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最終章 蛇足
3 呪い
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景色が寝室に戻った。ベッドで足を組んだままのニョルルンは、放心状態のパッヘルの顔を覗き込んだ。
「何か質問はある?」
「質問……」
少しだけ考えて、パッヘルは頭を抱える。
「聞きたいことはいくらでもあるよ。でも、何から聞けばいいか分からない。なんていうか、聞きたいことが多すぎるの」
「ふふ、そうよね」
ニョルルンは苦笑した。
「何も聞かないままっていう方法もあるよ。どうせ明日になれば忘れちゃうんだし」
「え!?」
驚いてニョルルンの顔を見る。
「それって、どういうこと?」
「魔女パッヘルは不老不死のままでいなくちゃいけないの。世代交代のこと――もしくは直接そこに繋がるような情報を他人が知ってしまうと、一晩で全部無かったことにされちゃうの。世界が作り変えられちゃう」
「せ、世界が作り変えられる?」
「今回に関して言えば、あなたがニョルルンに疑念を抱いたことさえ忘れちゃうでしょうね。同時にあたしも、あなたが疑念を抱いたことを忘れちゃう。ベッドで眠って明日になればお互い今まで通りよ。あたしはニョルルンのままで、あなたは記憶を失くした魔女のまま」
「だって、私たちは他人じゃないじゃん!」
「あなたはまだ魔力を受け継いでいないから、他人だって見なされるんだと思う。あたしまで忘れちゃうってのは、要するにあたしも世界の一部ってことなんだろうね。世界が作り変えられちゃうわけだから」
「そ、それじゃあ」
パッヘルは必死に頭を整理しながら言葉を紡いでいった
。
「今日のことはみんな忘れちゃって、でもまた違うことから気がついちゃって、まったく同じ会話が今後繰り返される可能性もあるってこと?」
「あるね。ひょっとしたら数日前ぐらいにすでにしてるかもしれない。君じゃなくても、この五十年の間に勘のいいグラントあたりが気づいて問い詰めてきたかもしれない。でも、あたしもグラントも覚えてない。まあ、彼らが気がつくのは至難の業だけどね。あなたとの記憶がちゃんとあるんだから」
前のパッヘルとの記憶が、次のパッヘルとの記憶に塗り変えられる。声も姿もまったく違うのに?
世界をひっくり返すほどの魔力、というグラントの言葉を思い出す。
まさか、悪魔の力とはそれほどまでに強大だというのか。
「でも、どうしてそんなことを……?」
「んー、どうしてだろうね」
ニョルルンは口もとに手を当て、しばし思案した。
「魔力がどのように働いてどのように作用するのかっていうのはちゃんと分かるの。一応は自分の魔力だからね。でも、そもそもの術者の意図までははっきりいって分からない。アスモスによってもたらされているのだとすると、自分の愛した女性をこの世に繋ぎとめておきたいっていう意地というか執念のようなものなのかな」
「だって、二代目以降は別人なんでしょ? そんなのって……」
「悪魔の考えることなんて分かるわけないでしょ。あくまであたしの想像」
パッヘルは他人ごとのように淡々と話すニョルルンに苛立ちを覚え始めた。
彼女がその運命を背負ったのは五十年も前の話で、その間に充分悩んだり嘆いたりしたのだろうが、それにしても淡白すぎやしないだろうか。
世代交代? 魔力を受け継ぐ?
じゃあ、あれだけ慕ってくれている部下たちの気持ちはどうなるんだ。ずっと返事を待ち続けたグラントの気持ちは……
「みんなの前に姿を現そうとは思わないわけ?」
「みんなの前に? 全部忘れちゃうのに? っていうかあたしも忘れちゃうんだよ?」
「それでもよ! みんな、あなたを待ってるんだから!」
思わず声が荒々しくなる。
「だいたい今回の襲撃だって本当に危なかったんだから! わざわざ私が魔法を使っているように見せかける必要なんてあったわけ!? そのせいでグラントやガナールだって怪我をしたし、森の魔物たちだって……」
「でも、みんなたいした傷じゃなかったでしょ?」
ニョルルンはそう言ってにこりと笑った。
「それはそうだけど……」
たしかにみんな怪我は軽かったし、森やこの館の損害も信じられないほど少なかったが。
その時、パッヘルははっとした。
「ひょっとして……何かやったの?」
「うん。ちょちょいとあいつらの魔法の威力を下げておいたわ」
「幻夢魔法って、そんなこともできるの!?」
「応用ってやつよ」
ニョルルンは得意気に頷く。
「強力な魔法を使おうとしても、その使い方が赤ちゃんレベルの初級魔法のものに成り代わってるの。でも見た目や音は派手に見せてるから、本人たちにも気づけない」
「あ、あの爆発音は幻!?」
「そういうこと。森が焼けてたのも演出みたいなもんで、実際はちょっと木の皮が剥げた程度よ」
パッヘルはぐったりと肩を落とした。
それでは、あの戦はもともと負ける要素のない戦だったというわけか。
「他にもバレない程度に色々とサポートはしてたんだよ。記憶喪失の噂を広めようとした妖精たちの記憶をいじったりとか。まあ一日で効果は切れちゃうんだけど、あいつらなら問題ないでしょ。それから……」
「でも、どうして? どうしてバレちゃいけないの? みんなあなたを待ってるんだから、たとえ明日になったら忘れちゃうんだとしても、せめて今日だけは……」
ニョルルンはふうと一度だけ大きな溜息をついた。
「残念だけど、それはできないの。明日になれば世界は作り変えられちゃうけど、世界を作り変えるには大きな対価を支払わなくちゃいけない」
「対価?」
「魔女の寿命よ」
魔女の、寿命……?
「あたしとあなた。現在はどちらが魔女と見なされるのか曖昧なところだけど、おそらくは魔力を持っているあたしだろうね。でも、あなたが控えていることからも分かるように、あたしの寿命はもう長くない。あたしの寿命が尽きれば魔力はあなたに受け継がれ、今度はあなたの寿命を支払わなくちゃいけない」
「それって、どのぐらい……?」
「世界を作り変える規模によるわ。今回みたいにあなたとあたしの記憶ぐらいで済むなら数日ぐらいかな。でも、人数が増えれば増えるほどその規模は等倍以上に拡大していくでしょうね。嘘の辻褄を合わせるための嘘が、幾つも必要になってくるから」
想像して思わずゾッとする。
「それじゃあ、もし今回の戦であなたが大々的に姿を現したりでもしたら……」
「敵味方のみんなの記憶が作り変えられるだろうね。数十年……いや、数百年。あなたの寿命も、あなたの次のパッヘルの寿命も吹き飛んじゃうよ」
パッヘルはまた肩を落とした。そして、ぽつりと漏らす。
「そんなの……ただの呪いじゃん」
「呪いか……まあ、最初はあたしもそう思ったかな」
そう言って、ニョルルンは遠い目をした。
「じゃあ、あなたはみんなに名乗ることもできないの!? ニョルルンとして、ちゃんとみんなの傍にいるのに?」
「できないね」
「寂しくないの? 悲しくは? そもそも、どうしてあなたが生きているのに私が魔女を継がなきゃいけないのよ?」
「死んでから継承したら、不老不死に見せかけられないからだろうね」
やはり淡々と答えるニョルルンが苛立たしくて仕方がない。
どうしてそんなに達観できるんだ。それはとても、とても悲しいことなんじゃないのか。
思わず涙が溢れ出す。自分のことではないのに、どうしてもこらえきれなかった。
自分のことではない? いや、そうじゃない。これから自分も同じ運命を辿らなければならないのだ。そして、長い年月を悩み抜いて最後には彼女と同じ境地に至る?
そんなの嫌だ、とパッヘルは思った。
「そろそろ眠くなってきたね」
あくびをしながらニョルルンは言った。
しかし、何も答えない。
「もう聞きたいことはない? それならもう……」
聞きたいことは山ほどある。ただ、望む答えは何一つ返ってこないだろうと予想できた。むしろ答えを聞けば聞くほど気持ちが荒んでいくばかりだ。ニョルルンが言ったように、何も聞かないというのが一番利口だったのかもしれない。
ただそれでも、どうしても尋ねておかなければならないことがあった。一番に聞いておきたかったはずなのに、衝撃的な話の連続で、もはやその存在を忘れつつあったのだ。
涙を拭いながら、パッヘルは言った。
「最後に一つだけ……」
「ん?」
「結局、私は誰なの?」
一瞬だけきょとんとしたニョルルンだったが、すぐに納得したように頷いてみせた。
「何か質問はある?」
「質問……」
少しだけ考えて、パッヘルは頭を抱える。
「聞きたいことはいくらでもあるよ。でも、何から聞けばいいか分からない。なんていうか、聞きたいことが多すぎるの」
「ふふ、そうよね」
ニョルルンは苦笑した。
「何も聞かないままっていう方法もあるよ。どうせ明日になれば忘れちゃうんだし」
「え!?」
驚いてニョルルンの顔を見る。
「それって、どういうこと?」
「魔女パッヘルは不老不死のままでいなくちゃいけないの。世代交代のこと――もしくは直接そこに繋がるような情報を他人が知ってしまうと、一晩で全部無かったことにされちゃうの。世界が作り変えられちゃう」
「せ、世界が作り変えられる?」
「今回に関して言えば、あなたがニョルルンに疑念を抱いたことさえ忘れちゃうでしょうね。同時にあたしも、あなたが疑念を抱いたことを忘れちゃう。ベッドで眠って明日になればお互い今まで通りよ。あたしはニョルルンのままで、あなたは記憶を失くした魔女のまま」
「だって、私たちは他人じゃないじゃん!」
「あなたはまだ魔力を受け継いでいないから、他人だって見なされるんだと思う。あたしまで忘れちゃうってのは、要するにあたしも世界の一部ってことなんだろうね。世界が作り変えられちゃうわけだから」
「そ、それじゃあ」
パッヘルは必死に頭を整理しながら言葉を紡いでいった
。
「今日のことはみんな忘れちゃって、でもまた違うことから気がついちゃって、まったく同じ会話が今後繰り返される可能性もあるってこと?」
「あるね。ひょっとしたら数日前ぐらいにすでにしてるかもしれない。君じゃなくても、この五十年の間に勘のいいグラントあたりが気づいて問い詰めてきたかもしれない。でも、あたしもグラントも覚えてない。まあ、彼らが気がつくのは至難の業だけどね。あなたとの記憶がちゃんとあるんだから」
前のパッヘルとの記憶が、次のパッヘルとの記憶に塗り変えられる。声も姿もまったく違うのに?
世界をひっくり返すほどの魔力、というグラントの言葉を思い出す。
まさか、悪魔の力とはそれほどまでに強大だというのか。
「でも、どうしてそんなことを……?」
「んー、どうしてだろうね」
ニョルルンは口もとに手を当て、しばし思案した。
「魔力がどのように働いてどのように作用するのかっていうのはちゃんと分かるの。一応は自分の魔力だからね。でも、そもそもの術者の意図までははっきりいって分からない。アスモスによってもたらされているのだとすると、自分の愛した女性をこの世に繋ぎとめておきたいっていう意地というか執念のようなものなのかな」
「だって、二代目以降は別人なんでしょ? そんなのって……」
「悪魔の考えることなんて分かるわけないでしょ。あくまであたしの想像」
パッヘルは他人ごとのように淡々と話すニョルルンに苛立ちを覚え始めた。
彼女がその運命を背負ったのは五十年も前の話で、その間に充分悩んだり嘆いたりしたのだろうが、それにしても淡白すぎやしないだろうか。
世代交代? 魔力を受け継ぐ?
じゃあ、あれだけ慕ってくれている部下たちの気持ちはどうなるんだ。ずっと返事を待ち続けたグラントの気持ちは……
「みんなの前に姿を現そうとは思わないわけ?」
「みんなの前に? 全部忘れちゃうのに? っていうかあたしも忘れちゃうんだよ?」
「それでもよ! みんな、あなたを待ってるんだから!」
思わず声が荒々しくなる。
「だいたい今回の襲撃だって本当に危なかったんだから! わざわざ私が魔法を使っているように見せかける必要なんてあったわけ!? そのせいでグラントやガナールだって怪我をしたし、森の魔物たちだって……」
「でも、みんなたいした傷じゃなかったでしょ?」
ニョルルンはそう言ってにこりと笑った。
「それはそうだけど……」
たしかにみんな怪我は軽かったし、森やこの館の損害も信じられないほど少なかったが。
その時、パッヘルははっとした。
「ひょっとして……何かやったの?」
「うん。ちょちょいとあいつらの魔法の威力を下げておいたわ」
「幻夢魔法って、そんなこともできるの!?」
「応用ってやつよ」
ニョルルンは得意気に頷く。
「強力な魔法を使おうとしても、その使い方が赤ちゃんレベルの初級魔法のものに成り代わってるの。でも見た目や音は派手に見せてるから、本人たちにも気づけない」
「あ、あの爆発音は幻!?」
「そういうこと。森が焼けてたのも演出みたいなもんで、実際はちょっと木の皮が剥げた程度よ」
パッヘルはぐったりと肩を落とした。
それでは、あの戦はもともと負ける要素のない戦だったというわけか。
「他にもバレない程度に色々とサポートはしてたんだよ。記憶喪失の噂を広めようとした妖精たちの記憶をいじったりとか。まあ一日で効果は切れちゃうんだけど、あいつらなら問題ないでしょ。それから……」
「でも、どうして? どうしてバレちゃいけないの? みんなあなたを待ってるんだから、たとえ明日になったら忘れちゃうんだとしても、せめて今日だけは……」
ニョルルンはふうと一度だけ大きな溜息をついた。
「残念だけど、それはできないの。明日になれば世界は作り変えられちゃうけど、世界を作り変えるには大きな対価を支払わなくちゃいけない」
「対価?」
「魔女の寿命よ」
魔女の、寿命……?
「あたしとあなた。現在はどちらが魔女と見なされるのか曖昧なところだけど、おそらくは魔力を持っているあたしだろうね。でも、あなたが控えていることからも分かるように、あたしの寿命はもう長くない。あたしの寿命が尽きれば魔力はあなたに受け継がれ、今度はあなたの寿命を支払わなくちゃいけない」
「それって、どのぐらい……?」
「世界を作り変える規模によるわ。今回みたいにあなたとあたしの記憶ぐらいで済むなら数日ぐらいかな。でも、人数が増えれば増えるほどその規模は等倍以上に拡大していくでしょうね。嘘の辻褄を合わせるための嘘が、幾つも必要になってくるから」
想像して思わずゾッとする。
「それじゃあ、もし今回の戦であなたが大々的に姿を現したりでもしたら……」
「敵味方のみんなの記憶が作り変えられるだろうね。数十年……いや、数百年。あなたの寿命も、あなたの次のパッヘルの寿命も吹き飛んじゃうよ」
パッヘルはまた肩を落とした。そして、ぽつりと漏らす。
「そんなの……ただの呪いじゃん」
「呪いか……まあ、最初はあたしもそう思ったかな」
そう言って、ニョルルンは遠い目をした。
「じゃあ、あなたはみんなに名乗ることもできないの!? ニョルルンとして、ちゃんとみんなの傍にいるのに?」
「できないね」
「寂しくないの? 悲しくは? そもそも、どうしてあなたが生きているのに私が魔女を継がなきゃいけないのよ?」
「死んでから継承したら、不老不死に見せかけられないからだろうね」
やはり淡々と答えるニョルルンが苛立たしくて仕方がない。
どうしてそんなに達観できるんだ。それはとても、とても悲しいことなんじゃないのか。
思わず涙が溢れ出す。自分のことではないのに、どうしてもこらえきれなかった。
自分のことではない? いや、そうじゃない。これから自分も同じ運命を辿らなければならないのだ。そして、長い年月を悩み抜いて最後には彼女と同じ境地に至る?
そんなの嫌だ、とパッヘルは思った。
「そろそろ眠くなってきたね」
あくびをしながらニョルルンは言った。
しかし、何も答えない。
「もう聞きたいことはない? それならもう……」
聞きたいことは山ほどある。ただ、望む答えは何一つ返ってこないだろうと予想できた。むしろ答えを聞けば聞くほど気持ちが荒んでいくばかりだ。ニョルルンが言ったように、何も聞かないというのが一番利口だったのかもしれない。
ただそれでも、どうしても尋ねておかなければならないことがあった。一番に聞いておきたかったはずなのに、衝撃的な話の連続で、もはやその存在を忘れつつあったのだ。
涙を拭いながら、パッヘルは言った。
「最後に一つだけ……」
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