奴隷商貴族の領地経営〜奴隷を売ってくれ? 全員、大切な領民だから無理です

秋田ノ介

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第39話 奴隷商、名将から金を巻き上げる

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目の前でドーク子爵が馬上で失神していた。

ちなみに馬も失神していた。

まぁ、それはともかく。

「ドーク卿。討伐……いや、捕獲を完了した!! 報奨をもらおう!」

……。

「失礼しました。ロッシュ様。無様な姿をお見せして。このような姿、夜にお見せしたかった」

何言ってんだ、こいつ。

本当に発想がクソ……クソ将軍だな。

「報奨は?」
「申し訳ない。報奨はお支払できないのです」

話が……違う。

苦労はしていないが、苦労した体で話をしているのに。

「理由を聞こう。それ如何ではフェンリル共がどう動くか」
「なっ……ロッシュ様も大人の駆け引きを覚えてしまったのですね。それを夜に楽しみたかった!」

……。

「それはさておき。報奨は白金貨5枚をお支払するつもりでした」

白金貨5枚か。

まぁ猛獣討伐としては破格の値段だな。

もっともフェンリルともなれば、安い気もするが……

「じゃあ、早速……」
「それが……申し上げにくいのですが、その猛獣が街に入ってきた折、混乱で……」

被害甚大。

街を修復するのに、報奨金を充てたいと言うのだ。

「もちろん、ロッシュ様が悪いと言っているわけではありませんが……一応、被害の原因を作ったということで……」

ふむ。

確かにフェンリル百頭を連れて行った時のヨークの街は大変な騒ぎだった。

ちょっと可愛いと思い始めていたから、皆にそれを共有してもらおうと思ったんだが……。

無理だったみたいだな。

「分かった。街の復旧は、ひいては王国の利益となる。それをどうして拒めようか!!」
「おお。ありがとうございます! さすがはロッシュ様です」

……だが。

「白金貨5枚は貸しだぞ。それはしっかりと覚えてもらわないと困る」
「おっ……おお。恐れ入りました。ただ、すぐにお支払は……では! 私の体で!! ぐえっ」

……ありがとう。サヤサ。

さて、もはやこの街に滞在している必要もないだろう。

すぐにでも出発したいところだが……

奴隷商としての仕事もある程度、こなしていかないとな。

「それは不要です」

意外な言葉がドーク卿から聞かされた。

「どうしてだ? こことて、奴隷が必要ではないか?」
「いいえ。ここは軍事拠点ですから……」

奴隷を欲しがる商会はいない、と。

それに軍人が仕事の合間に街の人の手伝いをするから、ますます不要だと。

「それでは軍に使うといいのでは? 奴隷を使えば、安価で……」
「冗談は大概にして下さい。いくら愛するロッシュ様と言えども、聞き捨てなりませ……ぐえっ」

えっと……とりあえず、ありがとう。サヤサ。

でも、どう言う意味だ?

奴隷を使えば、軍も助かるのではないのか?

安価で……正直、本来は死刑囚だ。

命をそこまで守る道義も少ない。

戦場ではそういった駒が必要なときだってあるだろうに……

「我々軍人は、日夜訓練をし、信頼を重ねていくものです。そこに奴隷ごときが入ればどうでしょう。軍紀は乱れ、烏合の衆と化すでしょう」

分からない。

そういうものだろうか。

しかし、困ったな。

奴隷商としての仕事が出来ないぞ。

少し……ほんの少しでも稼ぎは得ておきたかったんだが……

今は奴隷になる死刑囚がかなりの人数いるという……。

しかも、冬を前に口減らしという理由で死刑が執行されるらしい。

急いで、代案を……奴隷を使う方法を……。

「申し訳ありませんが、奴隷商はこの街には不要です」

……。

僕は思い悩んだ。

本当にこれでいいのか……

僕は死刑囚が死刑になることに同情はしない。

それだけの罪を犯したのだから。

そして元王族として法は守らなければならないという気持ちは強い。

だが……奴隷商として気持ちが許さないのだ。

稼ぎの種が壊されてしまうことに堪えられないのだ。

僕はカーゾに相談し、ある事を決めた。

「ドーク卿。死刑囚を奴隷として買い取る。これは奴隷商としての仕事だ」
「それは……つまり金貨でお支払をしてくれるということでしょうか?」

これは一つの賭けだ。

奴隷が一人引き受ければ、それなりにお金がかかる。

しかも、稼ぎを生み出さない奴隷ともなれば尚更だ。

だが、将来性を買うんだ。

イルス領に向かう途中にも街々はある。

そこで手放すことも出来る。

それは最悪な手段だ。

確実に赤字になるからだ。

そうならないためにも、人材育成を重点的に行う。

領地経営に役立たせるためだ。

そのための投資……

それが今回の奴隷を買う理由。

「無論だ。男ならば金貨5枚。女ならば7枚だ」
「死刑囚は全員、受け入れてくださるので?」

今までの街で経験している限り、死刑囚は多くても十人がいいところだ。

ヨークの街が抱えている死刑囚はそれよりも少ないだろう。

「構わない。全員を頼む。ちなみにどういった罪で死刑なのだ?」

今回は人材育成をするんだ。

どういった経歴であるかは知っておく必要があるだろう。

「野盗です。この街を襲撃しようとしたところを捕縛しました」

……また、野盗か。

「他にはいないのか?」
「然様……軍機密を抜き取ろうとしたという罪の者がいますな」

それも野盗の類いなのではないか?

「それで終わりか?」
「そうですな。あとは軍令違反で何人か軍人がいます」

……どの者も特殊な能力はなさそうだな。

まぁ、領地経営とは言え、最初の仕事はほとんど力仕事だ。

それならば特殊な能力は不要だな。

「分かった。すぐに手配を頼む」
「承知しました」

……僕は正直、後悔していた。

ドークに騙されたと恨みもした。

「105名……金貨545枚、頂きたく思います。お支払は今すぐにでも?」

男95名、女10名。

軍人のくせに妙に嬉しそうだな。

「領主としては収入が増えるのはありがたいですから」

そんな気持ちはへし折ってくれる。

「僕への借りを返してもらおう」

子爵には白金貨5枚の貸しがある。

それを今こそ、使う時!!

「それは私の体で……ぐえっ」

くだらない話は聞き飽きた。

だが、仕入れがただになったとは言え……

この大所帯をどうやって維持していけば。

正直、シェラの稼ぎでは心許ないな……

「どうやら、私の出番みたいね」

大きな籠を背負った泥だらけ姿のマギーがいた……。
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