奴隷商貴族の領地経営〜奴隷を売ってくれ? 全員、大切な領民だから無理です

秋田ノ介

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第18話 奴隷商、美女たちと宿に泊まる

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旅路は順調なものだった。

ただ、ご丁寧に馬車には奴隷商に紋章が描かれていた。

そのおかげで通行人から石を投げられることは日常だった。

「今日、石を投げてきた少年見た?」
「すごいコントロール。是非、仲間に加えるべき」

訳の分からない話で盛り上がることは少なくない。

僕は馭者として、馬の縄を持つことが多い。

一応、王族教育の一環で馬術も習っていた。

馬を制御するという点では同じだが、なかなか難しい。

「ねぇ、ロッシュ」
「どうした、マギー」

馭者をする僕の横は必ずと言っていいほどマギーが座っている。

寒さを感じる季節だからか、距離がとても近い。

マギーの温もりを感じながら、手綱で馬を目的地に誘導していく。

「なんだか、臭わない?」
「そうだね。もうそろそろ……怒ったほうがいいよね?」

後ろの荷台から立ち込める、怪しい臭い。

時々交じる咽るような臭いもそろそろ限界だ。

その原因は……

「マリーヌ様!! いい加減にしてくれ!! なんなんだよ。この臭いは!!」
「聞いてくれるのか? まさか、お主が興味を持ってくれるとはな」

どうして、こんなに前向きなんだ。

どう見ても苦情にしか見えないだろ。

マリーヌ様は勝手に解説を始める。

シェラも感心している様子で聞き入っている。

……違う。そうじゃない。

「この臭いをやめてくれと言っているんだ。薬草作りとしても、ずっとは困るんだ」
「薬草なんて作っているわけがなかろう。今作っているのは、毒だ。とびっきりのな」

……なんてものを作っているんだ。

「場所を弁えてくれ! ここは薬草ギルドじゃないんだぞ」
「ふむ……ではこうしよう。お主は毒ではなければ、作ってもよいのだな?」

……別にそんなことを言ったつもりはないんだが。

薬草なら目を瞑るつもりはあった。

一応、薬草は資金源だから……

「惚れ薬はどうじゃ? これだけ女子に囲まれておるのじゃ。お主には夢のようなものであろう?」

駄目だ、この人は……

僕はしばらくマリーヌ様の研究を中断させた。

「シェラと一緒に薬草を作っていてくれ」
「しょうがないの。ここはお主に従っておくか……」

意外と簡単に折れてくれて助かった。

「ロッシュ! 街よ」

王都を出発してから3日……ついに最初の街に着いた。

王都に最も近い都市は……領都ローム。

デリンズ侯爵家が支配する王国でも指折りの都市の一つだ。

ここは北方街道の物流拠点となる。

北方の産物は全てここに集まり、王都へと運ばれていく。

そのせいで、王都とロームの街の間はひっきりなしに馬車が列をなしていた。

「入れ!」

門番は奴隷商の紋章が入った場所を見て、嫌な顔をしながら入都を許可してくれた。

さすがはロームの街だ。

入り口から綺麗な街並みが並んでいる。

街の人の様子は……

『奴隷商は出ていけ!』

という看板がちらほらと見られる。

街の人は馬車に罵詈雑言を吐きかけてくる。

場所が変わっても、この対応は変わらないようだな。

馬車は街の奥へと向かっていく。

繁華街を抜け、少し古い街並みが残る場所で今日の宿を取るつもりだ。

「なんで、もっと賑やかな所で泊まらないのよ?」

たしかに繁華街のほうが宿の質はいいだろう。

あそこは外から来た人向けの宿が並んでいるからな。

だが……

「僕達は奴隷商だ。あの看板を見ただろ? 僕達は受け入れらていないのさ」

この辺りは地元の人が使うような宿がある。

あまり質は良くないが、言ってしまえばお金を払えば、拒まれることはないだろう。

「そういうものかしら?」
「……たぶんね」

僕の予想は的中した。

地元の人間は貧しい。

ここ最近は特に貧しさがひどくなった気がする。

こうなると、奴隷商だからといって断るということが難しくなるのだろう。

それに……

「五人で金貨5枚だ」

これだけ払えば、上質な宿に泊まることが出来るだろう。

安宿に払うような額ではないことは分かっている。

しかも、節約をしなければならないことも……

だけど、三日間、馬車の中で寝泊まりをしていた。

ゆっくりと足を伸ばして寝たい。

気分的には金貨5枚は安いのだ。

「じゃあ、部屋はロッシュと私。それ以外は別の部屋ね」

マギーが勝手に部屋を采配していく。

皆は特に抵抗はないみたいだ。

だが、一人だけ……サヤサだけが反対していた。

「護衛役の私はお主人様から離れません!」

意外な抵抗にマギーも手を上げてしまったようだ。

「実はロッシュと二人きりはまだちょっと……恥ずかしいからサヤサが言ってくれて良かったわ」

それは同感かな。

僕はまだまだ不甲斐ない男だ。

マギーを守れるまでは……そういう関係にはならない。

それくらいのけじめは元王族として……いや、男としての挟持なんだ。

「じゃあ、私も。サヤサだけでは護衛として役不足」
「なんですって!?」

「それでは妾も惚れ薬の実験を……」

結局、全員が同じ部屋になった。

幸いと言うべきか、この宿は元は誰かの屋敷だったみたいで、広い部屋を仕切っているだけだった。

その仕切りは簡単に取れるみたいだ。

これでゆっくりと休めそうだな。

マリーヌ様の淹れたお茶だけは絶対に飲まないようにしないとな……。

一段落着いた頃、シェラが大きな荷袋を持ってきた。

「イルス。薬草を売ってくる。免状を貸して欲しい」

ついにこの免状が使える時が来たか。

「僕も行くよ。街の様子も見たいし」
「そう。じゃあ、一緒に行く」

……

「サヤサはここで待機していてくれ」
「なんで……」

そんな絶望に満ちた顔をしないでくれ。

わざわざ街中を歩くのに護衛は必要ないだろ。

ここが治安が悪いという話は聞いたこともないしな。

「じゃあ、サヤサは私に貸してよ。荷物持ちが欲しかったから」
「いいけど、無駄遣いはしないでくれよ」

「大丈夫よ。よろしくね。サヤサ」
「……分かりました」

マリーヌ様は我関せずと言った感じで、本を読みふけっていた。

「行こうか。シェラ」
「ん」

街に出たものの、この免状でどうやって薬草を売ればいいんだ?

路上で売る?

それとも店に卸すのか?

「シェラ。どうするつもりなんだ?」
「薬草ギルドに行く」

……なるほど。

薬草ギルドは大きな街には必ずといっていいほどある。

王都の薬草ギルドから店を任せられている人が経営している。

直接販売ばかり考えていたが、普通にギルドに卸すのがいいのかも知れない。

シェラに任せたほうが良さそうだ。

罵詈雑言を街中で浴びながら、ギルドにやってきた。

「すみません。お取り扱いできません」

なんで……。
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