奴隷商貴族の領地経営〜奴隷を売ってくれ? 全員、大切な領民だから無理です

秋田ノ介

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第44話 奴隷商、王家の秘宝に触れる

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マギーに兄がいたとはな。

「彼は本当にマギーの兄なのか?」
「そうよ。顔だって、似ているでしょ?」

どうだろう?

顔の骨格はかなり違うし……

強いて言うなら……目かな?

といってもマギーの顔が変わる前のだけど……。

特に、学園時代、睨みつけるような目に似ている。

「そ、そうだね。でも、なぜ公表されていないんだ? 公爵家に男子ともなれば……」

大変な騒ぎになるだろう。

僕が言うのも何だが、顔は整っているし、背も高い。

社交場では主役になれるのは間違いないだろう。

だが、彼はこの辺鄙な土地の屋敷付きの執事をしている。

訳がわからない。

「言ってもいいわよね?」
「はい。マーガレット様の意のままに」

何があると言うんだ?

「フィリムは孤児なの。子供に恵まれなかった両親は孤児を預かり、自分の子供として育てたの」

養子か……

貴族の世界ではよくある話だが、孤児とはな……

普通は親戚筋か、上位貴族から養子をとるものだが……。

「だけど、すぐに私が生まれたの。だから、その……」

不要になったわけか。

これはかなり厄介な問題になっただろう。

一応、孤児とは言え、養子として迎え入れてしまったのだ。

後継問題は切っても切れないだろう。

「話は分かった。一つ、聞いてもいいか?」
「ええ」

「いや、彼に聞きたい」
「……なんでしょう」

今はおかしな状況だ。

オーレック家の後継者であるマギーは死亡扱いだ。

そうなれば……

「フィリム……君は後継者になるつもりか?」

これは重要な問題だ。

オーレック家はその辺の貴族とは格が違う。

今でこそ、失脚しているが、返り咲くだけの地力はまだ残っているはずだ。

その後継者ともなれば、絶大な力を持っていると言ってもいい。

しかし、それが血のつながりのない……ん?

血の繋がりがない?

僕は変な疑問が湧いた。

血の繋がりのないもの同士が腕を組んで、歩いた?

再び、僕の中にどす黒いものが流れ込んできた。

嫉妬……嫉妬の気持ちが再び襲い掛かってくる。

苦しい……

「マギー。僕の手を握ってくれ」
「え? ええ。どうしたの?」

これでいい。

今はこれで……

話を続けよう。

なんだっけ?

「私は……後継者と名乗り出るつもりはありません。大恩ある旦那様を裏切るような真似はしません」

ああ、その話か。

「そうか」

しかし、そうなるとオーレック家はどうなる?

後継者不在で最悪、消滅してしまう。

領土も地位もすべてが消えてしまう。

それだけは避けなければならない。

僕がイルス領を統治し、王都へ返り咲くためにも……

「不躾ながら、お悩みは不要かと」

何?

この難問に解決策が?

「マーガレット様のお子を継がせればよいのです。その子を旦那様の養子とすれば、血は絶えません」

なるほど……。

真実は知っている者のみか……

それは妙案だな。

いつしか、マギーが生きていることも公表できるだろう。

そうすれば……ん?

マギーの子供?

それって……

「私達の子供よ。ロッシュ」
「……そうだな。イルスとオーレック、二人必要だな」
「ええ」

僕はなんて幸せなんだ。

彼女のため……生まれてくるであろう子供のためにも領地経営を全力でやらなければ。

……何の話だっけ?

「子供……か。だが、君はそれでいいのか? 王国最大の家柄なんだぞ?」
「私がその器でないことは旦那様はよく知っております。私はそれに従うまで」

なんて、欲のない男なんだ。

だが、忠義に篤い……素晴らしい男だ。

是非とも、我が陣営に加わってもらいたいな。

だが、給料……払えるかな?

「フィリム。我々と共に行かぬか? 君のような男がいると助かるんだが」
「いいえ。私にはこの屋敷と領地を守る仕事があります。残念ですが、付いていくことは出来ません」

どうやら無粋な質問だったようだな。

「悪かった」
「いいえ。お誘い頂いたことは、とても嬉しいです。私のようなものを必要としてくれるのですから」

ますます気に入ったな。

いつか、オーレック卿に相談してみよう。

……。

「とてもいい話が聞けたよ。じゃあ……」
「ロッシュ。本題はこれからなの」

話が終わっていない?

かなり内容の濃い話だったと思うが、これ以上だと頭が痛くなりそうだ。

まずは心の整理をしたいところなんだが……

「ねぇ、ロッシュ。お父様からもらった小袋。今、持っている?」

もちろんだ。

指輪が入っていた小袋。

義父上様から託された大切なものだ。

肌身放さず、持ち続けていた。

「ああ。でも、なぜ?」
「メモもあるかしら?」

メモ?

ああっ!! あの、訳の分からない数字が並んでいた……

僕は首から下げていた小袋を引っ張り出し、メモを取り出した。

相変わらず、訳の分からない数字だ。

「それをフィリムに渡して」
「ああ」

フィリムはじっとメモを見つめ、急に移動を促してきた。

「こちらにどうぞ。旦那様からお渡ししたいものがございます」

……どういうことだ?

あの数字に何の意味が?

「マギー?」
「大丈夫よ。行きましょう」

案内されたのは、大きな部屋だった。

赤い絨毯に赤い壁紙の、目が痛くなる部屋だ。

その中央に大きな金庫が鎮座していた。

「マーガレット様。この数字の通りにダイヤルを回して下さい」
「ええ」

マギーの手でダイヤルが回される。

カチッ。

そんな音が部屋中に聞こえた。

どうやら開いたようだ。

「ロッシュ。開けてくれないかしら」

この金庫に何が入っているのだろうか?

まさか、金貨か?

そうだと、嬉しいが……

意を決して、少し祈る気持ちでノブに手を掛け、一気に開けた。

「これは……」

フィリムがさっと布を取り出し、神妙にそれを取り出した。

それはとてつもない輝きを放っていた。

見たことのない……。

「アウーディア王国初代様の愛剣・ブラッドソードでございます」

ブラッドソード、だと……

修復不可能と言われ、王宮の奥深くに眠り続けてきた秘宝。

それが……

「なぜ、ここに……?」
「それは旦那様が請け負ったからにほかなりません。我が領は鍛冶が盛んです。それゆえ……」

嘘だ。

それは絶対に嘘だ。

確かにオーレック領は鍛冶で有名なのは子供でも知っている。

だが、この秘宝はどのような技術を持ってしても修復が出来ないと判断されたのだ。

だから、絶対にありえない。

しかし、目の前の剣は完全な修復が施されている。

どういうことだ?

「私の話よりも、かの者から話を聞くといいでしょう」

かの者とは……一体。
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