爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第322話 石材調達

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 僕は魔力に注意しながら、なんとか工事を進めているせいか効率がかなり落ちてしまっている気がする。シラーに全くついていけないのだ。シラーは僕に気にかけてくれるので速度を緩やかにしてくれる。

 「シラー。僕に合わせてゆっくりやってくれるのは嬉しいが、工事は早く終わらせたいんだ。できるだけ早くやってもらえると助かるぞ」

 「そうですか?」

 あまりに意に介さないといった様子で、シラーは坑を掘る速度を徐々に上げていった。この腕輪は本当に厄介だ。魔法を一時間使う間に赤色に変わる。その度に手を休まなければならない。魔力回復薬も有限だ。なるべくなら使いたくないが。僕が休憩している間もずっとシラーは坑を掘り続ける。

 そんな状況でも、一日で内側二本の水路も完成することが出来た。まだ微調整は必要だが、とりあえず大きな枠組みが出来た。都はこの水路を中心に大きく発展させる予定だ。都の入り口まで陸路で運ばれた物資は、水路を通って隅々まで行き渡らせる。そして、水路で物を集め、各地に送られていく。そんな都を僕は想像をしている。

 水路づくりが終わり、僕達が休憩していると早速ルドの測量隊が新たな居住区の選定をはじめていた。やはりゴードンと話し合ったように新たな居住区を作ることになったようだ。

 ちなみに都内では水路が環状線に作られているため、地図上では丸に見える。そのため一番内側の台地を一の丸と呼ぶことになった。それから水路を挟んで外に向かって、二の丸、三の丸、四の丸、五の丸と呼ぶことにした。五の丸は水路と城壁に囲まれた台地になる。

 計画では、一の丸には城が建設され、二の丸には行政区が置かれ、三の丸には商業区と居住区、四の丸には職人街と居住区と畑、五の丸には畑と水田が作られる予定だ。行政区や商業区に働きに出るものは三の丸に住む者が多いだろう。職人街や農地、都外で働くものは四の丸に住むことになる。

 僕は司令本部に戻り、地図とにらめっこしながら明日の予定を考えていく。明日は一の丸から二の丸にかかる貯水池を作るつもりだ。ここまではなんとか順調だな。するとゴードンが地図を眺めている僕に声を掛けて来た。

 「ロッシュ公。そろそろ石材の切り出しをお願いできないでしょうか。予定よりも早く事が進んでいる関係で、住居用の木材が送られてきていないのです。そのため住民たちの仕事に空きが出来てしまって」

 石材か……それならばシラーを送ったほうが良さそうだな。彼女は石材の目利きが出来る。よい石材を選んでもらうためにもシラーに行ってもらおう。そうなると石の加工にルードも一緒に行ってもらわなければならないな。

 「シラーとルード。明日から石材の調達に行ってもらえないか?」

 「ご主人様はどうなさるのですか?」

 「僕は予定通り、貯水池の工事を一人で進めているよ」

 「それはダメです。私かルードさんかどちらかがご主人様の護衛をしなければなりません。一人で行動など……」

 シラーは相変わらず心配症だな。ここは公国のど真ん中で、危険なやつなんていないだろうに。しかし、シラーは僕が一人で作業をすると言ったら、石材の方をなおざりにしそうな勢いだな。僕が石材をやるか? しかし、シラーに貯水池作りを任せていいものだろうか? 坑を掘るだけでなく、強度も確保しながらやらなければ大量の水を抱える貯水池は簡単に決壊してしまうものなのだ。

 「シラーは貯水池を任せても大丈夫か?」

 「私はこれでも採掘を生業としていた一族の末裔です。土の状態についてはご主人様より詳しいと自負していますよ」

 僕はとんだ思い違いをしていた。その通りだ。この世界でおそらくシラーほど坑を掘らせたら上手い者はいないだろう。シラーが怒るのも無理はない。

 「済まなかった。普段のシラーを見ていると設定を忘れてしまう」

 「設定?」

 「いや、なんでもない。貯水池はシラーに任せることにしよう。深さは十メートル程度だ。内壁に石材を用いたいと思っているが、どうだろうか?」

 「よろしいと思います。一メートル四方の石材を用意してください。それを貯水池の縁に従って埋設すればまず決壊することはないでしょう」

 シラーにとっては貯水池などなんてことはないようだ。それならば、僕はルードと共に石材の確保に行くことにするか。

 「ゴードン。明日から石材の切り出しを行うから、人数を集めてくれ」

 「承知しました。ただ、石材を採掘する場所までの道が未整備なので、整備していただかないと石材の運搬に支障が出るかもしれません」

 なかなか思い通りにはいかないものだな。僕達は必要な事を相談してから、その日は解散となった。

 次の日から石材の切り出し作業が始めった。シラーには石材の切り出し場所の選定を行なってもらい、その間に僕は切り出し場所までの道の整備をすることにした。荷車の車輪が地面に潜らないようにできるだけ固くなるように表面加工していく。まるでコンクリートのようだな。

 僕の腕輪を監視しているオリバは、当然、僕にずっと付いてきている。昨日から腕輪を付けているが、最初こそはすぐに石が赤色に変わっていたが、今日になってからは全く変わらなくなった。そのせいか、つまらなそうな顔に変わっていく。

 「オリバ。そういえば、故郷の者たちはどうだ?」

 「村の人たちに良くしてもらっているので、ようやく安心して暮らせるようになりました」

 「そうか。それは良かった。彼らは急に村に連れてこられて不安に感じていないか心配だったんだ。とりあえず安心して暮らせているのなら何よりだ。ところで靴の製造は進んでいるか?」

 「ありがとうございます。靴の製造は故郷の者たちがすでに動き出しているようで、村の人に協力してもらって靴の工房を用意してもらっています。最初はすでにある建物を利用するつもりだったのですが、新規に建てたほうがいいと言うので」

 もうそれだけ話が進んでいたのか。革の調達とかはどうなっているのか、あとでゴードンに確認したほうが良さそうだな。魔獣の革も利用して靴を作ってもらいたいからな。エルフの里に外注という選択肢も考えておくか。

 オリバがやはりつまらなそうな表情を浮かべていたので、僕はオリバの手を握ることにした。少しでも気が紛れればと思ったのだが意外と効果的だったようだ。つまらなそうな顔がみるみる嬉しそうな顔に変わっていった。オリバは僕の腕に絡みつくように体を密着してくる。

 「おい、これじゃあ動きづらいじゃないか」

 「少しくらいいいじゃないですか」

 オリバの潤んだ瞳で見つめられたら……断れないじゃないか。僕とオリバが二人の世界になろうとしているところでルードが間にグイグイ入ってきた。

 「ちょっとロッシュ殿。こんな朝から……私も参加させてください!!」

 ルードの間抜けな表情で冷静になることが出来た。ルード、助かったぞ。

 僕達はそれからも石材運搬用の道を作り続けると、ようやくシラーに追いつくことが出来た。シラーの目の前には高くそそり立つ崖があった。何度も崖の表面を触り、確認をしているようだ

 「ロッシュ様。この辺りの石が良さそうですね。おそらくこの周囲一帯は良質な石材に恵まれているようです。ただ、高い場所にあるため運搬が大変かもしれませんね」

 僕は崖を見上げる。さて、どうやって運び込むことにしようか。上から切り出して、下に落とすか? それでは下で作業をしているものたちに怪我を負わせてしまうな。諦めて取り出しやすい場所から……えっ!? 石材が粗悪だから使えない? やはり上から取るしかないか。こういう時にスロープのようなものがあればいいな。

 なければ作るか。僕は崖下からある程度角度を付けた坂道を掘り進めることにした。その間の石材は粗悪という話だが、使えそうなので運んでもらうことにしよう。僕は大きな石材を掘っては、それを崖下まで降ろしていく作業を続ける。

 奥へ奥へ坂道を作っていく。するとようやく崖の上に出ることが出来た。崖の中に大きな坂道になった空洞を作ることが出来た。ここに加工した石材を滑らせることが出来れば、作業も簡単になるが……。僕は見上げていた崖の上には更に崖があり、そこから石材を手に入れるつもりだ。僕は土魔法で大きな石材を切り出し、適当な場所に置いた。それをルードが風魔法で加工をしていく。

 「ロッシュ様。この石、想ったよりも堅いみたいでかなり魔力を込めないと切れそうにありませんね」

 さすがシラーのお眼鏡にかなった石だな。これならばどのような使用にも耐えられるだろう。しかし、ルードの表情は本当につらそうだ。これでは一日に大した量が出来ないかもしれないな。とりあえず、どれくらい出来るかを調べないとな。

 ルードはなんとか一つの石材の加工を終わらせた。

 「初めてにしては綺麗に出来たな。この調子でどんどん頼むぞ」

 「はひ」

 すでに呂律が回ってないな。大丈夫か? 僕は加工した石材をスロープに投入してみた。すると想像以上に滑らかに滑っていったのだ。とりあえず、下ではどうなっているか調べてみるか。僕もスロープに腰掛けるとものすごい勢いで滑っていく。

 ……怖かった。

 続けてルードも滑り落ちてくる。絶叫を上げながら、スカートがめくれ上がらせて、勢い良く滑ってきた。目のやり場に困る。僕はなんとか見ないようにして、ルードを受け止めた。ルードはスカートのことは気にする様子はなかった。

 「ロッシュ殿。楽しかったです。もう一度やってもいいですか?」

 ダメだろ。遊びじゃないんだから。オリバも同じように落ちてきた。オリバはルードとは違ってスカートのことを気にしていた。

 「見ました?」

 真下にいて、見ないようにするのは無理だろう。僕は何も答えないと、なぜかオリバはもじもじとしていた。気にしないでおこう。

 滑り落ちていった石材をみると……スロープの下に置いてあった荷車にしっかりと乗っていた。荷車にも痛みは見られない。

 ……成功だ。これならば、ここで積む作業を省略することが出来るな。よし、どんどん石材を作るぞ!! あれ? どうやって崖に登ろう。スロープはツルツルしていて、とても登れない。仕方がないな。僕はスロープ横に階段をつくり、そこで上り降りをする。

 僕とルードはひたすら石材作っていく。そうしている間に、都のほうに続々と荷車の列が見え始めてきた。どうやら石材の運搬隊のようだ。それから続々と石材が都に運ばれていった。それは本当に一日中。ルードも最初こそ苦戦していた加工も要領を掴んできたようだ。

 「不思議です。ロッシュ殿。同じことをこれほど繰り返していると魔法が上達するんですね。私、知りませんでした」

 そういうものなのか。確かに僕もひたすら坑を掘っていた頃は上達を肌身で感じることが出来たな。今はあまり成長を感じることが出来ないから忘れていたけど。

 結局、ルードは一日中加工をしても疲れるようなことはなかった。むしろ、運搬のほうが時間がかかり一日最大でも千個ほどであった。ゴードンに必要量を聞くと、貯水池だけでも一万個。街整備に同じ量は必要というのだ。

 ……先は長そうだ。  
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