あのがめついスタシャが僕のために、と思うと涙が出てくるな。
「二人には感謝しかないな。何か礼でも持っていったほうがいいだろうか?」
「それには及びませんよ。二人にはそれなりにお礼を渡してありますから」
シェラがそんなに気を回してくれるなんて珍しいこともあるものだな。ちなみに何を渡したんだ?
「ギガンスさんには魔酒の一番古いものを」
ほう。あれを放出したか。まぁギガンスにそれくらいを渡しても当然だ。そして、スタシャは?
「それがスタシャさんは謝礼は不要と言うので、何も渡していないんですよ」
なんと!! 信じられぬ。あのスタシャが謝礼を要求しないだなんて。彼女は体が小さいが心は婆だ。性格は変わりようがないと思っていたが、成長……しているんだな。僕は一人で頷いていると、シェラが最後に材料に費やして量を報告してきた。
「ギガンスさんには魔金のインゴットを一本。スタシャさんにはアダマンタイト、ミスリルのインゴットを一本とオリハルコンを少々、アウーディア石のかけらですね。スタシャさんの錬金は素晴らしいですよ。これらの素材から水晶のような石を作ってしまうんですから」
……言葉にならなかった。完全にボッタクられてる!! そりゃあ、謝礼はいらないって言うよ。それに多分、元からある水晶だと思うよ。多分錬金してない。
「シェラ……うん、頑張ってくれてありがとうな」
僕はシェラの頭をなでて、これからはシェラをスタシャのもとに行かせるのは止めよう。完全にカモにされてしまうだけだ。頭を撫でられているシェラはとても幸せそうだ。
しかし、この腕輪は本物そうだ。とりあえずスタシャが適当な物を作っていなかっただけマシか。僕はシラーとルードに再び都予定地に出発することを告げた。二人は僕の身を案じて、もう少し休んでいたほうがいいと言ってくれたが、そうも言っていられない。
「予定地では、すでに居住区に多くの建物が出来始めている。そのせいで手が空いた人が増え始めているというのだ。僕が早く行って、仕事を与えなければならない。そのためにも二人の協力が不可欠だ。よろしく頼むぞ」
二人は頷き、僕達は再び出発する準備を始めた。するとオリバがやってきた。
「ロッシュ様。どうか私も連れて行ってはくれませんか? やはり、ロッシュ様のお手回りの事が出来るものが一人でもいたほうがいいと思います。シラーさんやルードさんでは役不足というわけではありませんが、二人共仕事をしておられますから。私ならばロッシュ様のお世話に専念できるので」
ふむ。それはいい考えかもしれない。僕の腕輪にも常に気を配ってもらえれば助かるし、オリバならば料理も出来るからマリーヌの負担も減るだろう。僕は了承すると、オリバは飛び上がらんばかりに喜んでいた。すると、シラーが僕にこそっと言ってきた。
「オリバさん、クレイさんが一緒に作業をしていると聞いて悔しがっていましたから、きっとそれで付いてくると思いますよ。まぁ、言っていたことは本音でしょうけど」
未だにオリバはクレイを意識しているのか。まぁ、問題がなければ僕がいちいち口を出す必要はないだろう。エリスとマグ姉、シェラ、リードに別れを告げ、僕達は出発した。
都予定地に到着すると、外堀には水が静かに流れおり、遠目には居住区だろうか、建物がたくさん作られていた。一週間でここまで完成させるとは。簡易住居の建設の速さは、移住者が多い公国の得意技にまでなっているな。僕達は司令室に行くと、ゴードンが方々に指示を出しているところだった。
「ゴードン。見舞いの際は世話になったな。色々と助かったぞ」
「おお。ロッシュ公。お加減はもうよろしいので? それは良かった。まぁ、お互い様といいますか私のときもどうかよろしくお願いします」
「もちろんだ。僕の出来る範囲でやらせてもらおう」
二人であやしい会話を繰り広げている時、シラー達は寒々とした視線を僕達に向けていた。僕はその視線に気づき、咳払いを一つした。ゴードンに現状の説明を求めた。
「十万人の住居については、その半数は出来てありますが半分のものは住居を求めておりません」
一体どういうことだ? ゴードンが言うには、今の仮宿舎で我慢する代わりに優先的に都の住居を提供してほしいというのだ。工事作業員は都郊外にある移住者の街で寝起きを強いられている。そのため急ぎ、都の居住区に長屋を建設して順次寝泊まりの場所を移動してもらっている。計画では、工事作業員十万人分の長屋が完成し、上下水などの整備が完了した後、居住区を再整備する予定なのだ。当然、あとから作られた居住区の方が上下水道が完備されている分、利便性が高い。
そちらに真っ先に住みたい気持ちはよく分かる。だからといって、今を我慢するから優先権をもらいたいというのは筋としては間違っている。移住者の街の建物は元侯爵領から持ってきたものだけに快適なものが多い。一方、長屋は掘っ立て小屋に近いため快適とはいい難い。それでも長屋に移り住んでもらうのは移住者の街の建物内の鮨詰め状態を解消するためだ。
長屋に移り住む者が増えれば、実は移住者に残った者たちのほうが快適な居住環境を送れるということだ。その者たちに優先権を渡すというのは如何なものかと思う。僕としてはむしろ長屋に住む者たちに優先権を与えたいくらいだ。しかし、優先権を求めている者たちの言葉に耳を貸さなければ、不満が噴出してしまうかもしれない。ただでさえ、劣悪な住環境で肉体労働をしてもらっているのだ。
「ゴードン。この者たちについてはどのように対処をすればいいだろうか?」
「そうですな。私としてもロッシュ公と同じ意見ですな。現実を見ると、とても優先権を認めることは出来ないでしょう。でしたら、居住区を改めて設けて、そちらに新住居を建設してみては? さらに移住者全員分の住居を作るまでは移住を許可しないようにしましょう。理由はどうとでもなりましょう」
「なるほど。そう言っておけば、長屋を拒んでいる者も優先権を主張し辛くなるか。しかし、元侯爵領の建物を利用できないだろうか? あの街並みは是非とも残しておきたいところだ」
「左様ですな。確かにあの街並みは美しいですからな。しかし難しいですな」
そうなのだ。これが意外と難しい。勿論無駄な建物を作るのであれば、頭を使う必要はない。建てればいいだけなのだから。しかし、そうもいかないないのが難しいところだ。元侯爵領の建物には十五万人程度が住むことができる。長屋は五万人分が出来上がっている。残りの五万人が優先権を欲しがっている者たちだ。総勢25万人だ。
ここに十万人分の新住居が出来たとする。あとは元侯爵領の建物を都内に移築すれば住む話なのだが、一瞬で移築が出来るわけではない。それなりに時間がかかることだ。となると十五万人を移動しなければならない。移動先は新住居10万人分のところに無理やり15万人を入れるか、長屋を増やし、そこに住んでもらうかだ。
問題は前者を選ぶと元侯爵領の建物に住むものに優先権を与えたことになってしまう。これでは長屋に住んでいる者たちから不満が出てしまうだろう。一方、後者であれば快適な建物から長屋に移されることで不満が噴出する。どちらにしても不満が出てしまう。しかも十万人以上の単位でだ。
新住居25万人分が作れれば話は簡単なのだが……
「ロッシュ公。強引ですが、新住居十万人分の場所に数万人を移動して、元侯爵領の建物を一部ずつ移設していくと言う方法は如何でしょう」
ん? 一部ずつか……悪くないな。むしろ、最善の方法かもしれん。しかし、元侯爵領の建物で誰が先に移住をするかで揉めそうな気もするが。
「その時は……その時考えましょう。今は新住居を建設するまでの道筋をしっかりと決めなければなりません。ロッシュ公にはもうしばらく気張ってもらって、水路の残りと上下水道はよろしくお願いします」
それが良さそうだな。あまり考えすぎて、先に進めないのは良くないことだ。話を進めてみると意外と活路が見つかるかもしれない。
それから僕とシラーは協力して残りの水路を作り続けた。もちろん腕輪に注意しながらだ。それでも内側二本だけの水路だったため、さほどの時間がかからなかった。問題は、貯水池にある。貯水池は水路への水を安定的に供給するだけではなく、火災用の水として用いるために作られる。そのため、都の規模に沿ったものではなくてはならない。ちなみに上水道の水源は別に取る予定だ。
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