爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第333話 海戦の後処理

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 公国にとって初めての海戦がなんともいえない幕切れで終わり、王国が船から投げ出した四千人もの亜人が三村の倉庫でゆっくりと食事を取っている。彼らにはすでに公国への帰属の意思が確認されているので、公国民としての待遇を受けている。それでも彼らをどこに移住させるか、どのような仕事を与えるかについては全く決まっていない状態だった。それでも僕には一つの考えがあった。

 海戦では旗艦の船長を務めたチカカは三村に停泊している三隻の船の保守を行なってもらっている。といっても、相手から何ら攻撃を受けていないので損害はないようだ。むしろ日々の大砲訓練と大砲の威力によって台座がかなり損耗していることが分かった。チカカはそれを見て、ここにはいないテドに文句を言っているようだった。

 ガムドは上陸した第一海軍の指揮をし、捕らえた四千人を監視する任務に付いていたが一応は公国民になったということもあって監視から保護に変わっていた。そのせいで緊張がなくなったので、ガムドは僕のところにやってきた。

 「ロッシュ公。まずは戦勝おめでとうございます。初の海戦ということでどうなることかと思いましたが、一矢も受けずに相手を撤退させる大勝利でしたな。これを機に海軍を拡張し、王国の脅威を取り除く必要があります。私が考えますに海軍の基地は三村に置くべきではないかと思いますが」

 どうやらガムドは戦勝に浮かれているな。あまり良くない傾向だ。しかし三村に海軍の基地に置くのは賛成だな。王国の海上脅威にもっとも強く影響を受けるのは三村だ。ここを奪われてしまうと、南の砦と都の間に楔を打ち込まれるようなものだ。しかし、問題点もあるだろう。

 もともと考えれば三村に基地を置く必要性はすぐに思いつくものだ。しかし、新村にしたのは海軍に船乗りが不在だからだ。今のところ、船乗りはチカカの部下しかいない。その拠点が新村にあるのだ。この船乗りの不在の問題を解決しなければ、三村に基地を持ってきてもうまくいくものではない。

 「ガムド。船乗りの問題は解決できそうなのか?」

 「それについてはチカカ殿と再度協議をしているのですが、なかなか良い結果は得られませんでした。どうしたものかと……」

 やはりチカカも漁業と物資運搬船の操業にかかせない船乗りたちを手放す気はサラサラないようだ。そうであれば新規に調達するしか方法はないな。

 「しかし、そんな人はいるでしょうか? 今までの募集はかけましたが船乗りの経験者は……まさか!!」

 「その通りだ。ここにいる者たちにやってもらうのはどうだろうか」

 ガムドはしばらく悩んでいた。さっきまで敵同士で戦っていたからこそ悩むのだろう。しかし、彼らほど公国にとって今必要な人材はいないだろう。四千人といっても、その殆どがガレー船でオールを漕いでいた者たちだから、正直帆船での操縦というのは期待できないだろう。しかし、その一部、約五百人は大型帆船の操縦に従事していたのだ。これだけの数がいれば、今ある三隻の戦艦を運用することが出来るだろう。

 「ロッシュ公の言われることは尤もとは思いますが。なかなか割り切れるものではありません。しばらくは様子を見た上での判断ということでよろしいでしょうか」

 「それについては任せる。しかし、海軍の発展は公国にとっては重要な課題だ。あまり悠長にしていると再び王国からの攻撃を受けることになる。それだけはなんとかして防がなければならないぞ」

 「承知しました。他の将軍と相談した上で判断したいと思います。私とて、ロッシュ公の考えには賛成なのですが……やはり、さっきまで敵だったものを」

 ガムドが言っていることは理解は出来るが、公国はそうやって大きくなってきたと思っている。敵だったものを味方に取り込み、共に苦難を分かち合ってきたのだ。ガムドとて公国に攻め込んできた将軍の一人なのだ。しかし、これを言えば四千人を受け入れざるを得なくなる。まずはガムド達の判断を見てみたいと思う。

 話はそれで終わり、次はルドに話を向けた。

 「ルド。ここにいる四千人の亜人達を三村に住まわせる準備をしてもらえないか。彼らの殆どが海に慣れている者だ。この三村で大いに活躍できる場を作ることが出来るだろう。やってくれるか?」

 「もちろんだ。なんなら全員を面倒見てもいいぞ。三村が発展するために一人でも多くの人が必要だ。都が更に発展してくれば、ここにやってくる物資の量も桁違いに必要になってくるからな」

 さすがはルドだ。公国の考え方をよく理解している。その即断即決の考えが発展には重要なことだろう。しかし、一応は釘を打っておかなければ。

 「四千人のうち、帆船操縦が出来る五百人については海軍に所属させることを考えているのだ。彼らについてはこちらに任せてくれないか?」

 「五百人を海軍に? よくガムド将軍が承知したな。元来、軍というのは保守的なものだ。敵だったものを簡単に受け入れるような組織ではないと思ったのだが」

 僕はつい笑みがこぼれてしまった。ルドにはすべてお見通しのようだ。僕はガムドにすべてを任せ判断させることにしたことを伝えると、ルドは静かに頷いた。

 「ロッシュがそう考えるならば、そうした方がいいだろう。いつまでもロッシュの考えで行動していては組織とは言えないからな。今回がいい機会かもしれないな」

 すると偶々なのか、ライルが三村に兵を率いてやってきたのだった。

 「ロッシュ公。王国の船を沈めたんだってな。話を聞いて、気分がすっかり良くなっちまったぜ。今回は戦勝を伝えに来たのと、兵が足りないだろうと思ってやってきたんだ。しかし、なんか問題なさそうだな」

 ライルは周囲を見渡しながらそう言ってきた。ライルは手勢を四千人がいる倉庫前で待機をさせることにした。すると、ガムドが走ってやってきた。

 「やはりライル将軍でしたか。周囲が騒いでいたのでもしやと思って」

 「ガムド将軍。今回は大活躍だったな。第一海軍の創設は大成功だった。今回の海戦は不安が多かったが、結果が良ければ何だっていい。それでこの四千人はどうするつもりだ? 一応は王国軍に属していたんだろ? だったら第一軍でもらっていってもいいか?」

 「いや、ライル将軍。彼らはさっきまで敵だったのですぞ。そのような者達を軍に入れれば、規律が乱れると思うのですが」

 「何を言ってやがるんだ? オレ達だって元は敵だったじゃねぇか。それを忘れてないか? ここにいる奴らだって帰る場所があれば、帰っているんだ。ここにいるってことは、その場所がないってことじゃないか? そんな奴らは生きるために公国にしがみつくしかないんだ。オレ達のようにな。だから、そんな細かいことなんて考えなくたっていいんだよ。昨日の敵は明日の友ってな。もっとも、ここにいるやつらについては、今日の敵は今日の友、になっちまうがな」

 それを聞いていたガムドはポカンとした顔をしていた。さすがはライルだな。容赦のない言葉を浴びせてくれたな。言い方はともかく、言いたいことは僕も一緒だ。さらにライルは容赦ない言葉をガムドに降り注いだ。

 「ガムド将軍。おまえさんはロッシュ公の側で色々と相談を受ける立場なんだ。しかし、敵だから受け入れられないというのは、おそらくロッシュ公が嫌がるはずだ。闇雲に受け入れろとは言わないが、こいつらは公国への帰属の意志を確認したんだろ? だったら受け入れてやるのが筋ってものだ。さっきも言ったが、海軍に必要ないならオレの方でもらっていくぞ」

 「い、いや待ってください。是非、彼らを第一海軍で引き受けさせてもらいます。どうやら私は考え違いをしていたようです。未だに王国の将軍のような気持ちが抜けていなかったようです」

 ガムドは僕に顔を向け、深々と謝罪をしてきた。

 「私にはロッシュ公のお側で相談役というのはどうやらお役に立てないようです。私は第一海軍に注力しますので相談役を辞退したく思います」

 随分と責任を感じてしまったようだな。どうしたものか。たしかに第一海軍にガムドが付いてくれるのは正直助かる。基地も三村に移るとなると、村に常駐してもらうというのは難しくなるだろうな。

 「分かった。当面は第一海軍の増強に力を注いでくれ。ただ、勘違いしてもらわないで欲しい。僕はガムドに全く失望はしていない。むしろ助かっていることが多いくらいだ。しかし、海軍の重要性は高まっている。その重要な海軍を任せる意味をよく分かってくれると助かる」

 ガムドは、承知しました、と絞るような声を出して応えた。結局、帆船の操縦に慣れた五百人は第一海軍に加わり、さらに千人が帆船操縦見習いとして第一海軍に籍を置きながら、チカカの指導を受けるために新村に派遣されることになった。残りの二千五百人については、三村の港に所属することになり、荷を積み下ろしなどの作業に従事することになった。

 第一海軍は、戦闘員四千人、船乗り千五百人、軍艦三隻と言う規模で三村で発足することになった。現在の港は主に荷の積み下ろしに使われているのだが、更に拡張をして、軍艦の停留場所を増設することになった。併せて、整備用の工房も作られ、新村から十人程度の船大工が所属することになった。彼らも一応は第一海軍所属ということになったが、船ならば全て受け入れていたから、あまり関係はないけど。

 僕はふと思ったことがあったのでガムドに聞くことにした。

 「この海域には灯台が全く無いが、作らないのか?」

 「灯台? ですか。それは一体なんですか」

 なんと灯台を知らなかったとは。僕は灯台について説明をすることにした。灯台は夜間航行をするために位置関係を知らせると共に、近寄れば座礁する可能性があることを伝える目的がある。とくに岸に沿って移動をする場合には特に必要となるものだ。

 「なんと、灯台があれば夜間も航行が可能になるということですか。それは便利なものだ」

 どうやら船舶の夜間の行動は禁止しているところが多いらしい。王国ではあまりにも事故が多いことから禁じていたらしい。しかし、灯台がないとは……。

 「ガムド。それならば灯台を急ぎ、近くの半島の南端に設置しよう。そこに灯台があれば、夜間の移動が可能となり、見張り所としての機能も付けられるだろう。王国軍の動きがよく分かるはずだ」

 「それはいい考えですな。しかし、人を常駐させるとなるとなかなか難しいですな。あの周りは岩山に囲まれ、陸路での移動は非常に困難ですから」

 「それならば、漁村を作ろう。あの辺りはよい漁場となりそうだ。それならば問題はないだろう」

 ガムドは唸っていた。

 「ロッシュ公は一体どこからそのような考えが浮かんでくるのか……」

 ガムドが考え込んでいると、ライルは笑いながらガムドの肩を思いっきり叩いた。

 「そんなことは気にするな。ロッシュ公が思い描いたものを実現すれば間違いないんだ。オレ達はそれを信じてやればいいんだ」

 「ああ、そうですな」

 そんなに信じられても困るのだがな。とにかく、海戦の処理も終わった。軍備も増強され、第一海軍が独り立ちする目途も付いたのだ。ガムドが側から離れるのは寂しいが、公国が強くなるためには仕方がないことだな。ちなみに軍艦は三村に停留するということだったので、ちょうどよく入港してきた物資運搬船に乗って新村に戻ることにした。

 これでひとまず、海戦騒動は一旦終わった。僕は再び内政に力を入れるべく村に戻ることにした。
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