奴隷商貴族の領地経営〜奴隷を売ってくれ? 全員、大切な領民だから無理です

秋田ノ介

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第40話 奴隷商、仲間が野盗だらけになる

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一瞬、誰だか分からなかった。

泥にまみれて、顔の表情が伺えないほどだったから。

だけど声ですぐに分かった。

「マギー。どうしたんだ。その姿は」
「ロッシュ!! 私ね、やっと自分の役割が分かったの」

何を言っているんだ?

確かに悩みは知っているが、そんなすぐには……

「見て!! 私がやったのよ」

……なんだ、これ。

マギーの背負っていた籠には大量の……金色に輝くものが詰まっていた。

「これって……まさか」
「そうよ。金よ。びっくりよね。まさか、こんなに採れるなんて」

何にビックリしているのわからなかった。

金が採れる自分に?

たくさん採れた事自体?

それともたくさん採れる自分に?

「海岸にあんな穴場があるとはね」

場所かぁ!

そかそか。

これだけの金があれば……稼ぎは大変なものだ。

ヨーク子爵……大変なことになったな。

……ちょっと待て。

これは嫌な予感しかしない。

王国法では、土地からの産出物は領主に原則、帰属する。

だが例外はある。

領主に許可がある場合だ。

例えば、鉱山はわかりやすい

産出量の何割かは領主が受け取るが、その残りは採掘者に渡される。

そういう契約を取り交わすのが普通だ。

もっとも産出されるかどうかは分からないから、採掘者に一定額を払って、産出物は領主という契約も少なくない。

だが、今回はどうだろう。

僕達は採掘の許可を得ていない。

得ていなければ、採掘物はすべて領主のもの。

しかも、勝手に採掘するのは罪だ。

強制労働の罰が与えられるかもしれないのだ。

マギーが牢獄に……

「マギー。逃げよう。ここは、一旦」
「ロッシュ? どうしたの?」

マギーも王国法は詳しいはず。

なぜ、そんな悠長な……

だが、ここで騒げば衛兵が来ないとも限らない。

今は静かに……

「ちょっとお待ち下さい」

クソ将軍め。

要らぬ時に声を掛けないで欲しい。

「その金……本当に我が領で採れたものですか?」

ダメだ。

そこは嘘でも違うと……

「もちろんよ!!」

終わった……

「そうですか……でしたら、採掘した場所を教えて頂けませんか? もちろん、情報料はお支払いいたします」

ん?

どういうことだ?

「ロッシュ、どうしたの?」

どうしたも、こうしたもない。

「なんで……マギーは捕まらないんだ?」
「ああ! そういうことね!」

なぜか、マギーが笑いだし、バシバシ、僕を叩いてくる。

もうダメかと思っていたのに。

この状況が全く理解できない。

「失礼。私がマーガレットに許可を与えていたのです」

そんな、いつの間に……

「私、試したくて……ドーク卿に相談に行ったの」

そうだったのか……。

「許可状をやる代わりにロッシュと一夜を過ごさせろとか訳分からないことを言ってたから、殴ったら、もらえたわ」

このクソ将軍。

本当に最低だな。

でも良かった。

マギーと離れ離れになるくらいなら、牢獄をぶち破ってでも助けなければと思っていたくらいだ。

そうなれば、王国には住めなくなるが……

「マギーと離れずに済んでよかったよ」
「どうしたの? 大丈夫よ。私はずっとロッシュと一緒よ」

幸せな気分に浸れたが、疑問が。

「ドーク卿、条件を聞こう」

許可状はただの許可を与えるもの。

重要なのは契約だ。

取り分がドーク卿に大きく割り振られていれば、儲けは少なくなってしまう。

出来れば、7対3……いや、6対4でこちらに分のいい契約であればいいが。

「全部、マーガレットです。まさか、採掘なんて出来るとは思ってもいなかったので」

僕はマギーを抱きしめていた。

「ありがとう、マギー。これで僕達は救われる」

大きな経費問題は少し解決を見せた。

もちろん、これが恒久的な収入とはいい難い。

それでも一時的にお金を増やせたのは本当にありがたい。

それでは交渉の時間だな……

金は籠いっぱい。

しかも、純度はかなり高いように見える。

本来ならば、王都に引き返して換金したほうがいいのだが……

「金貨1000枚でどうでしょう。情報量を含めて、これが限界です」

まぁ、健闘したかな。

最初は金貨300枚などとふざけたことを言っていたが……

いい形で交渉が終わったな。

「それでいい。支払いはしてくれるんだろう?」
「もちろんです」

「猛獣捕縛の報奨は忘れないでくれよ?」
「……分かりました」

一応、念押しはしておいた方がいいだろう。

金貨はこれから加わる奴隷たちの経費として消えてしまうだろう。

持っている白金貨だけはなんとか使わないで済みそうだ。

「さて、ドーク卿。奴隷を見せてくれ」
「こちらです」

わざわざドーク卿自らが案内する必要もないんだけど。

まぁいいか。

「こちらがお渡しする奴隷です」

……これはすごいな。

男どもは屈強な体をしているものが多い。

カーゾ率いる野盗はどちらかという細身の者が多い。

俊敏と言うか、素早い動きを得意としている印象だ。

一方、こっちの野盗は体が大きい。

肉弾戦が得意な感じだ。

どちらも捨てがたい、素晴らしい特徴だ。

部隊編成の幅も広がる。

カーゾと相談したほうがいいな。

元軍人というのもすぐにわかる。

顔つきが野盗とは違う。

ニヤついた笑いなど、微塵もない。

何の罪かは問うつもりはないが、軍人然とした姿には尊敬の念すら感じる。

さて、こちらが一番の変わり種だ。

女十人……どの人も頭巾をかぶっている。

妙に体に密着した服を着ているせいで扇情的な印象を受けてしまう。

「済まないが、この頭巾は外せないのか?」
「……」

どうやら話をしたくないのか。

まぁいいか。

「君たちはこれより僕の奴隷として働いてもらう。一応聞こう。異議のある者はいるか?」

……へえ。

一番に手を上げたのは女の一人だった。

「理由を聞かせてもらえないか? 死刑の方がいいのかい?」
「あたいらを慰み者とするつもりなのかい?」

ふむ。

この手の質問はどう答えたらいいのだろうか?

「僕にはマギーという将来を約束した女性がいる。君たちに手を出そうものなら、彼女に殺されるだろう。それが答えだ!」

これでいいかな? マギー。

マギーはニコリと笑って、一歩前に出た。

「同じ女性同士、その心配があるのは仕方がないことね」

実はマギーには彼女たちへの対応を一任していた。

一対一ならともかく、相手は十人。

僕では対応が難しいと判断したからだ。

それだけ彼女たちは扇情的なスタイルであるのだが、マギーには知られるわけにはいかない。

「貴女達は私の下で働いてもらうことになるわ」

それでいい。

マギーなら、彼女たちをうまく使えるだろう。

「ロッシュをご主人様と仰ぎ、全てを捧げるのよ。いいわね?」

……なにか、違わないか?

僕は彼女たちにそんなものを求めていない。

「マギー……ちょっと」
「ロッシュは黙ってて。今、重要なところなの」

……マギーなりの考えがあってのことなのだろうか?

「そこの! 名前は?」
「……ヨルです」

「貴女がリーダよね? 貴女はロッシュに誠心誠意、働けるかしら?」
「どうして……いえ、我々の真価を理解していただければ……」

面白いことを言う。

真価という言葉にちょっと心を打たれた。

僕はまだ奴隷商……いや、僕自身の真価に気づいていないのに、彼女たちは知っているのか……と。
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